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パン、菓子製造業における労働災害防止対策の徹底について
平成24年11月22日基安安発1122第5号
(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)
休業4日以上の労働災害発生件数は、2年連続で増加しており憂慮すべき状況にありますが、本年も9月末時点における速報ベースで増加傾向にあり、このまま推移すれば3年連続の増加となるおそれもあります。
このため、9月28日に安全衛生部長名で災防団体をはじめ関係各団体に労働災害防止のための緊急要請を行ったところですが、労働災害の増加傾向に歯止めをかけ、減少に転じさせるためには、この緊急要請に止まらず、労働災害防止について具体的な取組を進めていく必要があります。
こういった現状を踏まえ、今般、特に労働災害の増加数、増加率が目立つ業種、事故の型について分析を行い、これらの業種、事故の型を中心として、関係団体に対し、労働災害発生の防止に係る注意喚起を図ることとしました。
食料品製造業のうち、パン、菓子製造業については、別紙1のとおり、本年9月末時点における速報ベースで対前年79件の増(+12.0%)となっており、この増加幅は、食料品製造業に係る業種小分類の中で水産物加工業における増加幅(対前年99件の増)に次ぐ増加幅になっています。
更に、これを事故の型別に見ると、発生件数では「転倒」、「はさまれ、巻き込まれ」が多く、対前年の増加数及び増加率では「高温・低温の物との接触」が特に大きくなっている状況にあります。更に、これから、繁忙期である年末年始を迎えますが、この時期は特に労働災害のリスクが高まることが予想されます。
以上のことを踏まえ、特に注意を要すべき事故の型として、パン、菓子製造業における「転倒」、「はさまれ、巻き込まれ」及び「高温・低温の物との接触」災害について、分析結果及び分析結果を踏まえた留意点を別添のとおり取りまとめ、関係団体に対して別紙2のとおり注意喚起を図ったところですので、了知願います。
別紙1
24年9月末時点での食料品製造業災害分析
|
事故型 |
平成23年 9月末時点 (注) |
平成24年 9月末時点 |
増加数 |
増加率 |
|
食料品製造業 |
(全事故型) |
5,042 |
5,370 |
328 |
6.5% |
|
|
墜落、転落 |
349 |
429 |
80 |
22.9% |
|
|
転倒 |
1,423 |
1,467 |
44 |
3.1% |
|
|
飛来、落下 |
200 |
243 |
43 |
21.5% |
|
|
はさまれ、巻き込まれ |
1,186 |
1,224 |
38 |
3.2% |
|
|
高温・低温の物との接触 |
226 |
269 |
43 |
19.0% |
|
|
|
動作の反動、無理な動作 |
344 |
411 |
67 |
19.5% |
|
パン・菓子製造業 |
(全事故型) |
657 |
736 |
79 |
12.0% |
墜落、転落 |
46 |
51 |
5 |
10.9% |
||
転倒 |
178 |
189 |
11 |
6.2% |
||
はさまれ、巻き込まれ |
220 |
221 |
1 |
0.5% |
||
切れ、こすれ |
65 |
74 |
9 |
13.8% |
||
高温・低温の物との接触 |
19 |
47 |
28 |
147.4% |
||
動作の反動、無理な動作 |
43 |
56 |
13 |
30.2% |
(注) 東日本大震災を直接の原因とする災害を除いた数字
資料出所:労働者死傷病報告
別紙2
○パン、菓子製造業における労働災害防止対策の徹底について
平成24年11月22日基安安発1122第6号
(別紙の団体の長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)
休業4日以上の労働災害発生件数は、2年連続で増加しており憂慮すべき状況にありますが、本年も9月末時点における速報ベースで増加傾向にあり、このまま推移すれば3年連続の増加となるおそれもあります。
このため、9月28日に安全衛生部長名で災防団体をはじめ関係各団体に労働災害防止のための緊急要請を行っておりますが、労働災害の増加傾向に歯止めをかけ、減少に転じさせるためには、この緊急要請に止まらず、労働災害防止について具体的な取組を進めていく必要があります。
こういった現状を踏まえ、今般、特に労働災害の増加数、増加率が目立つ業種、事故の型について分析を行い、これらの業種、事故の型を中心として、労働災害発生の防止に係る注意喚起を図ることといたしました。
