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ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について
平成21年3月31日基発第0331013号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
改正 平成26年11月28日基発1128第12号
近年積極的な研究開発が行われているナノマテリアルについては、その生体への影響について十分な知見は得られてはいないが、一部の物質について、一定の条件下でマウス等に影響を与えることを示す研究報告もなされているところである。
そのため、予防的アプローチの考え方に基づき、ナノマテリアルに対するばく露防止の対応について、平成20年2月7日付け基発第0207004号「ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について」を発出し、その周知を図ってきたところであるが、労働現場におけるナノマテリアルに対するばく露防止等の対策の実効を上げるためには、作業現場の実態を踏まえた、より具体的な管理方法を示す必要があることから、平成20年3月から有識者による検討会を開催し、この程報告書が取りまとめられた。
(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/s1126-6.html 参照)
今般、これを踏まえ、別紙のとおりばく露防止等の対策を取りまとめたので、関係事業場に対し、本対策の周知徹底を図られたい。
なお、関係事業者団体に対し別添1のとおり、また、文部科学省研究振興局長に対し別添2のとおり本対策の周知を要請したので了知されたい。
おって、平成20年2月7日付け基発第0207004号「ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について」は廃止する。
(別添1)
○ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について
平成21年3月31日基発第0331011号
(中央労働災害防止協会会長・(社)全国産業廃棄物連合会会長・(社)電子情報技術産業協会会長・(社)日本化学工業協会会長・日本化学工業品輸出組合理事長・(社)日本化学工業品輸入協会会長・(社)日本貿易会会長・(社)ナノテクノロジービジネス推進協議会会長あて厚生労働省労働基準局長通知)
労働基準行政の運営につきましては、日頃から格別の御理解、御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、近年積極的な研究開発が行われているナノマテリアルについては、その生体への影響について十分な知見は得られてはいませんが、一部の物質について、一定の条件下でマウス等に影響を与えることを示す研究報告もなされているところであります。
そのため、予防的アプローチの考え方に基づき、ナノマテリアルに対するばく露防止の対応につきまして、平成20年2月7日付け基発第0207003号「ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について」を発出し、その周知を図ってきたところですが、労働現場におけるナノマテリアルに対するばく露防止等の対策の実効を上げるためには、作業現場の実態を踏まえた、より具体的な管理方法を示す必要があることから、平成20年3月から有識者による検討会を開催し、この程報告書が取りまとめられました。
(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/s1126-6.html 参照)
今般、これを踏まえ、別紙のとおりばく露防止等の対策を取りまとめましたので、貴団体におかれましては、本対策の趣旨を御理解いただき、会員その他関係事業場においてばく露防止等の対策が講じられるよう、周知方よろしくお願いいたします。
なお、平成20年2月7日付け基発第0207003号「ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について」は廃止します。
おって、ナノマテリアルに関する情報につきましては、独立行政法人労働安全衛生総合研究所のホームページにおいて提供されていることを念のため申し添えます。
(別紙)
ナノマテリアルの労働現場におけるばく露防止等の対策について
1 対象とするナノマテリアル
