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垂直搬送機の非定常作業における労働災害防止対策の徹底について
平成25年4月19日基安安発0419第2号
(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)
クレーン等安全規則の適用があるエレベーター及び簡易リフト(以下「エレベーター等」という。)は、人及び荷(人又は荷のみの場合を含む。ただし、簡易リフトにあっては、荷のみ。)をガイドレールに沿って昇降する搬器にのせて、動力を用いて運搬することを目的とする機械装置ですが、そのうち一定の条件に合致する垂直搬送機については、昭和51年4月5日付け基収第2183号によりクレーン等安全規則のエレベーター等としての適用がないものとして取り扱っています。
しかしながら、垂直搬送機の異常処理作業、保全等作業、組立・解体作業等の非定常作業時に搬器に挟まれることや、カウンターウェイトに激突されることによる死亡災害が多発しており、今後における垂直搬送機による労働災害の防止の徹底を図る必要があります。
このため、関係団体に対して別添のとおり要請したところですので、了知されるとともに、関係事業者等に対し、適切な指導等をお願いします。
[別添]
○垂直搬送機の非定常作業における労働災害防止対策の徹底について(要請)
平成25年4月19日基安安発0419第1号
(別記の団体の長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)
労働災害の防止については、平素より御理解、御協力をいただき厚く御礼申し上げます。
さて、クレーン等安全規則の適用があるエレベーター及び簡易リフト(以下「エレベーター等」という。)は、人及び荷(人又は荷のみの場合を含む。ただし、簡易リフトにあっては、荷のみ。)をガイドレールに沿って昇降する搬器にのせて、動力を用いて運搬することを目的とする機械装置ですが、そのうち一定の条件(①エレベーター等と同様の構造を有する部分の前後に荷の送り込み装置及び荷受け装置が設けられ、これらで一連の運搬システムを形成しており、全体として一体の設備となっていること。②搬器に人が乗ることが構造的に極めて困難であること。③運転は搬器以外の場所に設けられた操作盤を操作することによって行うものであること。)に合致する垂直搬送機については、昭和51年4月5日付け基収第2183号によりクレーン等安全規則のエレベーター等としての適用がないものとして取り扱っています。
しかしながら、別添のとおり、垂直搬送機の異常処理作業(通常の運転中に発生する異常、故障等の処理の作業をいう。以下同じ。)、保全等作業(不定期な又は定期的ではあるが頻度の低い保全の作業並びに設備立ち上げ時等における調整及び試運転の作業をいう。以下同じ。)、組立・解体作業等の非定常作業(日常的に反復・継続して行われることが少ない作業をいう。以下同じ。)時に搬器に挟まれることや、カウンターウェイトに激突されることによる死亡災害が多発しており、今後における垂直搬送機による労働災害の防止の徹底を図る必要があります。
つきましては、下記の労働災害防止対策について、貴会の会員事業場に対して周知していただき、同種災害の防止を図っていただきますようお願いします。
記
1 垂直搬送機の製造等を行う者<メーカー>において実施すべき事項
(1) 設計・製造段階における非定常作業に関する危険性等の調査等の適切な実施
「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成19年7月31日付け基発第0731001号)に基づき、機械の設計、製造、改造等(以下「製造等」という。)を行う者は設計・製造段階における危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく保護方策を実施することにより、リスクの低減を図ること。
特に、垂直搬送機の異常処理作業、保全等作業、組立・解体作業等の非定常作業時には、通常作業時には想定されないような、危険な箇所への作業者の接近や搬器の操作が行われ、死亡災害が発生していることを踏まえ、通常作業時だけでなく非定常作業時においても搬器やカウンターウェイトの可動範囲内への進入をせずに作業を行えるようにするため、また、可動範囲内への進入を行わざるを得ない場合には労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)第107条(掃除等の場合の運転停止)の規定を遵守できるようにするために、次の安全防護を実施すること。
