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通達:建設業における総合的労働災害防止対策の推進について

 

建設業における総合的労働災害防止対策の推進について

平成19年3月22日基発第0322002号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

建設業における労働災害の防止が労働基準行政の重点の一つであるという認識の下、平成5年5月27日付け基発第337号の2「建設業における総合的労働災害防止対策の推進について」により、事業者、発注者、労働災害防止協会、関係業界団体及び行政が一体となって、総合的な労働災害防止対策を推進してきた。

当該通達が発出された平成5年以降、元方事業者による建設現場安全管理指針を始め、各種ガイドラインを示す等、建設業における労働災害防止対策の充実を図ってきたところであり、当時と比較して、建設業における死亡災害及び休業4日以上の死傷災害は、それぞれ約半数まで減少したところである。しかし、業種別にみて建設業における労働災害の割合が依然として高いこと、解体工事や改修工事において死亡災害が増加する等の状況が見られること、災害の直接原因をみると開口部に手すりがない等労働災害を防止するための基本的な措置が講じられていなかったものが少なくないこと等の問題が認められる。

さらに、近年の建設業を取り巻く厳しい経営環境の下、公共工事の減少に伴う競争の激化を背景としたいわゆるダンピング受注は、労働災害防止対策の不徹底等をもたらすことが懸念されるとともに、現場において労働災害防止対策を担ってきた熟練労働者が大量に退職を迎えることから、安全衛生管理に係るノウハウが失われることによる安全衛生水準の低下が懸念される状況にある。

このような状況の中で、事業者の自主的な安全衛生活動の促進等を目的として、労働安全衛生法の一部が改正され、平成18年4月1日より危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置の実施が事業者の努力義務とされるとともに、改正された「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」が適用されたこと、及び建設業界においても、建設業労働災害防止協会により「危険有害要因特定標準モデル」、「建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン」(COHSMS)等が示されていることから、今後、これらの活用等により、業界をあげて自主的な安全衛生活動の一層の推進を図ることが重要である。

ついては、建設業を労働災害防止対策上の重点業種としてとらえ、今後は、別紙1「建設業における総合的労働災害防止対策」により労働災害防止対策を推進し、建設業における安全衛生水準のより一層の向上を図ることとしたので、その的確な実施に遺漏なきを期されたい。

なお、関係団体に対し、別紙2により要請したので、了知されたい。

おって、本通達をもって、平成5年5月27日付け基発第337号の2は廃止する。

 

別紙1

建設業における総合的労働災害防止対策

1 基本的考え方

建設業は、重層下請構造の下、所属の異なる労働者が同一場所で作業するという作業形態であり、短期間に作業内容が変化するという事業の性質から、建設業における労働災害防止対策においては、工事現場における元方事業者による統括管理の実施、関係請負人を含めた自主的な安全衛生活動の推進を基本に、当該現場を管理する本店、支店、営業所等がそれぞれ工事現場への安全衛生指導・援助を的確に行うことが重要である。

また、労働災害を防止する責務が事業者に課せられていることを経営トップ自らが厳しく認識し、率先垂範して、労働安全衛生関係法令の遵守はもとより、自主的な安全衛生活動の活性化を図る必要がある。

さらに、国土交通省から各地方整備局等に対して毎年通知される「建設工事事故防止のための重点対策の実施について」において、直轄土木工事における発注者としての実施事項等が示される等、発注者自らの取組も進められているところであり、発注者と労働基準行政との連携も重要になってきている。

このような状況の中で、建設業における労働災害防止対策の推進に当たっては、工事現場における統括管理を基本とし、工事現場における安全衛生管理に対して、当該現場を管理する本店、支店、営業所等が指導・援助を的確に行うとともに、労働災害防止団体、関係業界団体、発注者及び労働基準行政が一体となって、総合的に推進していくこととする。また、この対策の推進に当たっては、労働安全衛生関係法令の遵守はもとより、危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置(以下「危険性又は有害性等の調査等」という。)の実施及び事業者の主体的能力に応じた労働安全衛生マネジメントシステムの導入を推進させることにより、自主的な安全衛生活動を活性化し、もって、工事現場における安全衛生水準のさらなる向上を図ることとする。

2 安全衛生管理の実施主体別実施事項

事業者、建設業労働災害防止協会、総合工事業者等の団体及び発注者においては、次の実施事項について的確に実施すること。

なお、別添1「建設業における安全衛生管理の実施主体別実施事項」を示すので、この実施事項について、その的確な実施に格段の努力を傾けること。

(1) 事業者においては、別添2「建設業における労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置」を徹底すること。当該措置の確実な実施及び自主的な安全衛生活動の推進のため、平成18年厚生労働省公示第1号「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に基づく危険性又は有害性等の調査等を実施するように努めるとともに、平成11年労働省告示第53号「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(以下「マネジメント指針」という。)」に基づき、事業者の主体的能力に応じた労働安全衛生マネジメントシステムの導入を促進し、組織的かつ体系的に安全衛生水準の向上を図ることにも配慮すること。

(2) 建設業労働災害防止協会においては、労働災害防止に関する長期的な事業計画の策定、各種情報の分析・提供、調査研究活動の推進、安全衛生教育の充実、広報活動の推進、安全衛生診断、安全衛生相談等事業者に対する支援事業の実施等、事業者の労働災害防止対策の推進に対する必要な指導・援助を主体的に行うこと。また、危険性又は有害性等の調査等の実施、労働安全衛生マネジメントシステムの導入について、その促進を図ること。

(3) 総合工事業者の団体においては、建設業労働災害防止協会との連携の下、各種工法、工事用機械設備等についての安全性の確保に関する自主的基準の設定及び周知並びに安全衛生意識の高揚のための諸活動を企画・実施すること。

また、工事を直接施工する専門工事業者の団体においては、建設業労働災害防止協会との連携の下、安全衛生意識の高揚のための活動、それぞれの専門職種に応じた安全作業マニュアル等の作成・普及、安全パトロール、安全衛生教育等を実施すること。

さらに、これら団体においては、危険性又は有害性等の調査等の実施並びに労働安全衛生マネジメントシステムの導入の促進を図ること。

(4) 発注者においては、国土交通省等が実施する特別重点調査等公共工事における極端な低価格の受注による悪影響を防止するための対策が進められていることを踏まえ、計画段階における安全衛生の確保とともに、施工時の安全衛生の確保にも配慮すること。また、労働安全衛生マネジメントシステム等自主的な安全衛生活動の取組を評価する仕組みの導入等事業者が積極的に安全衛生管理を展開するような環境づくりを行うこと。