本対策において「ナノマテリアル」とは、元素等を原材料として製造された固体状の材料であって、大きさを示す3次元のうち少なくとも一つの次元が約1nm~100nmであるナノ物質(nano-objects)及びナノ物質により構成されるナノ構造体(nanostructured material)(ナノ物質の凝集した物体を含む。)をいうものであること。
2 対象とする作業
本対策において「ナノマテリアル関連作業」とは、ナノマテリアル若しくはこれを含有する製剤その他の物(以下「ナノマテリアル等」という。)を製造し、若しくは取り扱う作業(試験研究のため製造する作業及びナノマテリアル等が使用されている設備、機器等の修理、点検等を含む。)又はナノマテリアル等が使用されている製品の廃棄若しくはリサイクル作業をいうものであること。
なお、「ナノマテリアル関連作業」には、日常的に反復・継続して行われることが少ない非定常作業も含まれるものであること。
3 ばく露防止等の対策について
(1) 基本的考え方
ナノマテリアルの生体への健康影響については調査研究が進められているものの、未だ十分には解明されていないところであるが、予防的アプローチの考え方に基づき、ナノマテリアルに対するばく露防止等の対策を講じることが重要である。
本対策に示す内容を参考とし、材料、プロセス、取扱量等の実態に合わせて、ナノマテリアルのばく露防止等に努めること。また、本対策は、ナノマテリアル関連作業に従事する労働者を念頭に置いたものであるが、ナノマテリアル関連作業を行う作業場におけるナノマテリアル関連作業に従事する労働者以外の労働者についても、必要な措置を講ずるよう努めること。
なお、本対策については、ばく露防止等の対策を検討する上で必要な基礎的データ等が十分存在しないという制約下において、現在入手可能なデータや知見に基づいて講ずべき措置を示したものであること。したがって、ばく露防止等の対策を講ずる上で参考となる知見を有し、これに基づいて予防的アプローチの観点から実効あるばく露防止措置を講ずることが可能な場合は、本対策に示した措置にかかわらず、独自の対応を図って差し支えないものであること。
(2) ナノマテリアルに関する調査
ばく露防止等の対策を講じる上で、ナノマテリアルの性状等を把握することが重要であることから、ナノマテリアル関連作業で取り扱われるナノマテリアル等に関する情報を収集するように努めること。
なお、ナノマテリアル等を製造するメーカーから入手することが可能と思われる情報としては、電子顕微鏡写真、粒子サイズ、比表面積等のデータがあること。
(3) 作業環境管理
ア 製造・取扱装置の密閉化等
ナノマテリアルが樹脂等の固体に練り込まれている状態等、労働者のナノマテリアル等へのばく露のおそれがない場合を除き、製造・取扱装置(ナノマテリアル関連作業を行うための装置をいう。以下同じ。)は原則として密閉式の構造とすること。
また、労働者がナノマテリアル等を直接取り扱うような原材料の荷受け、原材料や製品の秤量、製造・取扱装置への投入(混練を含む。)、製造・取扱装置からの回収、容器等への移し替え、製造・取扱装置の清掃・点検・補修、容器等の清掃等の作業についても、ばく露のおそれがない場合を除き、原則としてこれらの作業は密閉化、無人化又は自動化(以下「密閉化等」という。)すること。特に、ナノマテリアル等の粉体を液体や樹脂に混ぜる作業は、労働者のナノマテリアル等へのばく露のおそれが高いことから、当該作業は製造・取扱装置に密閉化等の措置を講じ、又はグローブボックス内で行うこと。
さらに、製品の廃棄又はリサイクルの作業においても、当該製品にナノマテリアルが使用されている可能性やこれらの作業の過程でナノマテリアル等が作業環境中に発散する可能性を検討し、労働者のナノマテリアル等へのばく露のおそれがある場合には、原則として密閉化等の措置を講ずること。
イ 局所排気装置等の設置
製造・取扱装置であって、密閉化等の措置を講ずることができないものが設置された作業場所については、ナノマテリアル等の発散を防止するため、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置(以下「局所排気装置等」という。)を設置すること。
なお、局所排気装置の型式としては囲い式フードが望ましいが、大規模な製造・取扱装置の場合は、作業者の作業性を考慮し、プッシュプル型換気装置の設置等、状況に応じた適切な装置を設置すること。
ナノマテリアル等を製造し、又は取り扱う作業において、密閉化等の措置を講ずることができず、局所排気装置等を設置する必要性のある工程として、具体的には次のものが挙げられる。
(ア) ナノマテリアル等を製造する事業場において、発じんする可能性のある状態のナノマテリアル等を作業者が直接取り扱う次の工程
① 製造したナノマテリアル等を回収する工程(自動化されているものを除く。)
② 製造したナノマテリアル等の秤量・梱包・袋詰めの工程