ア 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に身体が入らないよう覆い、囲い、安全柵等を設けること。
イ 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に作業者が接近した場合に垂直搬送機の運転を停止する構造とすること(例えば、搬器の可動範囲に作業者が接近したことを検知し、検知後直ちに垂直搬送機の作動を停止させ、かつ、再起動の操作をしなければ垂直搬送機が作動しない機能を有する光線式安全装置、超音波センサー等を利用した安全装置等を備えること。)。
ウ 垂直搬送機の起動装置は施錠できる構造とすること。
(2) 非定常作業に関する取扱説明書の整備
非定常作業時に死亡災害が発生していることを踏まえ、取扱説明書には異常処理作業、保全等作業、組立・解体作業等の非定常作業に関する作業標準を記載すること。また、非定常作業に関する取扱説明書には、従事する作業者に対してあらかじめ安全教育を行うことを記載するほか、異常処理作業及び保全等作業を行う場合においては、垂直搬送機の電源を遮断し、起動装置を施錠し、当該起動装置に作業中である旨を表示すること、複数の作業者が作業を行う場合における合図の方法及び安全の確認方法を決めること等の注意事項を記載すること。
なお、上記(1)に基づき保護方策を実施した後に残る残留リスク情報及びその他の必要な情報は、安衛則第24条の13及び「機械等譲渡者等が行う機械に関する危険性等の通知の促進に関する指針」(平成24年厚生労働省告示第132号。以下「危険性等通知指針」という。)に基づいて、残留リスクマップ及び残留リスク一覧として、取扱説明書の冒頭等認識しやすい箇所に記載すること。
(3) 自ら非定常作業を行う場合において実施すべき事項
製造した垂直搬送機の組立・解体作業を行う場合や保全等作業を請け負う場合などメーカーが自ら非定常作業を行う場合には、次の事項を実施すること。
ア 非定常作業に関する作業手順書の整備
非定常作業が行われる現場の状況や条件等に応じて、危険性又は有害性等の調査を実施し、その結果に基づく保護方策を実施することにより、リスクの低減を図ること。その結果を踏まえ、作業者に残留リスク情報を伝えるための作業手順書を整備すること。その際には、通常作業時だけでなく非定常作業時においても搬器やカウンターウェイトの可動範囲内への進入をせずに作業を行う作業手順とし、異常処理作業及び保全等作業時に可動範囲内への進入を行わざるを得ない場合には、垂直搬送機の電源を遮断し、起動装置を施錠し、当該起動装置に作業中である旨を表示するなど安衛則第107条(掃除等の場合の運転停止)の規定を遵守した作業手順とすること。また、従事する作業者に対してあらかじめ安全教育を行うことを記載するほか、複数の作業者が作業を行う場合における合図の方法及び合図の確認方法等の注意事項を記載すること。
イ 安全教育の実施
上記アで整備した作業手順書を用いた安全教育の実施により、作業者に作業手順書に基づく作業の徹底を図ること。
ウ 作業を他者に請け負わせる場合の留意事項
上記アで整備した作業手順書を提供し、これに沿った作業を発注すること。
2 垂直搬送機を労働者に使用させる事業者<ユーザー>において実施すべき事項
(1) 使用段階における非定常作業に関する危険性等の調査等の適切な実施
労働安全衛生法第28条の2に基づき、機械の製造等を行う者から提供された残留リスク情報等を踏まえて、使用段階における危険性又は有害性等の調査を実施し、その結果に基づく保護方策を実施することにより、リスクの低減を図ること。
特に、垂直搬送機の異常処理作業、保全等作業の非定常作業時には、通常作業時には想定されないような、危険な箇所への作業者の接近や搬器の操作が行われ、死亡災害が発生していることを踏まえ、垂直搬送機に次の安全防護が実施されているか確認し、実施されていない場合には実施すること。