3 労働基準行政の実施事項

労働基準行政においては、上記2に掲げた事項が建設業における労働災害防止を図るための重要な事項であるという認識に立ち、事業者が的確に労働災害防止対策を実施するよう必要な指導等を行うこと。また、労働災害防止団体、関係業界団体及び発注者において、それぞれの役割に応じて適切な措置が実施されるよう必要な指導・要請等を行うこと。

別添1

建設業における安全衛生管理の実施主体別実施事項

区分

実施事項

元方事業者

工事現場

1 労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(以下「マネジメント指針」という。)に基づく現場における安全衛生方針(工事安全衛生方針)の表明

2 過重の重層請負の改善、請負契約における労働災害防止対策の実施者及びその経費の負担者の明確化

3 店社及び関係請負人との連携による危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置(以下「危険性又は有害性等の調査等」という。)の実施事項の決定

4 危険性又は有害性等の調査等に基づく工事安全衛生目標の設定及び工事安全衛生計画の作成

5 協議組織の設置・運営等元方事業者による建設現場安全管理指針に基づく統括管理の実施

6 マネジメント指針に基づく工事安全衛生計画の実施、評価及び改善

7 工事用機械設備の点検等による安全性の確保

8 安全な施工方法の採用

9 関係請負人の法令違反を防止するための指導及び指示

10 土砂崩壊等のおそれがある作業場所についての安全確保のための関係請負人に対する指導

11 移動式クレーン等を用いての作業に係る仕事の一部を請負人に請け負わせて共同して当該作業を行う場合における作業内容等についての連絡調整の実施

12 関係請負人が現場に持ち込む機械設備(以下「持込機械等」という。)の安全化への指導及び有資格者の把握

13 関係請負人が行う新規入場者教育に対する資料、場所の提供等

14 関係請負人に対し健康管理手帳制度の周知、その他有害業務に係る健康管理措置の周知等

15 現場作業者に対する安全衛生意識高揚のための諸施策の実施

店社(本支店 営業所等)

1 マネジメント指針に基づく店社全体の安全衛生方針の表明、安全衛生目標の設定、安全衛生計画の策定

2 統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者等の選任等工事現場の安全衛生管理組織の整備の促進

3 施工計画時の事前審査体制の確立

4 工事現場の危険性又は有害性等の調査等の実施事項の決定支援

5 工事現場の危険性又は有害性等の調査等に基づく工事安全衛生計画の作成支援

6 店社安全衛生管理者等による安全衛生パトロールの実施等工事現場の安全衛生管理についての指導

7 工事用機械設備の点検基準、安全衛生点検基準等の整備

8 設計技術者、現場管理者等に対する安全衛生教育の企画、実施及び関係請負人の行う安全衛生教育に対する指導、援助

9 関係請負人、現場管理者等に対する安全衛生意識高揚のための諸施策の実施

10 マネジメント指針に基づく店社の安全衛生計画の実施、評価及び改善

11 マネジメント指針に基づくシステム監査の実施及びシステムの見直し

12 下請協力会の活動に対する指導援助

13 災害統計の作成、災害調査の実施、同種災害防止対策の樹立等

14 各種安全衛生情報の提供

関係請負人

工事現場

1 安全衛生責任者の選任等安全衛生管理体制の確立

2 元方事業者の行う統括管理に対する協力

3 店社及び元方事業者と連携した危険性又は有害性等の調査等の実施

4 作業主任者、職長等による適切な作業指揮

5 使用する工事用機械設備等の点検整備及び元方事業者が管理する設備についての改善申出

6 ツールボックスミーティングの実施等による安全な作業方法の周知徹底及び安全な作業方法による作業の実施

7 移動式クレーン等を用いる作業に係る仕事の一部を関係請負人に請け負わせる場合における的確な指示の実施

8 持込機械等に係る点検基準、安全心得、作業標準、安全作業マニュアル等の遵守

9 新規入場者に対する教育の実施

10 仕事の一部を他の請負人に請け負わせて作業に係る指示を行う場合における的確な指示の実施

11 建設業労働災害防止協会が示す専門職種に応じた労働安全衛生マネジメントシステムに基づくシステムの構築

店社

1 安全衛生推進者の選任等安全衛生管理体制の確立

2 店社全体の安全衛生方針の表明、安全衛生目標の設定及び安全衛生計画の策定

3 元方事業者と連携した工事現場における危険性又は有害性等の調査等の実施支援

4 安全衛生教育の企画、実施

5 安全衛生意識高揚のための諸施策の実施

6 安全衛生パトロールの実施

7 持込機械等に係る点検基準、安全心得、作業標準、安全作業マニュアル等の作成による作業等の安全化の促進

8 下請協力会の行う災害防止活動への積極的参加

9 災害統計の作成、災害調査の実施等

10 建設業労働災害防止協会が示す専門職種に応じた労働安全衛生マネジメントシステムの構築

専門工事業団体

総合工事業団体

建設業労働災害防止協会

1 危険性又は有害性等の調査等(危険有害特定モデル)並びに労働安全衛生マネジメントシステムの普及啓発

2 設備、施工方法及び作業の安全化についての調査研究の実施及びその結果についての周知

3 安全衛生教育の実施及び勧奨

4 安全衛生意識高揚のための広報活動等諸施策の実施

5 各種情報の分析及び提供

6 安全衛生診断、安全衛生相談、安全衛生点検等の実施

7 安全衛生パトロールの実施

8 専門職種に応じた安全作業マニュアル、労働安全衛生マネジメントシステム等の作成・普及

発注者

1 施工時の安全衛生の確保に配慮した工期の設定、設計の実施等

2 施工時の安全衛生を確保するために必要な経費の積算

3 施工時の安全衛生を確保する上で必要な場合における施工条件の明示

4 適正な施工業者の選定及び施工業者に対する指導

5 分割発注等により工区が分割され複数の元方事業者が存在する工事の発注者にあっては、次の事項

(1) 個別工事間の連絡及び調整

(2) 工事全体の災害防止協議会の設置

6 入札参加者指名時における安全成績の優良な業者の選定及び労働安全衛生マネジメントシステム等自主的な安全衛生活動の取組を評価する仕組みの導入

 

別添2

建設業における労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置

1 基本的事項

(1) 工事の計画段階における安全衛生の確保

労働災害防止を図るには、工事を施工する前に、仕事の工程、機械設備等について、安全衛生面から事前の評価を行うことが重要であり、労働安全衛生法(以下「法」という。)第88条の計画の届出の対象の工事はもとより、対象とならないものについても、法第28条の2により危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置(以下「危険性又は有害性等の調査等」という。)を実施すること。このため、企業内の事前評価体制を確立するとともに、当該工事の計画作成に参画する有資格者等の資質の向上を図るため、必要な教育等を徹底すること。さらに、事前評価の内容の充実を図るため山岳トンネル工事に係るセーフティ・アセスメントに関する指針等のセーフティ・アセスメント指針を活用すること。

