img1 img1 img1

◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー  

通達:一酸化炭素による労働災害の防止について

 

一酸化炭素による労働災害の防止について

平成23年7月22日基安化発0722第2号

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

 

現在、我が国の化学物質による中毒の労働災害の発生状況をみると、一酸化炭素(以下「CO」という。)によるものが1~2割を占め、休業4日以上の被災労働者数は毎年30名以上で推移するなど、減少の傾向がみられないところである。(別紙1参照)

CO中毒の防止については、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第578条に基づく内燃機関の禁止、「建設業における一酸化炭素中毒防止のためのガイドライン」(平成10年6月1日基発第329号の1)等により措置することとされているところである。

また、本省においては、平成22年1月より同年6月まで、「職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会」が開催され、同年7月にとりまとめられたところであるが、その中においても「内燃機関、ガス機器等におけるCO中毒の防止については、換気の必要性についての教育を徹底するとともに、鉄鋼業におけるCO警報センサーの着用による災害の防止事例等を参考にして、更に一層推進すること。また、一部の特に有害な屋外作業における化学物質による中毒災害についても、換気・送気、呼吸用保護具の着用等の有効な対策の推進が必要である。」とされたところである。

さらに、経済産業省原子力安全・保安院保安課長、ガス安全課長及び液化石油ガス保安課長の要請を受けて、都道府県労働局宛て、平成23年6月21日付け「食品工場及び業務用厨房施設における液化石油ガス及び都市ガスの消費施設による一酸化炭素中毒事故の防止に関する関係団体等に対する注意喚起の実施について」を発出するなど、関係省庁が連携してCO中毒防止対策に取り組んでいるところである。

これを踏まえ、別添1により別添2の事業者団体に対し、CO中毒による労働災害防止対策の徹底を要請したところである。ついては、御了知いただくとともに、貴職におかれても関係事業者に対し以下の点を徹底する等により、COによる労働災害の防止対策の一層の徹底を図られたい。

 

[別添1]

一酸化炭素による労働災害の防止について(要請)<編注:略。通達名をクリックして表示>

平成23年7月22日基安化発0722第1号

((別添2の関係団体の長)あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

[別添2]

関係団体

(1) 労働災害防止団体

中央労働災害防止協会

建設業労働災害防止協会

(2) 経営者団体

日本経済団体連合会

日本商工会議所

全国商工会連合会

全国中小企業団体中央会

(3) 建設業関連団体

社団法人日本土木工業協会

社団法人全国建設業協会

社団法人日本建設業団体連合会

全国建設業協同組合連合会

社団法人全国中小建設業協会

社団法人建設産業専門団体連合会

全国仮設安全事業協同組合

社団法人全国解体工事業団体連合会

一般社団法人住宅リフォーム推進協議会

社団法人日本建築板金協会

社団法人日本ビルヂング協会連合会

社団法人日本エレベータ協会

全日本電気工事業工業組合連合会

社団法人日本電設工業協会

社団法人日本空調衛生工事業協会

社団法人日本左官業組合連合会

社団法人日本鳶工業連合会

日本建築仕上学会

日本建築仕上材工業会

社団法人日本ボイラ整備据付協会

(4) その他関連業界団体

社団法人日本溶接協会

社団法人日本鉄鋼連盟

社団法人日本舶用工業会

日本高圧ガス容器バルブ工業会

社団法人日本工業炉協会

日本鉱業協会

社団法人全国ビルメンテナンス協会

社団法人ボイラ・クレーン安全協会

社団法人全国建設機械器具リース業協会

社団法人住宅生産団体連合会

社団法人日本フードサービス協会

社団法人全国生活衛生同業組合中央会

社団法人全国生活衛生営業指導センター

社団法人日本保安用品協会

日本チェーンストア協会

日本呼吸用保護具工業会

 

別紙1

最近の一酸化炭素(CO)による休業4日以上の労働災害の発生状況

1 最近のCOによる労働災害の発生状況

表:一酸化炭素による休業4日以上の中毒災害件数の推移(推定を含む)

