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通達:現下の経済情勢を踏まえた緊急の自殺予防対策について

 

現下の経済情勢を踏まえた緊急の自殺予防対策について

平成21年1月30日地発第0130005号・基監発第0130001号・基安労発第0130001号・職総発第0130001号

(都道府県労働局総務部長・労働基準部長・職業安定部長あて厚生労働省大臣官房地方課長・労働基準局監督課長・労働基準局安全衛生部労働衛生課長・職業安定局総務課長通知)

 

自殺対策については、平成19年に策定された自殺総合対策大綱に基づいて取組を推進しているところであるが、現下の経済情勢により解雇及び雇止めに伴い住居の退去を余儀なくされる者が相当数新たに発生するなど、自殺の社会的要因である失業や倒産、多重債務問題の深刻化が懸念される。

ついては、自殺の発生は、健康問題(うつ病等)のほか、失業等経済・生活問題、勤務問題等、様々な社会的要因が複雑に関係していることを踏まえ、下記に留意の上、関係部署間はもとより関係機関との連携を図り、一層適切な行政運営に万全を期されたい。

なお、内閣府自殺対策推進室長より各都道府県知事及び政令指定都市市長に対して、別紙1(写)のとおり通知するとともに、それを踏まえる等して、健康局総務課長、社会・援護局総務課長及び社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長より都道府県担当部(局)長等に対して、別紙2(写)のとおり通知したところであるので、了知されたい。

 

1.相談活動等に当たっての配慮

健康問題、失業等経済・生活問題、勤務問題等の様々な課題に対する相談活動等は、自殺対策の観点からも重要であることから、公共職業安定所、労働基準監督署及び総合労働相談コーナーにおいては、引き続き雇用問題等所掌事務に関する相談活動等を適切に行うこと。相談活動等に当たっては、相談者等の中に雇用問題を背景としたメンタルヘルス不調者も含まれること等に留意するとともに、相談者等の置かれている立場に意を払い、懇切丁寧な対応に努めること。

2.健康要因と社会的要因に対する関係機関の間での連携の強化

自殺に至る可能性のある者が抱える課題は多様であり、健康要因と社会的要因の課題を相互に関連しながら有する場合があることから、医療、福祉、労働分野等の関係機関間の連携も重要である。このため、保健所、精神保健福祉センター、福祉事務所、労災病院、産業保健推進センター、地域産業保健センター、メンタルヘルス対策支援センター等はもとより、弁護士会・消費生活センター等多重債務に関連する相談機関、地域におけるその他の相談機関、自殺予防活動を行う民間団体との間で、適宜連携を図ること。

具体的には、例えば、都道府県及び政令指定都市において実施している自殺対策連絡協議会を活用することとともに、相談者等が他機関についても知る機会を得られるよう、相談機関同士のポスター、パンフレット等の相互提供、相談者等から求めがあった場合等の相談者等への他機関の案内、他機関との合同での相談活動を行うなどが考えられること。

3.その他

このほか、自殺総合対策大綱に基づき、公共職業安定所の窓口における職業相談の実施及び失業に直面した際に生じる心の悩み相談など様々な生活上の問題に関する相談対応、その他研修、普及啓発など自殺予防に資する取組について、引き続き充実を図ること。

(参考)

1 メンタルヘルスに関する相談機関

① 保健所

地域保健法に基づき都道府県、地方自治法で定める指定都市、中核市その他の政令で定める市又は特別区に設置された行政機関。精神保健を含め、地域の保健、衛生について企画、調整等を行うと共に、相談、訪問指導も行っている。

http://www.ncnp.go.jp/ikiru-hp/ikirusasaeru/index.html

(自殺予防総合対策センターのホームページ)

② 精神福祉保健センター

精神保健福祉法に基づき都道府県、政令指定都市に設置された精神保健福祉に関する技術的中核機関で、精神保健福祉に関する企画立案、普及啓発、調査研究等の他、複雑困難な相談指導についても行う。

http://www.ncnp.go.jp/ikiru-hp/ikirusasaeru/index.html

(自殺予防総合対策センターのホームページ)

③ 労災病院

(独)労働者健康福祉機構が設置・運営する医療機関。メンタルヘルスに関しては、精神科医師等によるストレス関連疾患を有する患者の診察等のほか、電話相談、カウンセラーによる対面型カウンセリング、インターネットによるメール相談等を実施している。

http://www.rofuku.go.jp/jigyogaiyo/sisetuitiran.html

④ 産業保健推進センター

(独)労働者健康福祉機構が各都道府県に設置・運営する施設。産業医等に対するメンタルヘルス予防等に関する研修、相談及び情報提供等を実施している。

http://www.rofuku.go.jp/sanpo/

⑤ 地域産業保健センター

労働者数50人未満の小規模事業場の事業者や労働者に対し、各種健康相談、個別訪問による産業保健指導及び産業保健情報の提供を行うほか、長時間労働者への医師による面接指導の相談窓口を開設している。