(イ) ナノマテリアル等を取り扱う事業場において、発じんするおそれのある状態のナノマテリアル等を加工・処理するための次の工程
① 開封の工程(搬入時に梱包されてきたナノマテリアル等を装置に投入できるように梱包等を解く工程をいう。)
② 小分け・秤量の工程(ナノマテリアル等の一定量を装置に投入するため一部を計り取る工程)
③ 投入の工程(ナノマテリアル等をホッパー等に投入する工程)
なお、密閉化等の措置が講じられている製造・取扱装置であっても、補修・点検のため開放する箇所については、局所排気装置等を設置し、又はグローブバッグを用いて作業をすること。グローブバッグとは、配管の一部などを局所的に隔離するための袋状の用具で手袋の部位があるものであり、これを作業箇所に取り付けて当該部分を密封した後、当該手袋を使用して作業を行うことにより、当該作業箇所について密封状態を保つことができるものであること。
また、局所排気装置等を設置した場合は、当該局所排気装置等の定期的な保守・点検を行うこと。
ウ 排気における除じん措置
局所排気装置等の排気口は直接外気に向かって開放すること。なお、これが困難な場合は、局所排気装置等の排気口を既存の排気管に接続する等により当該装置の排気が確実に外気へ排出されるようにすること。その際、排気口からナノマテリアル等が放出されないよう、ナノマテリアル等を捕集できるフィルターを備えた除じん装置を局所排気装置等に設けること。
使用するフィルターの選定に当たっては、発散するナノマテリアル等が凝集していることも考慮し、当該ナノマテリアル等の粒径、凝集の状態等を調査した場合、その結果に基づき、当該ナノマテリアル等の捕集が可能な適切なフィルターを選定すること。また、当該調査を行わない場合においては、HEPAフィルター又はこれと同等以上の性能を有するフィルターを使用すること。
なお、大規模な製造・取扱装置が存する場合において、HEPAフィルターを備えた局所排気装置等を使用するときは、電動機や排風機の能力を大きくする必要があるとともに、ナノマテリアル等の発じんが多いナノマテリアル関連作業にあっては、フィルターの頻繁な交換が必要となるが、この場合には、HEPAフィルターの前に前置きのフィルターを設けること等により、HEPAフィルターの交換頻度を少なくすることができることに留意すること。なお、前置きのフィルターとしては、例えばバグフィルターがあること。
エ 作業環境中のナノマテリアル等の濃度の把握
製造・取扱装置の密閉化等、局所排気装置等の設置等によるばく露防止の対策の効果の確認やナノマテリアル関連作業に従事する労働者のナノマテリアル等へのばく露状況の把握は、ナノマテリアル等へのばく露防止対策を適切に講ずる上で重要であることから、作業環境中のナノマテリアル等の濃度の把握に努めること。この場合、定期的に作業環境中のナノマテリアル等の濃度を測定するほか、ナノマテリアル関連作業の状況に変化があったときに実施すること。
一般に作業環境中には一の発生源から広い粒度分布の粉じんが発生しており、原理的にナノサイズの粒子を測定できない装置であっても、当該装置による測定の結果はナノマテリアル等の管理には一定程度有効であることから、ナノサイズの粒子の測定に用いられる機器の利用が困難な場合には、通常サイズの粒子を測定する機器である粉じん計等を用いること。
なお、ナノサイズの粒子の計測に用いられる機器である走査型電気移動度粒径分析器、凝縮粒子計数器、粒子表面積計等の利用が可能な場合にはこれらの機器を用いて測定すること。
また、測定対象とする作業場の作業環境中に存在するナノマテリアル等の種類等を特定しておくことは、作業環境管理上有益であることから、可能な場合には、ナノマテリアル等の形状観察、組成分析等を行うこと。
(4) 作業管理
ア 作業規程の作成
ナノマテリアル関連作業に労働者を従事させるときは、ナノマテリアル等の取扱いに関する作業規程を作成し、当該労働者に作業規程の内容を遵守させること。
なお、作業規程には、取り扱うナノマテリアル等の生体への影響についての情報及び作業環境に係る情報を盛り込むこと。生体への影響についての情報としては例えばMSDSの記載事項があること。
イ 床等の清掃
ナノマテリアル関連作業を行う作業場の床や作業台等の清掃については、HEPAフィルター等ナノマテリアル等の捕集が可能なフィルターを備えた掃除機による吸引により行うこと。ただし、当該吸引による清掃を行うことが困難な場合又は適当でない場合には、湿った布による拭き取りによって行うこと。
また、堆積したナノマテリアル等をあらかじめ湿潤化して拭き取ることも有効であるが、当該ナノマテリアル等が撥水性の粉体の場合は、湿潤化の際当該粉体が舞い上がるおそれがあるため、作業場の状況及び当該ナノマテリアル等の性状を考慮した上で、実施する必要があること。
