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輸入貨物に係る港湾荷役作業におけるアフラトキシンばく露防止対策について
平成19年5月18日基安化発第0518002号
(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)
アフラトキシンは、熱帯地方等のトウモロコシ等の穀物等に発生するカビ毒として知られており、人に対して発がん性があるといわれている(別紙1参照)。
このため、独立行政法人労働安全衛生総合研究所に依頼し、トウモロコシ荷揚げ作業のアフラトキシンばく露状況等の調査を実施したところであるが、その結果では、アフラトキシンによる健康障害の発生の可能性はほとんどないと判断される。ただし、防じんマスクを使用せずに荷揚げ作業を行った場合や、作業時の発じん状況や輸入されるトウモロコシの汚染状態によっては、アフラトキシンばく露のリスクが高まる可能性があり、防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)に適合した防じんマスクの着用等を徹底することが重要との報告(別紙2)があった。
このようなことから、別添のとおり、関係団体に対して標記の対策について周知徹底方要請したので、各局においても、関係事業者等に対して下記の事項を周知するとともに必要な指導に努められたい。
記
1 保護具の着用
(1) 船倉内での荷揚げ作業の際は、防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)に適合した防じんマスクを常時着用させること。
(2) 保護衣及び保護眼鏡を適切に着用させること。
2 作業衣の脱衣時等の措置
作業衣の脱衣時等における粉じんの吸入を防ぐために、作業終了後に事務所等へ移動する前に適切な方法によって作業衣に付着した粉じん除去を行わせること。
なお、その際には、除去粉じんを周囲の作業者が吸入しないように配慮すること。
3 アフラトキシンのばく露のリスクについての労働者への周知
トウモロコシ等のアフラトキシンに汚染されているおそれのある貨物の荷揚げ作業において、適切な保護具を着用せずに作業を行った場合には、発じんする粉じんの吸入によって、アフラトキシンのばく露のリスクが高まるおそれのあることを労働者に十分に理解させること。
別紙1
アフラトキシンについて
アフラトキシンは、かび毒の一種であり、そのうち最も毒性の強いアフラトキシンB1については、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)との共同の専門家による委員会(JECFA)による報告書(1998年)において、肝臓がんの過剰リスクについて、体重1kg当たり毎日1ngアフラトキシンB1を摂取すると、100万人当たり0.1~3名の肝臓がんが過剰に発生するとされており、また、国際がん研究機関(IARC)においても、グループ1(ヒトに対して発がん性がある。)とされている。
参考
アフラトキシンに汚染されているおそれのある貨物(括弧内は、特に汚染されている可能性のある輸出元国名)
落花生及びその加工品、ピスタチオナッツ、ブラジルナッツ、ジャイアントコーン、アーモンド、クルミ、チリペッパー、レッドペッパー、ナツメグ、ハトムギ、乾燥いちじく(以上、全輸出国)、ターメリック及びその加工品(インドネシア)、とうもろこし(甘味種を除く。)(オーストラリア、ブラジル、米国)、バジルシード(カンボジア、タイ、)、ピスタチオナッツ加工品(ギリシャ)、そば(中国)、アーモンド加工品(米国)、もろこし(こうりゃん等)及びその加工品(ベトナム)、ゴマの種子及びその加工品(ベトナム)、カカオ豆(ベネズエラ)
別紙2
鹿島港におけるトウモロコシ荷揚げ作業のアフラトキシン曝露調査報告書
平成19年5月18日
(独)労働安全衛生総合研究所
労働災害調査分析センター
調査の目的
本調査は、トウモロコシの港湾荷揚げ作業におけるアフラトキシン曝露のリスクの程度を評価することにある。
調査の対象及び方法
平成19年3月26日に鹿島港・A社のプライベートバースに着岸している貨物船でのトウモロコシ荷揚げ作業で調査を実施した。
トウモロコシ荷揚げ作業におけるアフラトキシン曝露を評価するためには、アフラトキシンが含有しているトウモロコシの粉塵曝露を評価し、トウモロコシ粉塵中のアフラトキシン濃度をもとにアフラトキシン曝露を推定していく手法を採用した。従って、今回の調査は主に三つの項目、すなわち、
a.荷揚げ作業者の粉塵曝露評価
b.作業環境中の粉塵濃度評価
c.トウモロコシ粉塵中のアフラトキシン含有量の定性及び定量評価
からなる。
