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通達:石綿による健康障害防止対策の緊急的な対応について

 

石綿による健康障害防止対策の緊急的な対応について

平成17年7月15日基発第0715001号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

過去に石綿含有製品を製造し又は取り扱う作業(以下「石綿取扱い作業等」という。)に従事していた元労働者等に、肺がん、中皮腫等の健康障害が多数発生していることから、石綿による健康問題が社会的な関心を集めているが、これまでの我が国における石綿の使用状況等から、石綿による健康障害が今後も増加することが懸念されており、本課題への緊急的な対応が求められているところである。

このような状況に鑑み、石綿取扱い作業等従事労働者の健康障害防止対策の更なる徹底とともに、過去に石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実等を図るため、下記により、緊急対応を行うこととしたので、遺憾なきを期されたい。

 

1 現に石綿含有製品を製造し又は取り扱っていない事業場であって石綿による健康障害が発生した事業場への立ち入り調査等

現に石綿含有製品を製造し又は取り扱っていない事業場であって石綿にさらされる業務による労災認定が行われたことがある事業場に対しては、速やかに立ち入り調査等による調査を行い、石綿取扱い作業等を開始した後から現在までの間に石綿取扱い作業等に従事していた者に対する石綿障害予防規則(以下「石綿則」という。)第40条に規定する健康診断(以下「石綿健康診断」という。)等による健康管理の実施状況、石綿取扱い作業等従事労働者の把握状況等について確認すること。

2 現に石綿含有製品を製造し又は取り扱っている事業場への指導

ジョイントシート、シール材等の石綿含有製品を現に製造し又は取り扱っている事業場については、石綿による新たな健康障害の発生を防止すること等を目的に、製造、使用等の禁止が猶予されているところではあるが、同事業場に対しても、速やかに、監督指導又は個別指導を行い、石綿則等の関係法令の遵守の徹底を改めて図ること。

3 石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実

石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実を図るため、石綿取扱い作業等を有している事業場及び過去に石綿取扱い作業等を行っていた事業場に対して、石綿取扱い作業等に従事していた退職者を把握し、当該把握された退職者(健康管理手帳所持者を除く。)に対する石綿健康診断の速やかな実施に努めるよう、要請を行うこと。

また、事業を廃止する場合には石綿則第49条の規定に基づく届出義務があることを指導すること。

さらに、過去に石綿取扱い作業等を行っていたが、現在では廃止されている事業場において石綿取扱い作業等に従事していた者等の健康管理の充実を図るため、報道発表、地方公共団体の広報誌等に別添例の掲載を依頼する等の手法により、過去に石綿取扱い作業等に従事していた者に石綿健康診断の受診の呼びかけを行うこと。

4 健康管理手帳制度及び労災補償制度の周知徹底

前記1から3の指導、広報等の機会をとらえ、関係部署が連携し、労働安全衛生法第67条に基づく健康管理手帳制度及び石綿による疾病の認定基準をはじめ労災補償制度に関する周知を行うこと。

5 労働者、事業者等からの相談への的確な対応

各局署において、石綿に関する健康管理手帳制度、労災補償制度等に関する労働者、事業者等からの相談に的確に対応するため、各局署の相談窓口の連絡先等を広報し、活用の促進を図ること。

また、特定の相談相手については、以下のとおり、対応する窓口があるので、相談の内容に応じ、これらの関係機関を紹介すること。なお、労働者、事業主等が一般的な健康相談を受け付けている保健所に相談することも考えられるので、当該管内の保健所等との連携に留意すること。

(1) 中央労働災害防止協会(事業者からの石綿のばく露防止対策に関する相談)

(2) 建設業労働災害防止協会(事業者からの建築物の解体作業等における石綿のばく露防止対策に関する相談)

(3) 独立行政法人労働者健康福祉機構の産業保健推進センター(産業保健関係者、石綿による健康障害を受けられた労働者及びその家族からの健康に関する相談)

(4) 独立行政法人労働者健康福祉機構の労災病院(石綿ばく露歴のある者、その家族、開業医等からの診断・治療、健康診断に関する相談)

