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労働安全衛生法等の一部を改正する法律等の施行について(化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善関係)
平成18年10月20日基発第1020003号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
化学物質を取り扱う作業において、その物質の危険性や有害性を知らずに作業を行っていたことによる爆発、火災、中毒等の災害が発生していることから、事業者による適正な化学物質の管理を促進することが必要である。国際的には、平成15年に、人の健康確保の強化等を目的に、化学物質の危険性及び有害性を、引火性、発がん性等の約30項目に分類した上で、危険性や有害性の程度等に応じてどくろ、炎等の標章を付すこと、取扱上の注意事項等を記載した文書(化学物質等安全データシート(MSDS))を作成・交付すること等を内容とする「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」が、国際連合から勧告されたところである。これらを踏まえ、化学物質(純物質)及び化学物質を含有する製剤その他の物(混合物)(以下「化学物質等」という。)に係る表示及び文書交付制度の改善を図るための労働安全衛生法等関係法令の改正が、今般次のとおり行われたところである。
(1) 労働安全衛生法等の一部を改正する法律(平成17年法律第108号、平成17年11月2日公布。以下「改正法」という。)
(2) 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成18年政令第331号、平成18年10月20日公布。以下「改正令」という。)
(3) 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成18年厚生労働省令第1号、平成18年1月5日公布。)
(4) 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成18年厚生労働省令第185号、平成18年10月20日公布。以下「改正省令」という。)
これらの化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善に係る改正規定は、いずれも平成18年12月1日から施行される。これらの改正の趣旨、内容、留意事項等は下記のとおりであるので、その施行に当たっては、施行前に重点的に周知指導を行うことはもとより、施行後においても事業者に対し改正法の趣旨、内容等について十分周知し、指導を行うなど遺漏のないようにされたい。
記
Ⅰ 労働安全衛生法関係
第1 改正の要点
GHS国連勧告を踏まえ、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)に基づく容器等への表示・文書交付について、従来対象としていた有害物に加え危険物をも対象とするとともに、表示しなければならない事項等の追加を行ったこと。
第2 細部事項
1 表示及び文書交付制度の対象物の追加(第57条及び第57条の2関係)
容器等への表示について従来から有害物として対象としている物に加え、爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他労働者に危険を生ずるおそれのある物で政令で定めるものを新たに対象としたこと。また文書交付制度について労働者に危険を生ずるおそれのある物で政令で定めるものを新たに対象としたこと。
2 表示すべき事項等について(第57条第1項関係)
容器等に表示しなければならないものとして、従来定められていた名称、成分等に加え、労働者に注意を喚起するための標章を追加したこと。
また、「人体に及ぼす作用」、「貯蔵又は取扱い上の注意」については、従来は、厚生労働省令で定める物に限って義務付けていたが、今後は、表示対象物すべてについて義務付けることとしたこと。
なお、化学物質等の成分の含有量は記載を不要としたこと。
Ⅱ 労働安全衛生法施行令関係
第1 改正の要点
法の改正により、新たに表示・文書交付制度の対象となった、爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他労働者に危険を生ずるおそれのある物について、対象となる物を定めたこと。
第2 細部事項
1 名称等を表示すべき物の追加(第18条関係)
(1) 名称等を表示すべき物として以下の8物質を追加したこと。
エチルアミン、過酸化水素、次亜塩素酸カルシウム、硝酸アンモニウム、ニトログリセリン、ニトロセルローズ、ピクリン酸及び1,3―ブタジエン
(2) 製造の許可を受けるべき有害物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるものを新たに名称等を表示すべき物として追加したこと。
