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通達:産業医制度及び地域産業保健センター事業等の周知及び指導等について

 

産業医制度及び地域産業保健センター事業等の周知及び指導等について

平成20年2月5日基安労発第0205001号

(都道府県労働局労働基準部労働衛生主務課長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長通知)

 

事業場における労働者の健康管理については、労働安全衛生法第13条の規定に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場にあっては、産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならないこととされている。また、産業医の選任義務のない事業場における労働者の健康の確保に資するため、労働安全衛生法第19条の3に基づく事業として「地域産業保健センター事業」等を実施している。

このような中、「労働安全等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」(平成19年8月、総務省。以下「勧告」という。)において、別添1の通り、事業場における産業医の活動の活性化及び小規模事業場の安全衛生対策の適切化について指摘を受けたところである。

このため、下記のとおり、産業医制度、地域産業保健センター事業等について、より一層の周知及び必要な指導等を行うこととしたので、対応方よろしくお願いするとともに、管下労働基準監督署にも周知されたい。

なお、対応に当たっては、「産業医について」リーフレット及び「地域産業保健センターについてのご案内」リーフレットを作成したので、事業者に対する産業医制度及び地域産業保健センター事業の周知等の際に活用されたい。併せて、「地域産業保健センター事業についてのご案内」リーフレットについては、地域産業保健センター事業の委託先にも配布し、周知に活用されたい。

おって、別添2、3、4のとおり、関係団体等に対しても要請を行っているので申し添える。

 

1.産業医制度について

(1) 常時50人以上の労働者を使用する事業場であって、産業医が選任されていない事業場に対して、選任による産業保健上の効果を示しつつ、選任義務を遵守するよう、指導を行うとともに、事業者団体を通じて、産業医の選任義務を遵守するよう、周知徹底すること。

(2) 衛生委員会への出席、職場巡視等の産業医活動の必要性について、事業者団体を通じて、事業者に周知徹底すること。

(3) 事業場における産業保健活動の活発化を図るため、産業医から事業者に対して、産業医活動の必要性に関して助言することについて、都道府県医師会等を通じて協力を要請すること。

2.地域産業保健センター事業について

(1) 小規模事業場に対して、地域産業保健センターの利用について、より一層積極的に働きかけること。

(2) 個別の事業者の同意が得られた場合には、当該事業場に関する情報(事業場名、所在地、連絡担当者氏名等)について、地域産業保健センターに提供する等、当該センターの利用促進に協力すること。また、地域産業保健センターに対し、事業説明会等の場を活用して小規模事業場の登録の一層の推進を図るよう指導すること。

なお、産業医共同選任事業については、勧告を踏まえ、現行の「小規模事業場産業医共同選任促進事業」は経過措置として残しつつ、平成20年度からは、新規に「小規模事業場産業医活用促進事業(仮称)」を実施することとしている。小規模事業場における産業保健水準の向上を図るためには、本事業を有効に活用することが重要であると考えるので、新規事業の実施に当たっては、補助金交付先である(独)労働者健康福祉機構に対して、各労働局及び労働基準監督署が助成対象事業場の開拓、事業の支援等の面で連携・協力を行うことを予定しており、詳細については別途通知する予定である。

 

別添1

労働安全等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告(抜粋)

2 事業場における産業保健活動の適切な実施の確保

【制度の概要】

我が国の労働者の健康を取り巻く状況をみると、一般定期健康診断の結果、何らかの問題所見を有する労働者が年々増加する傾向にあるなど(平成17年は約586万人)、労働者の心身の健康を確保し、職業性疾病や作業関連疾患を予防する健康確保対策等が重要となっている。

この健康確保対策等について、事業者は、

i) 安衛法第13条第1項において、常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場において産業医を選任し、その者に労働者の健康管理等を行わせなければならないとされ、

ii) 安衛法第13条の2において、常時50人以上の労働者を使用する事業場以外の事業場については、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師等に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるよう努めなければならない

とされている。

また、上記ii)の事業者を支援するため、厚生労働省は、

i) 労働者の健康管理等に係る健康指導、健康相談その他の必要な援助を行う地域産業保健センター事業(以下「地域センター事業」という。)、

ii) これらの事業者が産業医の要件を備えた医師を共同で選任した場合に要した費用の一部を助成する産業医共同選任事業

を行っており、安衛則第15条の2第2項において、事業者は、産業医の選任、地域センター事業の利用等に努めるものとされている。

(1) 事業場における産業医の活動の活性化

【制度の概要】

上記のとおり、常時50人以上の労働者を使用する事業場には産業医の選任義務が課せられている。

この産業医の職務としては、安衛則第14条において、

i) 健康診断及び面接指導等の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること、

ii) 作業環境の維持管理に関すること、

iii) 作業の管理に関すること

等が規定されている。

また、産業医は、安衛則第15条において、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならないとされている。

なお、平成18年3月に、厚生労働省労働基準局長が主催する「産業医・産業医科大学のあり方に関する検討会」が設置されており、同検討会において産業医育成に関する将来ビジョンや産業医の職務の在り方、中小企業における産業医活動促進のための支援方策等が検討されているところである。

【調査結果】

今回、製造業、建設業及び陸上貨物運送業の事業場のうち、産業医の選任義務のある250事業場について、産業医の選任状況、産業医の活動状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。

ア 産業医の選任義務があるにもかかわらず、選任していない事業場あり。また、産業医を選任している事業場でも事業者が産業医の職務を十分に行わせていない状況あり

(ア) 産業医の選任義務のある事業場の約4分の1が産業医を選任していない

労働者の健康確保については、過重労働やメンタルヘルス対策等近年新たな課題が生じており、これらの課題に対応するため、産業医を選任することは重要となっているが、厚生労働省の平成17年の調査結果(5年ごとに事業所単位で実施されている労働安全衛生基本調査。前述1―(2)―イ―(イ)参照)によると、産業医の選任義務のある事業所のうち産業医を選任しているものは75.4%となっており、約4分の1の事業所は産業医を選任していない。

また、当省が調査した製造業、建設業及び陸上貨物運送業の250事業場(注1)において産業医を選任しているものは96.8%(242事業場)となっている。ただし、選任していない事業場について、その理由をみると、そもそも必要がないとしているもの、期待される効果と比較して産業医の選任費用(注2)が負担であるとしているものがみられる。

(注)