食料品製造業のうち、パン、菓子製造業については、別紙1のとおり、本年9月末時点における速報ベースで対前年79件の増(+12.0%)となっており、この増加幅は、食料品製造業に係る業種小分類の中で水産物加工業における増加幅(対前年99件の増)に次ぐ増加幅になっています。
更に、これを事故の型別に見ると、発生件数では「転倒」、「はさまれ、巻き込まれ」が多く、対前年の増加数及び増加率では「高温・低温の物との接触」が特に大きくなっている状況にあります。更に、これから、繁忙期である年末年始を迎えますが、この時期は特に労働災害のリスクが高まることが予想されます。
このため、特に注意を要すべき事故の型として、パン、菓子製造業における「転倒」、「はさまれ、巻き込まれ」及び「高温・低温の物との接触」災害について、分析結果及び分析結果を踏まえた留意点を別添のとおり取りまとめましたので、会員事業場等に対して周知を図っていただき、これらの事故の型による災害防止を中心とした労働災害防止対策に努めてくださいますよう、お願い申し上げます。
(別紙)
送付先団体
(災害防止団体)
中央労働災害防止協会
(ユーザー団体)
一般社団法人 日本パン工業会
全日本パン協同組合連合会
全国菓子工業組合連合会
全日本菓子工業協同組合連合会
(メーカー団体)
一般社団法人 日本食品機械工業会
協同組合 日本製パン製菓機械工業会
別添
1 パン・菓子製造業における労働災害の分析結果
(1) 「はさまれ、巻き込まれ」による災害
機械(食品加工用機械、ロール機、コンベア等)及びその一部(機械の駆動部、ベルト、ギア等)にはさまれる、あるいは巻き込まれる災害が全体の約9割を占めている。
これら機械による災害について、作業別にみると、機械の清掃作業中の災害が約3割、機械に付着した生地や包装紙等を除去する作業中の災害が3割弱、機械の修理・調整中の災害が約2割と、いわゆる「非定常作業」における災害が全体の約8割を占めている。
災害の要因としては、機械を止めないまま点検、修理、清掃等を行って被災した災害が約6割を占めている。その他、機械の誤操作により被災した災害、機械のガードがない状態(ガードを外した状態を含む)で作業を行って被災した災害がそれぞれ約1割みられた。
機械以外の「はさまれ、巻き込まれ」災害は全体の約1割であるが、そのほとんどは荷の運搬に際しての災害(人力運搬機(台車、ハンドパレットなど)にはさまれる等)であった。
(2) 「転倒」による災害
全体の約4割が床や地面で滑って転倒した災害、障害物によりつまずいた災害が全体の約3割弱となっている。滑って転倒した災害の原因として、約半数が床や地面が濡れていたことによるもの、2割弱が床や地面が凍結していたことによるものとなっている。
床の濡れや、床に置いた障害物などによる災害について、災害の概要を確認したところ、少なくとも約3割は4S(整理、整頓、清掃、清潔)を徹底していれば防止できたものと考えられる。
(3) 「高温・低温の物との接触」による災害
熱湯により被災した災害が全体の約4割5分。熱湯以外では、熱した材料により被災した災害が全体の約1割弱となっているほか、蒸気により被災したもの、冷凍庫における作業中の凍傷などもみられた。
作業内容でみると、清掃、消毒、材料の湯せんなどにおける災害が多数を占めている。また、それほど数は多くないが、材料内に器具等を落としてしまい、これを拾おうとして被災したものもみられた。
これらの災害において、耐熱手袋や長靴、長いエプロンなどを着用していれば防止できたと考えられるものは全体の約2割弱であった。
2 分析結果を踏まえた留意点
(1) 「はさまれ、巻き込まれ」による災害
ア 機械の点検、掃除、修理等、非定常作業を行う場合には、機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。
イ 機械に生地や包装紙等が付着したような場合に、これを除去する作業(以下「除去等作業」という。)は、通常の作業中に発生するケースもあり、特にそういうケースにおいては機械を止めずに作業を行ってしまいがちである。しかしながら、本来、除去等作業は機械を止めてから行うべき作業であるため、機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。
(2) 「転倒」による災害
4S(整理、整頓、清掃、清潔)の徹底により、床面の濡れや通路に置いた荷物等、転倒災害につながるリスクを極力排除・低減すること。
(3) 「高温・低温の物との接触」による災害
ア 作業に当たっては十分な耐熱性能を有する手袋、長靴、エプロン等、身体を保護できるものを着用することが望ましいこと。
イ 熱した原材料、生地等を直接触れるような行為は避けること。
(4) その他
現在行っている作業についてのリスクアセスメントを実施すること。特に、機械を使用する作業について、使用する機械等のリスクアセスメントを実施し、その作業におけるリスクを特定し災害防止対策を講じること。
(参考)