お近くのセンターの場所については、都道府県労働局労働基準部安全衛生課(若しくは労働衛生課)又は労働基準監督署に問い合わせられたい。

※ 地域産業保健センターは委託事業として実施しているものの名称であり、委託先は年度ごとに変わる可能性がある。

⑥ メンタルヘルス対策支援センター

事業場に対し、国の基準に適合し登録されたメンタルヘルス相談の専門機関の紹介、メンタルヘルス対策の周知等を行う。

※ 「メンタルヘルス対策支援センター」は委託事業として実施しているものの名称であり、委託先は年度ごとに変わる可能性がある。

平成20年度にあっては、④産業保健推進センターに設置されている。

2 生活保護

① 福祉事務所

社会福祉法に規定されている「福祉に関する事務所」をいい、福祉六法(生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法)に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務を司る第一線の社会福祉行政機関であり、都道府県及び市(町村は任意)に設置されている。

 

別紙1

○現下の経済情勢を踏まえた自殺対策の推進について(依頼)

平成21年1月23日府政共生第77号

(各都道府県知事・各政令指定都市市長あて内閣府自殺対策推進室長通知)

現下の経済情勢については、今後、解雇及び雇止めにより住居の退去を余儀なくされる者(以下「離職退去者」という。)が相当数新たに発生するなど、自殺の社会的要因である失業や倒産、多重債務問題が深刻化することが懸念されます。

都道府県及び政令指定都市(以下「都道府県等」という。)においては、これまでも各地域において離職退去者に対する支援等を始めとする対策を実施していただいているところですが、自殺対策の担当部署においても、下記事項に留意した上で、自殺対策の更なる推進をお願いします。また、貴管下の市町村に対しても、自殺対策の実施状況について伝達されるよう宜しくお取り計らい願います。本通知については、関係府省の担当部局と協議済みである旨、申し添えます。

なお、「自殺対策を考える議員有志の会」から自殺対策を担当する野田内閣府特命担当大臣に対して別添要請がありましたので、参考までに添付します。

1.関係機関との情報共有の強化、相談活動の充実

都道府県等においては、関係機関と連携して自殺対策を推進していただいているところですが、今後とも自殺対策連絡協議会の積極的な活用等を通じた関係機関との情報共有及び相談機関との連携を強化するよう願います。なお、都道府県等における相談機関の一覧については、国立精神・神経センター精神保健福祉研究所自殺予防総合対策センターのホームページ(http://www.ncnp.go.jp/ikiru-hp/ikirusasaeru/index.html)に掲載されているので、御参照ください。

また、管下の精神保健福祉センター等で実施している相談活動については、例えば相談受付時間の延長など実施可能な範囲で充実を図るよう御留意ください。

2.社会的要因に対する相談支援体制との連携強化

(1) 多重債務者に対する相談支援

「多重債務問題改善プログラム」(平成19年4月20日多重債務対策本部決定)に基づき、国及び地方公共団体等において、多重債務者に対する相談支援策が実施されているところです。都道府県等においては、関係機関との一層の連携強化を図ることにより、多重債務者が自殺に追い込まれることのないように相談支援体制の強化を願います。具体的には、相談者の中には精神疾患に罹患している者もあることから、都道府県等の多重債務相談窓口及び日本司法支援センター(法テラス)等と精神保健福祉センターやいのちの電話等の相談機関とで連携し、相互に利用者へ周知するよう依頼等するほか、多重債務問題に取り組む民間団体との連携にも配慮願います。

(2) 離職退去者に対する相談支援

離職退去者に対し、全国の公共職業安定所(詳細は、厚生労働省ホームページhttp://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/dl/h1212-4a.pdf参照)において、職業相談、職業紹介及び住宅確保等に関する相談が実施されています。また、住宅資金及び生活資金の貸付けとともに、廃止決定していない雇用促進住宅や公営住宅等の空家の活用を通じた離職退去者への支援が実施されているところです。

都道府県等においては、上記のような関係府省の取組を踏まえて、関係機関等と連携し、離職退去者が自殺に追い込まれることのないよう相談支援体制の強化を願います。具体的には、公共職業安定所等と精神保健福祉センターやいのちの電話等の相談機関とを相互に利用者へ周知するよう依頼するなど連携を図ることとしてください。