なお、ナノマテリアル等の拭き取りに使用した布は、不浸透性の破れにくい袋に封入して適切に廃棄すること。
ウ ナノマテリアル関連作業を行う作業場と外部との汚染防止
ナノマテリアル関連作業を行う作業場と外部とを区画し、その間に除染区域を設ける等により、作業衣等に付着したナノマテリアル等を外部に持ち出さないように適切に処理すること。
また、ナノマテリアル関連作業に伴って生じたナノマテリアル等が飛散するおそれがある廃棄物は、不浸透性の破れにくい袋に封入して適切に廃棄すること。
さらに、ナノマテリアル関連作業を行う施設は、関係者以外の立入りを制限すること。
エ 保護具の使用
(ア) 呼吸用保護具
① 密閉化等が困難な場合又は局所排気装置等の設置が困難な場合には、ナノマテリアル関連作業に従事させる労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。ただし、密閉化等、局所排気装置等の設置等のばく露防止の対策を講じた場合であっても、労働者のナノマテリアル等へのばく露のおそれがないことが確認できないときには、ナノマテリアル関連作業に従事させる労働者に、有効な呼吸用保護具を使用させること。
有効な呼吸用保護具とは、送気マスク等給気式呼吸用保護具、粒子捕集効率が99.9%以上の防じんマスク又は粒子捕集効率が99.97%以上の面体形又はルーズフィット形の電動ファン付き呼吸用保護具であって、電動ファンの性能区分が大風量形のものであること。
なお、防じんマスク及び電動ファン付き呼吸用保護具については国家検定に合格したものを使用すること。
② 呼吸用保護具の選定に当たっては、発散防止のための措置の状況に応じて、予想される労働者へのナノマテリアル等のばく露量等を考慮し、別添「呼吸用保護具の選択の方法」を参考として、適切な防護係数の呼吸用保護具を選定すること。
また、防爆の措置の必要な作業場、暑熱の作業場、狭隘な作業場等、各作業場の状況に適合した呼吸用保護具を選定すること。
③ 非定常時及び非常時における使用も考慮し、ナノマテリアル等のばく露を防止する適切な呼吸用保護具を必要な数量備え、有効かつ清潔に保持すること。
④ 労働者に呼吸用保護具を使用させるに際しては、面体と顔面の密着性の確認を行わせ、適切な面体を選び、装着させる都度、当該確認を行わせること。
(イ) 保護手袋
ナノマテリアル関連作業であって、ナノマテリアル等が手に付着するおそれがあるものに労働者を従事させる場合には、ナノマテリアル等の皮膚への付着を防止する適切な材質の保護手袋を使用させること。
なお、保護手袋は、洗濯等により清潔な状態を保持できる場合を除き、使い捨てとすること。
また、使用した保護手袋を廃棄する場合は、不浸透性の破れにくい袋に封入して適切に廃棄すること。
さらに、保護手袋の脱着時等において、ナノマテリアル等が皮膚に付着し、又はそのおそれが高い場合には、ナノマテリアル等が付着し、又はそのおそれのある皮膚を石けんで洗い、又はクレンジングクリーム等で拭き取ること。
(ウ) ゴーグル型保護眼鏡
労働者をナノマテリアル関連作業に従事させる場合において、ナノマテリアル等の粉体、ナノマテリアル等を含む飛沫等が当該労働者の目に入るおそれがあるときは、当該労働者にゴーグル型保護眼鏡を使用させること。
(エ) 保護衣
労働者をナノマテリアル関連作業に従事させる場合において、ナノマテリアル等が当該労働者の作業衣に付着するおそれがあるときは、当該労働者にナノマテリアル等のための専用の保護衣を着用させること。
なお、保護衣の材質は不織布のものが望ましいこと。
保護衣は洗濯等により有効かつ清潔な状態を保持すること。
ナノマテリアル等が付着した保護衣を廃棄等のため施設外に持ち出す場合は、当該保護衣を不浸透性の破れにくい袋の中に封入して、ナノマテリアル等の施設外への拡散を防止すること。
オ 作業記録の保存
ナノマテリアル関連作業に従事する労働者について、労働者の氏名、労働者がナノマテリアル関連作業に従事した期間及び従事したナノマテリアル関連作業の概要の記録を作成し、長期間保存すること。
(5) 健康管理
ナノマテリアル関連作業に従事する労働者については、労働安全衛生法又はじん肺法に基づいて行われた健康診断等により当該労働者の健康状況の把握に努めること。
(6) 安全衛生教育
労働者をナノマテリアル関連作業に従事させるときは、作業規程及びナノマテリアル等の物理的・化学的特性、健康への影響、作業環境管理対策、呼吸用保護具の使用等のばく露防止等の対策、爆発火災防止対策等について教育を実施すること。
なお、呼吸用保護具については、呼吸用保護具の適切な選択、装着方法、マスク面体と顔面との密着性による漏れ率の測定方法及び密着性の確認の方法並びに保管・管理について教育を実施すること。