2 名称等を通知すべき物の追加(第18条の2関係)
(1) 名称等を通知すべき物として以下の3物質を追加したこと。
次亜塩素酸カルシウム、硝酸アンモニウム及びニトロセルローズ
(2) 製造の許可を受けるべき有害物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるものを新たに名称等を通知すべき物として追加したこと。
3 改正令の施行の際現に存するものに関する経過措置について
(1) 名称等の表示に関する経過措置(附則第2条関係)
①新たに名称等を表示すべき物として追加されたエチルアミン等8物質(純物質)
②エチルアミン等を含有する製剤その他の物(混合物)
③製造の許可を受けるべき有害物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの
のうち、改正令の施行の際現に存するものについては、平成19年5月31日までの間、法第57条第1項の規定を適用しないものとしたこと。
(2) 名称等の通知に関する経過措置(附則第3条関係)
①新たに名称等を通知すべき物として追加された次亜塩素酸カルシウム等3物質(純物質)
②次亜塩素酸カルシウム等を含有する製剤その他の物(混合物)
③製造の許可を受けるべき有害物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの
のうち、改正令の施行の際現に存するものについては、平成19年5月31日までの間、法第57条の2第1項の規定を適用しないものとしたこと。
Ⅲ 労働安全衛生規則関係
第1 改正の要点
GHS国連勧告に対応するため法に基づく化学物質等に係る表示及び文書交付制度が改正されたことに伴い、名称等の表示・文書交付義務の対象となる危険物及び有害物の含有量の範囲を拡大するとともに、容器・包装等に表示すべき事項及び文書交付すべき事項に、化学物質等の危険性に係る項目等を追加したこと。
第2 細部事項
1 化学物質に係る表示制度の改善
(1) 名称等の表示の対象となる物の範囲の拡大(第30条、第31条関係)
ア 改正令による改正後の労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「新令」という。)第18条第39号において、名称等を表示すべき製剤その他の物で、厚生労働省令で定めることとされているものを別表第2により定めたこと。
イ 名称等を表示すべき製剤その他の物で新令第18条第40号の厚生労働省令で定めるものとして、改正前において既に表示すべき物とされていた法第57条第1項本文の規定による法第56条第1項の物に加え、製造の許可を受けるべき有害物を含有する製剤その他の物のうち、当該有害物の含有量が一定の値若しくは範囲の物を追加したこと。
(2) 名称等の表示方法(第32条関係)
本条の「表示事項等」の「等」は、新法第57条第1項第2号の「標章」をいうものであること。
(3) 表示しなければならない事項(第33条関係)
ア 法第57条第1項の規定による表示をする者の氏名(法人にあつては、その名称)、住所及び電話番号(第1号関係)
表示しなければならない事項として、法第57条第1項の規定による表示をする者の電話番号を追加したこと。
イ 注意喚起語(第2号関係)
化学物質等の危険性又は有害性について警告するための語句として、「危険」又は「警告」を記載することとしたこと。
ウ 安定性及び反応性(第3号関係)
化学物質等の危険性に係る情報を記載することとしたこと。
(4) 名称等を表示すべき危険物及び有害物(別表第2関係)
ア 表示対象物質を含有する製剤その他の物について、表示対象物質ごとの裾切値(当該物質の含有量がその値未満の場合、規制の対象としないこととする場合の、当該値)を規定することとしたこと。
イ ベンゼンを含有する製剤その他の物に係る含有量の単位については、従前の容量パーセントから重量パーセントとしたこと。
ウ 別表下欄に「―」が記載されている四アルキル鉛、硝酸アンモニウム、ニトログリセリン、ニトロセルローズ又はピクリン酸(以下「四アルキル鉛等」という。)を含有する製剤その他の物については、四アルキル鉛等の含有量にかかわらず表示の対象としたこと。
(5) 経過措置について(附則関係)
ア 含有量が1パーセント未満の物に対する経過措置(附則第2条関係)
改正省令により新たに表示の対象となる物のうち、裾切値が1パーセント未満となる表示対象物質を含有する物で、当該表示対象物質の含有量が重量の1パーセント(ベンゾトリクロリドにあっては0.5パーセント)未満のものについては、平成20年11月30日までの間、法第57条第1項の規定を適用しないものとしたこと。
イ 改正省令の施行の際現に存する物に対する経過措置(附則第3条関係)
