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通達:除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドラインの改正等について

 

除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドラインの改正等について

平成24年6月15日基発0615第6号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

最終改正 令和5年4月27日基発0427第6号

 

厚生労働省では、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質に係る土壌等の除染等の業務又は廃棄物収集等業務に従事する労働者の放射線障害を防止するため、「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」(平成23年厚生労働省令第152号。以下「除染電離則」という。)等を平成24年1月1日から施行するとともに、除染電離則と相まって、除染電離則に規定された事項のほか、関係事業者が実施する事項及び労働安全衛生関係法令において規定されている事項のうち、重要なものを一体的に示した「除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(平成23年12月22日付け基発1222第6号。以下「除染ガイドライン」という。)を定めたところである。

今般、避難区域の区分の見直しに伴い、土壌の除染等の業務又は廃棄物収集等業務以外の生活基盤の復旧、復興作業等が順次開始される見込みとなっており、これら業務に従事する労働者の放射線による健康障害を防止するための措置を規定するため、「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則等の一部を改正する省令」(平成24年厚生労働省令第94号)等が本日公布され、平成24年7月1日より施行される。

これに併せ、土壌の除染等の業務、廃棄物収集等業務又は特定汚染土壌等取扱業務(以下「除染等業務」という。)若しくは特定線量下業務における放射線障害防止対策のより一層的確な推進を図るため、除染ガイドラインを別添1のとおり改正するとともに、別添2のとおり、新たに「特定線量下業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(以下「特定線量ガイドライン」という。)を定めたところである。これらガイドラインは、労働者の放射線障害防止を目的とするものであるが、同時に、住民、ボランティア等が活用できることも意図している。

各労働局におかれては、下記の事項に留意の上、関係事業者を指導するとともに、都道府県及び市町村に対し周知徹底を図り、除染等業務及び特定線量下業務における放射線障害防止対策の一層的確な推進を図られたい。

なお、環境省水・大気環境局長、農林水産省農林水産技術会議事務局長、復興庁統括官及び内閣府原子力災害対策本部原子力被災者生活支援チーム事務局長補佐に対して別添3のとおり、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉及び千葉の各県知事に対して別添4のとおり、関係事業者団体に対して別添5のとおり要請したので、了知されたい。

 

1 「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出さ れた放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号)第25条第1項に 規定する除染特別地域又は同法第32条第1項に規定する汚染状況重点調査地域(以下「除染特別地域等」 という。)内における土壌の除染等の業務、汚染廃棄物等の収集等の業務、特定汚染土壌等取扱業務(以 下「除染等業務」という。)を行う事業の事業者(以下「除染等事業者」という。)については、除染電離 則に規定された事項のほか、除染ガイドラインに定める事項の実施について指導を行うこと。

2 除染等事業者以外の事業者で自らの敷地や施設等において除染等の作業を行う事業者又は除染特別地 域等でない場所で除染等の作業を行う事業者については、除染ガイドラインに定める事項のうち必要なも のの実施について指導を行うこと。

3 除染特別地域等において、特定線量下業務を行う事業の事業者については、除染電離則に規定された 事項のほか、特定線量ガイドラインに定める事項の実施について指導を行うこと。

4 除染特別地域等における生活基盤の点検、整備等の作業における放射線障害防止についても、除染電 離則、除染ガイドライン及び特定線量ガイドラインに定めるところによることとするので、本通知により、 「除染特別地域における重要な生活基盤の点検、整備に従事する労働者の放射線障害防止措置について」 (平成24年2月14日付け基安発第0214第1号)を平成24年7月1日をもって廃止すること。

5 都道府県や除染等業務の発注者等である市町村に対しては、管内状況に応じて、除染電離則及びこの ガイドラインの内容について説明を行う等により、周知徹底を図ること。

6 除染電離則が適用されない除染等の作業を行う自営業者、住民、ボランティア等(以下「ボランティア 等」という。)についても、このガイドラインに定める事項のうち必要なものの実施が望ましいことから、 ボランティア等から相談等があった場合には、このガイドラインについて教示すること。

 

別添1<編注:標題をクリックして表示>

除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン

平成23年12月22日基発1222第6号

最終改正 令和4年1月31日基発0131第9号

 

