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移動式クレーンのジブ又はフックの相互使用について
平成11年3月29日基発第146号
(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)
改正 平成23年3月31日基発0331第10号
近年、大型の移動式クレーンが増加する傾向にあるが、これらについては、つり上げ荷重が大きく、また、ジブも長尺化してきている状況にある。しかしながら、その用途の特性から、継ぎジブ、最大の定格荷重の荷をつり上げる際に使用する特殊上ジブ及びフックについては、移動式クレーンの本体の稼動に比べ使用頻度が少ないものも多くあるところである。
このような状況を踏まえ、今般、下記により取り扱う場合には、特定のジブ又はフック(以下「相互使用部材」という。)について、各移動式クレーンで相互使用部材を使用する毎にクレーン等安全規則(昭和47年労働省令第34号)第85条第1項の規定に基づく変更届を要しないものとして差し支えないこととしたので、関係事業場等に対して周知を図るとともに、その適正な運用に遺憾なきを期されたい。なお、性能検査実施機関である(社)日本クレーン協会及び(社)ボイラ・クレーン安全協会あて別添のとおり通知したので了知されたい。
記
第1 相互使用の対象について
1 相互使用できる移動式クレーン
ジブ又はフックを複数の移動式クレーンの間で相互に使用するためには、これらを取り付ける全ての移動式クレーンについて、次の事項が同一であること。
ただし、(2)については、ジブを相互使用する場合に限る。
(1) 製造者
(2) 種類、型式及び能力
(3) 設置地及び事業の名称
(4) 相互使用部材の材料、形状及び寸法
2 相互使用部材
相互使用部材は、次のものに限ることとする
(1) ジブが伸縮しない方式の移動式クレーンの主ジブ用継ぎジブ
(2) 最大の定格荷重の荷をつり上げる際に使用する特殊上ジブ
(3) フック
3 相互使用ができる移動式クレーンの台数
相互使用部材を取り付けることができる移動式クレーンの台数は次のとおりとする。
(1) 継ぎジブ及び特殊上ジブについては、3台以下
(2) フックについては、6台以下
第2 相互使用に係る管理について
1 管理台帳の作成
相互使用部材及びこれらを取り付ける移動式クレーン(以下「相互使用部材等」という。)について、次の事項を示す管理台帳を作成し、変更届、移動式クレーン明細書等相互使用部材等に係る書類とともに保管すること。
(1) 製造検査時等に相互使用部材と同時に検査を受けて合格した移動式クレーンの下部走行体(以下「帰属機」という。)及び各相互使用部材の受け払い
(2) 相互使用部材等の保管場所
(3) 定期自主検査の実施状況
(4) 相互使用部材等の補修の実施状況
(5) 性能検査の実施状況
(6) 更検査の実施状況
(7) 移動式クレーン以外での使用状況
2 相互使用部材の判別措置
相互使用部材について、判別を容易にするため、各部材毎に運用番号を定め、見やすい箇所に表示するとともに、運用番号及び取り付けることができる移動式クレーンの刻印番号を示す書面(以下「相互使用部材明細書」という。)を作成すること。
3 保管状況等の管理
(1) 相互使用部材等の保管場所は、他の移動式クレーンに使用する部材等と区分した場所とすること。
(2) 相互使用部材等の保管は、次の方法で行うこと。
イ 水平な場所に敷角材等を置き、ジブの主材を受けること。また、積み重ねの場合は、その間に枕木等を入れ損傷、変形をきたさないようにすること。
ロ 錆を発生させない方法で保管すること。
ハ ペンダントロープは、油ぎれを起こさないようにすること。
ニ 上記イからハまでの状況について1月以内毎に1回、定期に確認し、不備がある場合は補修その他必要な措置を講じること。
4 定期自主検査等
