img1 img1 img1

◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー  

通達:水産食料品製造業における労働災害防止対策の徹底について

 

水産食料品製造業における労働災害防止対策の徹底について

平成24年12月21日基安安発1221第1号

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)

 

休業4日以上の労働災害発生件数は、2年連続で増加しており憂慮すべき状況にありますが、本年も9月末時点における速報ベースで増加傾向にあり、このまま推移すれば3年連続の増加となるおそれもあります。

このため、9月28日に安全衛生部長名で災防団体をはじめ関係各団体に労働災害防止のための緊急要請を行ったところですが、労働災害の増加傾向に歯止めをかけ、減少に転じさせるためには、この緊急要請に止まらず、労働災害防止について具体的な取組を進めていく必要があります。

こういった現状を踏まえ、今般、特に労働災害の増加数、増加率が目立つ業種、事故の型について分析を行い、これらの業種、事故の型を中心として、関係団体に対し、労働災害発生の防止に係る注意喚起を図ることとしました。

食料品製造業のうち、水産食料品製造業については、別紙1のとおり、本年10月末時点における速報ベースで対前年96件の増(+13.2%)となっており、これは、食料品製造業に係る業種小分類の中で最大の増加幅となっています。

更に、これを事故の型別に見ると、発生件数の多い方から「転倒」、「はさまれ、巻き込まれ」、「切れ、こすれ」の順となっています。

このため、水産食料品製造業において、発生件数が多く特に注意を要すべき事故の型として、「転倒」、「はさまれ、巻き込まれ」及び「切れ、こすれ」災害に係る労働災害分析結果及び分析結果を踏まえた留意点を別添のとおり取りまとめ、関係団体に対して別紙2のとおり注意喚起を図ったところですので、了知願います。

 

別紙1

24年10月末時点での食料品製造業災害分析

 

事故型

平成23年10月末時点(注)

平成24年10月末時点

増加数

増加率

食料品製造業

(全事故型)

5,753

6,079

326

5.6%

墜落、転落

403

487

84

20.8%

転倒

1,604

1,635

31

1.9%

飛来、落下

231

265

34

14.7%

はさまれ、巻き込まれ

1,353

1,372

19

1.4%

切れ、こすれ

903

939

36

4.0%

動作の反動、無理な動作

400

478

78

19.5%

 

 

 

水産食料品製造業

(全事故型)

725

821

96

13.2%

墜落、転落

38

51

13

34.2%

転倒

212

224

12

5.7%

飛来、落下

45

52

7

15.6%

はさまれ、巻き込まれ

188

183

-5

-2.7%

切れ、こすれ

130

146

16

12.3%

動作の反動、無理な動作

42

52

10

23.8%

(注) 東日本大震災を直接の原因とする災害を除いた数字

資料出所:労働者死傷病報告

 

別紙2

○水産食料品製造業における労働災害防止対策の徹底について

平成24年12月21日基安安発1221第2号

(別紙の団体の長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)

休業4日以上の労働災害発生件数は、2年連続で増加しており憂慮すべき状況にありますが、本年も9月末時点における速報ベースで増加傾向にあり、このまま推移すれば3年連続の増加となるおそれもあります。

このため、9月28日に安全衛生部長名で災防団体をはじめ関係各団体に労働災害防止のための緊急要請を行っておりますが、労働災害の増加傾向に歯止めをかけ、減少に転じさせるためには、この緊急要請に止まらず、労働災害防止について具体的な取組を進めていく必要があります。

こういった現状を踏まえ、今般、特に労働災害の増加数、増加率が目立つ業種、事故の型について分析を行い、これらの業種、事故の型を中心として、労働災害発生の防止に係る注意喚起を図ることといたしました。

食料品製造業のうち、水産食料品製造業については、別紙1のとおり、本年10月末時点における速報ベースで対前年96件の増(+13.2%)となっており、これは、食料品製造業に係る業種小分類の中で最大の増加幅となっています。

更に、これを事故の型別に見ると、発生件数の多い方から「転倒」、「はさまれ、巻き込まれ」、「切れ、こすれ」の順となっています。

このため、水産食料品製造業において、発生件数が多く特に注意を要すべき事故の型として、「転倒」、「はさまれ、巻き込まれ」及び「切れ、こすれ」災害に係る労働災害分析結果及び分析結果を踏まえた留意点を別添のとおり取りまとめましたので、会員事業場等に対して周知を図っていただき、これらの事故の型による災害防止を中心とした労働災害防止対策に努めてくださいますよう、お願い申し上げます。

(別紙)

送付先団体

(災害防止団体)

中央労働災害防止協会

(業界団体)

