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労働安全衛生規則及びクレーン等安全規則の一部を改正する省令の施行及び関係告示の適用について
平成10年6月24日基発第396号
(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)
労働安全衛生規則及びクレーン等安全規則の一部を改正する省令(平成一〇年労働省令第二六号。以下「改正省令」という。)は、本日公布され、同日(健康診断の項目の追加に係る部分は平成一一年一月一日)から施行された。
また、この改正に伴い、平成一〇年労働省告示第八八号(労働安全衛生規則第四四条第三項の規定に基づき労働大臣が定める基準を定める件)、平成一〇年労働省告示第八九号(労働安全衛生規則第四五条の二第四項において準用する同令第四四条第三項の規定に基づき労働大臣が定める基準を定める件の一部を改正する件)及び平成一〇年労働省告示第九〇号(労働安全衛生規則第四五条の二第一項及び第二項の規定に基づき労働大臣が定める項目を定める件の一部を改正する件)が本日公布され、同日(平成一〇年労働省告示第九〇号については、平成一一年一月一日)から適用された。
今回の改正は、社会経済情勢の変化や技術革新の進展等に対応して、職場における労働者の安全と健康を確保する上で安全衛生水準の低下をもたらさない事項等について、技術的な検討を経て見直しを行い所要の措置を講ずるとともに、一般健康診断の健康診断項目について脳・心臓疾患に関連して必要な項目を追加したものである。
ついては、今回の改正の趣旨を十分に理解し、下記の事項に留意して、その運用につき遺漏のないようにされたい。
記
第一 少量新規化学物質関係
1 改正の趣旨
少量新規化学物質に係る労働大臣の確認について、二年以上継続して確認申請を行う事業者が多いこと等の実態にかんがみ、申請手続を簡素化することとしたこと。
2 改正の要点
(1) 労働安全衛生法施行令(昭和四七年政令第三一八号)第一八条の三の少量新規化学物質に係る労働大臣の確認の有効期間を一年から二年に延長することとしたこと(労働安全衛生規則(昭和四七年労働省令第三二号。以下「安衛則」という。)第三四条の一一関係)。
(2) 上記改正に伴い、確認申請書の様式について所要の整備を行うこととしたこと(安衛則様式第四号の四関係)。
3 細部事項
この改正は、少量新規化学物質に係る確認の申請を行おうとする者は、連続する二年間の一年目及び二年目において、製造し、又は輸入する新規化学物質の量が一〇〇kg以下である旨の確認を受けることができるという趣旨であり、二年間を通じて製造し、又は輸入する新規化学物質の量の合計が二〇〇kg以下である旨の確認を受けられるという趣旨ではないこと。
第二 一般健康診断関係
1 改正の趣旨
高齢化の進展等により脳・心臓疾患等につながる所見を有する労働者が増加しており、また産業構造の変化や技術革新の進展による労働態様の変化に伴い仕事や職場で悩みやストレスを感じる労働者が増加しているほか、「過労死」が社会的に問題となっている状況にかんがみ、平成八年一月の中央労働基準審議会建議「労働者の健康確保対策の充実強化について」を踏まえ、脳、心臓疾患に関連して必要な一定の健康診断項目を一般健康診断に加えるとともに、医師の判断により健康診断項目の省略等ができる範囲について見直すこととしたこと。
2 改正の要点
(1) 健康診断項目の追加
雇入時の健康診断の項目及び定期健康診断の項目に、高比重リポ蛋白コレステロール(以下「HDLコレステロール」という。)の量の検査及び血糖検査を追加することとしたこと(安衛則第四三条及び第四四条関係)。
なお、これに伴って、特定業務従事者の健康診断項目及び海外派遣労働者の健康診断項目も同様に改められたものであること(安衛則第四五条及び第四五条の二関係)。
(2) 聴力の検査方法の弾力化
定期健康診断及び特定業務従事者の健康診断における聴力検査について、医師が適当と認める方法による聴力の検査をもって代えることができる年齢の範囲を改めることとしたこと(安衛則第四四条及び第四五条関係)。
(3) 健康診断項目の省略
イ 定期健康診断及び特定業務従事者の健康診断について、従来省略できないこととされていた尿中の糖の有無の検査を、労働大臣の定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略できることとしたこと(安衛則第四四条及び第四五条関係)。