別添2

特定線量下業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン

第1 趣旨

平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質により平均空間線量率が2.5μSv/hを超える場所で除染等業務以外の業務に従事する労働者の放射線による健康障害を防止するため、「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」(平成23年厚生労働省令第152号。以下「除染電離則」という。)に特定線量下業務に係る内容を規定するとともに、本ガイドラインを定めるものである。

このガイドラインは、除染電離則と相まって、復旧・復興作業における放射線障害防止のより一層的確な推進を図るため、除染電離則に規定された事項のほか、事業者が実施する事項及び従来の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)及び関係法令において規定されている事項のうち、重要なものを一体的に示すことを目的とするものである。

なお、このガイドラインは、労働者の放射線障害防止を目的とするものであるが、同時に、自営業、個人事業者、ボランティア等に対しても活用できることを意図している。

事業者は、本ガイドラインに記載された事項を的確に実施することに加え、より現場の実態に即した放射線障害防止対策を講ずるよう努めるものとする。

 

第2 適用等

1 このガイドラインは、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号)第25条第1項に規定する除染特別地域又は同法第32条第1項に規定する汚染状況重点調査地域(以下「除染特別地域等」という。別紙1参照)において、原発事故により放出された放射性物質(電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号。以下「電離則」という。)第2条第2項の放射性物質に限る。以下「事故由来放射性物質」という。)により平均空間線量率が2.5μSv/hを超える場所で行う除染等業務以外の業務(以下「特定線量下業務」という。)を行う事業の事業者(以下「特定線量事業者」という。)を対象とすること。適用に当たっては、次に掲げる事項に留意すること。

なお、東電福島第一原発の周辺海域での潜水作業等はこのガイドラインの対象とはしないが、潜水作業等を行う事業者は、潜水作業等の従事者に対し、外部被ばく線量の測定及びその結果の記録等の措置を実施すること。

(1) 「除染等業務」とは、土壌等の除染等の業務、廃棄物収集等業務又は特定汚染土壌等取扱業務をいうこと。除染等業務を行う場合は、除染電離則の関係規定及び除染等業務ガイドラインが適用されること。

(2) 「特定線量下業務」についての留意事項

ア 製造業等屋内作業については、屋内作業場所の平均空間線量率が2.5μSv/h以下の場合は、屋外の平均空間線量率が2.5μSv/hを超えていても特定線量下業務には該当しないこと。

イ 自動車運転作業及びそれに付帯する荷役作業等については、①荷の搬出又は搬入先(生活基盤の復旧作業に付随するものを除く。)が平均空間線量率2.5μSv/hを超える場所にあり、2.5μSv/hを超える場所に1月あたり40時間以上滞在することが見込まれる作業に従事する場合、又は②2.5μSv/hを超える場所における生活基盤の復旧作業に付随する荷(建設機械、建設資材、土壌、砂利等)の運搬の作業に従事する場合に限り、特定線量下業務に該当するものとすること。

なお、平均空間線量率2.5μSv/hを超える地域を単に通過する場合については、滞在時間が限られることから、特定線量下業務には該当しないこと。

ウ エックス線装置等の管理された放射線源により2.5μSv/hを超えるおそれのある場所については、「特定線量下業務」が事故由来放射性物質により2.5μSv/hを超える場所における業務に限られることから、引き続き電離則第3条第1項の管理区域として取り扱うこと。

2 自営業、個人事業者、ボランティア等は、第3「被ばく線量管理の対象及び方法」、第4「被ばく低減のための措置」、第5「労働者に対する教育」等のうち、必要な事項を実施することが望ましいこと。

 

第3 被ばく線量管理の対象及び方法

1 基本原則

(1) 特定線量事業者は、特定線量下業務に従事する労働者(以下「特定線量下業務従事者」という。)又はその他の労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めること。

(2) 特定線量下業務を実施する際には、特定線量下業務従事者の被ばく低減を優先し、あらかじめ、作業場所における除染等の措置が実施されるように努めること。

ア (1)は、国際放射線防護委員会(ICRP)の最適化の原則に基づき、事業者は、作業を実施する際、被ばくを合理的に達成できる限り低く保つべきであることを述べたものであること。

イ (2)については、ICRPで定める正当化の原則から、一定以上の被ばくが見込まれる作業については、被ばくによるデメリットを上回る公益性や必要性が求められることに基づき、特定線量業務従事者の被ばく低減を優先して、作業を実施する前にあらかじめ、除染等の措置を実施するよう努力する必要があること。