1 全国の規模別の事業場の分布に比べ、規模の大きい事業場を多く選定した。

2 産業医の選任費用については、財団法人産業医学振興財団の調査(「産業医活動に関する調査報告書」(平成14年8月))によると、調査対象の嘱託産業医(開業医60人。担当している事業場数は平均4.3事業場で、1事業場における労働者は平均716人)の1か月の報酬として10万円から30万円が35%と最も多くなっている。

しかしながら、上記のとおり、産業医を選任することは事業者の義務であり、産業医の選任を推進するため、産業医選任の効果等を明らかにすることが必要となっている。

(イ) 事業者が、産業医に作業場等の巡視等を行わせていない例も多く、中には、事業場の産業保健活動に産業医をほとんど関与させていない例もみられる。

産業医を選任している242事業場が、産業医に実施させているi)作業環境等の管理のための作業場等の巡視の状況及びii)衛生委員会への出席状況についてみると、次のとおり作業場等の巡視等が励行されていない状況がみられる(製造業は平成16年12月から17年11月までの実績。建設業及び陸上貨物運送業は平成17年度の実績)。

① 作業環境等の管理のための作業場等の巡視が月1回未満となっている事業場47.5%(242事業場中115事業場)

このうち、1回も巡視が実施されていない事業場32.2%(242事業場中78事業場)

② 産業医が衛生委員会に出席していない事業場51.5%(衛生委員会を開催している235事業場中121事業場)

なお、これらのほか、健康診断結果に基づく保健指導(製造業は平成16年度の実績。建設業及び陸上貨物運送業については17年度の実績)については、25.8%(保健指導の実施状況が判明している240事業場中62事業場)の事業場で、選任している産業医が関与していない状況がみられた(製造業は平成16年度の実績。建設業及び陸上貨物運送業は平成17年度の実績)。

また、産業医による上記①や②の活動が行われていない事業場の中には、以下のように産業医の活動が形がい化している事例がみられた。

① 所轄労基署に産業医の選任報告は提出しているものの、産業医との契約書は交わしておらず、事業場の産業保健活動に産業医を全く関与させていない事業場(2事業場)

② 産業医は、労基署に提出する「定期健康診断結果報告書」に記名捺印するのみとなっている事業場(1事業場)

イ 事業者は、産業医に作業場等の巡視等を行わせていない理由の一つとして、作業の中で有害物質を扱っていない場合や事業場に定常的に労働者がいないためにその必要性を感じていないこと等を挙げており、事業場において産業医による作業場等の巡視等の必要性が認識されていない状況となっている

上記ア(イ)のうち、例えば、作業場等の巡視が月1回未満となっている事業場について、その理由をみると

i) 作業の中で有害物質を扱っていない、貨物運送が主な仕事であり作業場に定常的に労働者がいない等業務上の特性等からその必要性を感じていないとするものが19.3%(月1回未満となっている理由が判明している88事業場中17事業場)、

ii) 現場をよく知っている衛生管理者(注)等による巡視が行われているため産業医による巡視は必要ないとするものが17.0%(月1回未満となっている理由が判明している88事業場中15事業場)

等、産業医による作業場等の巡視の必要性が認識されていない状況となっている。

(注) 衛生管理者とは、労働者の健康障害を防止するための措置や健康の保持増進のための措置等のうち衛生に係る技術的な事項を管理する者であり、一定の免許(第1種衛生管理者免許等)又は資格(医師、歯科医師等)が必要。労働者50人以上のすべての事業場で選任することとされている(安衛法第12条、安衛則第7条)。

これらの状況について、厚生労働省では、産業医による作業場等の巡視の趣旨は、労働者の健康管理上、事業場における作業環境、作業条件等を平素から把握しておくことにあり、i)有害物質の有無に限られるものではないこと、ii)巡視の時間帯の設定や巡視方法の工夫により対応すべきであり、作業場に労働者が不在であっても作業環境や勤務状況等を確認することは重要であること、また、iii)衛生管理者の巡視では、例えば、健康診断結果等を踏まえて現場の問題点を医学的な知見から検討すること等は不可能であることから、産業医による月1回の作業場等の巡視は不可欠であるとしている。

以上のことから、作業場等の巡視が励行されていない原因として、産業医による作業場等の巡視が義務付けられている目的や効果に関する事業者の認識が不足していることが挙げられる。

これについては、安衛法第13条第3項において、「産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる」とされており、事業者の認識不足を解消する手段のひとつとして、産業医が作業場等の巡視等について、その必要性に関し事業者に助言することも効果的であると考えられる。

【所見】

したがって、厚生労働省は、事業場における労働者の健康確保等の観点から、次の措置を講ずる必要がある。

① 事業者に対し、産業医の選任の効果等を明らかにした上で産業医の選任義務を遵守するよう、業界団体等を通じてより一層の指導を行うこと。

② 産業医の活動の励行を確保するため、

i) 業界団体等を通じ、事業者に対して産業医の活動の必要性について周知を徹底するとともに、

ii) 産業医の活動に関し認識が不足している事業者に対して、当該産業医により、その必要性に関して助言することについて、関係団体を通じ産業医に要請すること。

(2) 小規模事業場の安全衛生対策の適切化

【制度の概要】

ア 地域センター事業

厚生労働省は、産業医の選任義務のない労働者50人未満の事業場における健康管理等を支援するため、上記2「制度の概要」のとおり、地域センター事業を実施している。

この地域センター事業は、「地域産業保健センター事業実施要綱」(平成19年1月15日付け基発0115002号厚生労働省労働基準局長通知、以下「実施要綱」という。)により、独自に医師を確保し、労働者に対する健康指導、健康相談等の産業保健サービスを提供することが困難な小規模事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場)で働く労働者に対する産業保健サービスを充実することを目的として、平成5年度から実施されている。

地域センター事業の内容は、①健康相談窓口の設置、②個別訪問産業保健指導の実施、③産業保健情報の提供、④地域産業保健センター運営協議会の設置、⑤説明会の開催等であり、平成18年7月現在事業が実施されているのは全国で347か所、平成18年度予算(労働保険特別会計)は24億6,021万円となっている。

また、厚生労働省は、平成10年度から中小規模事業場が集まる都市部などの地域産業保健センター(以下「地域センター」という。)について、従来の事業内容に加えて、①夜間・休日の健康相談窓口の開設、②メンタルヘルス相談窓口の開設回数増、③個別訪問産業保健指導の回数増、④地域産業保健問題協議会の開催を行うものを「拡充センター」として指定しており、平成18年7月現在、全国347地域センターのうち87センターが拡充センターとして指定されている。