(2) 安全衛生管理体制の整備等

ア 工事現場における安全衛生管理の確立及び体制の整備

工事現場における安全衛生管理が適切に実施されるためには、工事全体を統括管理する元方事業者が主導的な役割を果たすとともに、元方事業者及び関係請負人がそれぞれ果たすべき役割に応じて、安全衛生管理を推進することが重要であること。

(ア) 元方事業者の実施事項

元方事業者においては、平成7年4月21日付け基発第267号の2「元方事業者による建設現場安全管理指針について」により、工事現場の安全衛生管理を行うこと。特に、統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者等及び店社安全衛生管理者等の選任、これらの者の責任と権限の明確化及び職務の励行等統括安全衛生管理体制を確立し、①安全衛生計画の作成による施工と安全衛生管理の一体化、②法第30条第1項各号の事項の実施、③関係請負人の法令違反を防止するための指導及び指示、④土砂崩壊等のおそれのある作業場所における安全確保についての関係請負人に対する指導及び援助、⑤注文者として設備等を関係請負人の労働者に使用させる場合の適切な措置の実施等を徹底すること。

また、店社及び関係請負人と連携して、工事現場の危険性又は有害性等の調査等を実施するとともに、元方事業者の主体的能力に応じた労働安全衛生マネジメントシステムの導入を促進し、自主的な安全衛生活動を展開すること。

さらに、関係請負人が行う労働者の健康管理について、元方事業者は、必要に応じ、関係請負人に対し健康管理手帳制度の周知その他有害業務に係る健康管理措置の周知等を行うこと。

なお、移動式クレーン等を用いての作業に係る仕事の一部を請負人に請負わせて共同して当該作業を行う場合には、作業内容、指示の系統等についての連絡調整の実施を徹底すること。

(イ) 関係請負人の実施事項

工事を直接施工する関係請負人においては、元方事業者との連携を強化し、統括安全衛生責任者との連絡等安全衛生責任者の職務の徹底を図ること等により元方事業者の講ずる措置に応じた適切な措置を講ずること。

イ 本店、支店、営業所等による工事現場に対する指導・援助の充実

工事現場における安全衛生管理は、それぞれの事業者の本店、支店、営業所等における安全衛生管理に左右されることが多いことから、経営トップの安全衛生意識の一層の高揚を図るとともに、店社安全衛生管理者等による工事現場に対する指導をはじめ、工事現場における統括安全衛生管理体制の確立、危険性又は有害性等の調査等の実施、労働安全衛生マネジメントシステムの導入の促進のための指導・援助を行うこと。

(3) 工事用機械設備に係る安全性の確保

ア 適正な方法による機械の使用及び検査等の適正な実施

工事用機械設備の使用に当たっては、製造者等から提供される使用上の情報を活用して危険性又は有害性等の調査等を行い、適切な安全方策を検討すること。さらに、安全装置が機能しない状態で使用することのないよう建設用機械等について法令に定められた適正な方法による作業を行うとともに、定期自主検査、作業開始前点検、修理等を適正に実施すること。

また、定格荷重を超えた荷のつり上げ、地盤の不同沈下等による転倒災害が続発しているので、車両系建設機械、移動式クレーン等を用いて作業を行うときは、あらかじめ、使用する機械の種類及び能力、運行経路、作業の方法等を示した作業計画を作成し、これに基づき作業を行うこと。

イ 仮設用設備に係る安全性の確保

足場、型枠支保工等の仮設設備については、計画段階から安全面についての十分な検討を行い、これに基づき施工を行うことにより適正な構造要件を確保するとともに、施工中においても適宜点検、整備を励行することによりその安全の確保を徹底すること。また、足場、型枠支保工に使用される仮設機材の経年劣化については、平成8年4月4日付け基発第223号の2「経年仮設機材の管理について」に基づき適切な管理を行うこと。

ウ リース業者等に係る措置の充実

リース業者が貸与する機械設備については、そのリース業者の責任において、当該機械設備の点検整備等の管理を行うとともに、貸与を受けた事業者においても十分なチェックを行う体制を整備すること。なお、移動式クレーン等をリースする業者であって自らの労働者がリース先の建設現場において移動式クレーン等を操作するものについては、法第33条第1項の措置とともに、事業者としてクレーン等安全規則等に定められた措置を講ずること。

エ 技術基準等の活用

最低基準としての法令の遵守はもとより、法第28条第1項に基づく「移動式足場の安全基準に関する技術上の指針」、「可搬型ゴンドラの設置の安全基準に関する技術上の指針」その他の工事用機械設備に係る各種技術基準を有効に活用すること。

(4) 適正な方法による作業の実施

作業主任者、職長等の直接指揮の下、適正な方法により作業を実施すること。

災害として最も多い墜落災害の防止については、足場の設置等による作業床の確保、開口部等についての囲い、手すりの設置を基本として行うこと。作業の性格上これが困難な場合には、必ず防網の設置、安全帯の使用等を行うこと。

また、土砂崩壊の防止については、掘削箇所及び周辺の地山について十分な調査を行い、その結果に基づく適切なこう配による掘削を行うこと。また、地山が崩壊するおそれのある場合には、土止め支保工の設置等適切な土砂崩壊防止措置を確実に講ずること。

(5) 安全衛生教育等の推進

ア 関係法令、法第19条の2第2項に基づく能力向上教育に関する指針、法第60条の2第2項に基づく安全衛生教育に関する指針及び平成3年1月21日付け基発第39号「安全衛生教育の推進について」をもって示した安全衛生教育推進要綱に基づき、労働者の職業生活を通じた中長期的な推進計画を整備すること。また、職長等に対しては、労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)第40条に示された事項の教育を実施するとともに、安全衛生責任者等に対しては、平成12年3月28日付け基発第179号「建設業における安全衛生責任者に対する安全衛生教育の推進について」、平成15年3月25日付け基安発第0325001号「建設工事に従事する労働者に対する安全衛生教育について」に基づく教育を推進すること。

イ アの安全衛生教育の実施に関しては、基本的に本店、支店、営業所等の段階で安全衛生教育を計画的に実施すること。また、元方事業者においては、関係請負人の行う安全衛生教育に対する指導・援助を徹底すること。

ウ 元方事業者は、関係請負人が新たに工事現場に就労する労働者に対して新規入場者教育を行う場合においては、適切な資料、場所の提供等を行うこと。なお、この場合、必要に応じ、元方事業者が自ら新規入場者教育を行うこと。