ウ 製造業、商業等の事業を行う事業者は、あらかじめ、作業場所周辺の除染等の措置を実施し、可能な限り線量低減を図った上で、原則として、被ばく線量管理を行う必要がない平均空間線量率(2.5μSv/h以下)のもとで作業に就かせることが求められること。

なお、原子力災害対策本部が製造業等の再開を管理する平均空間線量率が3.8μSv/h以下の地域では、屋内の空間線量率は建物の遮へい効果によりその約4割の約1.5μSv/h以下であると想定されることから、作業開始前に除染等の措置を適切に実施すれば、製造業等の屋内作業が特定線量下業務に該当することはないと見込まれること。

2 線量の測定

(1) 特定線量事業者は、作業場所の平均空間線量率が2.5μSv/hを超える場所において労働者を特定線量下業務に就かせる場合は、個人線量計により外部被ばく線量を測定すること。

(2) 特定線量事業者は、特定線量下業務の一部を請負人に請け負わせるときは、当該請負人に対し、個人線量計により外部被ばく線量を測定する必要がある旨を周知させること。ただし、特定線量事業者が請負人やその請負人の労働者等の特定線量下業務に係る作業により受ける外部被ばく線量を測定する場合については、周知を重ねて行う必要はないこと。

(3) 自営業者、個人事業者については、被ばく線量管理等を実施することが困難であることから、あらかじめ除染等の措置を適切に実施する等により、特定線量下業務に該当する作業に就かないことが望ましいこと。

ア やむをえず、特定線量下業務を行う個人事業主、自営業者については、特定線量下業務を行う事業者とみなして、このガイドラインを適用すること。

イ ボランティアについては、作業による実効線量が1mSv/年を超えることのないよう、作業場所の平均空間線量率が2.5μSv/h(週40時間、52週換算で、5mSv/年相当)以下の場所であって、かつ、年間数十回(日)の範囲内で作業を行わせること。

3 被ばく線量限度

(1) 特定線量事業者は、2の(1)で測定された労働者の受ける実効線量の合計が、次のアからウまでに掲げる限度を超えないようにすること。

ア 男性及び妊娠する可能性がないと診断された女性は、5年間につき100mSv、かつ、1年間に50mSv

イ 女性(妊娠する可能性がないと診断されたもの及びウのものを除く。)は、3月間につき5mSv

ウ 妊娠と診断された女性は、妊娠中に腹部表面に受ける等価線量が2mSv

(2) 特定線量事業者は、電離則第3条で定める管理区域内において放射線業務に従事した労働者、除染等業務に従事した労働者を特定線量下業務に就かせるときは、当該労働者が放射線業務又は除染等業務で受けた実効線量と2の(1)により測定された実効線量の合計が(1)の限度を超えないようにすること。

(3) 特定線量事業者は、特定線量下業務の一部を請負人に請け負わせるときは、当該請負人に対し、特定線量下業務に従事する者の受ける実効線量が(1)の限度を超えないようにする必要があることを周知させること。

(4) 特定線量事業者は、(3)の内容を請負人に周知させるときは、当該請負人に対し、特定線量下業務に従事する者が電離則第3条で定める管理区域内において放射線業務に従事した場合又は除染等業務に従事した場合には、これらの業務に従事した際に受けた実効線量と2の(1)により測定された実効線量の合計が(1)の限度を超えないようにする必要がある旨も併せて周知させること。

(5) 特定線量事業者は、(1)及び(2)に規定する被ばく線量管理を行うため、特定線量下業務従事者に対し、雇い入れ又は特定線量下業務への配置換えの際、被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期間その他放射線による被ばくに関する事項)を当該労働者が前の事業者から交付された線量の記録(労働者がこれを有していない場合は前の事業場から再交付を受けさせること。)により調査すること。

(6) (1)のアの「5年間」については、異なる複数の事業場において特定線量下業務に従事する労働者の被ばく線量管理を適切に行うため、全ての特定線量下業務を事業として行う事業場において統一的に平成24年1月1日を始期とする5年ごとに区分した期間とすること。当該5年間の間に新たに特定線量下業務を事業として実施する事業者についても同様とし、この場合、事業を開始した日から当該5年間の末日までの残り年数に20mSvを乗じた値を、当該5年間の末日までの被ばく線量限度とみなして関係規定を適用すること。(1)のアの「1年間」については、「5年間」の始期の日を始期とする1年ごとに区分した期間とすること。