(7) その他の措置
ア 爆発火災防止対策
取り扱うナノマテリアル等の性状、製造・取扱装置、ナノマテリアル関連作業の工程、作業内容等に応じて、粉じん濃度の抑制、静電気の発生防止、製造・取扱装置内の酸素濃度の抑制等の措置を講ずること。
イ 緊急事態への対応
労働者をナノマテリアル関連作業に従事させる場合には、大量漏洩が発生した場合の警報、他の労働者への周知、ばく露防止措置等、あらかじめ、事故等が発生した場合に講ずべき対策を策定しておくこと。
なお、労働者がナノマテリアル等にばく露した場合の応急措置としては、クリーンエア中での除じんのほか、眼に入った場合には水で十分に洗眼し、吸入した場合にはうがい又は口内を洗浄し、飲み込んだ場合には吐き出し、うがいし、又は口内の洗浄を行うこと。
4 ナノマテリアルに関する情報の伝達等について
ナノマテリアル等に対するばく露防止等の対策を講ずるためには、取り扱う物質がナノマテリアル等であることを正しく認識できることが必要である。さらに、ナノマテリアル等の取扱い上の注意等に関する情報を入手することにより、適切なばく露防止等の対策を講ずることができる。このような情報はナノマテリアル等を譲渡し、又は提供する者が有していることから、当該者は当該物質がナノマテリアル等である旨、当該ナノマテリアル等の名称及び成分、取扱上の注意等を、容器又は包装への表示、文書(MSDS)の交付その他の方法により譲渡し、又は提供する相手方に伝達すること。
(別添)
呼吸用保護具の選択の方法
呼吸用保護具の使用に当たっては、発散防止のための措置等の状況に応じた適切な防護係数又は指定防護係数のものを選定する必要がある。防護係数とは呼吸用保護具の防護性能を表す数値であり次の式で表すことができる。
PF=Co/Ci
PF:防護係数
Co:面体等の外側の粉じん濃度
Ci:面体等の内側の粉じん濃度
すなわち、防護係数が高いほど、マスク内への粉じんの漏れ混みが少ないことを示し、作業者のばく露が少ない呼吸用保護具といえる。
作業現場において防護係数が算定できない場合は、各機関から公表されている指定防護係数を利用する。指定防護係数は、実験結果から算定された多数の防護係数値の代表値である。したがって、訓練された着用者が、正常に機能する呼吸用保護具を正しく着用した場合に、少なくとも得られるであろうと期待される防護係数を示している。JISで公表されている指定防護係数を表1に示す。
呼吸用保護具の選定に当たっては、可能な限り指定防護係数の大きなものを使用するべきであり、特に工業生産現場等において、労働衛生工学的設備対策が講じられず、高濃度ばく露が予想される作業の場合には必ず指定防護係数の大きな呼吸用保護具を選定することが必要である。ナノマテリアル等の製造又は取扱い工程の密閉化、無人化又は自動化(以下「密閉化等」という。)の措置が講じられている場合には指定防護係数の小さい呼吸用保護具の選択も可能である。また、当該工程の密閉化等はできないものの、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置(以下「局所排気装置等」という。)の設置が可能な場合は、中程度の指定防護係数のものを選択することも可能である。試験研究機関において呼吸用保護具を使用する場合のその選定については、労働衛生工学的設備対策が講じられていない場合は呼吸用保護具の種類に応じて中程度以上の指定防護係数の呼吸用保護具を選定しなければならないが、密閉化等の措置や局所排気装置等の設置をした場合は、指定防護係数が小さなものの選択も可能である。このような考えに基づき、一般の製造・取扱事業場及び試験研究機関における呼吸用保護具の選定について参考として図1及び図2並びにこれらをまとめた表2を示す。
なお、これらの図表の作成に際しては、次の事項を考慮した。
・ 作業者のばく露のおそれがないことを作業環境測定等の結果から確認できない場合は、ナノマテリアル等を密閉化等の措置を講じた装置で取り扱う場合であっても呼吸用保護具を装着することとした。
・ 呼吸用保護具のろ過材の捕集効率に関し、最近の文献により、50nm前後の粒径に対して捕集効率の低くなるろ過材が確認され、N95(NIOSH規格:95%以上の捕集効率)又はRS2、DS2(日本の国家検定規格:95%以上の捕集効率)のろ過材の捕集効率が基準の95%を下回る結果が報告されている。そのため、防じんマスクのろ過材としては、99.9%以上の捕集効率のろ過材を使用することとした。
おって、これらの図表は現時点で入手可能な情報、科学的知見等に基づいて作成したものであり、今後、新たなナノマテリアル等の有害性の情報が把握できた場合、防じんマスクのろ過材の粒径に対する捕集効率が把握できた場合等は、その時点で選定基準を見直すこととする。