H13

H14

H15

H16

H17

H18

H19

H20

H21

H22

中毒災害

40

35

58

35

47

69

37

36

31

36

内死亡災害

5

1

5

3

7

3

2

6

3

4

注: 労働者死傷病報告による。

2 近年のCOによる中毒の特徴

(1) 狭隘な場所における内燃機関の使用により発生したCOにより被災する例が多いこと。

(2) 複数の労働者が同時に被災する災害が多発しているが、その多くが厨房の調理用の器具から発生したCOにより、調理作業員や設備工事業者が被災したものであること。(別紙1―1参照)

(3) 鉄鋼業、製鉄業等における休業4日以上のCO中毒による労働災害が平成12年以降16件発生しており、その多くがメンテナンス中の災害であること。(別紙1―2参照)

(4) 溶接作業により発生したCOによる中毒の事例が散見され、平成12年以降休業4日以上の災害が7件発生していること。(別紙1―3参照)

 

別紙1―1

複数の労働者が一酸化炭素(CO)により休業4日以上の労働災害に被災した例

(※ 休業人数は4日以上のみ)

1 調理室内のガスコンロによるCO中毒

平成22年9月(社会福祉施設:休業4名)

調理室で4人の作業者がガスコンロを使用して園児の給食の調理を行っていたところ、2人が息苦しさやめまいを訴え倒れ病院に搬送されCO中毒と診断された。残る2人についても病院で診察を受けたところCO中毒と診断された。

使用していたガスコンロの不完全燃焼が原因と推定される。

2 調理室内の炭火によるCO中毒

平成22年7月(一般飲食店:休業2名)

一般飲食店の店内において、開店準備のためホルモンを焼くための炭に火を起こす作業を行い、炭を燃焼させ続けていたところ発生したCOにより中毒を起こしたもの。

3 食器洗浄室内のLPガスの使用によるCO中毒

平成22年7月(その他の小売業:休業2名)

厨房の食器洗浄室内において、被災者3名が食器洗浄機(LPガスを用いた給湯器付き)の周囲で食器の洗浄作業を行っていたところ、動悸、目まい等を訴えて救急搬送された。災害発生の原因として、給湯器の不完全燃焼によりCOが発生し、周囲に充満したこと。が推定される。災害発生時に、給湯器の排気筒(ステンレス鋼板を曲げ、溶接加工したもの)の一部が脱落して煙道を塞ぎ、排気不良になっていた。

4 食料品製造場所のLPガスバーナーの不完全燃焼による一酸化炭素中毒

平成22年7月(その他の食料品製造業:休業3名)

LPガスを熱源とする内径64センチ、深さ32センチの練り攪拌機を使用し、玉こんにゃくのたれ製造作業中、練り攪拌機のバーナーの不完全燃焼により、3名の労働者が次々と気分が悪くなり、救急車で病院に搬送され、CO中毒と診断されたもの。

5 ブルーシート養生内の内燃機関の使用による一酸化炭素中毒

平成22年3月(建築設備工事業:休業2名)

中学校の給食用厨房排水設備改修工事現場において、コンクリート床面に排水溝を敷設するため、切削粉が飛散しないよう木材で矢倉を組んでブルーシートで覆って養生し、その内部で内燃機関を動力とする手押し式コンクリートカッターを使用して、敷設予定箇所のコンクリート床面を切削していたところ、当該カッターを操作していた労働者と手元作業員の2名がCO中毒となったもの。

6 換気扇を停止した厨房内のCO中毒

平成21年7月(その他の接客娯楽業及び派遣業:休業2名)

クッキー等の菓子製造を行う厨房(約4m×約13m×高さ約2.7m)において、換気扇を全て停止した状態でガスオーブンを使用していたところ、労働者2名が体調の不調を訴えたため、病院へ搬送された。その際、血液検査の結果一酸化炭素中毒と診断された。なお、念のため、他の労働者4名も病院で検査を受け、同様の診断を受けた(休業1日3名、不休1名)。

7 ホテルの地下に設けられた気流が還流したCO中毒

平成21年6月(旅館業、病院業及び印刷業:死亡1名、休業2名)