(1) 相互使用部材について、移動式クレーンの定期自主検査指針(昭和56年12月28日付け自主検査指針公示第1号)に示されている方法で1年以内毎に1回自主検査を行うこと。その結果、異常を認めたときは、直ちに補修等を行うこと。なお、ジブ又はフックの相互使用を行う移動式クレーンについては、最も早い時期に定期自主検査を行う移動式クレーンの定期自主検査実施時期に合わせて他の移動式クレーンの定期自主検査を実施すること。
(2) 相互使用部材について、移動式クレーンの自主検査指針(昭和51年6月21日付け基発第468号)に示されている方法で1月以内毎に1回自主検査を行うこと。その結果、異常を認めたときは、直ちに補修等を行うこと。
(3) 車両系建設機械として使用した継ぎジブを再度相互使用する場合は、移動式クレーンの定期自主検査指針に示されている方法で自主検査を実施すること。その結果、異常を認めたときは、直ちに補修等を行うこと。
5 使用時の管理
(1) 使用するに当たっては、ジブ及びフック並びに移動式クレーンが相互使用部材明細書に記載されている相互使用部材等であることを確認すること。
(2) ジブ又はフックを相互使用する移動式クレーンを使用するに当たっては、「相互使用部材明細書」及び第2の4における相互使用部材に係る定期自主検査の結果を示す書面(以下「相互使用部材定期自主検査記録」という。)の写しを当該移動式クレーンに備え付けること。
第3 性能検査の実施について
(1) 相互使用部材等については、同一の性能検査代行機関等から性能検査を受けること。
(2) ジブ又はフックの相互使用を行う移動式クレーンについては、検査証の有効期間が最も早く満了する移動式クレーンの性能検査実施日に併せて他の移動式クレーンの性能検査を受けること。
(3) 相互使用を行おうとするジブ及びフックは、全て帰属機と同時に性能検査を受けること。
(4) 性能検査を受けるに際しては、次の書面を提示すること。
イ 検査を受ける移動式クレーンに係る「移動式クレーン検査証」、「移動式クレーン明細書」、「相互使用部材明細書」及び相互使用に係る「変更届」
ロ 「相互使用部材定期自主検査記録」
ハ 第2の1の(4)に係る管理台帳
ニ 第2の1の(7)に係る管理台帳
ホ 第2の1の(1)、(2)、(3)、(5)又は(6)に係る管理台帳のうち、検査員等が必要と認めたもの
(5) 性能検査において、相互使用部材の不備によりその帰属機が不合格となった場合には、その相互使用部材を相互使用する移動式クレーン全てが不合格となるものであること。
第4 相互使用に係る事前の手続について
相互使用を行うに当たっては、事前に次の1又は2の手続を行うこと。
1 製造検査申請時における手続
(1) 新たに製造される移動式クレーンに既存の部材を相互使用する際の手続 既存の移動式クレーンに取り付けられているジブ又はフックを新たに製造される移動式クレーンとの間で相互使用を行う場合で、製造検査申請時において既に製造者と設置者の間において譲渡契約が成立している場合には、次の手続をとること。なお、この場合においては、対象となる全ての移動式クレーンが、直近の製造検査又は性能検査に合格し、かつ、その結果、補修、取替えその他の措置を必要とする旨の指示が検査証に記入されていないこと(以下「合格」という。)を条件とすること。また、相互使用を行おうとするジブ又はフックの帰属機が複数ある場合には、その全てについて手続をとること。
イ 製造検査申請時において、相互使用を行おうとする既存の移動式クレーンの検査証及び明細書の写その他当該移動式クレーンが相互使用の要件に適合していることを示す書面を添付すること。
ロ
(i) 継ぎジブを相互使用しようとする場合は、製造検査を受けようとする移動式クレーンの明細書の「継ぎジブのそれぞれの長さと数」の欄に相互使用しようとする継ぎジブの仕様及び刻印番号を記載するとともに、刻印番号の石刷り、その他当該継ぎジブが、相互使用することが適当であることを示す書面を添付すること。
(ii) 特殊上ジブを相互使用しようとする場合は、刻印番号の石刷り、その他当該特殊上ジブが、相互使用することが適当であることを示す書面を添付すること。
