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通達:法令名

 

天然鉱物中の石綿含有率の分析方法について

平成18年8月28日基安化発第0828001号

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

改正 平成26年3月31日基安化発0331第3号

 

労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)及び石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)の一部が改正され、平成18年9月1日から、これら法令に基づく規制の対象となる物の石綿の含有率(重量比)が1%から0.1%に改められることとされたところである。

建材中の石綿等をその重量の0.1%を超えて含有するか否かについて行う分析については、平成18年8月21日付け基発第0821002号「建材中の石綿含有率の分析方法について」において、0.1%までの精度を有する分析方法としてJIS A 1481「建材製品中のアスベスト含有率測定方法」(以下「JIS法」という。)等があるとされているところである。

しかしながら、JIS法では、石綿を「不純物として含有するおそれのある天然鉱物及びそれを原料としてできた製品については、適用しない」とされていることから、石綿を不純物として含有するおそれのある天然鉱物を粉砕し、原料として使用する場合における石綿含有率の分析をJIS法により行うことは適当でない。

このことから、天然鉱物中の石綿含有率の分析方法について、厚生労働省の委託事業により(社)日本作業環境測定協会において検討を行った結果、今般、別添のとおりその分析方法が取りまとめられたところである。

ついては、本分析方法について、局管内の作業環境測定機関等の分析機関並びに石綿を不純物として含有するおそれのある天然鉱物を取り扱う事業者及び関係事業者団体に対し周知を図られたい。

なお、関係事業者団体等に対して、別紙(省略)のとおり周知したので了知されたい。

 

別添

天然鉱物中の石綿含有率の分析方法

第1 適用範囲

工業的に利用されている天然鉱物の中には、石綿を不純物として含有するおそれのあるものがあるが、JIS A 1481「建材製品中のアスベスト含有率測定方法」では、石綿を不純物として含有するおそれのある天然鉱物等は適用範囲から除かれている。

本分析方法は、これらの天然鉱物のうち粉状のタルク、セピオライト、バーミキュライト(焼成品を含む。)及び天然ブルーサイト(軽焼マグネシウム及び重焼マグネシウムを含む。)について、石綿をその重量の0.1%を超えて含有しているか否かの判定を行う場合において適用するものである。

なお、これら天然鉱物に含有するおそれのある石綿の種類としては、トレモライト及びクリソタイルがある。

 

第2 試料の採取

試料の採取に当たっては、本分析方法が適用される天然鉱物が粉状で輸入される場合はその単位ごとに、また、塊状で輸入され、国内で塊状を粉砕して使用する場合はその塊状を粉砕する単位ごとに、同一ロットから1サンプル当たり10g程度で、3サンプル以上採取する。

採取した試料はそれぞれ目開き75μm以下の篩下に調製し、各試料ごとに分析する。

 

第3 天然鉱物中の石綿含有率の分析方法

1 タルク中の石綿含有率の分析方法

本法は、タルク中の石綿をX線回折法を利用してその含有率を判定するものである。本法の対象とする石綿は、トレモライト及びクリソタイルである。普及型X線回折分析による検出限界は、概ねトレモライト0.5重量%、クリソタイル0.8重量%である。検出限界は、装置や試料の状態(マトリックス物質のX線吸収係数の大小、均質性、粒径、粒子配向等)、分析技術等によって異なるが、これ以下のレベルでは再現性が乏しい。方法は、まず検出限界付近の標準試料を用いて標準試料中のトレモライトとクリソタイルの回折線を確実に検出できるように装置の較正を行い、かつ測定条件を選定する。次に、被検試料の当該回折線強度を標準試料と同一測定条件で求め、被検試料の示す回折線の強度を標準試料の石綿の回折線の強度と比較して、それ以下であることを確認する。