修学旅行の小学生、教師等80名が宿泊先のホテルに滞在していたところ、同ホテルの地下1階に設けられている給湯用に使用しているボイラの不完全燃焼により発生したと思われるCOが排気管から2、3階に漏れ、3階にいた関係者及び救助の消防隊員らが中毒をおこした。

卒業アルバム用写真撮影のため同行していたカメラマンが死亡。病院に搬送された被災者は計22名。

8 吹付け石綿の除去工事での内燃機関の使用によるCO中毒

平成20年3月(その他の建築工事業:休業6名)

吹き付け石綿の除去工事において、1階の養生した部屋の内部で除去作業を行っていたところ、1階の別の部屋に設置してあった発電機(ガソリンエンジン)の排ガスが、クリーンルームを通って、養生した部屋の内部に流れ込み、その部屋で作業を行っていた3人と発電機が設置してある部屋の上方の階にいた3人がCO中毒を発症したもの。

別紙1―2

製鉄業等における一酸化炭素(CO)により休業4日以上の労働災害に被災した例

(※ 休業人数は4日以上のみ)

1 フランジ部の隙間から漏れているコークスガスによるCO中毒

平成20年12月(製鉄・製鋼・圧延業:休業1名)

製鉄所構内において、労働者4名にて給水予熱器点検作業のため給水予熱器とコークス冷却設備の間にあるフランジ部(高さ1.3m、幅4.3m)に閉止板を挿入する作業を行っていたところ、フランジ上部から既設の通路を使用して下部へ移動する際に、送気マスクのホースの長さが足りなかったため、これを一旦はずして下部に行ったところ、フランジ部の隙間(9mm)から漏れているコークスガスを吸入しCO中毒となった。なお、他に2名が被災した。

2 排気ダクト内の点検中のCO中毒

平成20年8月(製鉄・製鋼・圧延業:休業1名)

製鋼工場において、溶湯内に含まれるガスを吸引する真空装置の真空度に不備があったため、排気ダクト内の点検を行っていた労働者が、CO中毒により被災した。また、救出を行った構内下請業者の労働者も、CO中毒により被災している。

病院に搬送されたところ、被災者の血中のCO濃度が29%であり、救出した労働者は6.6%であった。

3 施設点検作業中のCO中毒

平成20年5月(製鉄・製鋼・圧延業:休業1名)

高炉の炉頂挿入装置上部シール弁が「閉」にならない故障が発生したため、被災者は原料等の挿入コンベヤ側の点検口を開いて、内部のシール弁を確認しようとしたが確認出来なかった。そのため、点検口より当該コンベヤのヘッド側シュート内に入り、点検後に外に出ようとしたときに気分が悪くなり自力で脱出できない状態になった。

4 キュポラ内部の不完全燃焼によるCO中毒

平成18年3月(鋳物業:死亡1名)

被災者は昼から鋳鉄製品の製造作業をするための準備作業をし、鋳鉄製造のためキュポラにコークスを入れ火をつけて予熱を起こしていた。加熱する際にキュポラ内に風を送るための送風機の吸気口の前でマンガンを鉄鎚で小分けにしていたところキュポラ内のコークスが不完全燃焼を起こしCOが発生、送風機の配管を逆流し吸気口から噴出したため被災者がばく露した。

5 スクリューコンベア内のCO中毒

平成17年12月(派遣業:死亡1名)

キュポラ用集じん機において、集じんした粉じんを排出口まで搬送するスクリューコンベアが故障したため、派遣労働者である被災者が点検口から集じん機内に入り、機内の堆積粉じんの掻き出し作業を行っていたところ、機内に滞留していたCOを吸入し、同中毒に罹患したもの。なお、被災者は、意識不明の状態が続いたが、平成18年2月15日死亡した。

6 ガスブロワー室内のCO中毒

平成17年12月(製鉄・製鋼・圧延業:死亡1名)

COを含有する高炉ガスのガス圧を昇圧するガスブロワー室のガス漏れが深夜に確認されたとの作業前ミーティングにより、同日午後に点検準備作業を予定していた同事業場エネルギー課の主任代行が、ミーティング終了約1時間後の午前9時50分頃、ガスブロワー室において倒れているのが発見され、救出後病院に収容されたが午前11時過ぎに死亡したもの。