ロ 特定業務従事者の健康診断(定期のものに限る。)のうちHDLコレステロールの量の検査及び血糖検査については、前回の健康診断で当該項目の検査を行った場合であって、医師が必要でないと認めるときは、当該項目を省略できることとしたこと(安衛則第四五条関係)。
(4) その他
イ 健康診断個人票の様式にBMI(Body Mass Index)の欄を設けることとしたこと(安衛則様式第五号関係)。
ロ 健康診断項目の改正に伴い、健康診断個人票及び健康診断結果報告書の様式について、所要の整備を行ったこと(安衛則様式第五号及び第六号関係)。
3 細部事項
(1) 第四三条(雇入時の健康診断)関係
イ 第八号のHDLコレステロールの量の検査は、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患と関連が深いHDLコレステロールの量を把握することにより、従来からの健康診断項目である総コレステロールの量の検査と併せて、より的確に脳・心臓疾患の発生の危険性を評価するために行うものであること。
ロ 第九号の血糖検査は、糖尿病を早期に、的確に把握するために行うものであること。
また、血糖検査は、原則として空腹時に行われるべきものであるが、食事摂取後に行われた場合にはその内容により検査結果に変動を生ずることがあるので、医師がその影響を考慮して検査結果を評価するものであること。この場合、健康診断個人票の備考欄等に食事から検査までの経過時間を記入する等適正に検査結果が評価できるような配慮をすることが望ましいこと。
なお、検査の結果、医師が必要であると認める場合は、さらに同一検体を利用して糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)を検査することが望ましいこと。
(2) 第四四条(定期健康診断)関係
イ 第三項は、労働大臣の定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略できる項目として、HDLコレステロールの量の検査、血糖検査及び尿中の糖の有無の検査を追加することとしたものであること。
また、本項の労働大臣が定める基準については、昭和四七年労働省告示第九三号(労働安全衛生規則第四四条第二項の規定に基づき労働大臣が定める基準を定める件)を廃止して、新たに平成一〇年労働省告示第八八号(労働安全衛生規則第四四条第三項の規定に基づき労働大臣が定める基準を定める件)を制定し、身長の検査について医師が必要でないと認めるときに省略することができる者を、二〇歳以上の者に改めることとしたこと。ただし、BMIを算出するためには、身長を把握する必要があるので、身長の検査を行わなくともその値が把握できると医師が判断した場合に限り省略できることに留意すること。
ロ 第五項は、第一項第三号の聴力の検査について、同項の医師が適当と認める聴力の検査(一、〇〇〇ヘルツ及び四、〇〇〇ヘルツの音に係る聴力の検査を除く。)をもって代えることができる者を、四五歳未満の者(三五歳及び四〇歳の者を除く。)に改めることとしたものであること。
なお、医師が適当と認める聴力の検査には、音叉による検査等があること。
(3) 第四五条(特定業務従事者の健康診断)関係
イ 第二項は、前回の健康診断において実施されている場合であって、医師が必要でないと認めるときに省略できる項目として、HDLコレステロールの量の検査及び血糖検査を追加することとしたものであること。
ロ 第四項は、聴力の検査について、医師が適当と認める聴力の検査(一、〇〇〇ヘルツ及び四、〇〇〇ヘルツの音に係る聴力の検査を除く。)をもって代えることができる者を、四五歳未満の者(三五歳及び四〇歳の者を除く。)に改めることとしたものであること。
(4) 第四五条の二(海外派遣労働者の健康診断)関係
イ 第一項及び第二項において、定期健康診断項目に血糖検査を追加することに伴い、平成元年労働省告示第四七号(労働安全衛生規則第四五条の二第一項及び第二項の規定に基づき労働大臣が定める項目を定める件)の一部を改正し(平成一〇年労働省告示第九〇号)、労働大臣が定める項目から血糖検査を削除することとしたこと。
ロ 第四項において準用する第四四条第三項の労働大臣の基準については、平成元年労働省告示第四六号(労働安全衛生規則第四五条の二第四項において準用する同令第四四条第三項の規定に基づき労働大臣が定める基準を定める件)の一部を改正し(平成一〇年労働省告示第八九号)、身長検査について医師が必要でないと認めるときに省略することができる者を、二〇歳以上の者に改めることとしたこと。
(5) 様式第五号関係
BMI(Body Mass Index)は、肥満度を判定する簡便な指数であり、体重(kg)/(身長(m))2で算出されること。