ア 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に身体が入らないよう覆い、囲い、安全柵等が設けられていること。
イ 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に作業者が接近した場合に垂直搬送機の運転を停止する構造であること(例えば、搬器の可動範囲に作業者が接近したことを検知し、検知後直ちに搬器の作動を停止させ、かつ、再起動の操作をしなければ搬器が作動しない機能を有する光線式安全装置、超音波センサー等を利用した安全装置等を備えていること。)。
ウ 起動装置は施錠できる構造であること。
なお、機械の製造等を行う者から必要な情報が提供されていない場合には、「危険性等通知指針」に基づいて情報を提供するように垂直搬送機の製造等を行う者に対し求めること。
(2) 非定常作業に関する作業手順書の整備及び安全教育の実施等
ア 非定常作業に関する作業手順書の整備
上記(1)の危険性等の調査等の実施結果を踏まえ、作業者に残留リスク情報を伝えるために、異常処理作業、保全等作業の非定常作業時用の作業手順書を整備すること。その際には、メーカーから提供された非定常作業に関する作業標準及び注意事項を参考の上、通常作業時だけでなく非定常作業時においても搬器やカウンターウェイトの可動範囲内への進入をせずに作業を行う作業手順とし、可動範囲内への進入を行わざるを得ない場合には、垂直搬送機の電源を遮断し、起動装置を施錠し、当該起動装置に作業中である旨を表示するなど安衛則第107条(掃除等の場合の運転停止)の規定を遵守した作業手順とすること。また、従事する作業者に対してあらかじめ安全教育を行うことを記載するほか、複数の作業者が作業を行う場合における合図の方法及び安全の確認方法等の注意事項を記載すること。
イ 安全教育の実施
上記アで整備した作業手順書を用いた安全教育の実施により、作業者に作業手順書に基づく作業の徹底を図ること。
ウ 作業を他者に請け負わせる場合の留意事項
上記アで整備した作業手順書を提供し、これに沿った作業を発注すること。
エ 垂直搬送機の製造等を注文する場合の留意事項
非定常作業に関する作業標準及び注意事項を取扱説明書に記載して提供することを注文時の条件に含めること。
3 非定常作業を請け負う者<メンテナンス業者等>において実施すべき事項
(1) 非定常作業に関する危険性等の調査等の適切な実施
非定常作業が行われる現場の状況や条件等に応じて、危険性又は有害性等の調査を実施し、その結果に基づく保護方策を実施することにより、リスクの低減を図ること。
特に、垂直搬送機の異常処理作業、保全等作業、組立・解体作業等の非定常作業時には、通常作業時には想定されないような、危険な箇所への作業者の接近や搬器の操作が行われ、死亡災害が発生していることを踏まえ、垂直搬送機に次の安全防護が実施されているか確認し、実施されていない場合には発注者に対して実施を求めること。
ア 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に身体が入らないよう覆い、囲い、安全柵等が設けられていること。
イ 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に作業者が接近した場合に垂直搬送機の運転を停止する構造であること(例えば、搬器の可動範囲に作業者が接近したことを検知し、検知後直ちに搬器の作動を停止させ、かつ、再起動の操作をしなければ搬器が作動しない機能を有する光線式安全装置、超音波センサー等を利用した安全装置等を備えること。)。
ウ 起動装置は施錠できる構造であること。
(2) 非定常作業に関する作業手順書の整備及び安全教育の実施等
ア 非定常作業に関する作業手順書の整備
上記(1)の危険性等の調査等の実施結果を踏まえ、作業者に残留リスク情報を伝えるための作業手順書を整備すること。その際には、発注者から提供された非定常作業に関する作業手順書を参考の上、搬器やカウンターウェイトの可動範囲内への進入をせずに作業を行う作業手順とし、異常処理作業及び保全等作業時に可動範囲内への進入を行わざるを得ない場合には、垂直搬送機の電源を遮断し、起動装置を施錠し、当該起動装置に作業中である旨を表示するなど安衛則第107条(掃除等の場合の運転停止)の規定を遵守した作業手順とすること。また、従事する作業者に対してあらかじめ安全教育を行うことを記載するほか、複数の作業者が作業を行う場合における合図の方法及び安全の確認方法等の注意事項を記載すること。