3.自殺が多発する地域におけるパトロール活動等の実施

都道府県等において、管下に自殺が多発する地域を把握されている場合には、当該地域の警察署及び民間団体等と連携しつつ、必要に応じてパトロール活動等を実施することにより、自殺防止を図るように御留意ください。

4.地域の相談員を対象とした研修会の開催

都道府県等においては、地域で活動する民間団体との連携を図りつつ、自殺対策を推進していただいているところですが、民間団体等が地域で活動する相談員を対象とした研修会を実施する場合には、公的施設の供用その他可能な限り研修会の開催を支援するなど、積極的な御対応を願います。

また、内閣府自殺対策推進室においては、地域における自殺対策の推進を支援するため、民間団体等とも連携し、都道府県職員及び地域で活動する民間団体の従事者を対象に具体的な支援策等を紹介するワークショップの開催等を検討しています。詳細については、決定次第、別途連絡しますので、御承知おき願います。

以上

[別添]

○自殺緊急対策に関する要望書

平成20年12月18日

(内閣府特命担当大臣あて自殺対策を考える議員有志の会通知)

【主旨】

日本の自殺者数が3万人を超えたのは1998年。そのはじまりは「1998年3月」である。1997年の11月に三洋証券と北海道拓殖銀行が相次いで経営破たんに陥り、さらに山一証券が自主廃業に追い込まれた。その年度の決算期、つまり1998年3月に完全失業率が初めて4%を超え、倒産件数が1990年以降で過去最多を記録。この経済情勢の悪化に引きずられるようにして日本の自殺者数は急増しはじめた。私たちは、それを「98年3月ショック」と呼んでいる。

そして今、そのとき以上の危機に直面していると思わざるを得ない。ご承知の通り、サブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機は日本を直撃し、いま全国で倒産そして失業者が急増している。当時よりも深刻なのは、派遣労働者をはじめとする非正規労働者そして外国人労働者が次々と契約を打ち切られていることである。「仕事がなくなると住むところもなくなる。失業保険などの社会保障も受けられない」など、解雇されると同時に生活基盤を失うことになる。雇用や住宅など緊急対策は取られようとしているが、究極の悲劇である自殺に対する対応が弱いと考える。

今年7月に民間の有志で作られた「自殺実態解析プロジェクトチーム」がまとめた「自殺実態白書2008」に『自殺は、人の命に関わる極めて「個人的な問題」である。しかし同時に、自殺は「社会的な問題」であり、「社会構造的な問題」でもある』とある。国そして政治の最大の責任は「国民の命を守ること」だと考える。自殺対策の現場で活動する人たちからも「このままだと“09年3月ショック”が起きかねない!」との声が数多く寄せられている。過去の教訓から学び、自殺に追い込まれる人を一人でも減らすために、そして国民の「いのち」を守るために、国を挙げて自殺対策に緊急的に取り組む必要がある。

すべての省庁および都道府県や市区町村などにも緊急要請を行うとともに、あらゆる関係団体および民間団体との連携を強化し、実効性と迅速性を上げる必要がある。また、そのために必要な経費の確保にも緊急対応をすべきだと考える。私たち『自殺対策を考える議員有志の会』は政府を挙げての自殺緊急対策を強く求めるとともに、直ちに次の「自殺緊急対策5項目」を実施することをここに強く要望する。

【自殺緊急対策5項目】

1、自殺実態の緊急公表

毎月の自殺者数を、翌月の早い段階で緊急公表すること。社会全体に警鐘を鳴らし、危機感を共有するとともに早急に具体的対応を実行すること。

※5カ月前の統計では具体的対策が打てない。警察庁は硫化水素自殺の統計を翌月に公表しており、不可能ではないと考える。

2、ハイリスク者への緊急支援策の実施

自殺実態から、それぞれの地域での職業や性別、自殺の要因などを分析し、ターゲットを絞った上で、緊急かつ効果的な対策を実施すること。

※「自殺実態白書2008」から見えてきた自殺の危機経路(プロセス)を参考にして、倒産や失業から連鎖が想定される要因への対策を重点的に行う。

3、緊急相談窓口の開設

「死にたい。もう生きられない」という状況に追い込まれた人たちに対して、包括的な支援を行う緊急相談窓口を全国の市区町村に開設すること。

また、自殺のハイリスク地(自殺の名所等)における水際対策(相談所の設置、パトロールの強化、相談所案内看板の設置等)の強化を図ること。

※切迫した状況に追いやられている人ほど自分を見失い、どういった問題で悩んでいるのかを把握できない傾向にある。まず相談できる窓口が必要であり、対策は様々な関係者と連携して行う。

