◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー
過重労働による健康障害防止のための総合対策について
平成18年3月17日基発第0317008号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
最終改正 平成28年4月1日基発0401第72号
長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られている。働くことにより労働者が健康を損なうようなことはあってはならないものであり、この医学的知見を踏まえると、労働者が疲労を回復することができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。
このため、平成14年2月12日付け基発第0212001号「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」(以下「旧総合対策」という。)に基づき所要の対策を推進してきたところであるが、昨年11月、働き方の多様化が進む中で、長時間労働に伴う健康障害の増加など労働者の生命や生活にかかわる問題が深刻化しており、これに的確に対処するため、必要な施策を整備充実する労働安全衛生法等の改正が行われたところである。
今般、今回の労働安全衛生法等の改正の趣旨を踏まえ、旧総合対策に基づく措置との整合性、一貫性を考慮しつつ、新たに標記の総合対策を別紙1のとおり策定したので、各局においては、同総合対策に基づく措置の周知徹底を図り、改正労働安全衛生法の円滑かつ着実な施行と併せて、過重労働による健康障害防止対策のなお一層の推進に努められたい。
なお、旧総合対策は廃止する。
おって、関係団体に対し、別紙2のとおり要請を行ったので、了知されたい。
(別紙1)
過重労働による健康障害防止のための総合対策
1 目的
長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られている。働くことにより労働者が健康を損なうようなことはあってはならないものであり、この医学的知見を踏まえると、労働者が疲労を回復することができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。
このため、厚生労働省においては、平成14年2月から「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(以下「旧総合対策」という。)に基づき所要の対策を推進してきたところであるが、働き方の多様化が進む中で、長時間労働に伴う健康障害の増加など労働者の生命や生活にかかわる問題が深刻化しており、これに的確に対処するため、必要な施策を整備充実する労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)等の改正が行われ、平成18年4月から施行されているところである。
加えて、労働者のメンタルヘルス不調の一次予防を目的として、平成26年6月の労働安全衛生法の改正により「ストレスチェック制度」が導入され、平成27年12月から施行されているところである。
さらに、社会問題となっている過労死等を防止するため、同じく平成26年6月に過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)が議員立法として制定され、同年11月1日から施行されており、同法に基づき平成27年7月には「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が定められ、調査研究、啓発、相談体制の整備、民間団体の活動に対する支援の四つの対策を重点的に実施していくことが示されたところである。
本総合対策は、上記の労働安全衛生法等の改正及び過労死等防止対策推進法の制定の趣旨を踏まえ、旧総合対策に基づく措置との整合性、一貫性を考慮しつつ、事業者が講ずべき措置(別添「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」をいう。以下同じ。)を定めるとともに、当該措置が適切に講じられるよう国が行う周知徹底、指導等の所要の措置をとりまとめたものであり、これらにより過重労働による健康障害を防止することを目的とするものである。
2 過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等の周知徹底
都道府県労働局及び労働基準監督署は、集団指導、監督指導、個別指導等のあらゆる機会を通じて、リーフレット等を活用した周知を図るとともに、キャンペーン月間の設定等により、事業者が講ずべき措置の内容について、事業者に広く周知を図ることとする。
なお、この周知に当たっては、関係事業者団体等並びに産業保健総合支援センター等も活用することとする。
3 過重労働による健康障害防止のための窓口指導等
(1) 36協定における時間外労働の限度時間に係る指導の徹底
ア 労働基準法(昭和22年法律第49号)第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の届出に際しては、労働基準監督署の窓口において次のとおり指導を徹底する。
(ア) 「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号。以下「限度基準」という。)に規定する限度時間を超える36協定については、限度時間を遵守するよう指導を行う。特に、限度基準第3条ただし書又は第4条に定める「特別の事情」を定めた36協定については、この「特別の事情」が臨時的なものに限られるものとするよう指導する。また、過重労働による健康障害を防止する観点から、限度時間を超える一定の時間まで延長する労働時間をできる限り最小限のものとするようにリーフレット等を活用し指導する。
(イ) 限度基準に適合し、月45時間を超える時間外労働を行わせることが可能である36協定であっても、実際の時間外労働については月45時間以下とするようリーフレット等を活用し指導する。