6 労災補償の迅速・適正な実施等

石綿による疾病の労災補償に関しては、発症までの潜伏期間が長期にわたる等の特殊性があることに鑑み、特に次のことに留意して対策を実施するとともに、医療機関の理解・協力を得るための対応も併せて行うこと。

(1) 石綿による疾病については、病理診断に必要な検査を早期に実施する必要があることから、特に計画的かつ、迅速な認定事務を行うよう努めること。

(2) 石綿による疾病については、ばく露作業への従事歴等の特定に困難をきたす事例もあるが、そのような労災請求事案についても同僚労働者からの聴取調査等を基にばく露作業を推定する等により迅速な認定に努めること。

(3) 医療機関に対する石綿による疾病の認定基準の周知を徹底して行うこと。

(4) 石綿による疾病に対する的確な対応が喫緊の課題となっていること等に鑑み、石綿による肺がん又は中皮腫の患者(以下「アスベスト患者」という。)が療養している医療機関や総合病院等アスベスト患者が療養する可能性の高い医療機関であって、現在労災指定医療機関となっていないものに対して、労災指定医療機関の申請を行うよう積極的に勧奨すること。

7 関係団体等への要請等

石綿による健康障害防止対策への的確な対応に資するため、本省においては、別紙1から4により、業界団体、関係省庁等に対して要請を行ったところである。

各局においても、関係業界団体等に対する要請を行うなどすることにより対策の一層の促進を図ること。

8 建築物の解体作業等における石綿ばく露防止措置の徹底

建築物の解体作業等における石綿ばく露防止については、湿潤化、保護具の使用等の対策を規定した石綿則の周知、別途指示するところによる監督指導等を重点的かつ効果的に実施し、石綿粉じんの飛散防止等の徹底を図ること。

9 使用等の禁止が猶予された石綿含有製品の代替化の促進

使用等の禁止が猶予されたジョイントシート、シール材等の石綿含有製品の代替化の一層の促進を図るため、本省において、化学工業等の関係業界団体等に対する要請を行っているところであるが、各局においても、関係業界団体等に対し、改めて、本取組の促進を要請すること。

10 その他

なお、石綿関連情報を以下のホームベージに掲載しているので、活用すること。

アドレス:http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/index.html

 

別添

図

石綿による健康被害が多発しており、今後も増加することが懸念されています。

下にリストアップされている作業に従事していた方は、石綿にばく露している可能性がありますので、最寄りの医療機関にご相談の上、胸部レントゲン検査等による健康診断を受診するようにしてください(受診の際、医師に自分が過去に石綿に係る作業を行っていた旨お伝え下さい)。

① 石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業

② 倉庫内等における石綿原料等の袋詰め又は運搬作業

③ 以下の石綿製品の製造工程における作業

・石綿糸、石綿布等の石綿紡績製品

・石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等のセメント製品

・ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等に用いられる耐熱性石綿製品

・自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品

・電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品(電線絶縁紙、保温材、耐酸建材等に用いられている。)又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品

④ 石綿の吹付け作業

⑤ 耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業

⑥ 石綿製品の切断等の加工作業

⑦ 石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設等の補修又は解体作業

⑧ 石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業

⑨ 石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)、バーミキュライト(蛭石)、繊維状ブルサイト(水滑石))等の取扱い作業

⑩ 上記①~⑨の石綿又は石綿製品を直接取扱う作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける可能性のある作業

図

石綿を取扱う作業等に従事していた方は、発がんリスクを高めることになるので、たばこを吸わないようにしてください(石綿にばく露した方が喫煙をした場合、肺がんによって死亡するリスクが50倍以上になるといわれています)。

図

健康診断の結果、胸部レントゲン検査で一定の症状がある場合等は、最寄りの都道府県労働局に申請していただければ、健康管理手帳の交付を受け、無料で定期的に健康診断を受けることができます。

また、石綿肺、肺がん、中皮腫等を発症した場合には、それが石綿にばく露したことが原因であると認められれば、労災補償を受けることができます。

図

○健康管理手帳、健康診断、労災補償についてのお問い合わせは…

都道府県労働局・労働基準監督署まで

○石綿による健康への影響や治療方法についてのご相談は…

(独)労働者健康福祉機構の産業保健推進センターまたは労災病院まで

 