(1) X線回折装置

普及型X線回折装置を使用するが、以下の点に留意する必要がある。

タルク中の石綿の検出については、微量の石綿を対象とすることから、X線回折装置の選択と機器の精密な調整が重要である。

X線回折装置の選択には、指定された測定条件又はそれ以上の条件が選べるもので安定したX線強度が保持でき、標準試料中の石綿の回折線を十分に明瞭なピークとして記録できるものを選ぶことが必要である。機器の調整、特にゴニオメーターの調整が不十分な場合は、回折線の誤認や回折線強度の減少が生じ、正確な判定が困難となる。その影響は回折角が低角度ほど大きいので、本試験で回折角(2θ)10.4°のトレモライトや12.1°のクリソタイルの回折線の強度測定には十分な注意が必要である。

(2) 石綿含有タルク標準試料

トレモライト25.0mgをタルク4.975gによく混和させた粉末試料をトレモライト含有タルク標準試料とする。クリソタイル40.0mgをタルク4.960gによく混和させた粉末試料をクリソタイル含有標準試料とする。

(3) 分析操作

ア X線回折装置の測定条件

測定範囲(2θ):

トレモライト10.0―11.0°

クリソタイル11.0―13.0°又は23.0―26.0°

管電圧及び電流:40kV、30mA又はそれ以上で測定する。

対陰極:Cu

単色化:グラファイトモノクロメーター又はNiフィルター

検出器:シンチレーションカウンター、プロポーショナルカウンター、ガイガーカウンター、半導体検出器等

スリット系:

受光スリット0.3mm又は0.2mm

発散スリット 1°

散乱スリット 1°

ゴニオメーター走査速度:毎分1/8°又はそれ以下

時定数:最適時定数を用いる。

チャートのフルスケール:回折線の強度測定はバックグランドを差し引いた正味のピーク面積を求める。記録チャートには回折線がピークとして確認できるような適切なフルスケールを選ぶこと。

イ 測定法

X線回折装置の測定条件を適切なものに設定する。トレモライト標準試料とクリソタイル標準試料をそれぞれ試料保持板に固く詰め、X線回折装置のゴニオメーターに装着する。トレモライト含有タルク標準試料を回折角(2θ)10.0―11.0°(回折ピーク位置10.4°付近)、クリソタイル含有タルク標準試料を回折角(2θ)11.0―13.0°(回折ピーク位置12.1°付近)又は23.0―26.0°(回折ピーク位置24.3°付近)の範囲で測定し、回折線強度(面積)を記録する。

これらの標準試料を試料保持板に詰め直して、3回繰返し測定して、再現性のある回折線の強度(面積)が明らかに認められることを確認したうえで、それらの平均強度(面積)を記録する。

次に、被検試料の測定を同様に行う。試料を詰め直して3回繰り返し測定する。このとき、トレモライトは、10.4°の回折線、クリソタイルは12.1°又は24.3°の回折線が認められるか否かを確認する。回折線が認められた場合は3回の平均強度(面積)が各々標準試料の当該回折線強度(面積)以下か否かを確認する。

ウ 判定方法

上記イの測定の結果、回折線が認められない場合又は標準試料の当該回折線強度以下である場合は0.1重量%を超えていないと判定される。

(4) 分析上の留意点

タルクに共存しやすい鉱物として、緑泥石(クロライト)、方解石(カルサイト)、苦灰岩(ドロマイト)、マグネサイト、石英(クオーツ)等がある。石綿含有の判定には、まず試料タルクの定性分析を行い、石綿以外の共存物質の回折線が重なっていないか十分に調べておくことが重要である。トレモライトの10.4°の回折線には上記の鉱物の回折線は重ならないが、クリソタイルの12.1°と24.3°の回折線の付近には緑泥石の回折線が出現(各々12.5°と25.0°付近に出現)することがあることから、これらの回折線の重なりを十分注意する必要がある。

X線回折分析によりトレモライトを検出した場合、それが石綿かどうか決定するには、さらに分析電子顕微鏡を用いて粒子形状や化学組成を確認することが必要である。しかし、現在、分析電子顕微鏡が普及していないことや分析電子顕微鏡による定量計数法が確立していないことなどから、本法ではX線回折分析によりトレモライトに相当する回折線の検出をもって石綿としている。