4、行き詰まった時のシェルター(緊急避難場所)の開設

仕事も住むところも失って行き詰まった時に家族と一緒に駆け込める、社会的に「休息」できるシェルター(緊急避難場所)を各都道府県に開設すること。

※倒産と失業は男性の自殺者を急増させる。1998年では男性の自殺者が78.1%を占め、特に45歳から64歳までの中高年男性の増加が顕著である。男性が家族と一緒に駆け込める場所が必要と考える。

5、地域の相談員を対象とした緊急合同研修会の実施

行政や民間を問わず、地域の相談員の間で様々な支援策や相談窓口に関する情報を共有するための合同研修会を早急に実施すること。

※行政の縦割りや専門分野の壁に阻まれて、問題を多く抱えた人ほど支援策にたどり着きづらいという社会的ジレンマが生じている。支援策に関する情報を、あらゆる窓口で提供できる体制が必要である。

 

別紙2

○現下の経済情勢を踏まえた自殺予防対策について(依頼)

平成21年1月30日健総発第0130001号・社援総発第0130001号・障精発第0130001号

(/都道府県/政令指定都市/衛生主管部(局)長・精神保健福祉主管部(局)長・民生主管部(局)長、中核市衛生主管部(局)長・民生主管部(局)長、/保健所政令市/特別区/衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局総務課長、社会・援護局総務課長、社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長通知)

自殺対策については、平成19年に策定された自殺総合対策大綱に基づいて取り組みを推進していただいているところであるが、現下の経済情勢により解雇及び雇止めに伴い住居の退去を余儀なくされる者が新たに相当数発生するなど、自殺の社会的要因である失業や倒産、多重債務問題が深刻化する懸念があることから、別紙1(写)のとおり、平成21年1月23日付け府政共生第77号「現下の経済情勢を踏まえた自殺対策の推進について」により、内閣府自殺対策推進室長から、自殺対策の更なる推進を図るよう各都道府県知事・政令指定都市市長あてに依頼がなされたところである。

これを踏まえ、関係機関においては、自殺の発生は、健康問題のほか、失業等経済・生活問題、勤務問題、家庭問題等、様々な社会的要因が複雑に関係していることに留意し、下記の事項に取り組むとともに、さらに都道府県にあっては市町村にも周知し、一層の自殺対策を行っていただくようお願いする。

なお、大臣官房地方課長、労働基準局監督課長及び安全衛生部労働衛生課長並びに職業安定局総務課長より、都道府県労働局担当部長に対して、別紙2(写)の通り、通知したところであるので、了知方お願いする。

1.相談活動の充実

健康問題、失業等経済・生活問題、勤務問題等の様々な課題に対する相談活動は、自殺対策の観点からも重要であることから、それぞれの課題に対応した相談機関においては、引き続き相談者の立場に立った、きめ細かい相談活動を着実に実施すること。

特に、自殺に至る可能性のある者は精神的課題を抱えていることが多いことから、保健所、精神保健福祉センター等、管下のメンタルヘルスに関する相談機関においては、可能な限り、相談機会の拡大、相談者が様々な課題を抱えているという背景を踏まえた相談活動の質の向上等、相談活動の充実を図ること。

2.健康要因と社会的要因に対する関係機関の間での連携の強化

自殺に至る可能性のある者が抱える課題は多様であり、健康要因と社会的要因の課題を相互に関連しながら有する場合があることから、医療、福祉、労働分野等の関係機関間の連携も重要である。このため、保健所、精神保健福祉センター、福祉事務所、労災病院、地域産業保健センター、メンタルヘルス対策支援センター、ハローワーク、労働基準監督署、総合労働相談コーナーはもとより、弁護士会・消費生活センター等多重債務に関連する相談機関、地域におけるその他の相談機関、自殺予防活動を行う民間団体との間で、連携を図ること。

具体的には、例えば、都道府県及び政令指定都市において実施している自殺対策連絡協議会を一層活用するとともに、相談者が他機関についても知る機会を得られるよう、相談機関同士のポスター、パンフレット等の相互提供、必要に応じた相談者への他機関の案内、他機関との合同での相談活動を行うなどが考えられること。

3.自殺総合対策大綱に基づく対策の実施

このほか、自殺総合対策大綱に基づき、研修、普及啓発等、自殺予防に資する取組について、引き続き充実を図ること。