(別紙1)

○石綿による健康障害防止対策への適切な対応について(依頼)

平成17年7月15日基発第0715002号

(別添関係業界団体の長あて厚生労働省労働基準局長通知)

日頃から労働基準行政の推進に格段の御協力を賜り御礼申し上げます。

今般、過去に、石綿含有製品を製造し又は取り扱う作業(以下「石綿取扱い作業等」という。)に従事していた元労働者等に、肺がん、中皮腫等の健康障害が多発していること、また、石綿による健康障害が今後も増加することが懸念されることなど、石綿による健康問題が社会的な関心を集めており、本問題への適切な対応が求められています。

このような状況に鑑み、石綿取扱い作業等従事労働者の健康障害防止対策の更なる徹底とともに、過去に石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実等を図るため、石綿による健康障害が発生している事業場への立ち入り調査等を行うとともに、過去に石綿取扱い作業等に従事した元労働者等への働きかけ等を行うこととしたところです。

貴団体におかれましても、下記について、会員企業等に対する周知等により、石綿による健康障害の防止の徹底に御協力いただきますようお願い申し上げます。

1 過去に石綿含有製品を製造し又は取り扱っていたことのある事業場における対策の徹底

石綿含有製品を製造し又は取り扱っていたことのある事業場においては、石綿による中皮腫等が増加する傾向にあること等を踏まえて、石綿取扱い作業等に従事し退職した者について、石綿障害予防規則(以下「石綿則」という。)第40条で規定する健康診断と同様の健康診断を速やかに実施するとともに、関係労働者等に対して労働安全衛生法第67条に基づく健康管理手帳及び労災補償制度に関する周知を行うこと。

2 現に石綿含有製品を製造し又は取り扱っている事業場における対策の徹底

ジョイントシート、シール材等の製造、使用等の禁止が猶予されている石綿含有製品を、現に製造し又は取り扱っている事業場においては、石綿則等の関係法令に基づく適切な局所排気装置の設置、健康診断の実施等の実施を改めて確認するとともに、適切な健康障害防止措置の徹底を図ること。

また、石綿取扱い作業等に従事し退職した者について、当該事業場の責任にて石綿則第40条で規定する健康診断を速やかに実施するとともに、関係労働者等に対して労働安全衛生法第67条に基づく健康管理手帳及び労災補償制度に関する周知を行うこと。

3 建築物の解体作業等における石綿粉じんの発散防止の徹底

建築物の解体作業等を行う事業者においては、石綿則等に基づく措置の確実な実施により、石綿粉じんの飛散防止の徹底を図ること。

4 健康相談、石綿のばく露防止対策に関する相談等について

労働者、事業者等からの健康相談、石綿のばく露防止対策に関する相談等について、各労働局・労働基準監督署、中央労働災害防止協会、建設業労働災害防止協会、独立行政法人労働者健康福祉機構の産業保健推進センター及び労災病院等において対応することとしており、これらの相談窓口等を活用し、適切な石綿障害防止対策が実施されているか確認等を行うとともに、対策の充実、徹底を図ること。

別添

1 災防団体(6)

中央労働災害防止協会

 建設業労働災害防止協会

 林業・木材製造業労働災害防止協会

 陸上貨物運送事業労働災害防止協会

 鉱業労働災害防止協会

 港湾貨物運送事業労働災害防止協会

2 安全衛生団体等(14)

 (財)安全衛生技術試験協会

 (財)産業医学振興財団

 (社)産業安全技術協会

 (社)日本作業環境測定協会

 (社)全国労働衛生団体連合会

 (社)日本クレーン協会

 (社)日本ボイラ協会

 (社)ボイラ・クレーン安全協会

 (社)建設荷役車両安全技術協会

 (社)日本保安用品協会

 (社)日本労働安全衛生コンサルタント会

 全国社会保険労務士会連合会

 (社)日本化学物質安全・情報センター

 (社)全国労働基準関係団体連合会

3 業界団体等(90)

