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通達:食品加工用機械による労働災害発生状況について

 

食品加工用機械による労働災害発生状況について

平成23年2月16日基安安発0216第1号

(都道府県労働局労働基準部安全主務課長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)

 

食品加工用機械による労働災害については、休業4日以上の労働災害が年間約2,000件発生し、動力機械の分類の中では最も発生件数が多くなっていることから、食品加工用機械対策は機械災害防止対策における重点対象となっている。

今般、食品加工用機械に係る労働者死傷病報告書及び各局より送付のあった災害調査復命書について災害分析を行った結果、別紙のとおり労働災害発生状況を取りまとめたので、下記に留意の上、業務の参考とされたい。

 

1 労働災害の特徴としては、①食料品製造業のほか、小売業などの第三次産業で3割発生していること、②野菜・果物、肉類、水産物の加工機械でスライサーによる指の切断等が多いこと、③食品加工作業のほか、清掃・除去といった非定常作業が4割強を占めることなどが見られることから、管内の指導対象事業場の選定、指導内容の検討の際に配意すること。

2 労働災害発生状況の詳細については、労働安全衛生総合研究所のホームページに「食品機械を対象とした労働災害分析」(http://www.jniosh.go.jp/publication/SD/all.html)として掲載されているので参照されたい。

 

食品加工用機械における労働災害発生状況

○本災害分析においては、食品加工用機械(食品包装用機械、選別機を含む、以下同じ。)の労働災害のうち、次のものを対象とした。

①平成18年に発生した休業4日以上の災害(以下「休業災害」という。) 1,487件

(労働者死傷病報告書を分析)

②平成2~19年に発生した死亡災害のうち、災害調査復命書が入手できたもの 69件

(以下「死亡災害」という。)

1 災害発生業種

食料品製造業のほか、小売業などの第三次産業で3割発生

○休業災害では、食料品製造業が984件(66.2%)のほか、小売業等の第三次産業で465件(31.3%)と全体の3割を占めている。

○死亡災害は、ほとんどが食料品製造業で発生している。

表 労働災害が発生した業種

業種

休業災害

死亡災害

肉製品・乳製品製造業

121

(8.1%)

5

(7.2%)

水産食料品製造業

149

(10.0%)

2

(2.9%)

農業保存食料品製造業

60

(4.0%)

 

 

パン菓子製造業

218

(14.7%)

14

(20.3%)

酒類・飲料製造業

16

(1.1%)

9

(13.0%)

その他の食料品製造業

420

(28.2%)

34

(49.3%)

小計

984

(66.2%)

64

(92.8%)

卸売業

34

(2.3%)

 

 

小売業

246

(16.5%)

1

(1.4%)

その他の商業

5

(0.3%)

 

 

病院・社会福祉施設

36

(2.4%)

 

 

旅館業

7

(0.5%)

 

 

飲食店業

134

(9.0%)

3

(4.3%)

その他の接客娯楽業

3

(0.2%)

 

 

小計

465

(31.3%)

4

(5.6%)

その他

38

(2.6%)

1

(1.4%)

合計

1,487

(100.0%)

69

(100.0%)

 

2 事故の型

ほとんどが「切れ・こすれ」と「はさまれ・巻き込まれ」

○休業災害では、「切れ・こすれ」が715件(48.1%)、「はさまれ・巻き込まれ」が714件(48.0%)と、この2種の事故の型だけで全災害の96.1%を占めている。

○死亡災害では、「はさまれ・巻き込まれ」が57件(82.6%)と大変多くなっている。

表 事故の型

事故の型

休業災害

死亡災害

切れ・こすれ

715

(48.1%)

4

(5.8%)

はさまれ・巻き込まれ

714

(48.0%)

57

(82.6%)

高温・低温の物との接触

48

(3.2%)

 

 

飛来・落下

1

(0.1%)

 

 

激突され・激突

7

(0.5%)

1

(1.4%)

火災・爆発

2

(0.1%)

2

(2.9%)

有害物等との接触

 

 

1

(1.4%)

感電

 

 

4

(5.8%)

合計

1,487

(100.0%)

69

(100.0%)

 

3 機械の種類

野菜・果物、肉類、水産物の加工機械でスライサーによるものが多い。

○休業災害では、

①野菜・果物加工機械 337件(22.6%)

②肉類加工機械 270件(18.1%)

③水産加工機械 171件(11.5%)

④製パン機械 165件(11.1%)

⑤製菓機械 141件(9.5%)

の順で多く、上位3種(①から③)の機械で全体の半数を超えている。

○死亡災害では、製麺機械が13件(18.8%)、製菓機械が9件(13.0%)となっており、製麺機械での発生が目立っている。

詳細を見ると、製麺機械の「ミキサー」が8件(11.6%)、製菓機械の「練り機」が4件(5.8%)、野菜・果物加工機械の「ミキサー・混練機・粉砕機」が3件(4.3%)となっている。