7 キュポラを覗き込んでCO中毒

平成17年7月(鋳物業:休業1名)

鋳造工場において、操業中のキュポラの状態を確認しようと上から覗き込んだところ、キュポラから出ていたCOガスを吸い込み意識を失って倒れたもの。

別紙1―3

溶接作業による一酸化炭素(CO)により休業4日以上の労働災害に被災した例

(※ 休業人数は4日以上のみ)

1 工場建屋内のアーク溶接作業によるCO中毒

平成22年6月(派遣業:休業1名)

電気機械器具製造業の工場建屋内において、下請会社の派遣労働者が、発電機の部品(タービン発電機ステーター)のアーク溶接(半自動式炭酸ガス溶接)作業において、頭部を狭い箇所に入れ作業中気分が悪くなり、ぐったりしているところを同僚に発見された。

病院で検査をしたところ、CO中毒と診断された。

2 地下室のアーク溶接・溶断作業によるCO中毒

平成18年12月(機械器具設置工事業:休業3名)

ホテル地下1階の熱源機械室内において冷温水発生機等熱源機械の交換工事で鋼管の溶断、アーク溶接作業を行っていたところ、作業開始から2時間30分を経過したところで労働者3人がCO中毒となったもの。

作業場では内燃機関を有する発電機、アーク溶接機を使用しており、天井に開口部を設け換気の措置を講じていたが換気量が不十分であったと判断される。

3 ビニールハウス内のアーク溶接作業によるCO中毒

平成18年1月(電気通信工事業:休業1名)

ビニールハウスの建築工事において、ビニールハウス内で元請事業者が溶接機(発電機兼用)を使用した。ビニールハウス内で配線工事に従事していた被災者らは溶接機の排ガスに含まれるCOにばく露された。午後5時30分に体調異常を自覚したが、終業時間の午後6時まで就労した。被災者は帰宅後、病院で診察を受け入院した。なお、もう1名の労働者が、翌日病院で診察を受け経過観察と診断された。

4 船穀内部のCO2溶接によるCO中毒(推定)

平成16年3月(造船業:休業1名)

造船所構内の気積約8.7m3の船穀(ブロック)内部で、被災者はCO2溶接作業を行っていた。勤務終了後、自覚症状を感じたが、そのまま帰宅した。

夜間になり気分が悪いと申し出て、病院に搬送され、CO中毒の疑いがあると診断されたもの。

5 タンク内のMAG溶接作業によるCO中毒

平成15年12月(その他の金属製品製造業:休業1名)

被災者は、ターニングローラーに横置きした触媒調整タンク(SUS316L)に、フランジシーラー(SS400)の取り付けを、作業架台上より下向き姿勢のMAG溶接により午前8時40分頃から午後5時45分頃まで行っていたところ、シールドガスの炭酸ガス(CO2)から変化したCOを長時間吸引し続け、被災したもの。

6 ダクト内の溶接作業によるCO中毒

平成15年5月(その他の建設業:休業1名)

高炉の休風を利用して、ガス管の切替工事を施工するためA(溶接作業)、Bと被災者(ダクト内足場仮設作業)の3名で、エアーラインマスクを着用してダクト接続部の内面溶接を行う作業に従事していたところ、溶接のヒュームがこもり作業箇所が見えにくくなったため、吸引ファンを設置し、管内の排気を開始したところ、気分が悪くなった。

7 通風機ダクト内のアーク溶接作業によるCO中毒(疑い)

平成14年6月(機械器具設置工事業:休業1名)

自家火力発電所の定修工事において、通風機ダクト内に入り、アーク溶接によりダンパー(開閉装置)部品の取付作業を行っていたところ、気分が悪くなりダクトから自力で脱出し、病院に搬送された。医師によりCO中毒の疑いがあると診断されたもの。

災害発生時、作業場所のダクトは、被災者の出入り口以外の換気口は確保されていなかった。