なお、厚生労働省では、地域センター事業について、平成18年度まで郡市医師会との随意契約により委託していたものを、19年度からは公募により事業の実施希望者を募り、委託先を選定することとしている。

小規模事業場における健康管理等を支援するためには、地域センター事業を効果的・効率的に行うことが重要となっている。

イ 産業医共同選任事業

産業医の選任義務のない労働者50人未満の小規模事業場においては、健康診断の実施率が低く、有所見率が高い。このような状況の中、産業医を選任することにより労働衛生水準を向上させる必要があるとして、厚生労働省は、上記2「制度の概要」のとおり、複数の小規模事業場の事業者が産業医の要件を備えた医師を共同して選任した場合に要した費用の一部を助成する小規模事業場産業保健活動支援促進助成金制度による産業医共同選任事業を実施している。同事業は、平成8年に中央労働基準審議会(当時。現在の労働政策審議会)の建議において、小規模事業場の労働者に対して産業保健サービスが提供されるための体制づくりとして、「小規模事業場が産業医を共同して選任すること等についてその促進を図ることとし、そのための必要な支援策について検討する必要がある」とされた提言を受けて、平成9年度から実施されており、最大3年間継続して同事業を行うことができるものとなっている。1事業場当たりの助成金額は、事業場の労働者の人数によって異なり、年額5万5,400円、6万7,400円又は8万3,400円となっており、平成18年度予算(労働保険特別会計)は、2億693万円となっている。

また、産業医共同選任事業については、独立行政法人労働者健康福祉機構が事業実施のための事務手続を行っており、同機構の都道府県組織である産業保健推進センター(以下「推進センター」という。)が窓口となって事業者からの申請を受け付け、同機構本部が申請に対する審査等を行っている。

産業医共同選任事業は、小規模事業場が複数集まって共同で産業医を選任することにより、一事業場当たりの選任コストを下げ、より選任しやすくするための事業であり、上記の地域センター事業とあいまって小規模事業場に対する安全衛生対策の柱の一つとなっている。

【調査結果】

今回、

i) 地域センター事業について、22労働局管内の187地域センターの業務実績、このうち32地域センターにおける業務の実施状況、22労働局における委託費の配分状況及び労働者50人未満の194事業場における地域センターの業務の認知状況等、

ii) 産業医共同選任事業について、厚生労働省、独立行政法人労働者健康福祉機構本部及び22推進センターにおける事業の実施状況、労働者50人未満の194事業場における事業の認知状況等

を調査した結果、次のような状況がみられた。

ア 地域センター事業

(ア) 地域センターが行う主な事業である健康相談窓口の開設や、個別訪問産業保健指導の実績は低調なものあり

a 健康相談窓口の開設状況

健康相談窓口は、実施要綱によれば、医師等が小規模事業場の事業者や労働者を対象として相談窓口を開設するものであり、健康診断結果に基づいた健康管理、成人病の予防方法やメンタルヘルス等に関する相談を受け付けている。

この健康相談等の窓口の開設回数について、「地域産業保健センター事業の運営について」(平成13年4月2日付け基安労発第7号厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長通知)では、原則として、

i) 地域センターのうち拡充センターとしての指定を受けていない地域センター(以下「一般センター」という。)においては、健康相談が週1回、メンタルヘルス相談は月1回

ii) 拡充センターにおいては、健康相談は週1回、夜間相談は週1回、休日相談は週1回、メンタルヘルス相談は月2回

の開設が目安とされている。

今回、平成16年度の業務実績を把握した133の一般センター及び54の拡充センターにおける健康相談窓口の開設実績をみると、表4及び表5のとおり、実施の目安を下回る地域センターが多くみられ、中には全く開設されていない地域センターもある。

 

表4 187地域センター(一般センター133、拡充センター54)における健康相談、夜間健康相談及び休日健康相談の各窓口の開設状況(平成16年度)

(単位:センター、%)

図

(注)

1 当省の調査結果による。

2 表中の網掛け部分は、開設回数が実施の目安を超えている地域センターである。

3 割合は、少数点以下第2位を四捨五入した。

 

表5 187地域センター(一般センター133、拡充センター54)におけるメンタルヘルス相談窓口の開設状況(平成16年度)

(単位:センター、%)

図

(注)

1 当省の調査結果による。

2 表中の網掛け部分は、開設回数が実施の目安を超えている地域センターである。

3 割合は、少数点以下第2位を四捨五入した。

さらに、187地域センターにおける健康相談窓口の1回当たりの平均利用者数は、表6のとおり2.6人であり、平均利用者が1人に満たない地域センターが40センター(21.4%)みられる。

 

表6 187地域センター(一般センター133、拡充センター54)における健康相談窓口開設1回当たりの平均利用者数(平成16年度)

(単位:センター、%)

 

区分

一般センター

拡充センター

窓口1回当たり利用者数

 

センター数

割合

センター数

割合

センター数

割合

10人以上

8

6.0

4

7.4

12

6.4

7人以上10人未満

8

6.0

2

3.7

10

5.3

5人以上7人未満

13

9.8

3

5.6

16

8.6

3人以上5人未満

18

13.5

13

24.1

31

16.6

2人以上3人未満

16

12.0

7

13.0

23

12.3

1人以上2人未満

38

28.6

17

31.5

55

29.4

0人以上1人未満(0を除く)

29

21.8

8

14.8

37

19.8

0人

3

2.3

0

0

3

1.6

133

100.0

54

100.0

187

100.0

平均

2.5人

2.8人

2.6人

最高

48.9人

38.4人

48.9人

(注)

1 当省の調査結果による。

2 割合は、少数点以下第2位を四捨五入した。

b 個別訪問産業保健指導の実施状況

個別訪問産業保健指導は、実施要綱によれば、医師等が事業場を個別に訪問し、健康管理等に関して指導、助言を行うものとされており、具体的には作業場等の巡視や健康相談等が行われている。

個別訪問産業保健指導の実施回数の目安については、「地域産業保健センター事業の運営について」によると、拡充センターでは月9回程度とされている。

今回、平成16年度の業務実績を把握した54拡充センターにおける個別訪問産業保健指導の実績をみると、表7のとおり、実施回数の目安を下回る拡充センターが多くみられ、中には全く実施されていないものもある。