(ウ) 休日労働を行うことが可能な36協定であっても、実際の休日労働をできる限り最小限のものとするようリーフレット等を活用して指導する。
イ 限度基準に規定する限度時間を超える36協定について、労働者代表からも事情を聴取した結果、労使当事者間の検討が十分尽くされていないと認められた場合などには、協定締結当事者である労働者側に対しても必要な指導を行う。
(2) 裁量労働制に係る周知指導
裁量労働制に係る届出に際しては、労働基準監督署の窓口において、リーフレット等を活用して、事業者が講ずべき措置の内容を周知指導する。
(3) 労働時間等の設定の改善に向けた自主的取組の促進に係る措置
限度基準に規定する限度時間を超える時間外労働を行わせることが可能な36協定を締結している事業場であって、労働時間等の設定の改善に向けた労使による自主的取組の促進を図ろうとするものに対し、都道府県労働局に配置されている働き方・休み方改善コンサルタントの活用が図られるよう措置する。
4 過重労働による健康障害防止のための監督指導等
時間外・休日労働時間(休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間をいう。以下同じ。)が月45時間を超えているおそれがある事業場に対しては、次のとおり指導する。
(1) 産業医、衛生管理者、衛生推進者等の選任及び活動状況並びに衛生委員会等の設置及び活動状況を確認し、必要な指導を行う。
(2) 健康診断、健康診断結果についての医師からの意見聴取、健康診断実施後の措置、保健指導等の実施状況について確認し、必要な指導を行う。
(3) 労働者の時間外・休日労働時間の状況を確認し、労働安全衛生法第66条の8及び第66条の9の規定等に基づく長時間労働者に対する面接指導等(医師による面接指導及び面接指導に準ずる措置をいう。以下同じ。)及びその実施後の措置等(別添の5の(2)のアに掲げる措置をいう。)を実施するよう指導を行う。
(4) (3)の面接指導等が円滑に実施されるよう、手続等の整備(別添の5の(2)のイに掲げる措置をいう。)の状況について確認し、必要な指導を行う。
(5) 事業者が(3)の面接指導等(別添5の(2)のアの(ア)の[1]から[3]までに掲げる措置に限る。)に係る指導に従わない場合には、労働安全衛生法第66条第4項に基づき、当該面接指導等の対象となる労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断及び面接指導の結果等を踏まえた労働衛生指導医の意見を聴き、臨時の健康診断の実施を指示するとともに、厳正な指導を行う。
(6) 事業場が常時50人未満の労働者を使用するものである場合であって、近隣に専門的知識を有する医師がいない等の理由により、事業者自ら医師を選任し、面接指導を実施することが困難なときには、産業保健総合支援センターの地域窓口(以下「地域産業保健センター」という。)の活用が可能であることを教示する。
(7) 心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)、高ストレス者に対する医師による面接指導及び事後措置(医師からの意見聴取及び意見を勘案した就業上の措置)(以上をまとめて「ストレスチェック制度」という。)を実施するよう指導する。
また、ストレスチェック制度が当分の間努力義務とされている常時50人未満の労働者を使用する事業場に対しては、独立行政法人労働者健康安全機構が行うストレスチェック制度に関する助成金や、地域産業保健センターの医師による面接指導の活用が可能であることを教示する。
(8) 上記のほか、長時間労働の抑制を図るため、36協定により定められた延長することができる時間を超えて時間外労働が行われている場合や限度基準に適合していない場合などのほか、中小事業主以外の事業主に係る労働基準法第37条第1項ただし書に規定する割増賃金が支払われていないなどの場合には、必要な指導を行う。
5 過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止対策を徹底するための指導等
(1) 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対する再発防止対策の徹底の指導
過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場については、当該疾病の原因の究明及び再発防止の措置を行うよう指導する。
(2) 司法処分を含めた厳正な対処
過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場であって労働基準関係法令違反が認められるものについては、司法処分を含めて厳正に対処する。
(別添)
過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置
1 趣旨
長時間にわたる過重な労働は疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られている。働くことにより労働者が健康を損なうようなことはあってはならないものであり、当該医学的知見を踏まえると、労働者が疲労を回復することができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。
このため、厚生労働省においては、平成14年2月から「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(以下「旧総合対策」という。)に基づき所要の対策を推進してきたところであるが、今般、働き方の多様化が進む中で、長時間労働に伴う健康障害の増加など労働者の生命や生活にかかわる問題が深刻化しており、これに的確に対処するため、必要な施策を整備充実する労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)等の改正が行われたところである。
本措置は、このような背景を踏まえ、過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として、以下のとおり、事業者が講ずべき措置を定めたものである。
2 時間外・休日労働時間の削減
