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労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について
平成23年2月18日基発0218第2号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成23年厚生労働省令第3号)が平成23年1月12日に公布され、同年7月1日から施行されるところであるが、その改正の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、その施行に遺漏ないようにされたい。
記
第1 改正の趣旨
近年のプレス機械災害の発生状況等を踏まえ、プレス機械等による労働災害防止対策の強化を図るとともに、新たな種類の安全装置の適切な設置、使用について、労働安全衛生規則の所要の改正を行ったものであること。
第2 改正の内容及び留意事項
1 機械のストローク端による危険防止(新規則第108条の2関係)
(1) 労働者に危険を及ぼすおそれのある機械のストローク端については、改正前の労働安全衛生規則(以下「旧規則」という。)第112条において工作機械について、その危険を防止するため覆い等を設けなければならないことを規定していたが、移動するテーブルを有するプレスであるタレットパンチプレスのテーブルと建物設備等の間に挟まれる死亡災害が散見され、また、それ以外の機械においても同様の災害が見られることから、改正後の労働安全衛生規則(以下「新規則」という。)第108条の2において移動するテーブル等のストローク端が労働者に危険を及ぼすおそれのある機械については、工作機械以外の機械であっても、当該危険を防止するための措置を講じなければならないことを規定したこと。
(2) 本条は、旧規則第2編第1章第2節「工作機械」に規定されていた内容を第1節「一般基準」に規定したものであり、「研削盤又はプレーナーのテーブル、シェーパーのラム等」の「等」には、従来の工作機械以外のタレットパンチプレス、NCマシンのテーブル等が含まれるものであること。
(3) 「ストローク端」とは、ストロークするテーブル、ラム等の端部をいうこと。
(4) 「覆い、囲い又はさくを設ける等」の「等」には、光線式の安全装置を設置するほか、テーブルの移動範囲部分にマット式安全装置を設置し、作業者の進入を検知したときストローク端の作動を停止させるものがあること。
2 プレスブレーキ用の新たな安全装置への対応(新規則第131条第2項関係)
(1) プレスブレーキによる危険防止の対策を進めるため、今般、新たな種類の安全装置であるプレスブレーキ用レーザー式安全装置が適切に使用されるよう、プレスブレーキ用レーザー式安全装置の設置、使用にあっては、スライドの速度を毎秒10ミリメートル以下とすることができ、操作している間のみスライドが作動させることができるプレスブレーキに設置し、使用しなければならないこととすることを規定したこと。
なお、今般の改正に併せて、プレス機械又はシャーの安全装置構造規格(昭和53年労働省告示第102号。以下「安全装置構造規格」という。)を改正し、改正後の安全装置構造規格においてプレスブレーキ用レーザー式安全装置に関して規定したので留意すること。
(2) 「手払い式安全装置」とは、スライドの下降に連動し、防護板で危険限界内にある身体の一部を払いのけることによって安全を図る装置であること。
(3) プレスブレーキ用レーザー式安全装置とは、身体の一部がスライドに挟まれるおそれのある場合に、当該身体の一部が上型の近傍に設置した検出機構のレーザー光線を遮断したことを検出することにより、スライドの作動を停止させることができ、また、スライドが低閉じ速度により作動している場合は、光線を遮断したことの検出を無効とすることができるものをいい、改正後の安全装置構造規格第22条の2に規定したものであること。
(4) 「操作部を操作している間のみスライドを作動させる性能」とは、スライドを作動させるための操作部を操作しなければスライドが作動せず、かつ、スライドの作動中にスライドを作動させるための操作部から手が離れた時はスライドの作動が停止する構造のものをいうこと。
なお、フートスイッチを用いる場合は、踏んでいる状態である間のみスライドが作動するものとすること。この場合、スイッチを踏まない状態のときにはスライドが停止しており、踏んだときにスライドが作動し、さらに深く踏み込んだときにスライドが停止するもの(いわゆる「3ポジションタイプ」のこと。)も含まれること。
(5) プレスブレーキ用レーザー式安全装置の検出機構の設置については、身体の一部がスライドに挟まれるおそれのある場合に機能するように、下型の上に置いた厚さ10ミリメートルの板が検出機構のレーザー光線を遮断したことを検出し、当該板に上型が接触する前にスライドを停止させることができるように取り付けること。
3 手払い式安全装置の原則使用禁止(新規則第131条第2項及び附則第25条の2関係)
(1) 手払い式安全装置は比較的簡便な安全装置であるが、足踏みでスライドを起動するプレス機械に設置した場合に、手を払いきれずにスライドに挟まれる災害が見られることから、原則使用禁止とするが、当分の間、両手操作式であって毎分ストローク数が120以下で作動する等のプレス機械に取り付ける場合に限り使用することができることを規定したこと。
(2) 第131条第2項の規定の適用について、当分の間、手払い式安全装置は、毎分ストローク数が120以下である両手操作式のプレス機械であって、ストローク長さが40ミリメートル以上であって防護板(スライドの作動中に手の安全を確保するためのものをいう。)の長さ(当該防護板の長さが300ミリメートル以上のものにあつては、300ミリメートル)以下のものに限り使用することができること。
(3) 「両手操作式のプレス機械」とは、両手で同時に操作しなければスライドを起動させることができない構造のプレス機械をいうものであり、動力プレス機械構造規格において規定される両手操作式の安全プレスの要件又は安全装置構造規格において規定される両手操作式安全装置の要件までを求めるものではないこと。
(4) 本措置は、現に手払い式安全装置を両手操作式のプレス機械に設置しているもの等を対象とした当分の間の措置としての暫定措置であることから、ポジティブクラッチプレスに新たに安全措置を講じる場合には、可能な限り手払い式安全装置以外の措置を講じることが必要であること。
第3 その他の事項
1 昭和53年2月10日付け基発第78号通達の記の第2のⅡの1(第131条関係)の(2)のニを次のとおり改正すること。
「ニ 自動プレス(自動的に材科の送給及び加工並びに製品等の排出を行う構造の動力プレス)を使用し、当該プレスが加工等を行う際には、プレス作業者等を危険限界に立ち入らせない等の措置が講じられていること。」
2 昭和53年2月10日付け基発第78号通達の記の第2のⅡの1(第131条関係)の(7)の(i)の規定の後に次の規定を追加すること。
「プレス機械又はシャーの安全装置構造規格の一部を改正する件(平成23年厚生労働省告示第5号)に基づく光線式安全装置を設置するものについては、当該安全装置に表示がなされたとおり、光線式安全装置の連続遮光幅に応じた追加距離を含めた安全距離が必要なものもあることに留意すること。」
3 昭和53年2月10日付け基発第78号通達の記の第2のⅡの1(第131条関係)の(7)の規定の次に次の規定を追加すること。
「(7)の2 第2項第2号の感応式の安全装置を使用する場合であって、光線式安全装置の光軸とプレス機械のボルスターの前端との間に身体の一部が入り込む隙間がある場合は、当該隙間に安全囲いを設ける等の措置を講じる必要があること。」