(6) 労働衛生対策の徹底

ア 労働衛生管理体制の整備等基本的対策の促進

建設業における労働衛生対策については、平成9年3月25日付け基発第197号「建設業における有機溶剤中毒予防のためのガイドラインの策定について」、平成10年6月1日付け基発第329号「建設業における一酸化炭素中毒予防のためのガイドラインの策定について」、平成10年12月22日付け基安発第34号「酸素欠乏症等の防止対策の徹底について」、平成12年12月26日基発第768号の2「ずい道等建設工事における粉じん対策の推進について」、平成15年5月29日付け基発第0529004号「第6次粉じん障害防止総合対策の推進について」、平成17年2月7日付け基発第0207006号「防じんマスクの選択、使用等について」、平成17年2月7日付け基発第027007号「防毒マスクの選択、使用等について」、平成17年3月31日付け基発第0331017号「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドラインについて」、平成18年3月17日付け基発第0317008号「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」等に示すところに留意し、

①労働衛生管理体制の整備

②作業環境管理

③作業管理

④健康管理

⑤労働衛生教育

の実施を促進し、もって労働衛生対策を徹底すること。

イ アスベストばく露防止対策

アスベストを含有する建材については、既に製造、使用等が禁止されているが、今後アスベストを含有する建材を使用した建築物の解体等の作業が増加することが見込まれている。これらの作業を行う事業者においては、計画届又は作業届の適切な届出を行い、石綿障害予防規則に基づき、特に、以下に掲げるアスベストばく露防止対策を徹底すること。

①建築物等についてアスベスト等の使用の有無の事前調査

②作業計画の作成及びその遵守

③吹き付けられたアスベスト等の除去を行う作業場所の確実な隔離措置

④アスベストが使用されている保温剤等の除去に係る立ち入り禁止等の措置

⑤アスベスト等の切断等の作業に係る湿潤化の措置

⑥呼吸用保護具及び作業衣又は保護衣の適切な使用及び管理

⑦石綿作業主任者の選任と職務の励行

⑧特別教育の実施

(7) 建設業附属寄宿舎

建設業附属寄宿舎については、安全衛生の確保はもとより寄宿舎に寄宿する労働者の福祉の向上のため広く住環境の整備を行うこと。

(8) 出稼労働者の労働条件確保

出稼労働者の労働条件の確保については、平成3年11月21日付け基発第657号「出稼労働者対策要綱の改正について」に基づき必要な措置を講ずること。

2 建設工事別における労働災害防止上の重点事項

(1) ずい道建設工事

ア 安全衛生管理の充実

工事現場における安全衛生管理の充実を図るため、次に示す事項を重点に実施すること。

(ア) 元方事業者においては、当該現場の規模に応じて統括安全衛生責任者及び元方安全衛生管理者又は店社安全衛生管理者を選任し、現場における統括管理を充実すること。

(イ) 夜間、休日に工事を実施する場合には、当該工事現場において施工を統括管理する技術者が不在となり、その際、連絡調整等が不十分となり重大な災害が発生するおそれがある。このため、夜間、休日において工事を実施する場合には、これらの技術者が不在のまま工事が進められることのないよう、複数の元方安全衛生管理者の選任又はこれに準ずる能力を有する技術者の配置を進めること。

(ウ) ずい道等の掘削作業又はずい道等の覆工の作業を行う場合には、それぞれ、ずい道等の掘削等作業主任者又はずい道等の覆工作業主任者を選任し、その者の直接指揮により作業を実施すること。

イ 災害防止対策の重点事項

(ア) 工法別安全対策

最近5年間のずい道建設工事における死亡災害の原因を項目別に見ると、建設機械等、落盤、墜落等によるものの順となっているが、工法により災害の傾向が異なることから、特に、次の事項を重点に労働災害防止対策を講ずること。

a 山岳工法

(a) 建設機械等による災害の防止

山岳工法によるずい道掘削工事は、ドリルジャンボ、自由断面掘削機、ドラグ・ショベル等による掘削、トラクター・ショベル等による積込み、ダンプトラック等によるずりの積出し等建設機械等の導入による機械化の進展が著しく、作業能率を大きく向上させているが、反面、これらの建設機械等との接触等による災害が跡を絶たない。このようなことから、掘削、積込み作業時においてこれらの建設機械等と接触のおそれのある場所への立入禁止又は誘導者の配置、運搬機械等の運行経路と歩道の分離等の措置を徹底すること。また、小断面のトンネルボーリングマシン(TBM)による掘削においては退避のための通路の確保及び避難訓練を確実に行うこと。

(b) 落盤、肌落ち等による災害の防止

切羽等における落盤、肌落ち、岩石の崩壊、崩落、土砂崩壊等による災害を防止するため、浮石の点検を実施するとともに、コンクリート吹付け及びロックボルト施工時における観察者の配置に留意すること。

b シールド工法

(a) 建設機械等による災害の防止

シールド機械にはさまれる、激突される等の災害を防止するため、点検時の機械の停止措置、稼働中のシールド前面への立入禁止措置等の接触予防措置を徹底すること。

比較的小断面のずい道工事における資材等の運搬方式として軌道方式が採用されることが多いが、シールド工事において軌道装置に挟まれる等の災害が発生していることから、通路の確保、回避所の設置等により狭あいな坑内における接触予防措置を徹底すること。

(b) 墜落災害の防止

発進たて坑における墜落災害を防止するため、開口部の囲い、手すりの設置、適切な昇降設備等の設置を徹底すること。

(c) 爆発火災による災害の防止

シールド工法は、都市部でのずい道建設工事において採用されることが多い工法であるが、地層によっては堆積した有機物の分解により可燃性ガスが突出しやすくなっている場合があるため、過去の周辺のずい道工事の施工記録、事前の調査結果等を踏まえた施工計画を作成するとともに、これに基づく可燃性ガスの定期的測定、換気設備の点検、整備等を徹底すること。また、ガス爆発、火災等の緊急時の避難、救護及び連絡の体制を確立すること。

c 推進工法

推進工法によるずい道工事のうち労働者が推進管内に立ち入るものについては、緊急時の迅速な避難等を考慮して、当面、内径80cm以上のヒューム管、さや管等を使用するように努めること。

また、たて坑における墜落防止措置、土砂崩壊災害防止措置等を徹底すること。

(イ) 労働衛生対策

a じん肺の予防

(a) ずい道建設工事においては、掘削に伴う土石の粉じんの発散、又はコンクリート吹付けに伴うコンクリート等の粉じんの発散により労働者の健康を害するおそれがあるので、粉じんの発散を防止するための湿式工法又は湿式吹付け機の採用、換気装置の設置等により作業環境の改善措置を講ずるとともに、呼吸用保護具の着用を徹底する等、平成12年12月26日付け基発第768号の2「ずい道等建設工事における粉じん対策の推進について」に基づく措置を徹底すること。