荷揚げ作業の際の粉塵曝露量の測定は、個人サンプラー(PM4NWPS―254、MP―Σ 3、(SIBATA))を用い、粉塵の作業環境測定にはローボリュームエアーサンプラー(PM4NW―354、LV―40B、(SIBATA))と、デジタル粉塵計(LD3、LD3K、(SIBATA))を用いた。アフラトキシンの定性評価には、簡易アフラトキシン検査キット(コーン用、GENETIC ID)を用いた。また、バルグ中及び浮遊粉塵中のアフラトキシンB1の定量測定については協和メデックス(株)KMアッセイセンターに依頼して定量分析を行った。この測定方法は「カビ毒(アフラトキシン)を含有する食品の取り扱いについて」(平成14年3月26日、厚生労働省食監発第0326001号)に従っており、高速液体クロマトグラフィーによる分析で陽性と診断された場合に、高速液体クロマトグラフ質量分析器等により定量分析を行ったものである。
なお、作業場の風景、作業者への個人曝露測定機器の装着、作業環境測定機器設置状況は写真1~5に示すとおりである。
写真1,2 トウモロコシ吸引時の船内風景
写真3.トウモロコシ吸引時の船内風景
写真4.個人曝露測定機器装着風景
写真5.作業環境測定機器設置風景
調査結果及び結果に基づくリスク評価について
1) 荷揚げ作業に伴う粉塵曝露と作業環境中の粉塵濃度
個人サンプラーを用いて3名の労働者に対して実施した粉塵曝露測定の結果を表1に示した。今回の測定にはPM4対応のTRサンプラーを用いて約2.5リットル/分で吸引した。その吸引時間は2時間19分~2時間25分である。
表1.荷揚げ作業者の粉塵の個人曝露
|
採取粉塵量(R) |
採取粉塵量(T) |
吸引量 |
粉塵濃度(R) |
粉塵濃度(T) |
A氏 |
0.46mg |
4.72mg |
363.2l |
1.27mg/m3 |
13.00mg/m3 |
B氏 |
0.81mg |
6.07mg |
359.2l |
2.26mg/m3 |
16.90mg/m3 |
C氏 |
1.01mg |
4.73mg |
348.7l |
2.90mg/m3 |
13.56mg/m3 |
作業環境中のトウモロコシ粉塵濃度を評価するために、TRサンプラー(PM4対応)とオープンフェイスLVSを用いて測定した結果を表2に示した。TRサンプラーは毎分20リットルで50分間、オープンフェイスは毎分10リットルで65分間吸引した。
表2.作業環境中の粉塵濃度
|
採取粉塵量(R) |
採取粉塵量(T) |
吸引量 |
粉塵濃度(R) |
粉塵濃度(T) |
TRサンプラー |
7.85mg |
17.26mg |
1000l |
7.85mg/m3 |
17.26mg/m3 |
オープンフェイスLVS |
|
17.85mg |
650l |
|
27.46mg/m3 |
オープンフェイスLVSの測定と同時にデジタル粉塵計によって併行測定を行った結果よりK値を求めると0.0306mg/m3/cpmとなるため、このK値より作業場全体のデジタル粉塵計による測定結果から推定の総粉塵濃度を求めると、2.20~60.59mg/m3となる(測定場所は図1及び表3に示す)。これは、作業場の風向きによって粉塵濃度に差のあることを示している。
図1.デジタル粉塵計測定場所
表3.K値を用いた総粉塵量
位置 |
時刻 |
測定値 |
総粉塵量 |
1) |
15:16 |
1444 |
44.19mg/m3 |
2) |
15:18 |
1843 |
56.40mg/m3 |
3) |
15:20 |
863 |
26.41mg/m3 |
4) |
15:22 |
507 |
15.33mg/m3 |
5) |
15:24 |
243 |
7.44mg/m3 |
6) |
15:26 |
443 |
13.56mg/m3 |
7) |
15:27 |
215 |
6.58mg/m3 |
8) |
15:29 |
238 |
7.28mg/m3 |
9) |
15:31 |
292 |
8.94mg/m3 |
10) |
15:33 |
178 |
5.44mg/m3 |
11) |
15:35 |
263 |
8.05mg/m3 |
12) |
15:37 |
873 |
26.71mg/m3 |
13) |
15:39 |
1198 |
36.66mg/m3 |
14) |
15:41 |
1758 |
53.79mg/m3 |
15) |
15:43 |
1980 |
60.59mg/m3 |
16) |
15:45 |
1849 |
56.58mg/m3 |
17) |
15:48 |
1126 |
34.46mg/m3 |
18) |
15:52 |
555 |
19.98mg/m3 |
19) |
15:58 |
770 |
23.56mg/m3 |