また、個別訪問産業保健指導の実施回数について特段の規定がない一般センターについても全く実施されていないものがみられた。

 

表7 187地域センター(一般センター133、拡充センター54)における個別訪問産業保健指導の実施状況(平成16年度)

(単位:センター数、%)

図

(注)

1 当省の調査結果による。

2 表中の網掛け部分は、個別訪問産業保健指導が実施回数の目安を超えている地域センターである。

3 割合は、少数点以下第2位を四捨五入した。

c 健康相談窓口の開設状況及び個別訪問産業保健指導の実施状況を総合してみると、いずれの業務も十分に行われていない地域センターが少なくない

地域センターにおいては、健康相談窓口の開設及び個別訪問産業保健指導の実施が基幹的な業務となっていることから、これら二つの業務の平成16年度の実施状況をみると、健康相談窓口1,243回、個別訪問産業保健指導67回といずれの活動も活発に行われている一般センターがある一方で、健康相談窓口14回、事業場訪問3回と活動が低調となっている一般センターもあるなど、実績に大きな差がみられる。

また、拡充センターにおける健康相談窓口の開設回数及び個別訪問産業保健指導の実施状況をみると、いずれの業務も実施回数の目安(注)を下回っているものが54センター中44センター(81.5%)みられる。

(注) 健康相談窓口、夜間相談窓口及び休日相談窓口の開設の目安は、いずれも週1回(年間に換算すると約50回)であることから、これらを合計して年150回、個別訪問産業保健指導の実施回数の目安は月9回であることから、年間に換算し105回とした。

(イ) 地域センターにおける業務実績が低調となっている原因としては、小規模事業場の所在地等の情報が労働局及び労基署から地域センターに提供されていないこと、地域センターの業務が事業場に対し周知されていないこと等が挙げられる

a 地域センター業務の実施上必要な小規模事業場の所在地等の情報が労働局及び労基署から地域センターに提供されていない

地域センターが業務の実施客体である小規模事業場に対し健康相談窓口や個別訪問産業保健指導の利用についての働きかけを効率的に行うためには、管内の小規模事業場の所在地等の情報を把握しておく必要があり、その方法としては、管内の小規模事業場を把握している労働局及び労基署が、事業場に関する情報を地域センターに提供することが効率的かつ効果的であると考えられる。なお、実施要綱では、事業の実施に当たって、受託者は、労働局及び労基署と十分連携をとることとされている。

しかし、労働局及び労基署から情報提供を受けている地域センターは、小規模事業場の把握方法が確認できた12センターのうち6センターと半数にとどまっている。

また、労働局や労基署から情報提供を受けている地域センターについて、情報提供の内容(複数回答)をみると、

i) 労働者の健康確保対策等について、労働局及び労基署に相談した事業者等を個別に紹介されているものが4センター、

ii) 個別訪問に応じそうな事業場の情報の提供を受けているものが2センター、

iii) 小規模事業場の一覧の提供を受けているとするものが1センター

となっており、より幅広な情報提供である、ii)やiii)は少ない。

労働局及び労基署から情報提供を受けていない6センター及び情報提供は受けているものの十分なものとなっていない4センターでは、次のような事情を挙げて、労働局及び労基署からの積極的な情報提供を望んでいる(複数回答)。

① 労働局及び労基署との会議で繰り返し小規模事業場の情報提供を求めているが、現在まで提供されておらず、事業場の情報は商工会等の団体から提供される名簿等により把握している。事業場の一覧は地域センターの業務を行うための基本情報であることから、当該情報の提供を望む(7センター)。

② コーディネーター(注)が同職就任時に訪問先が分からず、個別訪問に応じそうな事業場を紹介するよう労基署に依頼したが、情報は提供されなかった。このようなことから、事業場の把握は、ほとんどが知り合いからの紹介によるものとなっており、個別訪問に応じそうな事業場に関する積極的な情報提供を望む(9センター)。

(注) コーディネーターとは、地域センターにおいて健康相談や個別訪問産業保健指導を担当する医師、労基署又は各種事業者団体等との連絡調整、周知広報のための事業場訪問等地域センターの業務に関する各種の事務的な業務を行う者である。

なお、小規模事業場の把握方法が確認できた12センターにおいて、労働局及び労基署からの情報提供以外の把握方法をみると、i)業界団体や個別企業の訪問、ii)商工会、商工会議所や労働基準協会等が有する名簿等の入手により情報を把握しているが、これらの方法によって得た情報は労働者が50人未満の事業場が区分されていないことなどから、活用するには非効率なものとなっている。

地域センターに対する労働局及び労基署からの事業場一覧の提供について、厚生労働省は、事業場における労働者数等の情報は労働基準監督官の事業場への立入検査等において事業場が任意に提出した情報であり、外部に出すことにより事業場との信頼関係を損ね、行政運営上支障を及ぼすこととなる等として、その提供は困難であるとしている。一方、労働局及び労基署が立入検査等を行った際などに地域センターの利用について事業場に働きかけ、地域センターへの情報提供について事業場の同意を得た場合に提供することは可能としている。

b 個別訪問産業保健指導の実施に当たって行うこととされている事業場の登録が進んでいない

「地域産業保健センター事業の運営について」では、個別訪問産業保健指導を希望する事業場については、予め地域産業保健センターに登録することとされている。

当省が業務実績を把握した187センターの平成16年度の平均登録事業場数は114.4事業場となっており、登録されている事業場が全くないセンターが2センター(1.1%)みられる。

また、登録事業場を増加させるための取組状況をみると、事業説明会を活用するとしている地域センターが11センター中4センターにとどまっているほか、コーディネーターによる事業場訪問については、下述c(b)のとおり全く行われていないセンターもみられるなど、登録事業場の増加に向けた取組は不十分なものとなっている。