2 セピオライト中の石綿含有率の分析方法

本法は、セピオライト中の石綿含有率をX線回折法により判定するものである。本法の対象とする石綿は、トレモライトである。本法は、まず標準試料を用いて標準試料中のトレモライトの回折線を確実に検出できるように装置の較正を行い、かつ測定条件を選定する。次に、被検試料の当該回折線強度を標準試料と同一測定条件で求め、被検試料の示す回折線の強度を標準試料のアスベストの回折線の強度と比較して、それ以下であることを確認する。

(1) X線回折分析装置

普及型X線回折装置を使用するが、以下の点に留意する必要がある。

セピオライト中のトレモライトの検出については、微量のトレモライトを対象とすることから、X線回折装置の選択と機器の精密な調整が重要である。

X線回折装置の選択には、指定された測定条件又はそれ以上の条件が選べるもので安定したX線強度が保持でき、標準試料中のトレモライトの回折線を十分に明瞭なピークとして記録できるものを選ぶことが必要である。機器の調整、特にゴニオメーターの調整が不十分な場合は、回折線の誤認や回折線強度の減少が生じ、正確な判定が困難となる。その影響は回折角が低角度ほど大きいので、本試験で回折角(2θ)10.4°のトレモライトの回折線の強度測定には十分な注意が必要である。

(2) トレモライト含有セピオライト標準試料

トレモライト100.0mgをセピオライト4.900gによく混和させた粉末試料をトレモライト含有セピオライト標準試料とする。

(3) 分析操作

ア X線回折装置の測定条件

測定範囲(2θ):トレモライト10.0―11.0°

管電圧及び電流:40kV、30mA又はそれ以上で測定する。

対陰極:Cu

単色化:グラファイトモノクロメーター又はNiフィルター

検出器:シンチレーションカウンター、プロポーショナルカウンター、ガイガーカウンター、半導体検出器等

スリット系:

受光スリット0.3mm又は0.2mm

発散スリット 1°

散乱スリット 1°

ゴニオメーター走査速度:毎分1/8°又はそれ以下

時定数:最適時定数を用いる。

チャートのフルスケール:回折線の強度測定はバックグランドを差し引いた正味のピーク面積を求める。記録チャートには回折線がピークとして確認できるような適切なフルスケールを選ぶこと。

イ 測定法

X線回折装置の測定条件を適切なものに設定する。トレモライト含有セピオライト標準試料を試料保持板に固く詰め、X線回折装置のゴニオメーターに装着する。この標準試料を回折角(2θ)10.0―11.0°(回折ピーク位置10.4°付近)の範囲で測定し、回折線強度(面積)を記録する。

この標準試料を試料保持板に詰めたものは、詰め直すと試料の配向効果などで強度の変化が起きるので、別々の試料保持板に詰めたもの3個を用意し、それらを測定して、再現性のある回折線の強度(面積)が明らかに認められることを確認したうえで、それらの平均強度(面積)を記録する。

次に、被検試料の測定を同様に行う。この際、別々の試料保持板に詰めた測定試料3個を用意する、又は被検粉末試料から3回試料を採取し、試料保持板に詰め直すことにより、3回測定する。このとき、トレモライトの10.4°の回折線が認められるか否かを確認し、回折線が認められた場合は3回の平均強度(面積)が標準試料の当該回折線強度(面積)以下か否かを確認する。

ウ 判定方法

上記イの測定の結果、回折線が認められない場合あるいは標準試料の当該回折線強度以下である場合は0.1重量%を超えていないと判定される。

(4) 分析上の留意点

セピオライトに共存しやすい鉱物として、方解石(カルサイト)、苦灰岩(ドロマイト)、マグネサイト、石英(クオーツ)等がある。トレモライト含有の判定には、まず試料の定性分析を行い、トレモライト以外の共存物質の回折線が重なっていないか十分に調べておくことが重要である。一般に、トレモライトの10.4°の回折線には上記の鉱物の回折線は重ならないが、定性分析は重要である。