20) |
16:19 |
704 |
21.54mg/m3 |
21) |
16:37 |
72 |
2.20mg/m3 |
22) |
16:40 |
161 |
4.93mg/m3 |
2) トウモロコシ及び粉塵中のアフラトキシンの定性及び定量結果
今回、現場においてアフラトキシンの簡易測定キットを用いてトウモロコシを全粒グラインドして評価した結果(サイロ内も含む)、いずれのサンプルからも20ppbを超えるアフラトキシンは検出しなかった。しかしながら、この結果は定性的な評価とはいえないこと、さらには全粒をグラインドしたものと浮遊粉塵は異なることなどから、トウモロコシの港湾荷揚げ作業におけるアフラトキシン曝露のリスクを推定するために以下のような考え方に基づいてリスク評価を行った。
1.アフラトキシンの生体内への侵入はトウモロコシ粉塵を介してである。本来、労働衛生的リスク評価の立場を取れば、生体へ影響を与える粉塵は吸入性粉塵であるが、アフラトキシンの生体への吸収を考慮すると、吸入性粉塵だけではなく、総粉塵量も考慮する必要がある。
2.トウモロコシ粉塵中のアフラトキシンの定量については外部に依頼して測定を行い、まず、今回の作業でのアフラトキシン曝露量を推定する。この結果を普遍化させるために、アフラトキシンの検出率や検出量に幅があるためにできるだけ信頼性が高く、多くのサンプルを取り扱っているデータベースをもとにして外挿して検討する。
3.アフラトキシンの毒性を考慮すると、作業環境中の濃度の評価、すなわち許容濃度や管理濃度で判断するのではなく、単位時間あたりの許容摂取量をもって、そのリスクを評価する方が適切である。
鹿島港で採取したトウモロコシ及び粉塵中のアフラトキシンB1量を協和メデックス(株)KMアッセイセンターに依頼して測定した結果を表3に示す。A1~A7は採取地点であり、図2に示す。
表3.トウモロコシ及び粉塵中のアフラトキシンB1の測定結果
|
A1 |
A2 |
A3 |
A4 |
A5 |
A6 |
A7 |
バルグ |
― |
N.D. |
N.D. |
N.D. |
N.D. |
N.D. |
N.D. |
粉塵 |
5.7ppb |
5.8ppb |
36.7ppb |
11.4ppb |
5.9ppb |
3.4ppb |
5.4ppb |
図2.トウモロコシのバルグ及び粉塵採取場所
バルグとはトウモロコシ全粒をグラインドして測定したものですべてN.D.であり、その検出限界は2ppbである。それに対して粉塵中からはアフラトキシンB1を全てにおいて検出した。検出限界である2ppbを考慮すると、粉塵中には最低でも約1.7~18.4倍のアフラトキシンB1が含有していた。
採取地点によって粉塵中のアフラトキシンB1量にバラツキが認められている。このことは測定精度の問題も考慮しないといけないが、高濃度で検出されたA3とA4は比較的近いことが図2よりわかる。アフラトキシンB1がカビによって発生することから、部分的にカビが多く発生したことによって、高濃度のアフラトキシンB1が結果的に検出されたことも予想される。すなわち、場所によっては(例えば、図2中の赤の円内)粉塵中のアフラトキシンB1が高濃度に存在し、リスクが高いことが懸念される。
今回の粉塵曝露測定結果から作業者は吸入性粉塵で1.27~7.85mg/m3、総粉塵で13.00~27.46mg/m3の環境下で働いていることが分かった。当該のトウモロコシ荷上げ作業を“中程度~やや強い”の労働負担の作業と考えた場合の摂取空気量を毎分あたり20リットルとし、今回の作業には約2時間半で終了したことを考慮すると、これらのことから、作業者が吸入する粉塵摂取量(R及びT)、それらに含有するアフラトキシンB1の量の幅が推定できる。これに、今回のアフラトキシンの分析結果(3.4~36.7ppb)を加味すると、アフラトキシンB1の推定取り込み量を計算し、作業者が曝露する可能性のあるアフラトキシンB1の量を推定すると表4のようになる。
表4.今回の荷揚げ作業から作業者が吸引する粉塵量と曝露するアフラトキシンB1
|
吸入性粉塵(R)レベル |
総粉塵(T)レベル |
作業者が吸引する粉塵量 |
3.81~23.55mg |
39.00~82.38mg |
作業者が曝露するアフラトキシンB1 |
0.01~0.86ng |
0.13~3.02ng |
アフラトキシンのリスクと健康障害については、FAOとWHOが共同で専門家の委員会による報告書(1998年10月14日)を作成しており、その中で肝臓がんの過剰リスクを体重1kgあたり毎日1ngのアフラトキシンを生涯にわたり摂取すると、100万人当たり0.1~3名の肝臓がんが過剰に発生すると報告しているが、今回の荷揚げ作業において総粉塵(T)レベルからかなり厳しい条件で生体内に取り込まれるとして推定したアフラトキシンB1量は3.02ngであり、60ng(過剰リスクを体重60kgの成人に換算した値)の約20分の1であり、アフラトキシンによる健康障害の発生の可能性はほとんどないと判断できる。