○特に第三次産業においては、野菜・果物加工機械の143件(42.4%)、肉類加工機械の138件(51.1%)、製パン機械の72件(43.6%)の順で多くなっている。

表 災害が発生した機械の種類

機械の種類

休業災害

死亡災害

食品加工用機械

製粉機械

5

(0.3%)

 

 

精米麦機械

2

(0.1%)

1

(1.4%)

製麺機械

121

(8.1%)

13

(18.8%)

製パン機械

165

(11.1%)

6

(8.7%)

製菓機械

141

(9.5%)

9

(13.0%)

飲料加工機械

8

(0.5%)

4

(5.8%)

醸造加工機械

11

(0.7%)

1

(1.4%)

 

肉類加工機械

270

(18.1%)

5

(7.2%)

 

水産加工機械

171

(11.5%)

1

(1.4%)

 

野菜・果物加工機械

337

(22.6%)

6

(8.7%)

 

ご飯類加工機械

65

(4.4%)

4

(5.8%)

 

その他の機械

95

(6.4%)

13

(18.8%)

 

小計

1,391

(93.5%)

63

(91.3%)

食品包装機械

90

(6.0%)

6

(8.7%)

選別機

6

(0.4%)

 

 

合計

1,487

(100.0%)

69

(100.0%)

○詳細を見ると、

①野菜・果物加工機械の「切断機・スライサー」

②肉類加工機械の「切断機・スライサー」

③製パン機械の「切断機・スライサー」

④水産加工機械の「切断機・スライサー」

⑤製麺機械の「圧延・ロール」

の順で多く、全体として「切断機・スライサー」の災害の割合が高い。

表 機械の種類別・可動部の種類別の休業災害の内訳(食品加工用機械のみ)

 

合計

切断・切削(スライサー,バンドソーなど)

混合・混煉・攪拌・破砕・粉砕(攪拌,ミキサなど)

成形・型抜き・圧縮

圧延・ロール

その他

製粉機械

5

(0.3%)

 

 

3

(60.0%)

1

 

 

 

1

 

精米麦機械

2

(0.1%)

 

 

 

 

 

 

 

 

2

 

製麺機械

121

(8.1%)

26

(21.5%)

28

(23.1%)

 

 

37

(30.6%)

30

(24.8%)

製パン機械

165

(11.1%)

93

(56.4%)

8

(4.8%)

1

 

30

(18.2%)

33

(20.0%)

製菓機械

141

(9.5%)

25

(17.7%)

29

(20.6%)

7

(5.0%)

19

(13.5%)

80

(56.7%)

飲料加工機械

8

(0.5%)

 

 

1

 

 

 

 

 

7

 

醸造加工機械

11

(0.7%)

 

 

8

(72.7%)

 

 

 

 

3

 

肉類加工機械

270

(18.1%)

179

(66.3%)

40

(14.8%)

3

(1.1%)

2

 

46

(17.0%)

水産加工機械

171

(11.5%)

64

(37.4%)

17

(9.9%)

9

(5.3%)

8

(4.7%)

73

(42.6%)

野菜・果物加工機械

337

(22.6%)

246

(73.0%)

36

(10.7%)

2

 

6

(1.8%)

47

(13.9%)

ご飯類加工機械

65

(4.4%)

7

(10.8%)

9

(13.8%)

33

(50.8%)

 

 

16

(24.6%)

その他の機械

95

(6.4%)

10

(10.5%)

5

(5.3%)

8

(8.4%)

6

(6.3%)

66

(69.5%)

合計

1,391

(93.5%)

650

(43.7%)

184

(12.4%)

64

(4.3%)

108

(7.3%)

385

(25.9%)

4 可動部の種類

スライサーなどの「切断・切削」の可動部が4割以上を占める。

○休業災害では、スライサー、カッタ、切断機などの「①切断・切削用の可動部」が650件(43.7%)と4割以上を占めている。次いで、②「混合・混練・攪拌・破砕・粉砕用の可動部」が184件(12.4%)、③「圧延・ロール用の可動部」が108件(7.3%)となっている。

○死亡災害では、①「混合・混練・攪拌・破砕・粉砕用の可動部」が30件(43.5%)、②「供給・送り・圧送・コンベヤ用の可動部」が8件(11.6%)となっており、この2種で全体の半数以上を占めている。

表 可動部の種類(食品加工機械のみ)

機構の種類

休業災害

死亡災害

切断・切削

650

(43.7%)

4

(5.8%)

供給・送り・圧送・コンベヤ

58

(3.9%)

8

(11.6%)

混合・混練・攪拌・破砕・粉砕

184

(12.4%)

30

(43.5%)

成形・型抜き・圧縮

64

(4.3%)

1

(1.4%)

圧延・ロール

108

(7.3%)

 

 

焼成・加熱・熱加工

26

(1.7%)

 

 

皮むき

29

(1.9%)

 

 

ベルト・プーリー・歯車・チェーン等

45

(3.0%)

2

(2.9%)

その他

113

(7.6%)