 押出成形セメント板(ECP)協会

 セメントファイバーボード工業組合

 せんい強化セメント板協会

 全国石綿スレート協同組合連合会

 (社)日本建築材料協会

 (社)日本石綿協会

 日本窯業外装材協会

 (社)日本石膏ボード工業会

 大阪石綿紡織工業会

 (社)建築業協会

 (社)住宅生産団体連合会

 (社)全国建設業協会

 (社)全国中小建築工事業団体連合会

 (社)日本建築士会連合会

 (社)日本鉄道建設業協会

 (社)全国解体工事業団体連合会

 石油連盟

 電気事業連合会

 (社)日本エレベータ協会

 (社)日本化学工業協会

 (社)日本航空宇宙工業会

 (社)日本自動車工業会

 (社)日本舟艇工業会

 (社)日本造船工業会

 (社)日本中小型造船工業会

 (社)日本舶用工業会

 (社)日本産業車両協会

 (財)建設業振興基金

 (社)プレハブ建築協会

 (社)建設産業専門団体連合会

 (社)全国中小建設業協会

 (社)日本建設業団体連合会

 (社)日本土木工業協会

 (社)日本道路建設業協会

 (社)全国建設産業団体連合会

 全国建設業協同組合連合会

 全国建設産業協会

 (社)日本建築学会

 (社)日本電力建設業協会

 (社)日本電設工業協会

 住宅リフォーム推進協議会

 (社)日本ビルヂング協会連合会

 (社)全国ビルメンテナンス協会

 (社)日本空調衛生工事業協会

 (社)不動産協会

 (社)全日本不動産協会

 (社)日本建築士事務所協会連合会

 (社)日本建築家協会

 (社)全日本建築士会

 (社)セメント協会

 (社)全国建築コンクリートブロック工業会

 (社)全日本トラック協会

 (社)日本機械工業連合会

 (社)日本建設機械化協会

 (社)日本建設機械工業会

 (社)日本倉庫協会

 (社)日本鉄鋼連盟

 (社)日本民営鉄道協会

 普通鋼電炉工業会

 (社)日本鋳物工業会

 日本鋳鍛鋼会

 (社)日本産業機械工業会

 (社)日本ボイラ整備据付協会

 (社)全国建設機械器具リース業協会

 化成品工業協会

 石油化学工業協会

 日本無機薬品協会

 関西化学工業協会

 (社)日本化学会

 (社)日本電気工業会

 (社)日本建材産業協会

 日本鉱業協会

 (社)全国産業廃棄物連合会

 硝子繊維協会

 板硝子協会

 カーバイド工業会

 (社)日本ガス協会

 (社)日本簡易ガス協会

 日本産業ガス協会

 ロックウール工業会

 (社)日本左官業組合連合会

 (社)日本鳶工業連合会

 日本建築仕上学会

 日本建築仕上材工業会

 (社)日本プラントメンテナンス協会

 (社)全国鐵構工業協会

 (社)日本エルピーガス連合会

 (社)全国エルピーガス卸売協会

 (社)日本自動車部品工業会

 (社)日本接着剤工業会

4 労使団体その他(4)

 (社)日本経済団体連合会

 全国中小企業団体中央会

 日本労働組合総連合会

 全国建設労働組合総連合

 

(別紙2)

○石綿による健康障害防止対策への的確な対応について(依頼)

平成17年7月15日基発第0715003号

((社)日本医師会会長あて厚生労働省労働基準局長通知)

日頃から労働基準行政の推進に格段の御協力を賜り御礼申し上げます。

今般、過去に、石綿含有製品を製造し又は取り扱う作業(以下「石綿取扱い作業等」という。)に従事していた元労働者等に、肺がん、中皮腫等の健康障害が多発していること、また、石綿による健康障害が今後も増加することが懸念されることなど、石綿による健康問題が社会的な関心を集めており、本問題への適切な対応が求められています。

このような状況に鑑み、石綿取扱い作業等従事労働者の健康障害防止対策の更なる徹底とともに、過去に石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実等を図るため、別添により関係業界団体に対する要請等を行ったところです。