(b) 粉じん作業従事労働者に対するじん肺健康診断の実施を徹底し、産業医等による保健指導も含めた適正な健康管理を行うこと。

b 酸素欠乏症の防止

上層に不透水層がある砂れき層のうち含水若しくは湧水がなく、又は少ない地層、第1鉄塩類又は第1マンガン塩類を含有している地層等酸素欠乏危険場所に該当する地層に接し、又は通ずる立坑、ずい道等の掘削工事については、酸素濃度の測定及び換気を実施するとともに、酸素欠乏危険作業主任者の選任と職務の励行、保護具及び救護用具の備付け、特別の教育の実施等酸素欠乏症防止措置を徹底すること。

c 一酸化炭素中毒の防止

通気の不十分な場所において、内燃機関を用いた照明用発電装置、掘削機械等を使用する場合には、適切な換気の実施、保護具の着用等一酸化炭素中毒防止措置の実施を徹底すること。

d 振動障害の防止

できるだけ低振動・低騒音の振動工具を選定すること。加えて、さく岩機等振動工具を良好な状態で使用するため、振動工具管理責任者を選任し、振動工具の点検整備を行わせること。

また、関係請負人が、新規入場者教育を労働者に行うに当たっては、振動障害の防止に係る教育を併せて実施すること。

さらに、適切な作業管理、健康管理を積極的に推進すること。

e 高気圧障害の防止

圧気シールド工法によるずい道掘削等圧気工法を採用する場合は、当該作業における高気圧障害を防止するため、高圧室内作業主任者を選任しその職務を適正に遂行させるとともに、作業時間及び減圧時間の適正な管理を行うこと。また、圧気シールド及び附属設備の保守点検を励行すること。

さらに、高圧室内業務従事労働者に対する高気圧業務健康診断の実施及び病者の就業禁止を徹底する等、適正な健康管理を行うこと。

(ウ) その他の留意事項

① ダンプトラックによる坑外でのずり運搬作業において路肩から転落する災害が発生していることから、ずり運搬路等を新設する場合においては、必要な幅員の確保、舗装の実施等運搬機械等による災害を防止するための措置の実施を推進すること。

② 建設工事の作業に熟練していない者を雇い入れる場合には、特に雇入れ時の教育を徹底するとともに、これらの労働者の適正配置及びこれらの労働者を指揮する職長等の教育について十分配慮すること。

③ 山岳ずい道工事従事者については、建設労働手帳制度の周知徹底に留意すること。

(2) 橋梁建設工事

ア 安全衛生管理の充実

工事現場における安全衛生管理の充実を図るため、次に示す事項を重点に実施すること。

(ア) 元方事業者においては、当該現場の規模に応じて統括安全衛生責任者及び元方安全衛生管理者又は店社安全衛生管理者を選任し、現場における統括管理を充実すること。

(イ) 橋桁の架設等の作業を行う場合には、橋の種類に応じて鋼橋架設等作業主任者又はコンクリート橋架設等作業主任者を選任し、その者の直接指揮により作業を実施すること。

(ウ) 鋼橋及びコンクリート橋の上部構造の架設等の作業において橋桁の落下等が発生すると重大な災害となるおそれが高いことから、当該作業を行う場合の適正な作業計画を作成すること。

イ 災害防止対策の重点事項

最近5年間の橋梁建設工事における死亡災害の原因を項目別にみると、墜落によるものが4割強を占めており、以下、建設機械等、クレーン等によるものとなっているが、特に次の事項を重点に労働災害防止対策を講ずること。

(ア) 墜落による災害の防止

つり橋、高架橋等の建設の作業において、型枠又は足場の組立中、足場上での運搬作業中等での墜落による災害が依然として跡を絶っていない。このため、足場等の仮設設備の点検・整備の励行、防網及び親綱の設置、安全帯の使用を徹底すること。また、橋脚上等の橋梁自体からの墜落も発生しており、防網の設置及び親綱の設置等安全帯の取付け位置を確保した上での安全帯の使用等を徹底すること。

(イ) 建設機械等による災害の防止

建設機械との接触、路肩からの転落、ドラグショベルで吊った荷との接触等による災害が発生している。このようなことから、①作業半径内の立入禁止又はこれが困難な場合の誘導者の配置、②運行経路の路肩の崩壊防止、③地盤の不同沈下の防止、④必要な幅員の保持、⑤路肩、傾斜地等で作業を行う際の誘導者の配置等の措置を徹底すること。また、車両系建設機械の運転業務従事者に対する法第60条の2に基づく安全衛生教育等に労働者を計画的に参加させること。

(ウ) クレーン等に係る災害の防止

橋梁建設の作業において移動式クレーンを使用して部材等の運搬作業中に荷が振れ、又は荷が落下することによる災害が多く発生している。このようなことから、つり荷の下及び上部旋回体の旋回範囲内への立入禁止措置を徹底すること。このため移動式クレーンを用いての作業を行う者の各々の間の連絡調整を十分行うこと。また、定格荷重を超えた荷のつり上げ、地盤の不同沈下による転倒災害も多発しているので、移動式クレーンに係る適切な作業方法の決定及びそれによる作業の実施、地盤の強化等の措置を徹底すること。

(エ) 型枠支保工の倒壊による災害の防止

コンクリート橋建設工事においてコンクリートの打設作業中等に型枠支保工が倒壊する災害を防止するため、型枠支保工の設計に当たっては水平荷重についての十分な検討を実施するとともに、部材の接合方法等を示した適切な組立図による施工の実施及び型枠支保工の組立て等作業主任者の選任及びその者の直接指揮による作業の実施により適正な構造要件を確保すること。

(オ) 高気圧障害の防止

圧気潜函工法を採用する場合には、当該作業における高気圧障害を防止するため、前記2の(1)イ(イ)eに記載した事項を重点に対策を講ずること。

(3) 道路建設工事

ア 安全衛生管理の充実

工事現場における安全衛生管理の充実を図るため、次に示す事項を重点に実施すること。

(ア) 掘削及び土止め支保工の組立て作業については、作業主任者の直接指揮による作業の実施を徹底すること。また、掘削箇所及びその周辺の地山についての地質及び地層の状態、含水及び湧水の状態等を観察する者並びに土止め支保工の設置状態、掘削用機械等の整備状態、照明の状態等を点検する者を定めて、その職務を十分に行わせること。なお、観察・点検の結果、施工計画を変更する必要が生じた場合には、発注者の協力の下に早期にその計画を変更する等危害防止措置を講ずること。