表1 呼吸用保護具の指定防護係数
マスクの種類 |
指定防護係数a |
||
防じんマスク(動力なし) |
使い捨て式 |
3~10b |
|
取替え式(半面形) |
|
||
|
取替え式(全面形) |
4~50b |
|
電動ファン付き呼吸用保護具 |
半面形 |
4~50 |
|
全面形 |
4~100 |
||
|
フード形 |
4~25 |
|
|
フェイスシールド形 |
4~25 |
|
送気マスク |
デマンド形 |
半面形 |
10 |
|
|
全面形 |
50 |
|
一定流量形 |
半面形 |
50 |
|
|
全面形 |
100 |
|
|
フード形 |
25 |
|
|
フェイスシールド形 |
25 |
|
プレッシャデマンド形 |
半面形 |
50 |
|
|
全面形 |
1000 |
送気・空気呼吸器複合式プレッシャデマンド形全面マスク |
1000 |
||
空気呼吸器 |
デマンド形 |
半面形 |
10 |
|
|
全面形 |
50 |
|
プレッシャデマンド形 |
全面形 |
5000 |
a呼吸用保護具が正常に機能している場合に、期待される最低の防護係数
bろ過式(防じんマスクや電動ファン付き呼吸用保護具)の防護係数は、面体等の漏れ率[Lm(%)]及びフィルタの透過率[Lf(%)]から100/([Lm+Lf)によって算出
(※)呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理方法(JIS T8150)付表2から引用
表2 呼吸用保護具の選定(まとめ)
使用状況 |
密閉化、無人化、自動化、液体中に分散 |
局所排気装置、プッシュプル換気装置の設置 |
工学的対策なし |
一般の製造又は取扱事業場 |
指定防護係数10以上 |
指定防護係数50以上 |
指定防護係数100以上 |
試験研究機関 |
指定防護係数10以上 |
指定防護係数50以上 |
但し
環境条件 |
呼吸用保護具の選定 |
酸素濃度18%未満の作業場 |
送気マスク又は空気呼吸器 (ろ過式呼吸用保護具は使用してはならない。) |
有害ガスと共存する作業場 |
送気マスク、空気呼吸器又は防じん機能を有する防毒マスク |
爆発の危険のある作業場 |
送気マスク、空気呼吸器又は防じんマスク(動力なし) (電動ファン付き呼吸用保護具は不適) |
(別添2)
○ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について
平成21年3月31日基発第0331012号
(文部科学省研究振興局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
労働基準行政の運営につきましては、日頃から格別の御理解、御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、近年積極的な研究開発が行われているナノマテリアルについては、その生体への影響について十分な知見は得られてはいませんが、一部の物質について、一定の条件下でマウス等に影響を与えることを示す研究報告もなされているところであります。
そのため、予防的アプローチの考え方に基づき、ナノマテリアルに対するばく露防止の対応につきまして、平成20年2月7日付け基発第0207003号「ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について」を発出し、その周知を図ってきたところですが、労働現場におけるナノマテリアルに対するばく露防止等の対策の実効を上げるためには、作業現場の実態を踏まえた、より具体的な管理方法を示す必要があることから、平成20年3月から有識者による検討会を開催し、この程報告書が取りまとめられました。
(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/s1126-6.html 参照)
今般、これを踏まえ、別紙のとおりばく露防止等の対策を取りまとめましたので、本対策の趣旨を御理解いただき、大学等の研究・教育機関において、ナノマテリアルを取り扱う労働者等に対し、本対策が実施されるよう関係機関に対する周知方よろしくお願いいたします。
なお、平成20年2月7日付け基発第0207003号「ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について」は廃止します。
おって、ナノマテリアルに関する情報につきましては、独立行政法人労働安全衛生総合研究所のホームページにおいて提供されていることを念のため申し添えます。
(※別紙は関係事業者団体あての別紙と同様のため省略する。)