貴団体におかれましても、貴会会員の医師に対して、石綿に係る健康管理手帳制度及び労災補償制度を周知していただきますよう、御協力お願い申し上げます。

 

(別紙3)

○石綿による健康障害防止対策への的確な対応について(依頼)

平成17年7月15日基発第0715004号

(労働者健康福祉機構理事長あて厚生労働省労働基準局長通知)

日頃から労働基準行政の推進に格段の御協力を賜り御礼申し上げます。

今般、過去に、石綿含有製品を製造し又は取り扱う作業(以下「石綿取扱い作業等」という。)に従事していた元労働者等に、肺がん、中皮腫等の健康障害が多発していること、また、石綿による健康障害が今後も増加することが懸念されることなど、石綿による健康問題が社会的な関心を集めており、本問題への適切な対応が求められています。

このような状況に鑑み、石綿取扱い作業等従事労働者の健康障害防止対策の更なる徹底とともに、過去に石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実等を図るため、別添により関係業界団体に対する要請等を行ったところです。

貴法人におかれましても、石綿に係る健康管理手帳制度及び労災補償制度を周知するとともに、石綿による健康障害を受けた労働者及びその家族からの健康相談、開業医等からの診断・治療、健康診断に関する相談の対応について、御協力お願い申し上げます。

 

(別紙4)

○石綿による健康障害防止対策への適切な対応について(依頼)

平成17年7月15日基発第0715005号

(経済産業省官房長・国土交通省官房長・環境省官房長・総務省官房長・文部科学省官房長・防衛庁官房長あて厚生労働省労働基準局長通知)

日頃から労働基準行政の推進に格段の御協力を賜り御礼申し上げます。

今般、過去に、石綿含有製品を製造し又は取り扱う作業(以下「石綿取扱い作業等」という。)に従事していた元労働者等に、肺がん、中皮腫等の健康障害が多発していること、また、石綿による健康障害が今後も増加することが懸念されるなど、石綿による健康問題が社会的な関心を集めており、本問題への適切な対応が求められています。

このような状況に鑑み、石綿取扱い作業等従事労働者の健康障害防止対策の更なる徹底とともに、過去に石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実等を図るため、石綿による健康障害が発生している事業場への立ち入り調査等を行うとともに、過去に石綿取扱い作業等に従事した元労働者等への働きかけ等を行うこととしたところです。

貴省におかれましては、下記について、関係団体に対する周知等により、石綿による健康障害の防止の徹底に御協力いただきますようお願い申し上げます。

1 過去に石綿含有製品を製造し又は取り扱っていたことのある事業場における対策の徹底

石綿含有製品を製造し又は取り扱っていたことのある事業場においては、石綿による中皮腫等が増加する傾向にあること等を踏まえて、石綿取扱い作業等に従事し退職した者について、石綿障害予防規則(以下「石綿則」という。)第40条で規定する健康診断と同様の健康診断を速やかに実施するとともに、関係労働者等に対して労働安全衛生法第67条に基づく健康管理手帳及び労災補償制度に関する周知を行うこと。

2 現に石綿含有製品を製造し又は取り扱っている事業場における対策の徹底

ジョイントシート、シール材等の製造、使用等の禁止が猶予されている石綿含有製品を、現に製造し又は取り扱っている事業場においては、石綿則等の関係法令に基づく適切な局所排気装置の設置、健康診断の実施等の実施を改めて確認するとともに、適切な健康障害防止措置の徹底を図ること。

また、石綿取扱い作業等に従事し退職した者について、石綿則第40条で規定する健康診断と同様の健康診断を速やかに実施するとともに、関係労働者等に対して労働安全衛生法第67条に基づく健康管理手帳及び労災補償制度に関する周知を行うこと。