(7) 平成24年1月1日から平成24年6月30日までに受けた線量を把握している場合は、それを平成24年7月1日以降に被ばくした線量に合算して被ばく管理すること。

(8) 特定線量事業者は、「1年間」又は「5年間」の途中に新たに自らの事業場において特定線量下業務に従事することとなった労働者について、特定線量下業務の開始前に、当該「1年間」又は「5年間」の始期より当該特定線量下業務に従事するまでの被ばく線量を当該労働者が前の事業者から交付された線量の記録(労働者がこれを有していない場合は前の事業場から再交付を受けさせること。)により確認すること。

(9) (6)及び(7)の規定に関わらず、放射線業務を主として行う事業者については、事業場で統一された別の始期により被ばく線量管理を行っても差し支えないこと。

(10) 特定線量事業者は、始期を特定線量下業務従事者に周知させること。

4 線量の測定結果の記録等

(1) 特定線量事業者は、2の測定又は計算の結果に基づき、次に掲げる特定線量下業務従事者の被ばく線量を算定し、これを記録し、これを30年間保存すること。また、3の(3)の調査の結果についても同様とすること。ただし、当該記録を5年間保存した後又は当該特定線量下業務従事者が離職した後に、当該特定線量下業務従事者に係る記録を厚生労働大臣が指定する機関(公益財団法人放射線影響協会)に引き渡すときはこの限りではないこと。この場合、記録の様式の例として、様式1があること。

なお、特定線量下業務従事者のうち電離則第4条第1項の放射線業務従事者であった者、除染特別地域等において除染等業務に従事する労働者であった者については、当該従事者が放射線業務又は除染等業務に従事する際に受けた線量を特定線量下業務で受ける線量に合算して記録し、保存すること。

ア 男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性の実効線量の3月ごと、1年ごと、及び5年ごとの合計(5年間において、実効線量が1年間につき20mSvを超えたことのない者にあっては、3月ごと及び1年ごとの合計)

イ 医学的に妊娠可能な女性の実効線量の1月ごと、3月ごと及び1年ごとの合計(1月間受ける実効線量が1.7mSvを超えるおそれのないものにあっては、3月ごと及び1年ごとの合計)

ウ 妊娠中の女性の腹部表面に受ける等価線量の1月ごと及び妊娠中の合計

(2) 特定線量事業者は、(1)の記録を、遅滞なく特定線量下業務従事者に通知すること。

(3) 特定線量事業者は、その事業を廃止しようとするときには、(1)の記録を厚生労働大臣が指定する機関(公益財団法人放射線影響協会)に引き渡すこと。

(4) 特定線量事業者は、特定線量下業務従事者が離職するとき又は事業を廃止しようとするときには、(1)の記録の写しを特定線量下業務従事者に交付すること。

(5) 特定線量事業者は、有期契約労働者又は派遣労働者を使用する場合、被ばく線量線管理を適切に行うため、以下の事項に留意すること。

ア 3月未満の期間を定めた労働契約又は派遣契約による労働者を使用する場合には、被ばく線量の算定は、1月ごとに行い、記録すること。

イ 契約期間の満了時には、当該契約期間中に受けた実効線量を合計して被ばく線量を算定して記録し、その記録の写しを当該特定線量下業務従事者に交付すること。

 

第4 被ばく低減のための措置

1 事前調査等

(1) 特定線量事業者は、特定線量下業務を行うときに、作業場所について、当該作業の開始前及び同一の場所で継続して作業を行っている間2週間につき一度、作業場所における平均空間線量率(μSv/h)を調査し、その結果を記録すること。

ただし、測定結果が、平均空間線量率2.5μSv/hを安定的に下回った場合は、それ以降の測定を行う必要はないこと。

(2) 平均空間線量率の測定・評価の方法は別紙2によること。なお、事前調査は、作業場所が2.5μSv/hを超えて被ばく線量管理が必要か否かを判断するために行われるものであるため、原子力規制委員会が公表している航空機モニタリング等の結果を踏まえ、事業者が、作業場所が2.5μSv/hを超えていると判断する場合は、個別の作業場所での航空機モニタリング等の結果をもって平均空間線量率の測定に代えることができるものであるとともに、作業の対象となる場所での平均空間線量率が2.5μSv/hを明らかに下回り、特定線量下業務に該当しないことを明確に判断できる場合にまで、測定を求める趣旨ではないこと。