X線回折分析によりトレモライトを検出した場合、それが石綿かどうか決定するには、さらに分析電子顕微鏡を用いて粒子形状や化学組成を確認することが必要である。しかし、現在、分析電子顕微鏡が普及していないことや分析電子顕微鏡による定量計数法が確立していないことなどから、本法では次のようにしてトレモライト石綿を判定している。

セピオライト中のトレモライトの粒子形状を調べて、繊維状と非繊維状の粒子割合とそのサイズから繊維状粒子の重量%を求めた研究論文がある。それによると、トレモライト粒子の中で繊維状を呈しているのは全トレモライト粒子の約8重量%であるとしている。本法では、検出されたトレモライトの約8重量%が繊維状トレモライトであるということと、低濃度領域の誤差の大きさを考慮して、セピオライト中に2重量%相当のトレモライトを含有する標準試料のトレモライト回折線強度より被検試料のトレモライト回折線強度が低い場合、被検試料中のトレモライト石綿は0.1重量%を超えていないと判定するものである。

3 バーミキュライト中の石綿含有率の分析方法

本法は、X線回折法を利用してバーミキュライト中の石綿の含有率を判定するものである。バーミキュライトは、その産地によりトレモライトやクリソタイルの石綿を含有することがある。バーミキュライトの約12.4°の回折線がクリソタイルの12.1°の回折線と重なり合う。また、バーミキュライトはその構造層間に水和したマグネシウム層をもつが、一般にバーミキュライトとされる鉱産物の多くは、構造層間にカリウムを比較的多く持ついわゆるハイドロバイオタイトを含むことが多い。そのハイドロバイオタイトの約10.5°の回折線がトレモライトの10.4°の回折線と重なり合うことがある。また、酸処理法や低温灰化法などの方法では、バーミキュライトやハイドロバイオタイトは分解しにくく、濃縮・定量は容易でない。こうした理由から、原鉱を単に粉末X線回折測定した場合は、石綿の含有を誤認したり、あるいは過剰量に評価したりしやすい。

そのため、本法は簡易な試料前処理を施した試料についてX線回折分析を行い、その結果から石綿含有を判定するものである。普及型X線回折分析による検出限界は、概ねトレモライト0.5重量%、クリソタイル0.8重量%である。検出限界は、装置や試料の状態(マトリックス物質のX線吸収係数の大小、均質性、粒径、粒子配向等)、分析技術等によって異なるが、これ以下のレベルでは再現性が乏しい。方法は、まず検出限界付近の石綿を含有する標準試料に所定の前処理を施し、その前処理を施した標準試料中のトレモライトとクリソタイルの回折線を確実に検出できるように装置の較正を行い、かつ最適な測定条件を選定する。次に、被検試料にも同じ前処理を施し、その試料の当該回折線強度を標準試料と同一測定条件で求め、被検試料の示す回折線の強度を標準試料の石綿の回折線の強度と比較して、それ以下であることを確認する。

(1) X線回折分析装置

バーミキュライト中の石綿の検出については、微量の石綿を対象とすることから、X線回折装置の選択と機器の精密な調整が重要である。

X線回折装置の選択には、指定された測定条件かそれ以上の条件が選べるもので安定したX線強度が保持でき、標準試料中の石綿の回折線を十分に明瞭なピークとして記録できるものを選ぶことが必要である。機器の調整、特にゴニオメーターの調整が不十分な場合は、回折線の誤認や回折線強度の減少が生じ、正確な判定が困難となる。その影響は回折角が低角度ほど大きいので、本試験で10.4°のトレモライトや12.1°のクリソタイルの回折線の強度測定には十分な注意が必要である。

(2) 石綿含有バーミキュライト標準試料

トレモライト25.0mgをバーミキュライト4.975gによく混和させた粉末試料をトレモライト含有バーミキュライト標準試料とする。クリソタイル40.0mgをバーミキュライト4.960gによく混和させた粉末試料をクリソタイル含有バーミキュライト標準試料とする。