3 建築物の解体作業等における石綿粉じんの発散防止の徹底

建築物の解体作業等を行う事業者においては、石綿則等に基づく措置の確実な実施により、石綿粉じんの飛散防止の徹底を図ること。

4 健康相談、石綿のばく露防止対策に関する相談等について

労働者、事業者等からの健康相談、石綿のばく露防止対策に関する相談等について、各労働局・労働基準監督署、中央労働災害防止協会、建設業労働災害防止協会、独立行政法人労働者健康福祉機構の産業保健推進センター及び労災病院等において対応することとしており、これらの相談窓口等を活用し、適切な石綿障害防止対策が実施されているか確認等を行うとともに、対策の充実、徹底を図ること。

 

図

労働安全衛生法に基づく健康管理手帳について

がんその他の重度の健康障害を発生させるおそれがある業務のうち、次の表の左欄の業務に従事して、表の右欄の要件に該当する方は、離職の際又は離職の後に住所地の都道府県労働局長に申請することにより、健康管理手帳が交付されます。

健康管理手帳の交付を受けると、指定された医療機関又は健康診断機関で、定められた項目による健康診断を決まった時期に年に2回(じん肺の健康管理手帳については年に1回)無料で受けることができます。

業務

要件

1 ベンジジン及びその塩(これらの物をその重量の1パーセントをこえて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務

2 べーターナフチルアミン及びその塩(これらの物をその重量の1パーセントをこえて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務

12 ジアニシジン及びその塩(これらの物をその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務

当該業務に3月以上従事した経験を有すること(注1)。

3 粉じん作業(じん肺法(昭和35年法律第30号)第2条第1項第3号に規定する粉じん作業をいう。)に係る業務(注2)

じん肺法の規定により決定されたじん肺管理区分が管理2又は管理3であること。

4 クロム酸及び重クロム酸並びにこれらの塩(これらの物をその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務(これらの物を鉱石から製造する事業場以外の事業場における業務を除く。)

当該業務に4年以上従事した経験を有すること。

5 三酸化砒素を製造する工程において焙焼若しくは精製を行い、又は砒素をその重量の3パーセントを超えて含有する鉱石をポット法若しくはグリナワルド法により製錬する業務

当該業務に5年以上従事した経験を有すること。

6 コークス又は製鉄用発生炉ガスを製造する業務(コークス炉上において若しくはコークス炉に接して又はガス発生炉上において行う業務に限る。)

当該業務に5年以上従事した経験を有すること。

7 ビス(クロロメチル)エーテル(これをその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務

当該業務に3年以上従事した経験を有すること。

8 ベリリウム及びその化合物(これらの物をその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物(合金にあっては、ベリリウムをその重量の3パーセントを超えて含有するものに限る。)を含む。)を製造し、又は取り扱う業務(これらの物のうち粉状の物以外の物を取り扱う業務を除く。)

両肺野にベリリウムによるび慢性の結節性陰影があること。

9 ベンゾトリクロリドを製造し、又は取り扱う業務(太陽光線により塩素化反応をさせることによりベンゾトリクロリドを製造する事業場における業務に限る。)

当該業務に3年以上従事した経験を有すること。

10 塩化ビニルを重合する業務又は密閉されていない遠心分離機を用いてポリ塩化ビニル(塩化ビニルの共重合体を含む。)の懸濁液から水を分離する業務

当該業務に4年以上従事した経験を有すること。

11 石綿(これをその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務

両肺野に石綿による不整形陰影があり、又は石綿による胸膜肥厚があること。

注1)ベンジジン、べーターナフチルアミン又はジアニシジンに関する業務の従事期間を合計すれば3月以上となる方は交付要件を満たします。

注2)粉じん作業には、石綿を取り扱う作業も含まれているため、石綿を取り扱う作業に従事した方については、交付要件を満たす場合、「11」だけでなく「3」の健康管理手帳の交付を受けることができます。

[各種相談窓口の設置]

■都道府県労働局・労働基準監督署における相談の受付

石綿に関する健康管理手帳、健康診断、労災補償についてのお問い合わせ、ご相談は最寄りの労働局、労働基準監督署までお願いします。

■中央労働災害防止協会 労働衛生調査分析センター・大阪労働衛生総合センターにおける相談の受付

中央労働災害防止協会において、従来から石綿含有製品の代替化に関する相談窓口を開設しておりますが、これに加え、事業者の方々からの石綿ばく露防止対策に関する相談を受け付けることとしましたので、労働衛生調査分析センター(03―3452―3068)又は大阪労働衛生総合センター(06―6448―3784)までご相談下さい。