(3) 特定線量事業者は、あらかじめ、(1)又は(2)の調査が終了した年月日、調査方法及びその結果の概要を特定線量下業務従事者(特定線量下業務の一部を請負人に請け負わせたときは、当該特定線量下業務従事者及び当該請負人)に書面の交付等により明示すること。

2 医師による診察等

(1) 特定線量事業者は、特定線量下業務従事者が次のいずれかに該当する場合、速やかに医師の診察又は処置を受けさせること。

ア 被ばく線量限度を超えて実効線量を受けた場合

イ 事故由来放射性物質を誤って吸入摂取し、又は経口摂取した場合

ウ 事故由来放射性物質により汚染された後、洗身等によっても汚染を40Bq/cm2以下にすることができない場合

エ 傷創部が事故由来放射性物質により汚染された場合

(2) (1)イについては、事故等で大量の土砂等に埋まった場合で鼻スミアテスト等を実施してその基準を超えた場合、大量の土砂や汚染水が口に入った場合等、一定程度の内部被ばくが見込まれるものに限るものであること。

(3) 特定線量事業者は、特定線量下業務の一部を請負人に請け負わせる場合においては、当該請負人に対し、特定線量下業務に従事する者が(1)のアからエまでのいずれかに該当する場合、速やかに医師の診察又は処置を受ける必要がある旨を周知させること。

 

第5 労働者に対する教育

1 特定線量下業務従事者に対する特別の教育

(1) 特定線量事業者は、特定線量下業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、次の科目について、学科による特別の教育を行う。

ア 電離放射線の生体に与える影響及び被ばく線量の管理の方法に関する知識

イ 放射線測定の方法等に関する知識

ウ 関係法令

(2) その他、特別教育の実施の詳細については、別紙3によること。

2 その他必要な者に対する教育等

(1) 自営業者、個人事業者等、雇用されていない者に対しても同様の教育を行うことが望ましいこと。

(2) 特定線量下業務の発注者は、教育を受けた労働者を、作業開始までに業務の遂行上必要な人数を確保できる体制が整っていることを確認した上で発注を行うことが望ましいこと。

 

第6 健康管理のための措置

1 健康診断

(1) 特定線量事業者(派遣労働者に対する健康診断にあっては、派遣元事業者。以下同じ。)は、常時使用する特定線量下業務従事者に対し、雇入れ時及びその後1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行うこと。

ア 既往歴及び業務歴の調査

イ 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

ウ 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

エ 胸部エックス線検査及び喀痰検査(雇入れ時については、胸部エックス線検査を行えば足りる。)

オ 血圧の測定

カ 貧血検査

キ 肝機能検査

ク 血中脂質検査

ケ 血糖検査

コ 尿検査

サ 心電図検査

(2) (1)の健康診断(定期のものに限る)は、ウ、エ、カからケ及びサに掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、当該項目の全部又は一部を省略することができること。

(3) (1)のウの聴力検査(定期の健康診断におけるものに限る。)は、45歳未満の者(35歳及び40歳の者を除く。)については、医師が適当と認める聴力(1,000Hz又は4,000Hzの音に係る聴力を除く。)の検査をもって代えることができること。

(4) 特定線量事業者は、(1)の健康診断の結果に基づき、個人票を作成し、これを5年間保存すること。

2 健康診断の結果についての事後措置等

(1) 特定線量事業者は、1の健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づく医師からの意見聴取を、次に定めるところにより行うこと。

ア 健康診断が行われた日から3月以内に行うこと

イ 聴取した医師の意見を個人票に記載すること。

(2) 特定線量事業者は、1の健康診断を受けた特定線量下業務従事者に対し、遅滞なく、健康診断の結果を通知すること。

(3) 特定線量事業者は、1の健康診断の結果、放射線による障害が生じており、若しくはその疑いがあり、又は放射線による障害が生ずるおそれがあると認められる者については、その障害、疑い又はおそれがなくなるまで、就業する場所又は業務の転換、被ばく時間の短縮、作業方法の変更等健康の保持に必要な措置を講ずること。

 