(イ) この種の工事においては、工事現場における教育の実施に困難な面が見られるので、元方事業者が推進主体となり、発注機関及び関係団体の協力を得て、計画的に実施するとともに、関係請負人に対して、その労働者を積極的に講習会等に参加させること。

イ 災害防止対策の重点事項

最近5年間の道路建設工事における死亡災害の原因を項目別に見ると、建設機械等、墜落、自動車等、土砂崩壊によるものの順となっており、特に、次の留意事項を重点に労働災害防止対策を講ずること。

(ア) 建設機械等による災害の防止

路肩、法面からの転落によるものが建設機械等による死亡災害の3割以上を占めていること、また、建設機械を用いた作業において、作業半径内で作業中の労働者がバケット等の作業装置に挟まれる、激突される、あるいは後退中の建設機械にひかれるといった災害も多発していることから、前記2の(2)イ(イ)に記載した事項を重点に対策を講ずること。

(イ) 墜落災害の防止

掘削に先立ち、木の伐採作業等を斜面上で行っていた労働者が転落する、あるいは路肩を通行中に谷へ転落する等の災害が多く発生している。斜面での作業においては、作業方法の決定及び周知徹底を図るほか、こう配が40度以上の斜面上で作業を行う場合は、安全な作業床の設置又は防網及び安全帯の使用を徹底すること。また、適切な通路の決定及びその周知徹底を行うこと。なお、通路については、墜落、転落のおそれのある箇所については、手すり等の設置を基本とすること。

(ウ) 自動車等による災害の防止

道路建設工事における自動車等による災害は、作業場内において発生したもののほか、通行中の一般車が作業場内に入ってきて発生したものや一般公道での交通事故が発生している。このため作業場内においては、貨物自動車の運行経路と歩道との完全な分離、掘削した土砂の積込み時の誘導者の配置を徹底すること。また、特に道路の補修工事等においては、工事に関係のない車の作業場内への進入を防ぐための警戒標識、案内、バリケードの設置を徹底すること。

(エ) 土砂崩壊災害の防止

地山の掘削作業においては、事前の調査の結果に応じた適切なこう配による掘削の実施又は土止め支保工の設置を徹底すること。なお、点検者を指名し、浮石及びき裂の有無及び状態並びに含水及び凍結の状態の変化の点検を徹底すること。

特に、道路復旧工事は土砂崩壊のおそれのある箇所での工事が多いことから、そのおそれがある場合にはあらかじめ傾斜計の設置等により土砂崩壊の予知に努めること。

(オ) 振動障害の防止

タイタンパー等振動工具の使用による振動障害を防止するため、前記2の(1)イ(イ)dに記載した事項を重点に対策を講ずること。

(4) 小規模の上下水道等の建設工事

ア 安全衛生管理の充実

工事現場における安全衛生管理の充実を図るため、前記2の(3)アに記載した事項を重点に実施すること。

イ 災害防止対策の重点事項

最近5年間の上下水道工事における死亡災害の原因をみると、建設機械によるものがその3割以上を占めているほか、以下、土砂崩壊、自動車等によるものの順となっており、特に、次の事項を重点に労働災害防止対策を講ずること。

(ア) 建設機械等による災害の防止

① 狭い公道上等で掘削機械を利用して溝掘削作業を行う場合には、公道を通る自動車や構築物等と当該掘削機械との間に労働者が挟まれる災害を防止するため、掘削用機械の旋回範囲内への立入りを禁止する等の措置を講ずること。

② 掘削機械を用いて、土止め用矢板、ヒューム管等のつり上げ作業を行う場合には、移動式クレーン又はクレーン機能を備えたドラグ・ショベルを使用すること。これが困難な場合には、適切なつり上げ用の器具の取付け、合図者の指名及びその者による合図の実施等安衛則第164条の規定を遵守した作業を徹底すること。

(イ) 土砂崩壊災害の防止

① 小規模な溝掘削作業においては、平成15年12月17日付け基発第1217001号「土止め先行工法に関するガイドラインの策定について」に基づき、土止め支保工の設置等の措置を講ずること。

② 多量の降雨等悪天候時には作業を中止すること。

(ウ) 自動車等による災害の防止

前記2の(3)イ(ウ)に記載した事項を重点に対策を講ずること。

(5) 土地整理土木工事

土地整理土木工事においては、建設機械等による災害が約2割5分を占め、以下、土砂崩壊等による災害が多く発生していることから、これらの災害を防止するため、特に、次の事項を重点に労働災害防止対策を講ずること。

① 建設機械等を用いた作業の際の作業半径内の立入禁止、誘導者の配置

② 運搬機械等の運行経路と歩道との完全な分離、積込み時の誘導者の配置

③ 事前調査結果に応じた適切なこう配による掘削の実施又は土止め支保工の設置

(6) 河川土木工事

河川土木工事においては、建設機械等による災害が3割以上を占め、以下、墜落、土砂崩壊による災害が多く発生していることから、これらの災害を防止するため、特に、次の事項を重点に労働災害防止対策を講ずること。なお、土石流危険河川については、平成10年3月23日付け基発第120号「土石流による労働災害防止のためのガイドラインの策定について」に基づく措置を講じること。

① 建設機械等を用いた作業の際の作業半径内の立入禁止、誘導者の配置

② 運搬機械等の運行経路と歩道との完全な分離、積込み時の誘導者の配置

③ 安全な作業床の設置又は防網及び安全帯の使用並びに適切な通路の決定及び周知徹底

④ 事前調査結果に応じた適切なこう配による掘削の実施又は土止め支保工の設置

(7) 砂防工事

砂防工事においては、墜落による災害が約4割を占め、以下、建設機械等による災害、土砂崩壊による災害となっていることから、これらの災害を防止するため、特に、次の事項を重点に労働災害防止対策を講ずること。

① 安全な作業床の設置又は防網及び安全帯の使用並びに適切な通路の決定及び周知徹底

② 建設機械等を用いた作業の際の作業半径内の立入禁止、誘導者の配置

③ 運搬機械等の運行経路と歩道との完全な分離、積込み時の誘導者の配置

④ 事前調査結果に応じた適切なこう配による掘削の実施又は土止め支保工の設置

(8) 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事

ア 安全衛生管理の充実

工事現場における安全衛生管理の充実を図るため、次に示す事項を重点に実施すること。

(ア) 工事現場には多くの職種の関係請負人が入場して作業を行うことから、元方事業者においては、当該現場の規模に応じて統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者又は店社安全衛生管理者を選任する等により現場における統括管理を充実すること。