なお、平成16年度における登録事業場数と地域センターの個別訪問産業保健指導の年間実施回数との関係をみると、登録事業場数が1ないし50の地域センターの年間平均実施回数は18.2回、登録事業場数が51ないし100の地域センターは33.5回、登録事業場数が201以上の地域センターは56.9回となっており、登録事業場数が増えると個別訪問産業保健指導の実施回数も増えている。

c 地域センターを認知している事業場は半数以下であり、労働局、労基署及び地域センターによる周知・広報の充実が必要となっている

(a) 地域センターを認知している事業場は半数以下

労働者50人未満で地域センターの認知状況が把握できた160事業場のうち、地域センターを知っていると答えたのは73事業場(45.6%)と半数以下となっている。

(b) 労働局、労基署及び地域センターにおける周知・広報活動が不十分なものあり

地域センターでは、事業に関する事業場への周知・広報活動として、事業説明会、コーディネーターによる事業場訪問、パンフレットの郵送等を行っている。

今回、業務実績を把握した187地域センターにおける平成16年度の事業説明会及び事業場訪問の実施状況をみると、

i) 事業説明会は平均6.8回となっているが、多いところは年間51回、少ないところは0回、

ii) 事業場訪問については平均92.6回となっているが、多いところは1,391回、少ないところは0回

となっており、地域センター別にみると、事業説明会20回、事業場訪問1,391回といずれも活発に行われている地域センターがある一方で、事業説明会1回、事業場訪問2回といずれも低調となっている地域センターもあるなど、実績に大きな差がみられる。

また、地域センターへの支援に関する労働局及び労基署への要望を把握できた12センターのうち9センターでは、労働局及び労基署における地域センターの業務の積極的な広報を望んでいる。

d 地域センターに対する委託費の配分は事業の実績によらずほぼ一律。各地域センター間で事業の実施に関する費用に大きな差が生じており、地域センターの事業の活性化に向けたインセンティブが働くような委託費の決定方式とはなっていない

(a) 地域センターの事業の実績はセンター間で相当な差があるものの、委託費の配分はほぼ一律

地域センターに対する委託費の配分は、まず、厚生労働省本省が労働局ごとに委託費を示達し、これを各労働局が地域センターに配分する仕組みとなっている。

また、厚生労働省は、平成17年3月に、「平成17年度地域産業保健センター事業の委託契約額について」(平成17年3月25日付け基安労発第0325001号厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長通知)により、地域センターの委託契約額について、「事業の円滑な実施に支障を来たすことのないよう留意しつつ貴局管内の状況(過去の年度の予算執行状況、1センター当たりの小規模事業場数、面積、人口等)及び地域センターの活動状況を勘案し、効果的な配分とすることにも配意すること」としているが、委託費の算定、配分を行う上で具体的なものとはなっていない。

今回、平成16年度の業務実績の把握を行った187地域センターの委託業務の実績及び委託費を比較すると、表8のとおり、委託業務の実績に相当な差があるものの、委託費には大きな差がみられない。

 

表8 業務実績に差がみられるものの委託費に大きな差がない例

労働局名

地域センター名

(拡充・一般の別)

平成16年度の実績

委託費(千円)

健康相談窓口開設回数

個別訪問産業保健指導実施回数

16年度

17年度

東京

B1(拡充)

84

78

8,130

8,601

 

B2(拡充)

73

0

8,130

8,601

埼玉

B3(一般)

62

8

4,575

4,600

 

B4(一般)

30

0

4,575

4,600

愛知

B5(一般)

318

24

4,575

5,005

 

B6(一般)

17

20

4,575

5,005

高知

B7(一般)

148

3

4,658

4,734

 

B8(一般)

19

9

4,658

4,742

(注) 当省の調査結果による。

また、委託費の配分に当たり地域センターの活動状況等を勘案するためには、事業実績を分析することが不可欠であると考えられるが、平成16年度の各地域センターの事業実績について委託費の配分につながるような分析を行っているとしているのは、調査した22労働局中2労働局のみとなっている。残りの20労働局については、次のような理由により、委託費の配分につながるような事業実績の分析を行っていない、又は行っているとしているものの不十分となっている。

i) 受託者である各地域センターの責任で実施すべきものであることから事業実績を分析していない(5労働局)。

ii) 個別に地域センターに対して指導・助言を行っているものの、委託費の配分につながるような事業実績の分析までは行っていない(4労働局)。

iii) 労働局が主催する地域センター連絡協議会等の際に各センター間の業務実績を比較した資料を提出しているものの、事業実績を分析し、委託費に反映させるまでには至っていない(3労働局)。

iv) その他(8労働局)

さらに、委託費の配分に反映させるような事業実績の分析を十分に行っていない20労働局の平成17年度の委託費の配分状況をみると、7労働局においては一般センターへの配分が一律となっており、その他の労働局でも千円程度の差にとどまっている。

以上のとおり、委託費の配分が実績にかかわらずほぼ一律であり、事業を活性化するものとなっていないことが地域センター事業が低調となっている一因と考えられる。

(b) 委託費の配分が、地域センターの業務の実績によらず、ほぼ一律であることから、地域センターの健康相談の利用者1人当たりの費用及び個別訪問産業保健指導1回当たりの費用は、各地域センター間において相当な差が生じている

平成16年度における地域センターの業務実績に関して、65センターにおける健康相談窓口利用者1人当たりの直接的経費及び個別訪問産業保健指導1回当たりの直接的経費について分析すると、表9のとおり、その費用が最も多い地域センターと最も少ない地域センターとでは健康相談窓口利用者1人当たり約207倍、個別訪問産業保健指導1回当たり約11倍の差がみられる。

 

表9 65地域センター(一般センター48、拡充センター17)における健康相談窓口利用者1人当たり直接的経費及び個別訪問産業保健指導1回当たりの直接的経費(平成16年度)

(単位:千円)

区分

健康相談窓口の利用

個別訪問産業保健指導の実施

直接的経費の合計

94,675

49,508

健康相談窓口利用者数、個別訪問産業保健指導実施回数の合計

10,089

1,898

1人(1回)当たりの費用(平均)

9.4

26.1

1人(1回)当たりの費用の最小値

1.3

5.4

1人(1回)当たりの費用の最大値

270.0

58.3

(注) 当省の調査結果による。

なお、健康相談窓口利用者1人当たり27万円を要している地域センターでは、平成15年度も23万6,300円を要しており、他の地域センターと比較しても突出して多額の費用を要しているが、この原因としては、窓口開設1回当たりの平均利用者が0.2人(窓口開設回数73回に対し、利用者14人)と非常に少なく、非効率な業務運営となっていることが挙げられる。

イ 産業医共同選任事業

(ア) 実施事業場数は減少傾向

産業医共同選任事業について、平成13年度から17年度までの予算額、決算額、予算執行率及び実施事業場数をみると、表10のとおり、予算額、決算額、予算執行率及び実施事業場数のいずれも減少傾向となっている。