第7 安全衛生管理体制等

1 元方事業者による被ばく状況の一元管理

特定線量下業務を行う元方事業者は、放射線管理者を選任し、次の事項を含む、関係請負人の労働者の被ばく管理も含めた一元管理を実施させること。なお、放射線管理者は、放射線関係の国家資格保持者又は専門教育機関等による放射線管理に関する講習等の受講者から選任することが望ましいこと。

(1) 労働者の過去の累積被ばく線量の適切な把握、被ばく線量記録等の散逸の防止を図るため、「除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度」に参加すること。

(2) 関係請負人による第7の3に定める措置が適切に実施されるよう、必要な指導・援助を実施すること。

2 事業者における安全衛生管理体制

(1) 特定線量事業者は、事業場の規模に応じ、衛生管理者又は安全衛生推進者(労働安全衛生法第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場においては衛生推進者。以下同じ。)を選任し、線量の測定及び結果の記録等の措置に関する技術的事項を管理させること。

なお、労働者数が10人未満の事業場にあっても、安全衛生推進者の選任が望ましいこと。

(2) 特定線量事業者は、事業場の規模に関わらず、放射線管理担当者を選任し、線量の測定及び結果の記録等の業務に関する業務を行わせること。

3 東電福島第一原発緊急作業従事者対する健康保持増進の措置等

特定線量事業者は、東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業に従事した労働者を特定線量下業務に就かせる場合は、次に掲げる事項を実施すること。

(1) 電離則第59条の2に基づき、3月ごとの月の末日に、「指定緊急作業従事者等に係る線量等管理実施状況報告書」(電離則様式第3号)を厚生労働大臣(厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課電離放射線労働者健康対策室あて)に提出すること。なお、提出に当たっては、原則としてCSVによる電磁的記録により行うこと。

(2) 「原子力施設等における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針」(平成27年8月31日健康保持増進のための指針公示第6号)に基づき、保健指導等を実施するとともに、緊急作業従事期間中に50mSvを超える被ばくをした者に対して、必要な検査等を実施すること。

 

別紙1 除染特別地域等の一覧

1 除染特別地域

・指定対象

旧警戒区域又は計画的避難区域の対象区域等

 

市町村数

指定地域

福島県

11

楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村及び飯舘村。並びに南相馬市、川俣町、川内村で警戒区域又は計画的避難区域であった地域

2 汚染状況重点調査地域

・指定対象

放射線量が0.23μSv/h以上の地域等

 

市町村数

指定地域

岩手県

3

一関市、奥州市及び平泉町の全域

宮城県

7

白石市、角田市、栗原市、七ヶ宿町、大河原町、丸森町、山元町の全域

福島県

31

いわき市、伊達市、西郷村、棚倉町、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、広野町及び新地町の全域並びに南相馬市、川俣町及び川内村で警戒区域又は計画的避難区域であった地域を除く区域

茨城県

19

日立市、土浦市、龍ケ崎市、常総市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、取手市、牛久市、つくば市、ひたちなか市、鹿嶋市、守谷市、稲敷市、つくばみらい市、東海村、美浦村、阿見町及び利根町の全域

栃木県

7

鹿沼市、日光市、大田原市、矢板市、那須塩原市、塩谷町及び那須町の全域

群馬県

8

桐生市、沼田市、渋川市、みどり市、下仁田町、高山村、東吾妻町及び川場村の全域

埼玉県

2

三郷市及び吉川市の全域

千葉県

9

松戸市、野田市、佐倉市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市、印西市及び白井市の全域

86

 

※環境省環境再生・資源循環局環境再生事業担当参事官室作成(令和5年3月)

 

別紙2 平均空間線量率の測定・評価の方法

1 目的

平均空間線量率の測定・評価は、事業者が、特定線量下業務に労働者を従事させる際、作業場所の平均空間線量が2.5μSv/hを超えるかどうかを測定・評価し、実施する線量管理の内容を判断するために実施するものであること。

2 基本的考え方

(1) 作業の開始前にあらかじめ測定を実施すること

(2) 同じ場所で作業を継続する場合は、2週間につき1度、測定を実施すること。なお、測定値2.5μSv/hを下回った場合でも、天候等による測定値の変動がありえるため、測定値2.5μSv/hのおよそ9割(2.2μSv/h)を下回るまで、測定を継続する必要があること。また、台風や洪水、地滑り等、周辺環境に大きな変化があった場合も、測定を実施すること。