(イ) 掘削作業、鉄骨の組立ての作業、型枠支保工の組立ての作業等については、作業主任者の直接指揮による作業の実施を徹底すること。

(ウ) 新規入場者教育については、新たに現場に就労する関係請負人の労働者に対して、現場全体の状況、現場内の危険箇所についての周知を確実に行うこと。

イ 災害防止対策の重点事項

(ア) 工事別安全対策

最近5年間の鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事における死亡災害の原因を見ると、墜落によるものが5割以上を占めており、以下、建設機械等、飛来・落下、倒壊、クレーン等によるものとなっているが、工事により災害の傾向が異なることから、特に、次の事項を重点に労働災害防止対策を講ずること。

a 土工事、杭工事等

土工事、杭工事等においては、狭あいな敷地内で掘削用建設機械等と労働者がふくそうして作業を行うことによる挟まれ、激突災害や地盤が軟弱なことにより基礎工事用建設機械が転倒することによる災害が発生している。このようなことから、掘削作業半径内の立入禁止措置の徹底、基礎工事用建設機械を使用して仕事を行う関係請負人に対する元方事業者による転倒防止のための技術上の指導及び地盤強化、鉄板の提供等の援助を行うこと。

b 躯体工事

(a) 墜落による災害の防止

鉄骨の組立て作業中に梁上から墜落する災害が多発していることから、つり足場の設置又は防網及び安全帯の使用を徹底すること。

また、型枠支保工の組立てあるいは解体作業中に足場から墜落する災害も跡を絶っていないことから、当該足場における作業床端部の手すりの設置又は防網及び安全帯の使用を徹底すること。

さらに、足場の組立てあるいは解体作業中の墜落災害も多く発生していることから、平成15年4月1日付け基発第0401012号「手すり先行工法に関するガイドラインの策定について」に基づく措置の実施を図ること。

(b) 型枠支保工の倒壊等による災害の防止

鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事においてコンクリートの打設作業中に型枠支保工等が崩壊したことによる重大な災害が発生している。このようなことから、設計に当たっては水平荷重についての十分な検討を実施するとともに、部材の接合方法等を示した適切な組立図による施工の実施並びに型枠支保工組立て等作業主任者の選任及びその者の直接指揮による作業の実施により適正な構造要件を確保すること。

c 外部仕上工事

(a) 墜落による災害の防止

高層ビルのPC(プレキャストコンクリート)パネルやカーテンウォールの取付け等の外部仕上工事において、パネル等の取付け時の墜落災害が発生していることから、パネル取付用足場及び親綱の設置等の墜落防止対策を徹底するとともに、朝礼時等においてクレーンの合図の統一等の調整を行うこと。また、建物内部からパネルの取付作業を行うことができる部材や器具を使用する等作業方法の改善に努めること。

(b) 飛来落下による災害の防止

工具類等が落下し、地上で働いている労働者や通行人が被災する災害が発生している。このため、パネル等の補助吊ロープはパネルのセット完了まで外さない、工具類は作業員と結びつけておく等の飛来落下による災害防止対策を徹底すること。また、上層部と下層部において、同時作業が行われないよう、作業工程を調整しておくこと。

d 内部仕上工事

(a) 墜落による災害の防止

内部仕上工事における開口部等から墜落を防止するため、元方事業者は、現場で新たに作業を行う関係請負人に対して開口部の箇所を確実に通知すること。

また、いわゆる「うま」を、足がかりとして使用しないよう徹底すること。

(b) 木材加工用機械による災害の防止

木材加工用機械による災害を防止するため、平成10年9月1日付け基発第520号の2「木材加工用機械災害防止対策推進運動の実施等について」に基づく措置を徹底すること。

(イ) クレーン等による災害の防止

杭工事等においては、基礎杭のつり上げ、移動等の作業を移動式クレーンが基礎工事用建設機械を補助して行うが、この際には地盤の状態を事前に把握した上で地盤強化を行う等地盤の状況に応じた必要な転倒防止措置を講ずること。

クレーンによる鉄骨等の運搬作業時においては、飛来落下災害が多発していることから、クレーンを用いての作業を行う者各々の間の連絡調整を十分に行わせることにより、つり荷の下の立入禁止措置を徹底すること。

また、移動式クレーンを用いて作業を行う場合は、搬入された荷を卸す等の短時間作業においても、鉄板の敷設、アウトリガーの最大張出し等の転倒防止措置を徹底するとともに、適切な作業方法の決定及びそれによる作業の実施を徹底すること。

なお、玉掛け作業については、平成12年2月24日付け基発第96号「玉掛け作業の安全に係るガイドラインの策定について」に基づく措置を徹底すること。

(ウ) 労働衛生対策

a 有機溶剤中毒の防止

内部仕上工事の防水・塗装作業において有機溶剤中毒が多発していることから、十分な労働衛生教育を実施するとともに、適切な換気の実施、呼吸用保護具の使用並びに有機溶剤作業主任者の選任及びその者の直接指揮による作業の実施を徹底すること。

b 一酸化炭素中毒の防止

地下防火水槽工事等において、コンクリート養生に用いる練炭等から発生する一酸化炭素による中毒を防止するため、養生後、水槽等の内部へ立ち入る際の換気、濃度測定等必要な措置を徹底すること。

(9) 木造家屋等低層住宅建築工事

平成8年11月11日付け基発第660号の2「木造家屋等低層住宅建築工事における労働災害防止対策の推進について」に基づく措置を徹底すること。

(10) 電気・通信工事

ア 安全衛生管理の充実

(ア) 安全衛生管理体制を確立するとともに、選任された安全管理者又は安全衛生推進者に作業現場を巡視させる等により工事現場の作業の安全化を図ること。

(イ) 高圧・特別高圧電気取扱作業者に対する特別教育の実施その他の安全衛生教育を計画的に実施すること。

イ 災害防止対策の重点事項

電線等の電気・通信設備の設置作業において墜落災害が多発していること及び電力用ケーブル敷設等の作業において感電災害が多発していることから、これらの災害を防止するため、特に、次の事項を重点に労働災害防止対策を講ずること。

(ア) 高所作業における安全な作業床の設置又は安全帯の使用

(イ) 高所作業車を使用する場合における作業指揮者の指名及び当該高所作業車の転倒防止

(ウ) 活線作業又は活線近接作業を行う場合における絶縁用保護具等の着用等

(11) 機械器具設置工事

ア 安全衛生管理の充実

安全衛生管理体制を確立するとともに、選任された安全管理者又は安全衛生推進者に作業現場を巡視させる等により現場の作業の安全化を図ること。

イ 災害防止対策の重点事項

機械器具設置工事においては、墜落災害が多発していることから、安衛則第518条第1項又は第519条第1項に規定する安全な作業床の確保を基本とし、脚立、移動はしご等の器具の使用はできるだけ避けること。