(iii) フックを相互使用しようとする場合は、製造検査を受けようとする移動式クレーンの明細書の「つり具及びその重量」の欄に相互使用しようとするフックの仕様及び刻印番号を記載するとともに、刻印番号の石刷り、その他当該フックが、相互使用することが適当であることを示す書面を添付すること。
ハ 相互使用を行う全ての移動式クレーンについて所轄の都道府県労働基準局において相互使用部材に係る検査証の裏書きを受けること。
(2) 相互使用する複数の移動式クレーンを同時に購入する際等の手続
ジブ又はフックを相互使用しようとする複数の移動式クレーンについて、製造時検査申請時において既に製造者と設置者の間において譲渡契約が成立している場合には、同時に製造検査を受けること。また、ジブ又はフックを相互使用することを前提に複数の移動式クレーンを製造した場合においても同時に製造検査を受けること。
2 相互使用に係る変更の届出
(1) 相互使用に係る移動式クレーンの変更届
第1の1の相互使用できる移動式クレーンに該当する移動式クレーンを複数所有している設置者が相互使用部材を相互使用する場合には、相互使用を行おうとする全ての移動式クレーンについて、次の手続をとること。なお、この場合においては、対象となる全ての移動式クレーンが、直近の製造検査又は性能検査に合格していることを条件とすること。
イ 相互使用を行おうとした時点において届出る全ての変更届に、相互使用を行おうとする全ての移動式クレーンの検査証及び明細書の写、その他当該移動式クレーンが相互使用の要件に適合していることを示す書面を添付すること。
ロ
(i) 継ぎジブを相互使用しようとする場合は、相互使用を行おうとする全ての移動式クレーンの明細書の「継ぎジブのそれぞれの長さと数」の欄に相互使用しようとする継ぎジブの仕様及び刻印番号を記載するとともに、刻印番号の石刷り、その他当該継ぎジブが、相互使用することが適当であることを示す書面を添付すること。
(ii) 特殊上ジブを相互使用しようとする場合は、刻印番号の石刷りその他当該特殊上ジブが、相互使用することが適当であることを示す書面を添付すること。
(iii) フックを相互使用しようとする場合は、全ての移動式クレーンの明細書の「つり具及びその重量」の欄に相互使用しようとするフックの仕様及び刻印番号を記載するとともに、刻印番号の石刷り、その他当該フックが、相互使用することが適当であることを示す書面を添付すること。
ハ 相互使用を行おうとする全ての移動式クレーンについて、所轄の労働基準監督署において相互使用部材に係る検査証の裏書きを受けること。
(2) 相互使用部材の変更届
相互使用を行っている移動式クレーンについて、相互使用部材を変更する場合は、相互使用しようとする全ての移動式クレーンについて変更届を提出すること。
(3) 相互使用部材の帰属機の変更届
相互使用を行っている部材をその帰属機の廃止後も他の相互使用を行っている移動式クレーンにおいて使用する場合は、当該移動式クレーンの廃止前に変更届を提出すること。
○移動式クレーンのジブ又はフックの相互使用について
平成11年3月29日基発第146号の2
((社)日本クレーン協会会長・(社)ボイラ・クレーン安全協会会長あて労働省労働基準局長通知)
近年、大型の移動式クレーンが増加する傾向にあるが、これらについては、つり上げ荷重が大きく、また、ジブも長尺化してきている状況にある。しかしながら、その用途の特性から、継ぎジブ、最大の定格荷重の荷をつり上げる際に使用する特殊上ジブ及びフックについては、移動式クレーンの本体の稼動に比べ使用頻度が少ないものも多くあるところである。
このような状況を踏まえ、今般、下記により取り扱う場合には、特定のジブ又はフック(以下「相互使用部材」という。)について、各移動式クレーンで相互使用部材を使用する毎にクレーン等安全規則(昭和47年労働省令第34号)第85条第1項の規定に基づく変更届を要しないものとして差し支えないこととしたので、性能検査の実施等における適正な運用に遺憾なきを期されたい。
記
(以下略)