 

表10 産業医共同選任事業の助成費及び実施事業場数の推移

(単位:千円、事業場、%)

 

年度

平成13

14

15

16

17

区分

 

 

 

 

 

 

助成費

予算額(a)

227,030

222,713

222,713

205,223

201,128

決算額(b)

190,301

184,335

179,792

162,497

147,170

予算執行率

(b/a)

83.8

82.8

80.7

79.2

73.2

事業場数

2,924

2,842

2,778

2,506

2,269

(伸び率)

(100)

(97.2)

(95.0)

(85.7)

(77.6)

(注)

1 厚生労働省の資料に基づき、当省が作成した。

2 事業場数の伸び率は、平成13年度における産業医共同選任事業実施事業場数を100とした時の指数である。

(イ) 産業医共同選任事業終了後に継続的に産業医を選任している事業場は少数

a 産業医共同選任事業終了時に、終了後も継続して産業医の選任等を行うことを要請している推進センターは半数以下。また、事業終了後に継続して産業医を選任している事業場はほとんどない

調査した22推進センターのうち、平成16年度に産業医共同選任事業を終了した事業場が管内にある19センターにおける同事業終了後における産業医の継続的な選任等の要請の有無をみると、要請しているものが8センター、要請していないものが11センターとなっている。要請していない11センターは、その理由として、

i) 小規模事業場は産業医の選任に要する経費に負担感を持っていることや法的に選任義務がないことから踏み込んだ対応が執れないこと、

ii) 産業医共同選任事業終了後に産業医が選任されていない状況が把握されてもこれを改善・支援するための事業が存在しないこと、

iii) 独立行政法人労働者健康福祉機構本部から事業終了後の支援の具体的な方策が示されていないこと

等を挙げている。

また、要請している8センターのうち3センターは、各事業場における事業終了後の産業医の選任状況等を把握しているが、その内容をみると、以下のとおり、地域センターに登録されている例はみられるものの、継続的に産業医を選任している例はほとんどない。

① 産業医共同選任事業を利用した事業場に対し、産業医の選任を継続するよう啓もうするほか、地域センターへの登録を要請している。

しかし、産業医の選任費用が負担であるとして引き続き選任している実績はない。なお、平成12年度から16年度までに事業が終了した70事業場のすべてが地域センターに登録している。

② 産業医共同選任事業の中核となっている事業場を訪問して事業主と面談し、実情を把握するとともに継続的な産業医の選任について要請するほか、産業医に対しても面談し協力を要請している。

しかし、平成16年度に事業が終了した製造業6事業場のうち産業医を選任したのは1事業場のみとなっている。

③ 産業医共同選任事業が終了する事業場の事業主に対し、事業終了後も引き続き産業保健活動に取り組むよう依頼していたが、産業医の選任に結びつく事例はなかった。

b 調査した事業場においても事業終了後に継続的に産業医を選任している事業場は少数

産業医共同選任事業を実施し、平成15年度から17年度までに事業を終了した34事業場における事業終了後の産業医の選任状況等について調査したところ、継続して産業医を選任している事業場は2事業場(5.9%)にとどまっている。なお、地域センター事業を利用しているものは1事業場(2.9%)となっている。

継続的に産業医を選任していない32事業場のうち、その理由が把握できた28事業場の理由(複数回答)をみると、

i) 産業医の選任費用が負担であるためとしているものが20事業場(71.4%)

ii) これまでどおりの健康診断の実施やかかりつけ医の対応で足りるためとしているものが19事業場(67.9%)

iii) 選任のメリットが感じられなかったためとしているものが3事業場(10.7%)

となっている。

また、事業者から産業医共同選任事業に関して、次のような意見が聞かれた。

① 事業実施期間中の産業医の活動は、当該事業を一緒に行った事業場との合同での講演会の講師(年1回)、事業場訪問による健康管理に関する講話(年1回30分程度)のみであり、事業を行ったことによる効果は特に感じられなかった。このため、事業終了後は健康診断のみを実施しており、これで十分と考えている。

② 事業実施中は産業医に精力的に活動してもらったが、事業を行ったグループの事業場は皆零細企業であり、新たな費用負担は困難であることから産業医の選任は行っていない。

c 独立行政法人労働者健康福祉機構は、産業医共同選任事業の効果が上がっていると評価しているが、この評価は実態を反映していない

独立行政法人労働者健康福祉機構では、産業医共同選任事業に対する評価や要望を把握し、事業の効果的運用に資することを目的として、平成11年度から事業が終了する事業場に対しアンケート調査を実施している。同機構が、平成17年度に事業が終了する事業者に対して平成18年3月に実施したアンケート調査結果では、事業終了後の産業保健活動の取組について、「現在の産業医を引き続き選任する」としている事業場が597事業場中321事業場(53.8%)、「他の産業医を選任する」と答えた事業場が35事業場(5.9%)、「地域センターの産業保健サービスを利用する」、「必要な時、相談できる医師(かかりつけ医)に相談する」など他の代替措置を講ずるとしている事業場が130事業場(21.8%)であり、これらを合わせて8割以上が何らかの産業保健活動を継続するとしており、同機構では、これを事業の効果として挙げている。

しかし、これは事業終了時における事業者の意向を尋ねたものにすぎず、事業終了後に事業者が実際にどのように行動するかとは必ずしも直接には結びつかない。本来、事業の効果をアウトカムベースで評価するのであれば、事業終了後の実際の産業医の選任状況や地域センターの利用状況等について実態を把握する必要があるが、このような評価は行われていない。

このことと上記bの調査結果とを考慮すれば、独立行政法人労働者健康福祉機構の評価は信頼性に乏しいと判断せざるをえない。

d 事業者においては産業医共同選任事業の必要性を感じていないとする意見が多い

労働者50人未満で産業医共同選任事業の認知状況について把握できた158事業場のうち、同事業を知っていると答えた事業場は47事業場(29.7%)であり、このうち45事業場では同事業を利用していない。

この45事業場のうち、23事業場(51.1%)では、同事業を利用していない理由として、労働者の健康確保については、健康診断の実施や健康診断を実施した機関による健康相談を受けること等で十分であると考えていることから、同事業の利用の必要性を感じていないためとしている。なお、その他の理由としては、本社等にいる産業医を活用できるためとしているものが8事業場(17.8%)、手続が煩雑なイメージがあり、共同して事業を実施する事業者を探すのも難しいためとしているものが4事業場(8.9%)等となっている。