なお、農林水産省が平成15年8月22日にプレスリリースした「輸入とうもろこし中のアフラトキシンのモニタリング結果に基づく注意喚起について」のデータベースによると、アフラトキシンB1の最大含有量は81ppbである。今回のトウモロコシのバルグと粉塵におけるアフラトキシンB1含有量の差をみると、農林水産省のデータにおける81ppbの際の粉塵中のアフラトキシンB1含有量は更に高かったことが予想される。万が一、防塵マスクの着用をせずに荷揚げ作業を行った場合には、アフラトキシン曝露のリスクが高まる可能性がある。従って、アフラトキシンによる健康障害を予防するためには、荷揚げ作業時に防塵マスクの着用を徹底することが重要となる。
まとめ
鹿島港においてトウモロコシ荷揚げ作業におけるアフラトキシン曝露のリスクを検討した結果、アフラトキシンはトウモロコシそのものではなく、共存する粉塵により多く含有しており、その結果、荷揚げ作業時に舞い上がる粉塵を吸い込むことで、アフラトキシンに曝露するリスクが高まることが判明した。ただし、今回の作業ではアフラトキシン曝露による健康障害発症の可能性はほとんどないと判断できる。
しかしながら、作業時の発塵状況や輸入されるトウモロコシの汚染状態によっては、曝露粉塵中のアフラトキシン含有量が増えることも予想されるため、規格にあった防塵マスクの着用を徹底することが、アフラトキシンによる健康障害を防止する意味で重要となる。今回の調査中にも一部の作業者で重機等から離れた位置で休息時に作業服や防塵マスクの着脱が見られたが、荷揚げ作業時の船倉内は全域で粉塵濃度が高く、このような行為は粉塵を吸い込む危険性があるため、厳に慎むべきである。
従って、トウモロコシ荷揚げ作業に伴うアフラトキシン曝露を避けるためには以下のことに留意する必要がある。具体的なばく露防止対策として、
1. 保護具の着用
(1) 船倉内での荷揚げ作業の際は、防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)に適合した防じんマスクを常時着用させること。
(2) 保護衣、保護眼鏡を適切に着用させること。
2.作業衣の脱衣時等の措置
作業衣の脱衣時等における粉じんの吸入を防ぐために、作業終了後に事務所等へ移動する前に適切な方法によって作業衣に付着した粉じん除去を行わせること。その際には、除去粉塵を周囲の作業者が吸入しないように配慮させること。
3.アフラトキシンのリスクの所在に係る安全衛生教育
トウモロコシ等荷揚げ作業において適切な保護具を着用せずに作業を行った場合には、発じんする粉じんの吸入によってアフラトキシンばく露のリスクが高まるおそれがあることを労働者に充分に理解させること。
これらはトウモロコシ荷揚げ作業における作業管理の上の留意点であるが、港湾荷揚げ作業に従事する労働者を指揮する事業者等もこれらの留意点が遂行できるように配慮する必要がある。
また、今回の鹿島港における調査対象はトウモロコシであったが、この他にもアフラトキシンに汚染されているおそれのある貨物として(括弧内の国名は、特に汚染されている可能性のある輸出元国をいう)、
落花生及びその加工品、ピスタチオナッツ、ブラジルナッツ、ジャイアントコーン、アーモンド、クルミ、チリペッパー、レッドペッパー、ナツメグ、ハトムギ、乾燥いちじく、ターメリック及びその加工品(インドネシア)、とうもろこし(甘味種を除く。)(オーストラリア、ブラジル、米国)、バジルシード(カンボジア、タイ)、ピスタチオナッツ加工品(ギリシャ)、そば(中国)、アーモンド加工品(米国)、もろこし(こうりゃん等)及びその加工品(ベトナム)、ゴマの種子及びその加工品(ベトナム)、カカオ豆(ベネズエラ)
などが考えられる。従って、これらの貨物の荷揚げ作業に関しても同様の労働衛生上の措置を講ずる必要がある。
なお、今回の鹿島港のトウモロコシの港湾荷揚げ作業におけるアフラトキシン曝露のリスク調査は甲田茂樹、芹田富美雄(共に労働災害調査分析センター併任)、佐々木毅(作業条件適応研究グループ研究員)、木村真三(有害性評価研究グループ研究員)、齋藤宏之(国際情報・労働衛生研究振興センター主任研究員)、鷹屋光俊(国際情報・労働衛生研究振興センター上席研究員)があたった。
(註) 本調査において実施した作業環境測定手技に係わる補足的説明
1.TRサンプラーによる粉塵(R)と粉塵(T)の測定