イ 安全教育の実施
上記アで整備した作業手順書を用いた安全教育の実施により、作業者に作業手順書に基づく作業の徹底を図ること。
ウ 作業を請け負う場合の留意事項
発注者が整備した作業手順書を提供することを求めること。
別添
垂直搬送機に関する死亡災害
発生年月 災害発生場所 |
被災者の属性 |
被災者の業種 |
作業内容 |
災害の概要 |
原因 |
平成24年8月神奈川県 |
ユーザー |
クリーニング業 |
異常処理作業 |
ベルトコンベアの異常を確認していたところ、降下してきた搬器とベルトコンベアの間に挟まれた。 |
垂直搬送機の運転を停止せずに、可動域内に立ち入ったこと。 |
平成24年1月東京都 |
メンテナンス業者 (メーカーの下請け) |
その他の業種 |
保全作業 |
垂直搬送機の保守点検作業中、搬器の上部にいたところ、搬器が上昇し、天井との間に挟まれた。 |
電源が入った状態で、搬器の上部で作業を行ったこと。 |
平成21年6月福岡県 |
メンテナンス業者 (メーカーの下請け) |
機械修理業 |
保全作業 |
垂直搬送機の保守点検中、降下してきたカウンターウェイトに激突された。 |
1階ピット内に作業者を立ち入らせたまま、機械を動かしたこと。 |
平成18年8月愛知県 |
解体業者 (下請け) |
機械器具設置工事業 |
解体作業 |
垂直搬送機の解体工事中、ワイヤロープの溶断に伴って落下してきたカウンターウェイトに激突された。 |
ワイヤロープの溶断作業中、下方に作業者を立ち入らせたこと。 |
平成17年10月福岡県 |
組立業者 (メーカー) |
機械器具設置工事業 |
設備立ち上げ時における調整及び試運転作業 |
垂直搬送機の設置後の試運転調整作業中、運転開始の合図に対して了解の返事をしていたが、降下してきたカウンターウェイトに激突された。 |
待避を確認せずに、機械を動かしたこと。 |
平成17年3月北海道 |
ユーザー |
クリーニング業 |
異常処理作業 |
垂直搬送機の昇降路内に入り、搬器から洗濯物を除去しようとしていたところ、搬器が上昇し、昇降路の安全柵との間に挟まれた。 |
垂直搬送機の運転を停止せずに、可動域内に立ち入ったこと。 |
平成16年12月広島県 |
ユーザー |
自動車・同付属品製造業 |
異常処理作業 |
垂直搬送機の故障点検中、昇降路の安全柵を外し、そこから搬器内に身を乗り出して作業していたところ、搬器が降下し昇降路との間に挟まれた。 |
垂直搬送機の運転を停止せずに、可動域内に立ち入ったこと。 |
平成14年3月千葉県 |
組立業者 (メーカーの下請け) |
鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 |
組立作業 |
垂直搬送機の設置工事中、5階開口部の単管手すりに安全帯のフックを掛けて昇降路内部に身を乗り出してチェーンを手繰り寄せようとしたところ、手すりがはずれ墜落した。 |
開口部から身を乗り出さないでチェーンを手繰り寄せる治具を用いなかったこと。 |
平成13年12月京都府 |
ユーザー |
紙加工品製造業 |
保全作業 |
垂直搬送機の昇降路内で清掃作業を行っていたところ、降下してきた搬器に挟まれた。 |
起動装置が施錠できる構造となっていなかったこと。 |
平成13年5月群馬県 |
ユーザー |
食料品製造業 |
その他 |
昇降路の外から垂直搬送機の動きを見ていたところ、降下してきたカウンターウェイトに激突された。 |
昇降路の安全柵が身を乗り出せる高さであったこと。 |
(別記団体)
エレベーター保守事業協同組合
建設業労働災害防止協会
JEMAエレベータメンテナンス事業協同組合
全国クリーニング生活衛生同業組合連合会
中央労働災害防止協会
一般社団法人日本エレベーター協会
一般社団法人日本クレーン協会
一般社団法人日本建設業連合会
一般社団法人日本産業機械工業会
一般社団法人日本倉庫協会
一般社団法人日本物流システム機器協会
一般社団法人日本物流団体連合会
公益社団法人ボイラ・クレーン安全協会
日本マテリアルハンドリング協会
公益社団法人日本ロジスティクシステム協会