(1) 時間外労働は本来臨時的な場合に行われるものであり、また、時間外・休日労働時間(休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間をいう。以下同じ。)が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強まるとの医学的知見が得られている。このようなことを踏まえ、事業者は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の締結に当たっては、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者とともにその内容が「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号。以下「限度基準」という。)に適合したものとなるようにするものとする。
また、限度基準第3条ただし書又は第4条に定める「特別の事情」(限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる事情)を定めた36協定については、この「特別の事情」が臨時的なものに限るとされていることに留意するものとする。さらに、月45時間を超えて時間外労働を行わせることが可能である場合であっても、事業者は、実際の時間外労働を月45時間以下とするよう努めるものとする。
さらに、事業者は、休日労働についても削減に努めるものとする。
(2) 事業者は、「労働時間の適正な把握のための使用者が講ずべき措置等に関する基準について」(平成13年4月6日付け基発第339号)に基づき、労働時間の適正な把握を行うものとする。
(3) 事業者は、裁量労働制対象労働者及び管理・監督者についても、健康確保のための責務があることなどに十分留意し、当該労働者に対し、過重労働とならないよう十分な注意喚起を行うなどの措置を講ずるよう努めるものとする。
3 年次有給休暇の取得促進
事業者は、年次有給休暇を取得しやすい職場環境づくり、計画的付与制度の活用等により年次有給休暇の取得促進を図るものとする。
4 労働時間等の設定の改善
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第4条第1項に基づく、労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108号)においては、事業主及びその団体が労働時間等の設定の改善(労働時間、休日数及び年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項について労働者の健康と生活に配慮するとともに多様な働き方に対応したものへと改善することをいう。)について適切に対処するために必要な事項を定めている。また、平成22年3月19日の改正により、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備に関し事業者が講ずべき措置の項目が追加されたところである。このため、事業者は、過重労働による健康障害を防止する観点から、改正後の同指針に留意しつつ、必要な措置を講じるよう努めるものとする。
5 労働者の健康管理に係る措置の徹底
(1) 健康管理体制の整備、健康診断の実施等
ア 健康管理体制の整備及び健康診断の実施
事業者は、労働安全衛生法に基づき、産業医や衛生管理者、衛生推進者等を選任し、その者に事業場における健康管理に関する職務等を適切に行わせるとともに、衛生委員会等を設置し、適切に調査審議を行う等健康管理に関する体制を整備するものとする。
なお、事業場が常時50人未満の労働者を使用するものである場合には、産業保健総合支援センターの地域窓口(以下「地域産業保健センター」という。)の活用を図るものとする。
また、事業者は、労働安全衛生法第66条から第66条の7までに基づき、健康診断、健康診断結果についての医師からの意見聴取、健康診断実施後の措置、保健指導等を確実に実施するものとする。特に、深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、6月以内ごとに1回の健康診断を実施しなければならないことに留意するものとする。なお、医師からの意見聴取の際には、事業者は労働時間等に関する情報を提供することが適当であること。
イ 自発的健康診断制度の活用等
事業者は、労働安全衛生法第66条の2に基づく深夜業に従事する労働者を対象とした自発的健康診断制度や、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第26条に基づく血圧等一定の健康診断項目に異常の所見がある労働者を対象とした二次健康診断等給付制度の活用について、労働者への周知に努めるものとするとともに、労働者からこれらの制度を活用した健康診断の結果の提出があったときには、労働安全衛生法第66条の5に基づく事後措置についても講ずる必要があることについて留意するものとする。
また、事業者は、労働安全衛生法第69条に基づき、労働者の健康保持増進を図るための措置を継続的かつ計画的に実施するものとする。
(2) 長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等
ア 面接指導等(医師による面接指導及び面接指導に準ずる措置をいう。以下同じ。)の実施等
(ア) 事業者は、労働安全衛生法第66条の8及び第66条の9の規定等に基づき、労働者の時間外・休日労働時間に応じた面接指導等を次のとおり実施するものとする。
[1] 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者であって、申出を行ったものについては、医師による面接指導を確実に実施するものとする。
[2] 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超える労働者であって、申出を行ったもの([1]に該当する労働者を除く。)については、面接指導等を実施するよう努めるものとする。