(3) 分析操作

ア 試料の前処理

以下の①カリウム溶液処理又は②加熱処理のいずれかの処理を施す。

① カリウム溶液処理

トレモライト含有バーミキュライト標準試料とクリソタイル含有バーミキュライト標準試料各々1.0gを1モルの塩化カリウム水溶液100mL中によく分散させ、70℃から80℃の温度で1時間以上放置して層間イオンを十分にカリウムイオンに置換する。処理物は、遠心分離機で遠沈させ、上済みを棄却する。その沈殿物に蒸留水を加えて攪拌し、再度遠沈させる。この操作を3回繰り返し沈殿物を良く洗浄する。洗浄後の沈殿物を、100℃の乾燥機中又はシリカゲルデシケーター中で十分に乾燥させる。

被検試料も上記と同様なカリウム溶液による前処理を施す。

② 加熱処理

トレモライト含有バーミキュライト標準試料とクリソタイル含有バーミキュライト標準試料各々1.0gを、加熱炉中にて350±10℃で1時間以上加熱処理する。加熱処理物はデシケーター中にて放冷し、室温になったら直ぐにX線回折測定に供する。

被検試料も上記と同様な加熱処理を施す。

イ X線回折装置の測定条件

測定範囲(2θ):

トレモライト10.0―11.0°

クリソタイル11.0―13.0°又は23.0―26.0°

管電圧及び電流:40kV、30mA又はそれ以上で測定する。

対陰極:Cu

単色化:グラファイトモノクロメーター又はNiフィルター

検出器:シンチレーションカウンター、プロポーショナルカウンター、ガイガーカウンター、半導体検出器等

スリット系:

受光スリット0.3mm又は0.2mm

発散スリット 1°

散乱スリット 1°

ゴニオメーター走査速度:毎分1/8°又はそれ以下

時定数:最適時定数を用いる。

チャートのフルスケール:回折線の強度測定はバックグランドを差し引いた正味のピーク面積を求める。記録チャートには回折線がピークとして確認できるような適切なフルスケールを選ぶこと。

ウ 測定法

X線回折装置の測定条件を適切なものに設定する。前処理を施したトレモライト含有バーミキュライト標準試料とクリソタイル含有バーミキュライト標準試料をそれぞれ試料保持板に固く詰め、X線回折装置のゴニオメーターに装着する。トレモライト含有バーミキュライト標準試料を回折角(2θ)10.0―11.0°(回折ピーク位置10.4°付近)、クリソタイル含有バーミキュライト標準試料を回折角(2θ)11.0―13.0°(回折ピーク位置12.1°付近)又は23.0―26.0°(回折ピーク位置24.3°付近)の範囲を測定する。それらの回折線強度(面積)を記録する。

これらの標準試料を試料保持板に詰め直して、3回繰返し測定して、再現性のある回折線の強度(面積)が明らかに認められることを確認したうえで、それらの平均強度(面積)を記録する。

次に、カリウム溶液処理又は350℃加熱処理を施した被検試料の測定を同様に行う。試料を詰め直して3回繰り返し測定する。このとき、トレモライトは、10.4°の回折線、クリソタイルは12.1°又は24.3°の回折線が認められるか否かを確認する。回折線が認められた場合は3回の平均強度(面積)が各々標準試料の当該回折線強度(面積)以下か否かを確認する。

エ 判定方法

上記ウの測定の結果、回線線が認められない場合あるいは標準試料の当該回折線強度以下である場合は0.1重量%を超えていないと判定される。

(4) 分析上の留意点

バーミキュライトに共存しやすい鉱物として、緑泥石(クロライト)、金雲母(バイオタイト)、方解石(カルサイト)、苦灰岩(ドロマイト)、マグネサイト、石英(クオーツ)等がある。石綿含有の判定には、まず被検試料(バーミキュライト)の定性分析を行い、石綿以外の共存物質の存在を十分に調べておくことが重要である。その上で、カリウム処理あるいは加熱処理を施した試料のバーミキュライトの回折線がトレモライトの10.4°の回折線とクリソタイルの12.1°と24.3°の回折線に重ならないか十分に検討する。緑泥石が含有されている場合は、その回折線が12.5°と25.0°付近に出現することから、クリソタイルの回折線との重なりを十分注意する必要がある。