12

(17.4%)

不明・可動部以外が起因物

114

(7.7%)

6

(8.7%)

合計

1,391

(93.5%)

63

(91.3%)

5 作業の種類

食品加工作業のほか、清掃・除去といった非定常作業が4割強を占める。

○休業災害では、①「加工・包装・選別」が751件(50.5%)、②「清掃・除去」が537件(36.1%)となっており、この2種で全体の約9割を占めている。

○死亡災害でも、①「清掃・除去」が26件(37.7%)、②「加工・包装・選別」が16件(23.2%)となっている。

表 作業の種類

作業の種類

休業災害

死亡災害

段取り

24

(1.6%)

5

(7.2%)

運転確認

10

(0.7%)

5

(7.2%)

計測・調整

23

(1.5%)

2

(2.9%)

加工・包装・選別

751

(50.5%)

16

(23.2%)

トラブル処理

91

(6.1%)

8

(11.6%)

保守・点検・修理

27

(1.8%)

2

(2.4%)

清掃・除去

537

(36.1%)

26

(37.7%)

その他

11

(0.7%)

2

(2.9%)

不明

13

(0.9%)

3

(4.5%)

合計

1,487

(100.0%)

69

(100.0%)

6 傷病の種類

指の切断など後遺障害と伴うものが少なくない。

○休業災害では、「切断」が309件(20.8%)と「挫滅」が50件(3.4%)で全体の4分の1を占め、これらは障害を伴う災害となる可能性が極めて高いものである。

これ以外の傷病としては、「切創」、「挫創」、「骨折」などがある。

表 傷病の種類(休業4日以上)

 

件数

切断

309

(20.8%)

挫滅

50

(3.4%)

切創

482

(32.4%)

挫創

166

(11.2%)

骨折

207

(13.9%)

熱傷

53

(3.6%)

その他

109

(7.3%)

不明

111

(7.5%)

合計

1,487

(100.0%)

7 重篤度

スライサーなどの「切断・切削」、ミキサーなどの「混合・混練・攪拌・破砕・粉砕」の可動部のリスクが圧倒的に高く、最重点課題である。

○年間の労働損失日数を推計した結果によると、

①肉類加工機械(労働損失日数48.1×103日/年)

②野菜・果物加工機械(同36.6×103日/年)

③製菓機械(同24.6×103日/年)

④水産加工機械(同24.2×103日/年)

⑤製麺機械(同23.2×103日/年)

の順にリスクが高く、これらだけで全労働損失日数の約7割を占めている。

表 機械の種類別・重篤度(労働損失日数)の内訳

 

発生件数と比率

リスク順位と労働損失日数

食品加工機械

製粉機械

5

(0.3%)

(第13位)

0.6×103

精米麦機械

2

(0.1%)

(第12位)

1.5×103

製麺機械

121

(8.1%)

(第5位)

23.2×103

製パン機械

165

(11.1%)

(第8位)

12.3×103

製菓機械

141

(9.5%)

(第3位)

24.6×103

飲料加工機械

8

(0.5%)

(第10位)

4.1×103

 

醸造加工機械

11

(0.7%)

(第11位)

3.1×103

 

肉類加工機械

270

(18.1%)

(第1位)

48.1×103

 

水産加工機械

171

(11.5%)

(第4位)

24.2×103

 

野菜・果物加工機械

337

(22.6%)

(第2位)

36.6×103

 

ご飯類加工機械

65

(4.4%)

(第9位)

8.6×103

 

その他の機械

95

(6.4%)

(第6位)

20.0×103

食品包装機械

90

(6.0%)

(第7位)

16.7×103

選別機

6

(0.4%)

(第14位)

0.6×103

合計

1,487

(100.0%)

 

223.6×103

○可動部の種類で見ると、

①切断・切削(スライサー・バンドソーなど)(労働損失日数92.1×103日/年)

②混合・混練・攪拌・破砕・粉砕(ミンチ・ミキサを含む)(同46.9×103日/年)

の順に高くなっており、これらで全体の約6割を占めている。

表 可動部の種類別・重篤度(労働損失日数)の内訳(上位7種)

可動部の種類

休業災害の発生件数と比率

死亡災害

リスク順位と労働損失日数

切断・切削

650

(43.7%)

4

(5.8%)

第1位

(92.1×103)

混合・混練・攪拌・破砕・粉砕

184

(12.4%)

30

(43.5%)

第2位

(46.9×103)

圧延・ロール

108

(7.3%)

0

(0.0%)

第3位

(12.1×103)

成型・型抜き・圧縮

64

(4.3%)

1

(1.4%)

第5位

(9.4×103)

供給・送り・圧送・コンベヤ

58

(3.9%)

8

(11.6%)

第4位

(9.6×103)

ベルト・プーリー・歯車・ギヤ・チェーン等

45

(3.0%)

2

(2.8%)

第6位

(7.8×103)

皮むき

29

(2.0%)

0

(0.0%)

第7位

(1.1×103)