改正省令により、新たに表示の対象となる物(上記「ア」に掲げる物を除く。)で、改正省令の施行の際現に存するものについては、平成19年5月31日までの間、法第57条第1項の規定を適用しないものとしたこと。
2 化学物質等に係る文書交付制度の改善
(1) 名称等を通知すべき物の範囲の拡大(第34条の2、第34条の2の2関係)
ア 新令別表第9第634号において、名称等を通知すべき製剤その他の物で、厚生労働省令で定めることとされているものを別表第2の2により定めたこと。
イ 名称等を通知すべき製剤その他の物で令別表第9第635号の厚生労働省令で定めるものとして、改正前において既に通知すべき物とされていた法第57条の2第1項本文の規定による法第56条第1項の物に加え、当該有害物の含有量が一定の値若しくは範囲の物を追加したこと。
(2) 文書の交付等により通知しなければならない事項(第34条の2の4関係)
ア 法第57条の2第1項の規定による通知を行う者の氏名(法人にあつては、その名称)、住所及び電話番号(第1号関係)
通知しなければならない事項として、法第57条の2第1項の規定による通知を行う者の電話番号を追加したこと。
イ 危険性又は有害性の要約(第2号関係)
化学物質等が有する重要若しくは特有の危険性又は有害性に係る情報を明確かつ簡潔に記載することとしたこと。
ウ 安定性及び反応性(第3号関係)
化学物質等の危険性に係る情報を記載することとしたこと。
エ 適用される法令(第4号関係)
化学物質等に適用される法令の名称を記載することとしたこと。
オ その他参考となる事項(第5号関係)
重要であるが他の事項に直接関連しない情報を記載することとしたこと。
(3) 成分の含有量の表記の方法(第34条の2の6関係)
ベンゼンを含有する製剤その他の物に係るベンゼンの含有量については、従前の容量パーセントから重量パーセントとしたこと。
(4) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(別表第2の2関係)
ア 新令別表第3第1号1から7まで及び新令別表第9第1号から第633号までに掲げる物質(以下「通知対象物質」という。)を含有する製剤その他の物について、通知対象物質ごとに裾切値を規定したこと。
イ ベンゼンを含有する製剤その他の物に係るベンゼンの含有量については、従前の容量パーセントから重量パーセントとしたこと。
ウ 別表下欄に「―」が記載されている硝酸アンモニウム、ニトログリセリン、ニトロセルローズ又はピクリン酸(以下「硝酸アンモニウム等」という。)を含有する製剤その他の物については、硝酸アンモニウム等の含有量にかかわらず通知の対象としたこと。
(5) 経過措置について(附則関係)
ア 含有量が1パーセント未満の物に対する経過措置(附則第4条関係)
改正省令により新たに通知の対象となる物のうち、裾切値が1パーセント未満となる通知対象物質を含有する物で、当該通知対象物質の含有量が重量の1パーセント(ベンゾトリクロリドにあっては0.5パーセント)未満のものについては、平成20年11月30日までの間、法第57条の2第1項の規定を適用しないものとしたこと。
イ 改正省令の施行の際現に存する物に対する経過措置(附則第5条関係)
改正省令により、新たに通知の対象となる物(上記「ア」に掲げる物を除く。)で、改正省令の施行の際現に存するものについては、平成19年5月31日までの間、法第57条の2第1項の規定を適用しないものとしたこと。
Ⅳ 告示関係
第1 制定の趣旨
法の改正により、容器等に表示が義務づけられた標章について定めたこと。
第2 細部事項
1 GHSに従った分類に基づき決定された危険有害性クラス(引火性固体のような物理化学的危険性、発がん性物質、経口急性毒性のような人健康有害性及び水生環境有害性のような環境有害性の種類)及び危険有害性区分(危険有害性の強度)に対して日本工業規格Z7251(GHSに基づく化学物質等の表示)附属書Aにより割り当てられた「絵表示」を記載することとしたこと。
2 船舶による危険物の運送基準等を定める告示(昭和54年運輸省告示第549号)第1号様式の適用を受ける場合は、労働安全衛生法第五十七条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める標章(平成18年10月20日厚生労働省告示第619号。以下「標章告示」という。)第1号に定められた標札又は標識を、航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示(昭和58年運輸省告示第572号)第2号様式の適用を受ける場合は、標章告示第2号に定められたラベルを表示することとしたこと。
3 平成18年12月1日において、現に存する容器又は包装で改正前の規定に掲げる事項が表示されているものについては、標章告示附則第2項の規定に基づき、平成19年5月31日までの間は、経過措置として、本項目の標章の定めを適用しないこととしたこと。