(3) 労働者の被ばくの実態を適切に反映できる測定とすること。

(4) 作業開始前の測定は、原子力規制委員会が公表している放射線モニタリング情報等から、作業の対象となる場所での平均空間線量率が2.5μSv/hを明らかに下回り、特定線量下業務に該当しないことを明確に判断できる場合にまで、測定を求める趣旨ではないこと。

3 平均空間線量率の測定・評価について

(1) 共通事項

ア 空間線量率の測定は、地上1mの高さで行うこと

イ 測定器等については、作業環境測定基準第8条によること

(2) 測定方法

業務を実施する作業場の区域(当該作業場の面積が1,000m2を超えるときは、当該作業場を1,000m2以下の区域に区分したそれぞれの区域をいう。)の中で、最も線量が高いと見込まれる点の空間線量率を少なくとも3点測定し、測定結果の平均を平均空間線量率とすること。

 

別紙3 労働者に対する特別教育

特定線量下業務に従事する労働者に対する特別の教育は、学科教育により行うこと。

学科教育は、次の表の左欄に掲げる科目に応じ、それぞれ、中欄に定める範囲について、右欄に定める時間以上実施すること。

科目

範囲

時間

電離放射線の生体に与える影響及び被ばく線量の管理の方法に関する知識

① 電離放射線の種類及び性質

② 電離放射線が生体の細胞、組織、器官及び全身に与える影響

③ 被ばく限度及び被ばく線量測定の方法

④ 被ばく線量測定の結果の確認及び記録等の方法

1時間

放射線測定等の方法に関する知識

① 放射線測定の方法

② 外部放射線による線量当量率の監視の方法

③ 異常な事態が発生した場合における応急の措置の方法

30分

関係法令

労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則及び除染電離則中の関係条項

1時間

 

別添3

○除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドラインの改正等について

平成24年6月15日基発0615第3号

(環境省水・大気環境局長・農林水産省農林水産技術会議事務局長・復興庁統括官・内閣府原子力災害対策本部・原子力被災者生活支援チーム事務局長補佐あて厚生労働省労働基準局長通知)

労働安全衛生行政の運営につきましては、平素より格段の御理解、御協力をいただきお礼申し上げます。

さて、厚生労働省では、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質に係る土壌等の除染等の業務又は廃棄物収集等業務に従事する労働者の放射線障害を防止するため、「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」(平成23年厚生労働省令第152号。以下「除染電離則」という。)等を平成24年1月1日から施行するとともに、「除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(平成23年12月22日付け基発1222第6号。以下「除染ガイドライン」という。)を定めたところです。

今般、避難区域の区分の見直しに伴い、土壌の除染等の業務又は廃棄物収集等業務以外の生活基盤の復旧、復興作業等が順次開始される見込みとなっており、これら業務に従事する労働者の放射線による健康障害を防止するための措置を規定するため、「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則等の一部を改正する省令」(平成24年厚生労働省令第94号)等が本日公布され、平成24年7月1日より施行されます。

これに併せ、土壌の除染等の業務、廃棄物収集等業務又は特定汚染土壌等取扱業務(以下「除染等業務」という。)若しくは特定線量下業務における放射線障害防止対策のより一層的確な推進を図るため、除染ガイドラインを別添1のとおり改正するとともに、別添2のとおり、新たに「特定線量下業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」を定めたところです。

つきましては、貴職におかれても、このガイドラインの趣旨を御理解の上、関係事業者の他、除染電離則が適用されない除染等の作業や特定線量下での作業を行う自営業者、住民、ボランティア等に対し周知等をお願い申し上げます。

別添1「除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」

別添2「特定線量下業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」

 

別添4

○除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドラインの改正等について

平成24年6月15日基発0615第4号

(岩手・宮城・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉県知事あて厚生労働省労働基準局長通知)

<編注:以下別添3と同旨のため略>

 

別添5

○除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドラインの改正等について

平成24年6月15日基発0615第5号

(別記の関係事業者団体の長あて厚生労働省労働基準局長通知)

<編注:以下別添3と同旨のため略>

別記

中央労働災害防止協会

建設業労働災害防止協会

陸上貨物運送事業労働災害防止協会

港湾貨物運送事業労働災害防止協会

林業・木材製造業労働災害防止協会

一般社団法人全国建設業協会

社団法人日本建設業連合会

公益社団法人全国産業廃棄物連合会

全国森林組合連合会

全国農業協同組合中央会

公益社団法人全日本トラック協会