また、産業医共同選任事業を利用した2事業場では、すでに同事業を終了しているが、事業終了後は産業医を選任しておらず、産業保健対策として実施されているのは、年1回の健康診断のみとなっている。

e 推進センターの中には、産業医共同選任事業の実施に関する事務負担が大きい一方で補助金額が少ないこと等から同事業の実施を困難視する意見あり

調査を行った22推進センターの中には、次のように産業医共同選任事業の実施を困難視する意見が各1センターみられた。

① 産業医共同選任事業を利用しても産業医の選任のためには経費がかかること、また、小規模事業場には法的に産業医の選任義務がないことから同事業の勧奨方法が見い出しづらい。

② 商工会等を訪問して事業の説明を行っているが、ほとんどの事業者が産業医の選任には経費負担が伴うとして利用までには至らない。

③ 事業者に負担を求めると産業医共同選任事業が利用されないおそれがあることから、助成額のみで産業医と契約するようにしている。また、事業実施事業場の約半分は1年又は2年で選任を取りやめているが、この理由としては、i)1年ごとの再申請や半年ごとの中間報告が必要で事務負担が大きいこと、ii)産業医が多忙であるのに加え、報酬が少ないこと等を理由に産業医が契約解除を申し出ることが挙げられる。

(ウ) 上記(ア)、(イ)の状況がみられた原因は、小規模事業場が共同で産業医を選任すること自体は有効であり、支援は必要と考えられるものの、事業の設計に問題が存在するためと考えられる

小規模事業場が複数集まって共同で産業医を選任すること自体は、1事業場当たりの選任コストを下げることになり、産業医を選任しやすくなるという点では有効であり、これを推進するため、小規模事業場を支援する必要性は認められる。

しかし、産業医共同選任事業の実施事業場数は年々減少傾向にあり、また、事業終了後に継続的に産業医を選任している事業場も少数にとどまっていることから、事業の実施効果が発現しているとは認められない。

このように事業の実施効果がみられない原因としては、事業の設計に問題が存在するためと考えられる。

【所見】

したがって、厚生労働省は、小規模事業場における労働者の健康確保や効果の低い補助事業の整理合理化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。

① 地域センター事業について、

i) 効率的、効果的な業務の実施のため、労働局及び労基署は、地域センターの利用について小規模事業場に対し積極的に働きかけるとともに、事業場の理解が得られる場合には、地域センターに対し事業場に関する情報を提供するなど必要な協力を行うこと。また、地域センターに対し、事業説明会等の場を活用して小規模事業場の登録を一層推進するよう指導すること。

ii) 地域センターに対し、事業説明会やコーディネーターによる事業場訪問の実施回数の基準を定める等により事業場への周知を一層推進するよう指導すると共に、労働局及び労基署においても地域センター事業の周知広報を積極的に推進すること。

iii) 公募による委託方式の下で、事業の活性化が担保されるような委託費の決定方式を導入すること。

② 小規模事業場における産業医の共同選任を的確に推進する観点から、現行の産業医共同選任事業については廃止し、小規模事業場が産業医を共同選任することに対する効果的、効率的な助成方策を検討すること。

 

別添2

○産業医制度及び地域産業保健センター事業の周知について(依頼)

平成20年2月5日基安労発第0205002号

((別記団体の長)あて厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長通知)

労働衛生行政の推進につきまして、平素から格別のご協力を賜り厚く御礼申し上げます。

さて、事業場における労働者の健康管理を効果的に行うためには、医師の医学的な面からの活動が不可欠であり、労働安全衛生法第13条の規定に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場にあっては、産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならないこととされております。また、産業医の選任義務のない事業場における労働者の健康の確保に資するため、厚生労働省では、労働安全衛生法第19条の3に基づく事業として「地域産業保健センター事業」を実施しております。

このような中、「労働安全等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」(平成19年8月、総務省)において、産業医の選任義務があるにもかかわらず未選任の事業場があること、事業者の認識不足から産業医の活動が低調となっている事業場があること、地域産業保健センターの利用状況が十分とはいえない状況にあること等から、事業場における労働者の健康管理の適切な確保のため、事業者団体を通じて、産業医制度及び地域産業保健センター事業のより一層の周知が必要との指摘を受けたところです。

一方、平成20年4月より、長時間労働者に対する医師による面接指導が労働者数50人未満の事業場にも適用されることから、地域産業保健センターにおいて面接指導の窓口を開設することとしております。

つきましては、貴団体におかれましても、下記について会員事業場等に対しご周知いただきますようお願いいたします。

また、周知にあたりましては、「産業医について」リーフレット及び「地域産業保健センターについてのご案内」リーフレットを作成いたしましたので、ご活用いただきますようお願いいたします。

なお、本リーフレットにつきましては、厚生労働省のホームページにも掲載することとしております。

1.産業医制度について

(1) 常時50人以上の労働者を使用する事業場にあっては、産業医制度の趣旨及び目的をより一層ご理解いただき、産業医の選任義務の遵守、産業医活動の活性化を図られたいこと。

(2) 産業医活動の活性化のうち、産業医による作業場等の巡視については、労働者の健康管理上、事業場における作業環境、作業条件等を平素から把握しておく等のため不可欠であり、また、産業医の衛生委員会への出席については、審議における医学的な観点からの助言等を得るために不可欠であるので、ご理解いただきたいこと。

2.地域産業保健センター事業について

産業医の選任義務のない労働者数50人未満の事業場であって、労働者の健康管理等に関する相談、情報の提供等の支援が必要な事業場にあっては、地域産業保健センターの利用を積極的に図られたいこと。

(別記)

