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平成二十三年東北地方太平洋沖地震に起因して生じた事態に対応するための電離放射線障害防止規則の特例に関する省令を廃止する等の省令等の施行について
平成23年12月16日基発1216第1号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
平成二十三年東北地方太平洋沖地震に起因して生じた事態に対応するための電離放射線障害防止規則の特例に関する省令を廃止する等の省令(平成23年厚生労働省令第147号。以下「廃止省令」という。)については、本日公布、施行されたところである。
廃止省令による廃止前の平成二十三年東北地方太平洋沖地震に起因して生じた事態に対応するための電離放射線障害防止規則の特例に関する省令(平成23年厚生労働省令第23号。平成23年厚生労働省令第133号により一部改正。以下「特例省令」という。)においては、平成23年3月14日以降に東京電力福島第一原子力発電所(以下「東電福島第一原発」という。)における特にやむを得ない緊急の場合(同年11月1日以降は、特にやむを得ない緊急の場合で厚生労働大臣が定める場合)にのみ、電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号。以下「電離則」という。)第7条で定める緊急作業時の被ばく限度を特例として250ミリシーベルトとしていたが、この特例を廃止し、緊急作業時における被ばく限度を本来の100ミリシーベルトに引き下げるものである。
併せて、特例省令で250ミリシーベルトが適用される場合を定めた厚生労働省告示第425号(平成23年11月1日)も廃止される。
廃止省令の施行に当たっては、下記に示す趣旨を十分に理解し、その運用に遺漏なきを期されたい。
記
第1 廃止省令の概要
1 趣旨
特例省令は、東電福島第一原発の事故により、国民の生命・身体等が脅かされる事態が生じた中で、被害の拡大を防ぎ、国民の生命等を守るという利益と、事態の収拾に当たる作業員の生命・健康を守るという利益のバランスを考慮し、当時得られた情報に照らし、必要最小限の被ばく限度の引き上げを行うべく制定されたものである。
このため、国民の生命等への被害の拡大の防止のため、通常以上の被ばくがやむを得ない即時かつ緊急に実施すべき作業が必要なくなった段階で、特例省令を廃止し、電離則に規定する被ばく限度を適用すべきものである。
厚生労働省としては、この趣旨に鑑み、緊急作業期間中にあっても、東電福一原発における応急の作業の進捗により、原子力災害の拡大(敷地外への異常な放射性物質の放出)を防止するための作業が限定されてきたことから、平成23年11月1日に、特例省令の一部を改正(平成23年厚生労働省令133号)し、緊急作業時の被ばく限度を250ミリシーベルトと適用する作業を限定するための改正を行ったところである。
さらに、本日、「東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋 当面のロードマップ(改訂版)」(平成23年10月17日原子力災害対策本部政府・東京電力統合対策室)において示されている原子炉が安定的な冷温停止状態を達成するための工程であるステップ2が完了したため、特例省令を廃止するものである。
2 概要
(1) 東電福島第一原発における緊急作業時の被ばく限度を250ミリシーベルトとしていた特例を廃止し、本来の100ミリシーベルトに引き下げること。
(2) 経過措置として、特例省令の適用を受けた放射線業務従事者であって、廃止省令の施行の日において当該緊急作業に従事する間に受けた実効線量が100ミリシーベルトを超えるもののうち、当該緊急作業に欠くことのできない高度の専門的な知識及び経験を有するもので、後任者を容易に得ることができないものについては、平成24年4月30日までの間は、特例省令の規定は、なおその効力を有すること。
この場合において、特例省令の規定中「特にやむを得ない緊急の場合で厚生労働大臣が定める場合」とあるのは「特にやむを得ない緊急の場合であって、東京電力株式会社福島第一原子力発電所に属する原子炉施設並びに蒸気タービン及びその附属設備又はその周辺の区域であって、その線量が一時間につき〇・一ミリシーベルトを超えるおそれのある場所において、原子炉施設若しくは使用済燃料貯蔵槽を冷却する設備の機能を維持するための作業を行うとき又は原子炉施設の故障、損壊等により、多量の放射性物質の放出のおそれがある場合に、これを抑制若しくは防止するための機能を維持するための作業を行うとき」とすること。
第2 細部事項
1 経過措置について
(1) 平成24年4月30日までの間、廃止省令附則第2条による経過措置を受ける者については、厚生労働省において、当該緊急作業に欠くことのできない高度の専門的な知識及び経験を有するもので、後任者を容易に得ることができない者であることを個別に確認した東京電力株式会社の社員約50人に限られるものであること。また、本経過措置は、当該者の被ばく限度までの無制限な被ばくを許容する趣旨ではなく、事業者において、当該者の被ばく低減のため、最大限の措置を講ずべきものであることに留意すること。
(2) 廃止省令附則第2条の「原子炉施設若しくは使用済燃料貯蔵槽を冷却する設備の機能を維持するための作業」については、具体的には次の作業が想定されること。
注水による冷却機能が、配管からの漏水、配管の詰まり、ポンプの故障、制御弁の故障により著しく低下又は失われることを防ぐため、その機能を維持するための設備の運転、保守、修理、取替又は機器の追加等の作業
(3) 廃止省令附則第2条の「原子炉施設の故障、損壊等により、多量の放射性物質の放出のおそれがある場合に、これを抑制若しくは防止するための機能を維持するための作業」については、具体的には次の作業が想定されること。
ア 汚染水処理機能が、配管、弁等からの漏水、配管等の詰まり、ポンプの故障、制御弁の故障等により著しく低下又は失われることを防止するため、その機能を維持するための設備の運転、保守、修理、取替又は機器の追加等の作業
イ 汚染水や放射性物質が海洋、地下水、大気又は土壌に漏出することを防止する機能が、海水循環浄化装置の故障、遮水壁の損傷、汚染物質保管コンテナの損傷等により著しく低下又は失わることを防止するため、その機能を維持するための設備の運転、保守、修理、取替、機器の追加等の作業
ウ 水素爆発の防止のための窒素封入機能が、配管からの窒素の漏出、配管の詰まり、ポンプの故障、制御弁の故障等により著しく低下又は失われることを防止するため、その機能を維持するための設備の運転、保守、修理、取替、機器の追加等の作業
第3 その他
(1) 東京電力株式会社福島第一原子力発電所に属する原子炉施設並びに蒸気タービン及びその附属設備又はその周辺の区域であって、その線量が一時間につき0.1ミリシーベルトを超えるおそれのある場所において、原子炉施設若しくは使用済燃料貯蔵槽を冷却する設備の機能を維持するための作業を行うとき又は原子炉施設の故障、損壊等により、多量の放射性物質の放出のおそれがある場合に、これを抑制若しくは防止するための機能を維持するための作業は、電離則第42条第1項第3号に該当する事故に対応する応急の作業として、同項の区域における放射線による労働者の健康障害を防止するための応急作業(緊急作業)に該当し、電離則第7条で定める緊急作業時の被ばく限度(緊急作業期間中100ミリシーベルト)が適用されると解釈されること。
(2) (1)の作業については、具体的には、第2の1の(2)及び(3)に掲げる作業が想定されること。