一般社団法人 日本食品機械工業会

全国水産加工業協同組合連合会

全国水産練製品協会

全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会

 

別添

1 水産食料品製造業における労働災害の分析結果

(1) 「転倒」による災害

全体の5割強が床や地面で滑って転倒した災害、障害物によりつまずいた災害が全体の2割強となっている。滑って転倒した災害の原因として、床や地面が濡れていたことによるもの、床や地面が凍結していたことによるものがともに3割強となっている。

床の濡れや、床に置いた障害物などによる転倒災害について、災害の概要を確認したところ、少なくとも約4割は4S(整理、整頓、清掃、清潔)を徹底していれば防止できたものと考えられる。

(2) 「はさまれ、巻き込まれ」による災害

機械(食品加工用機械、ロール機、コンベヤー等)及びその一部(機械の駆動部、ベルト、ギア等)にはさまれる、あるいは巻き込まれる災害が全体の7割強を占めている。

これら機械による災害について、作業別にみると、機械の清掃作業中の災害が約3割、機械に付着した魚の骨やヒレ等を除去する作業中の災害が約4分の1、機械の修理・調整・点検中の災害が1割強と、いわゆる「非定常作業」における災害が全体の7割弱を占めている。機械による災害の要因としては、機械を止めないまま点検、修理、清掃等を行って被災した災害が約6割を占めている。その他、機械の誤操作により被災した災害が1割強となっている。

また、工場内を移動中にバックしてきたフォークリフトに轢かれた災害や、機械に挟まった魚を除去するため機械を止めて作業を行っていたところ別の作業者が除去作業中であることに気づかずに機械のスイッチを入れてしまい被災した災害など、作業員間の連絡不備による災害が全体の約1割みられた。

(3) 「切れ、こすれ」による災害

食材の加工・調理中の災害が全体の約7割を占めている。また、機械(食品加工用機械、ロール機、コンベヤー等)及びその一部(機械の刃の部分等)による「切れ、こすれ」災害が7割強を占めている。

機械による災害のうち、バンドソーによる災害が少なくとも3割強を占めている。バンドソーによる災害のうち、その8割以上が、冷凍マグロ等の冷凍魚をカットする作業で手が滑り、バンドソーの刃の部分が手に触れてしまい被災する、というものであった。

食材の加工・調理以外の災害では、機械に付着した魚の骨やヒレ等を除去する作業中の災害が全体の1割強を占めており、清掃、点検、修理等も含めたいわゆる「非定常作業」における災害が全体の2割強であった。

2 分析結果を踏まえた留意点

(1) 「転倒」による災害

ア 4S(整理、整頓、清掃、清潔)の徹底により、床面の濡れや通路に置いた荷物等、転倒災害につながるリスクを極力排除・低減すること。

イ 床面を水洗いした場合は、水濡れはすぐに除去するようにすること。

ウ 履物について、滑りにくいものを使用するとともに、靴底の摩耗状況を確認し、滑り止めの効果が低下しているものは交換すること。

(2) 「はさまれ、巻き込まれ」による災害

ア 刃物部分のガードを外す等、安全確保の観点から不適切と思われる方法での機械の使用はしないこと。

イ 機械の点検、掃除、修理等、非定常作業を行う場合には、機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。

ウ 機械に魚の骨やヒレ等が付着したような場合に、これを除去する作業(以下「除去等作業」という。)は、通常の作業中に発生するケースもあり、特にそういうケースにおいては機械を止めずに作業を行ってしまいがちであるが、本来、除去等作業は機械を止めてから行うべき作業であるため、機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。

(3) 「切れ、こすれ」による災害

ア 刃物部分のガードを外す等、安全確保の観点から不適切と思われる方法での機械の使用はしないこと。

イ 機械の点検、掃除、修理等、非定常作業を行う場合には、機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。

ウ 除去等作業は、通常の作業中に発生するケースもあり、特にそういうケースにおいては機械を止めずに作業を行ってしまいがちであるが、本来、除去等作業は機械を止めてから行うべき作業であるため、機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。

エ バンドソー等を使用しての冷凍魚の加工・整形作業については、冷凍魚が滑ったはずみでバンドソー等の刃部分に手等が触れるリスクがあることに留意し、バンドソーの歯の切断に必要な部分以外の部分に覆いを設けること。更に、メッシュ手袋等の保護具を着用する等、リスクの低減を図ること。

(4) その他

現在行っている作業についてのリスクアセスメントを実施すること。特に、機械を使用する作業について、使用する機械等のリスクアセスメントを実施し、その作業におけるリスクを特定し災害防止対策を講じること。

 

(参考)

図