X線回折分析によりトレモライトを検出した場合、それが石綿かどうか決定するには、さらに分析電子顕微鏡を用いて粒子形状や化学組成を確認することが必要である。しかし、現在、分析電子顕微鏡が普及していないことや分析電子顕微鏡による定量計数法が確立していないことなどから、本法ではX線回折分析によりトレモライトに相当する回折線の検出をもって石綿としている。

4 天然ブルーサイト中の石綿含有率の分析方法

天然ブルーサイト中には、クリソタイルが含まれていることが指摘されており、その含有の有無を判断するための方法が求められている。

天然ブルーサイトは、不純分として緑泥石(クロライト)、マグネサイト、ドロマイト、蛇紋石(サーペンティン)等を含有するため、X線回折法での含有率の定量は困難である。また、微分熱重量分析法(DTG法)においてもクリソタイルと減量温度が近接する共存鉱物(リザルダイト、クロライト、マグネサイト、ドロマイト等)の影響によりクリソタイルの定量を困難にしている。そこで、ブルーサイトに関しては、酸処理を行うことでブルーサイトを溶解し、溶解残さ中に不純物として存在するクリソタイルをX線回折法及び微分熱重量法(DTG法)を用い、その存在の有無を確認することで、天然ブルーサイト中のクリソタイル含有の有無の判断をする。

(1) 分析用試料の作製方法

X線回折法及びDTG法に用いるための試料は次の様な手順で作製する。

ア ブルーサイトを乳鉢等を用いて粉砕する。

イ 粉末化したブルーサイト試料約5gを20%クエン酸200mLの入っているビーカーに加え、約1時間攪拌してブルーサイト試料を溶解させる。

ウ 溶解終了後、メンブランフィルター(ポアサイズ1μm)にて溶解残さを回収する。その後、溶解残さ試料を105℃で2時間乾燥後、溶解残さ分析用試料とする。

(2) 分析方法

ア X線回折装置の測定条件を適切な条件に設定する。溶解残さ分析用試料を試料保持板に詰め、X線回折装置のゴニオメーターに装着した後、定性分析を行い、クリソタイルの存在を示す回折角(2θ)12.1°又は24.3°の回折線の有無を確認する。

イ 次に、熱分析装置の測定条件を適切な条件に設定する。溶解残さ分析用試料約20mgを微分熱重量分析装置を用いて定性分析を行い、DTG曲線にクリソタイルの存在を示すピークの有無を確認する。

ウ X線回折装置と微分熱重量分析装置の測定条件

① X線回折装置による測定条件の例

測定範囲(2θ):クリソタイル11.0―13.0°又は23.0―26.0°

管電圧及び電流:40kV、30mA又はそれ以上で測定する。

対陰極:Cu

単色化:グラファイトモノクロメーター又はNiフィルター

検出器:シンチレーションカウンター、プロポーショナルカウンター、ガイガーカウンター、半導体検出器等

スリット系:

受光スリット0.3mm又は0.2mm

発散スリット 1°

散乱スリット 1°

ゴニオメーター走査速度:毎分1/8°又はそれ以下

時定数:最適時定数を用いる。

② 微分熱重量分析装置の測定条件

試料量:約20mg

温度:室温~1000℃

昇温:20℃/min

試料周りの雰囲気:静止空気

基準物質:α―Al2O3を20mg

測定項目:DTG(微分熱重量)

(3) 判定方法

ア X線回折法による定性分析の結果、クリソタイルのピークが確認できなく、かつ、DTG法においてもクリソタイルのピークが確認できない場合は、ブルーサイト試料中には0.1重量%を超えて石綿を含有していないと判定される。

イ X線回折法及びDTG法のいずれかの方法並びに両方法においてにクリソタイルの存在を示すピークが認められた場合、0.1重量%を超えて石綿を含有していると判定される。