■建設業労働災害防止協会における相談の受付

建設業労働災害防止協会において、事業者の方々からの建築物の解体作業等における石綿ばく露防止対策に関する相談を受け付けることとしましたので、電話03―3453―8201までご相談下さい。

■独立行政法人労働者健康福祉機構 産業保健推進センターにおける相談の受付

産業保健推進センターにおいて、産業保健関係者、石綿による健康被害を受けられた労働者及びその家族の方々からの健康に関するご相談を受け付けることとしましたので、最寄りの産業保健推進センター(http://www.rofuku.go.jp/sanpo/index.html)までご相談下さい。

■独立行政法人労働者健康福祉機構 労災病院における相談の受付

労災病院において、石綿ばく露歴のある方、その家族の方々、開業医等からの診断・治療、健康診断に関するご相談を受け付けることとしましたので、最寄りの労災病院までお問い合わせ下さい。(対応可能な労災病院は以下のとおりです)

1 石綿の特殊健診、診断、治療が可能な労災病院

 美唄労災病院 〒072―0015 美唄市東4条南1丁目3番1号(0126)63―2151

 岩見沢労災病院 〒068―0004 岩見沢市4条東16丁目5番地(0126)22―1300

 東北労災病院 〒981―8563 仙台市青葉区台原4―3―21(022)275―1111

 福島労災病院 〒973―8403 いわき市内郷綴町沼尻3番地(0246)26―1111

 珪肺労災病院 〒321―2523 栃木県塩谷郡藤原町高徳632(0288)76―1515

 干葉労災病院 〒290―0003 市原市辰巳台東2―16(0436)74―1111

 東京労災病院 〒143―0013 東京都大田区大森南4―13―21(03)3742―7301

 関東労災病院 〒211―8510 川崎市中原区木月住吉町1番1号(044)411―3131

 横浜労災病院 〒222―0036 横浜市港北区小机町3211(045)474―8111

 燕労災病院 〒959―1228 燕市大字佐渡633(0256)64―5111

 新潟労災病院 〒942―8502 上越市東雲町1―7―12(0255)43―3123

 富山労災病院 〒937―0042 魚津市六郎丸992(0765)22―1280

 浜松労災病院 〒430―8525 浜松市将監町25(053)462―1211

 中部労災病院 〒455―8530 名古屋市港区港明1―10―6(052)652―5511

 旭労災病院 〒488―8585 尾張旭市平子町北61番地(0561)54―3131

 関西労災病院 〒660―8511 尼崎市稲葉荘3―1―69(06)6416―1221

 神戸労災病院 〒651―0053 神戸市中央区籠池通4―1―23(078)231―5901

 和歌山労災病院 〒640―8505 和歌山市古屋435番地(073)451―3181

 岡山労災病院 〒702―8055 岡山市築港緑町1―10―25(086)262―0131

 中国労災病院 〒737―0193 呉市広多賀谷1―5―1(0823)72―7171

 香川労災病院 〒763―8502 丸亀市城東町3―3―1(0877)23―3111

 九州労災病院 〒800―0296 北九州市小倉南区葛原高松1―3―1(093)471―1121

 門司労災病院 〒801―8502 北九州市門司区東港町3―1(093)331―3461

 長崎労災病院 〒857―0134 佐世保市瀬戸越2―12―5(0956)49―2191

 熊本労災病院 〒866―0965 八代市竹原町1670(0965)33―4151

 吉備高原医療リハビリテーションセンター 〒716―1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7511(0866)56―7141

2 石綿の特殊健診が可能な労災病院

 青森労災病院 〒031―8551 八戸市大字白銀町字南ケ丘1番地(0178)33―1551

 岩手労災病院 〒025―0244 花巻市湯口字志戸平26(0198)25―2141

 大阪労災病院 〒591―8025 堺市長曽根町1179―3(072)252―3561

 山口労災病院 〒756―0095 山陽小野田市大字小野田1315―4(0836)83―2881