BMIは、肥満の予防や改善のための指導を適切に行うのに有用な指数であることから、他の健康診断項目と併せて保健指導に十分活用することが望ましいこと。
(6) 様式第六号関係
「健康診断項目」の欄中に、「血糖検査」の欄を加えるとともに、「他覚所見」及び「その他の検査」の欄を削ることとしたこと。
(7) その他健康診断の実施に当たって留意すべき事項
イ 健康診断項目の省略等について
健康診断項目の省略及び医師が適当と認める聴力の検査の実施については、年齢等により機械的に決定するのではなく、個々の労働者について、医師が健康診断時点の健康状態、日常生活状況、作業態様、過去の健康診断の結果、労働者本人の希望等を十分考慮して総合的に判断すべきものであること。
ロ 問診の充実について
脳・心臓疾患についてはストレスや生活習慣が重要な発症・増悪要因であることから、喫煙、飲酒を含む生活習慣に関する事項についても問診を行うことが望ましいこと。
ただし、問診の実施に当たっては、労働者のプライバシーに十分配慮する必要があること。
第三 玉掛用具として使用するつりチェーン関係
1 改正の趣旨
クレーン、揚貨装置、パワーショベル等の玉掛けに用いられるつりチェーン等について、製造技術の進歩に伴い強度に対する信頼性が向上したことに応じて安全係数を見直すこととしたこと。
2 改正の要点
事業者は、安衛則第一六四条第三項第六号に規定するつりチェーン、揚貨装置の玉掛けに用いる鎖、及びクレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるつりチェーンで、一定の要件を満たすものの安全係数については、四以上とすることができることとしたこと(安衛則第一六四条、第四六九条の二、クレーン等安全規則(昭和四七年労働省令第三四号。以下「クレーン則」という。)第二一三条の二関係)。
3 細部事項
(1) 安衛則第一六四条第三項第六号イ(1)の「次のいずれにも該当するつりチェーン」、第四六九条の二第一項第一号の「次のいずれにも該当する鎖」及びクレーン則第二一三条の二第一項第一号の「次のいずれにも該当するつりチェーン」には、日本工業規格B八八一六(巻上用チェーンスリング)に適合するチェーンスリングのチェーン部分(下図参照)が含まれるものであること。また、日本工業規格B八八一六に適合すること等により、安衛則第一六四条第三項第六号イ(1)、第四六九条の二第一項第一号及びクレーン則第二一三条の二第一項第一号に定める要件に該当することが確認されているもの以外のつりチェーン又は鎖については、安全係数五以上で使用しなければならないものであること。
なお、日本工業規格B八八一六は、平成一〇年三月二〇日に改正されており、チェーンに係る要件の一部(安衛則第一六四条第三項第六号イ(1)(Ⅱ)、第四六九条の二第一項第一号ロ及びクレーン則第二一三条の二第一項第一号ロの表の下欄における「伸び」に相当する「破断全伸び」の値等)が変更されていることに留意すること。
また、安衛則第一六四条第三項第六号イ(1)、第四六九条の二第一項第一号及びクレーン則第二一三条の二第一項第一号に定める要件に該当することが確認されているつりチェーン又は鎖で、刻印、タグ等により使用荷重(切断荷重を安全係数で除したもの)が表示されているものにあっては、当該使用荷重を遵守することで足りるものであること。
チェーンスリング各部の名称
(2) 第一六四条第三項第六号イ(1)(ⅰ)、第四六九条の二第一項第一号イ及びクレーン則第二一三条の二第一項第一号イに規定する「伸び」とは、つりチェーン又は鎖に切断荷重の二分の一の引張荷重を加えたことにより生じる永久伸びをいうこと。
(3) 第一六四条第三項第六号イ(1)(ⅱ)、第四六九条の二第一項第一号ロ及びクレーン則第二一三条の二第一項第一号ロに規定する「引張強さ」とは、つりチェーン又は鎖に引張荷重を加え切断するまでの最大応力をいい、次の算式により算出すること。
また、第一六四条第三項第六号イ(1)(ⅱ)、第四六九条の二第一項第一号ロ及びクレーン則第二一三条の二第一項第一号ロに規定する「伸び」とは、つりチェーン又は鎖に引張荷重を加え切断するまでの全伸びをいうこと。
第四 施行期日等
1 施行期日
上記第一から第三までの改正内容のうち、第二の2の(1)、(3)及び(4)に関する規定は平成一一年一月一日から、その他の規定は公布の日(平成一〇年六月二四日)からそれぞれ施行されること。
2 経過措置
改正省令の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によること。
第五 関係通達の改正(省略)