(社)日本経済団体連合会

東京商工会議所

日本商工会議所

全国中小企業団体中央会

全国銀行協会

(社)全国地方銀行協会

(社)信託協会

(社)生命保険協会

(社)日本証券業協会

(社)日本損害保険協会

政府関係特殊法人連絡協議会

外航労務協会

(社)日本在外企業協会

石油連盟

石油化学工業協会

石油業経営者懇談会

日本麻紡績協会

日本ゴム工業会

(社)日本化学工業協会

日本ソーダ工業会

日本化学繊維協会

(社)日本ガス協会

日本鉱業協会

(財)石炭エネルギーセンター

電気事業連合会

電線工業経営者連盟

(社)電信電話工事協会

(社)日本機械工業連合会

(社)日本産業機械工業会

日本自動車工業会

(社)日本ベアリング工業会

日本伸銅協会

日本紡績協会

日本製糸協会

日本羊毛紡績会

(社)日本石綿協会

せんい強化セメント板協会

(社)日本船主協会

(社)日本造船工業会

電機・電子・情報通信産業経営者連盟

(社)日本民営鉄道協会

(社)日本民間放送連盟

日本肥料アンモニア協会

全国農業協同組合連合会

(社)大日本水産会

日本醤油協会

ビール酒造組合

日本火薬工業会

(社)日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会

(社)日本中小型造船工業会

(社)全国火薬類保安協会

(社)日本洗浄技能開発協会

日本鉄道車輌工業会

日本製紙連合会

全国段ボール工業組合連合会

全日本紙製品工業組合

全日本紙器ダンボール箱工業組合連合会

(社)全国建築コンクリートブロック工業会

全国生コンクリート工業組合連合会

(社)日本金属プレス工業協会

(社)日本鍛造協会

(社)日本鉄鋼連盟

(社)セメント協会

(社)日本砕石協会

(社)日本砂利協会

(社)日本建設業団体連合会

(社)全国建設業協会

(社)全国中小建設業協会

(社)全国中小建築工事業団体連合会

全国基礎工業協同組合連合会

(社)日本土木工業協会

(社)建築業協会

(社)日本道路建設業協会

(社)日本電力建設業協会

(社)日本鉄道建設業協会

(財)建設業振興基金

(社)日本埋立浚渫協会

(社)日本電設工業協会

(社)日本空調衛生工事業協会

全国管工事業協同組合連合会

(社)日本塗装工業会

(社)日本左官業組合連合会

(社)日本鳶工業連合会

(社)全国建設専門工事業団体連合会

(社)プレハブ建築協会

(社)プレストレストコンクリート建設業協会

全国建設業協同組合連合会

(社)日本橋梁建設協会

(社)全国クレーン建設業協会

(社)日本造園建設業協会

(社)日本海洋開発建設協会

(社)日本建設大工工事業協会

(社)日本建設業経営協会

(社)日本建設躯体工事業団体連合会

(社)日本造園組合連合会

(社)全日本トラック協会

(社)日本港運協会

(社)全国乗用自動車連合会

全国通運協会

全国森林組合連合会

全国素材生産業協同組合連合会

全国木材組合連合会

(社)日本新聞協会

日本百貨店協会

日本チエーンストア協会

日本生活協同組合連合会

(社)全国ビルメンテナンス協会

(社)全国都市清掃会議

(社)全国警備業協会

(社)日本ゴルフ場事業協会

(社)日本鋳造協会

中央労働災害防止協会

建設業労働災害防止協会

陸上貨物運送事業労働災害防止協会

港湾貨物運送事業労働災害防止協会

林業・木材製造業労働災害防止協会

鉱業労働災害防止協会

(独)労働者健康福祉機構

(社)全国労働衛生団体連合会

(財)産業医学振興財団

 

別添3

○産業医活動の活性化に係る産業医への要請について(依頼)

平成20年2月5日基安労発第0205003号

(社団法人日本医師会産業保健担当理事あて厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長通知)

労働衛生行政の推進につきまして、平素から格別のご協力を賜り厚く御礼申し上げます。

さて、事業場における労働者の健康管理を効果的に行うためには、医師の医学的な面からの活動が不可欠であり、労働安全衛生法第13条の規定に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場にあっては、産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならないこととされております。

このような中、「労働安全等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」(平成19年8月、総務省)において、事業者の認識不足から産業医の活動が低調となっている事業場があること等から、事業場における産業医活動の活性化を図るため、産業医の活動に関し、作業場等の巡視、衛生委員会への出席についての認識が不足している事業者に対して、当該産業医により、その必要性に関して助言することについて、関係団体を通じ産業医に要請することとの指摘を受けたところです。

つきましては、厚生労働省としましても、産業医制度について、事業者団体を通じて事業者に周知徹底することとしておりますが、産業医活動のより一層の活性化を図るため、産業医から事業者に対して、下記のとおり産業医活動の重要性に関して必要な助言をいただくよう産業医に要請したいので、貴会におかれましては、所属の認定産業医をはじめとする関係者への周知等のご協力をお願い申し上げます。

おって、本件につきましては、別添のとおり、都道府県労働局より都道府県医師会等を通じて協力を要請することとしておりますので、ご了知くださいますようお願いいたします。

産業医による作業場等の巡視については、労働者の健康管理上、事業場における作業環境、作業条件等を平素から把握しておく等のため不可欠であり、また、産業医の衛生委員会への出席については、審議における医学的な観点からの助言等を得るために不可欠であることについて、事業者に対しご助言いただきたいこと。

別添:(略)

 

別添4

○産業医活動の活性化に係る産業医への要請について(依頼)

平成20年2月5日基安労発第0205004号

(学校法人産業医科大学総務部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長通知)

労働衛生行政の推進につきまして、平素から格別のご協力を賜り厚く御礼申し上げます。

さて、事業場における労働者の健康管理を効果的に行うためには、医師の医学的な面からの活動が不可欠であり、労働安全衛生法第13条の規定に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場にあっては、産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならないこととされております。

このような中、「労働安全等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」(平成19年8月、総務省)において、事業者の認識不足から産業医の活動が低調となっている事業場があること等から、事業場における産業医活動の活性化を図るため、産業医の活動に関し、作業場等の巡視、衛生委員会への出席についての認識が不足している事業者に対して、当該産業医により、その必要性に関して助言することについて、関係団体を通じ産業医に要請することとの指摘を受けたところです。

つきましては、厚生労働省としましても、産業医制度について、事業者団体を通じて事業者に周知徹底することとしておりますが、産業医活動のより一層の活性化を図るため、産業医から事業者に対して、下記のとおり産業医活動の重要性に関して必要な助言をいただくよう産業医に要請したいので、貴大学におかれましては、卒業生等への周知等のご協力をお願い申し上げます。

産業医による作業場等の巡視については、労働者の健康管理上、事業場における作業環境、作業条件等を平素から把握しておく等のため不可欠であり、また、産業医の衛生委員会への出席については、審議における医学的な観点からの助言等を得るために不可欠であることについて、事業者に対しご助言いただきたいこと。