[3] 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者([1]に該当する労働者を除く。)又は時間外・休日労働時間が2ないし6月の平均で1月当たり80時間を超える労働者については、医師による面接指導を実施するよう努めるものとする。
[4] 時間外・休日労働時間が1月当たり45時間を超える労働者で、健康への配慮が必要と認めた者については、面接指導等の措置を講ずることが望ましいものとする。
(イ) 事業者は、労働安全衛生法第66条の8及び第66条の9の規定等に基づき、面接指導等の実施後の措置等を次のとおり実施するものとする。
[1] (ア)の[1]の医師による面接指導を実施した場合は、その結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、遅滞なく医師から意見聴取するものとする。また、その意見を勘案し、必要があると認めるときは、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など適切な事後措置を講ずるものとする。なお、医師からの意見聴取の際には、事業者は労働時間等に関する情報を提供することが適当であること。
[2] (ア)の[2]から[4]までの面接指導等を実施した場合は、[1]に準じた措置の実施に努めるものとする。
[3] 面接指導等により労働者のメンタルヘルス不調が把握された場合は、面接指導を行った医師、産業医等の助言を得ながら必要に応じ精神科医等と連携を図りつつ対応するものとする。
イ 面接指導等を実施するための手続等の整備
(ア) 事業者は、アの面接指導等を適切に実施するために、衛生委員会等において、以下の事項について調査審議を行うものとする。また、この結果に基づく必要な措置を講ずるものとする。
[1] 面接指導等の実施方法及び実施体制に関すること。
[2] 面接指導等の申出が適切に行われるための環境整備に関すること。
[3] 面接指導等の申出を行ったことにより当該労働者に対して不利益な取扱いが行われることがないようにするための対策に関すること。
[4] アの(ア)の[2]から[4]までに該当する者その他の者について面接指導等を実施する場合における事業場で定める必要な措置の実施に関する基準の策定に関すること。
[5] 事業場における長時間労働による健康障害防止対策の労働者への周知に関すること。
(イ) 事業者は、アの(ア)の[1]及び[2]の面接指導等を実施するに当たっては、その実施方法及び実施体制に関する事項に、
[1] 労働者が自己の労働時間数を確認できる仕組みの整備
[2] 申出を行う際の様式の作成
[3] 申出を行う窓口の設定
等を含め必要な措置を講じるとともに、労働者が申出を行いやすくする観点に立ってその周知徹底を図るものとする。
ウ 常時50人未満の労働者を使用する事業場の対応
常時50人未満の労働者を使用する事業場においても、ア及びイの措置を実施する必要があるが、アについては、近隣に専門的知識を有する医師がいない等の理由により、事業者自ら医師を選任し、面接指導を実施することが困難な場合には、地域産業保健センターの活用を図るものとする。
また、当該事業場においてイの手続等の整備を行う場合には、事業者は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第23条の2に基づき設けた関係労働者の意見を聴くための機会を利用するように努めるものとする。
なお、地域産業保健センターで実施する面接指導を、事業者の指示等により対象者が受ける場合には、労働安全衛生法第66条の8第2項に規定されている事業者が指定した医師が行う面接指導に該当することとなるが、この場合、事業者は、対象となる労働者の勤務の状況(例えば直近1ヶ月の総労働時間、時間外・休日労働時間、業務内容等)を記した書面を当該医師に提出するとともに、労働安全衛生規則第52条の6に基づき当該面接指導の結果を記録し保存しておくものとする。
(3) ストレスチェック制度の実施
労働安全衛生法第66条の10により、事業者は、常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回、心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施し、高ストレス者に対して医師による面接指導を行うとともに、就業上の措置について医師の意見を聴き、その意見を勘案して必要な措置を講じること(以上をまとめて「ストレスチェック制度」という。)が義務付けられている(常時50人未満の労働者を使用する事業場においては、当分の間努力義務)。
このため、事業者は、「心理的な負担を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成27年心理的な負担の程度を把握するための検査等指針第1号)に基づき、ストレスチェック制度を適切に実施する必要があること。また、同指針に示しているとおり、医師からの意見聴取の際には、事業者は労働時間等に関する情報を提供することが適当であること。
なお、ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを主たる目的としているが、過重労働が原因となったメンタルヘルス不調が認められ、就業上の措置が必要となる場合があり得る。このため、事業者は、上記(2)の長時間労働者を対象とした面接指導だけでなく、高ストレス者に対する面接指導も活用して、過重労働による健康障害防止対策に取り組むこと。
(4) 過重労働による業務上の疾病を発生させた場合の措置
事業者は、過重労働による業務上の疾病を発生させた場合には、産業医等の助言を受け、又は必要に応じて労働衛生コンサルタントの活用を図りながら、次により原因の究明及び再発防止の徹底を図るものとする。
ア 原因の究明
労働時間の適正管理、労働時間及び勤務の不規則性、拘束時間の状況、出張業務の状況、交替制勤務・深夜勤務の状況、作業環境の状況、精神的緊張を伴う勤務の状況、健康診断及び面接指導等の結果等について、多角的に原因の究明を行うこと。
イ 再発防止
上記アの結果に基づき、衛生委員会等の調査審議を踏まえ、上記2から5の(2)までの措置に則った再発防止対策を樹立し、その対策を適切に実施すること。