粉塵(R)とは吸入性粉塵(Respiratory dust)のことであり、吸入した場合にヒトの肺胞レベルまで到達するサイズの粉塵を指す。粉塵(T)とは総粉塵(Total dust)のことであり、吸入性粉塵の粒径サイズを超える、大きな粉塵も含んだものを指す。今回の測定では個人曝露評価を目的にTRサンプラーを用いたが、これはPM4に対応しているため、測定し得た吸入性粉塵は粉塵の粒径が4μmより小さいものである。
2.オープンフェイスLVSとデジタル粉塵計を用いた併行測定
今回の調査ではリスク評価を行い際に、アフラトキシンの生体への取り込みは吸入性粉塵だけでなく、消化器よりの取り込みにも考慮して総粉塵を評価すべきであるという前提に立った。そのために、TRサンプラーによる評価に加えてオープンフェイスLVS(TRを分ける衝突板を有しないオープンフェイスのホルダーをLVS(ローボリュームサンプラー)にて10~20リットル/minで吸引した。その際にデジタル粉塵計で計測し、K値を求めて船倉全体におけるデジタル粉塵計の測定値から粉塵濃度を換算して、船倉内全体のリスクを評価した。
参照資料
1.プレスリリース「輸入とうもろこし中のアフラトキシンのモニタリング検査結果に基づく注意喚起について」、農林水産省、平成15年8月22日
2.「カビ毒(アフラトキシン)を含有する食品の取り扱いについて」(食監発第0326001号)、厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課、平成14年3月26日
3.「食品衛生法第26条第3項に基づく検査命令の実施について」(食安輸発第0330001号)、厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課、平成19年3月30日
4.Notification G/SPS/N/EEC/51,World Trade Organization,14 October 1998.
5.JL Herrman and R Walker.Risk analysis of mycotoxins by the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA),FNA/ANA23,1999.
(別添)
○輸入貨物に係る港湾荷役作業におけるアフラトキシンばく露防止対策について
平成19年5月18日基安化発第0518001号
(社団法人日本港運協会会長・港湾貨物運送事業労働災害防止協会会長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)
日頃より労働安全衛生行政の推進に当たり、御理解と御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
アフラトキシンは、熱帯地方等のトウモロコシ等の穀物等に発生するカビ毒として知られており、人に対して発がん性があるといわれています(別紙1参照)。
このため、独立行政法人労働安全衛生総合研究所に依頼し、トウモロコシ荷揚げ作業のアフラトキシンばく露状況等の調査を実施したところですが、その結果では、アフラトキシンによる健康障害の発生の可能性はほとんどないと判断される。ただし、防じんマスクを使用せずに荷揚げ作業を行った場合や、作業時の発じん状況や輸入されるトウモロコシの汚染状態によっては、アフラトキシンばく露のリスクが高まる可能性があり、防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)に適合した防じんマスクの着用等を徹底することが重要との報告(別紙2)がありました。
つきましては、以上のような状況にかんがみ、貴会会員に対して下記の事項について周知徹底を図っていただくようお願いいたします。
なお、都道府県労働局に対しても、別添写のとおり指導している旨了知願います。
記
1 保護具の着用
(1) 船倉内での荷揚げ作業の際は、防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)に適合した防じんマスクを常時着用させること。
(2) 保護衣及び保護眼鏡を適切に着用させること。
2 作業衣の脱衣時等の措置
作業衣の脱衣時等における粉じんの吸入を防ぐために、作業終了後に事務所等へ移動する前に適切な方法によって作業衣に付着した粉じん除去を行わせること。
なお、その際には、除去粉じんを周囲の作業者が吸入しないように配慮すること。
3 アフラトキシンのばく露のリスクについての労働者への周知
トウモロコシ等のアフラトキシンに汚染されているおそれのある貨物の荷揚げ作業において、適切な保護具を着用せずに作業を行った場合には、発じんする粉じんの吸入によって、アフラトキシンのばく露のリスクが高まるおそれのあることを労働者に十分に理解させること。