また、エレベーターや立体駐車場等の昇降路内で作業する場合には、上層部と下層部で同時作業が行われないよう作業工程の調整を行うとともに、各階の扉には「作業中」であることを表示しておくこと。さらに、ピットスイッチ等で搬器が動かないようにしてから昇降路内部に入ること。

また、通風不十分な屋内作業においてアーク溶接を行う場合には、換気を行うことにより作業場所の空気中の一酸化炭素濃度を日本産業衛生学会で示されている許容濃度である50ppm以下に保つ等必要な措置を講ずること。

(12) 解体工事及び改修工事

ア 安全衛生管理の充実

工事現場における安全衛生管理の充実を図るため、次に示す事項を重点に実施すること。

(ア) 元方事業者においては、当該現場の規模に応じて統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者又は店社安全衛生管理者を選任する等により現場における統括管理を充実すること。

(イ) 高さ5m以上のコンクリート造の工作物の解体等の作業については、コンクリート造の工作物の解体等作業主任者を選任し、その者に、作業の方法及び労働者の配置を決定させ、作業を直接指揮させること。

(ウ) 新規入場者教育については、新たに現場に就労する関係請負人の労働者に対して、現場全体の状況、現場内の危険箇所についての周知を確実に行うこと。

イ 災害防止対策の重点事項

(ア) 解体工事

解体工事中に突然梁や壁が倒壊し、労働者はもとより周辺住民をも巻き込む災害が発生しているが、この要因として、構造物が設計図書と異なっていたり、鋼材が予想以上に劣化していたこと等も見受けられることから、これらの災害を防止するため、特に、次の事項を重点に労働災害防止対策を講ずる。

① 工事開始前に建築物はもとより周囲の状況を含んだ危険性又は有害性等の調査を十分に行い、これに基づき、作業の方法、順序、控え等の設置方法等が示された作業計画を策定すること。

② 作業計画で想定していなかった事態が生じた場合には、安全が確認できるまで作業を中断すること。

(イ) 改修工事

改修工事においては、スレート屋根等からの墜落や爆発災害が発生している。この要因として、短期間の工事であることを理由に適切な安全対策が講じられていなかったり、元栓を閉めずにガス管を撤去しようとしたこと等が見受けられることから、作業計画には、足場や踏み板の設置はもとより、ガス会社等への事前連絡等についても定め、これに基づく作業を徹底すること。

ウ アスベストばく露防止対策等

解体工事や改修工事に際しては、石綿障害予防規則に基づき、前記1の(6)イに記載した事項を重点に対策を講ずること。

なお、粉じん障害防止規則(以下「粉じん則」という。)別表に掲げる粉じん作業に該当する作業を行う場合には、呼吸用保護具の着用を徹底する等、粉じん則に基づく措置を徹底すること。

 

別紙2

○建設業における総合的労働災害防止対策の推進について

平成19年3月22日基発第0322003号

(別記関係団体、事業者団体の長あて厚生労働省労働基準局長通知)

労働基準行政の運営につきましては、日頃から格別の御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、建設業における労働災害の防止は、労働基準行政の重点の一つであるという認識の下、平成5年5月27日付け基発第337号「建設業における総合的労働災害防止対策の推進について」により、事業者、発注者、労働災害防止協会、関係業界団体及び行政が一体となって、総合的な労働災害防止対策を推進してきたところです。

当該通達が発出された平成5年以降、元方事業者による建設現場安全管理指針を始め、各種ガイドラインを示す等、建設業における労働災害防止対策の充実を図ってきたところであり、当時と比較して、建設業における死亡災害及び休業4日以上の死傷災害は、それぞれ約半数まで減少したところです。しかし、業種別に見て建設業における労働災害の割合が依然として高いこと、解体工事や改修工事において死亡災害が増加する等の状況が見られること、災害の直接原因をみると開口部に手すりがない等労働災害を防止するための基本的な措置が講じられていなかったものが少なくないこと等の問題が見受けられます。

さらに、近年の建設業を取り巻く厳しい経営環境の下、公共工事の減少に伴う競争の激化を背景としたいわゆるダンピング受注は、労働災害防止対策の不徹底等をもたらすことが懸念されるとともに、現場において労働災害防止対策を担ってきた熟練労働者が大量に退職を迎えることから、安全衛生管理に係るノウハウが失われることによる安全衛生水準の低下が懸念される状況にあります。

このような状況の中で、事業者の自主的な安全衛生活動の促進等を目的として、労働安全衛生法の一部が改正され、平成18年4月1日より、危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置の実施が事業者の努力義務とされるとともに、改正された「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」が適用され、さらに、建設業界においても、建設業労働災害防止協会により「危険有害要因特定標準モデル」、「建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン」(COHSMS)等が示されていることから、今後、これらの活用等により、業界をあげて自主的な安全衛生活動の一層の推進を図ることが重要であります。

つきましては、建設業を労働災害防止対策上の重点業種としてとらえ、今後は、別紙「建設業における総合的労働災害防止対策」により労働災害防止対策を推進することといたしましたので、貴団体におかれましても、本対策の趣旨を御理解いただき、会員その他関係事業場に対し、本対策を周知していただくとともに、本対策中の「建設業における労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置」の実施の指導につき、特段の御配慮を賜りますようお願いいたします。

別記

建設業労働災害防止協会

(社)日本土木工業協会

(社)全国建設業協会

(社)日本建設業団体連合会

(社)全国クレーン建設業協会

(社)日本鳶工業連合会

全国圧気工業協会

(社)全国中小建築工事業団体連合会

(社)プレストレスト・コンクリート建設業協会

(社)日本基礎建設協会

(社)日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会

(社)合板仮設安全技術協会

(社)日本鉄道建設業協会

(社)全国中小建設業協会

全日本電気工事業工業組合連合会

(社)仮設工業会

全国基礎工業協同組合連合会

(社)日本建設機械化協会

(社)日本道路建設業協会

(社)建築業協会

(社)日本電設工業協会

(社)日本海洋開発建設協会

(社)全国建設専門工事業団体連合会

(社)日本建設躯体工事業団体連合会

(社)日本空調衛生工事業協会

(社)日本建設大工工事業協会

(社)日本左官業組合連合会

(社)日本塗装工業会

(社)日本橋梁建設協会

(社)全日本瓦工事業連盟

(社)日本電力建設業協会

(社)全国解体工事業団体連合会

(社)建設荷役車両安全技術協会

(社)日本クレーン協会

(社)ボイラ・クレーン安全協会

全国仮設安全事業協同組合

(社)軽仮設リース業協会