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通達:法令名

 

労働安全衛生法の一部を改正する法律、労働安全衛生法施行令及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令の一部を改正する政令及び労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行について

平成8年9月13日基発第566号

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)

 

労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成8年法律第89号。以下「改正法」という。)の施行については、平成8年6月19日付け労働省発基第63号により労働事務次官から通達されたところであるが、その細部の取扱いについて下記により定めたので、その円滑な実施を図られたい。

また、労働安全衛生法施行令及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成8年政令第271号)及び労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成8年労働省令第35号)は、平成8年9月13日に公布され、平成8年10月1日から施行されることとなった。今回の改正は、改正法の施行に伴い、所要の規定の整備を図ったものである。

ついては、今回の改正の趣旨を十分に理解し、下記の事項に留意して、その運用に遺漏のないようにされたい。

 

Ⅰ 労働安全衛生法関係

1 産業医の専門性の確保等(第13条関係)

(1) 第2項は、産業医が職務を的確に遂行するため備えるべき労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に係る要件を設けたものであること。

また、事業者は、平成10年10月1日までに、既に選任している産業医又は新たに選任しようとする産業医について、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について労働省令で定める要件を備えた医師であるかどうかの棲認を行う必要があること。

(2) 第3項の「勧告」は、具体的には、労働安全衛生規則第14条第1項の産業医の職務に係る事項について行われるものであること。また、勧告は、当該事業場の実情等を十分に考慮して行われる必要があること。

2 産業医の選任義務のない事業場の労働者の健康管理等(第13条の2関係)

(1) 本条は、すべての事業場において労働者の健康の確保が図られるためには、産業医の選任義務のない事業場においても産業保健サービスが提供される必要があることから、事業者は、これらの事業場については、当該事業場の状況に応じ、必要な場合に、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他労働省令で定める者に、労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるよう努めなければならないものとしたものであること。

(2) 「労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師」には、第13条第2項の労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について労働省令で定める要件を備える者のほか、産業医学振興財団が都道府県医師会に委託して実施している産業医基本研修の修了者、産業医として選任された経験を有する者等が含まれるものであること。

3 国の援助(第19条の3関係)

本条に基づく国の具体的な援助としては、地域産業保健センター事業による労働者の健康管理等に関する相談、情報の提供等があること。

4 健康診断の結果についての医師等からの意見聴取(第66条の2関係)

(1) 「異常の所見があると診断された労働者」とは、健康診断の結果、その項目に異常の所見があると医師等が診断した者であること。

(2) 歯科医師からの意見聴取は、第66条第3項の規定により、歯科医師による健康診断を行った場合等に行えば足りるものであること。

(3) 産業医の選任義務のある事業場においては、産業医の意見を聴くことが適当であること。

また、産業医の選任義務のない事業場においては、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師等から意見を聴くことが適当であること。

(4) 第66条第1項から第4項まで又は第5項のただし書の規定による健康診断後の再検査又は精密検査は、当該健康診断には含まれないことから、本条は、当該再検査又は精密検査の結果に基づき、医師又は歯科医師の意見を聴くことを事業者に義務付けるものではないが、再検査又は精密検査の受診は、疾病の早期発見、その後の健康管理等に資することから、事業場でのその取扱いについて、再検査又は精密検査の結果に基づく医師等の意見の聴取を含め、労使が協議して定めることが望ましいこと。

(5) 意見聴取の対象となる健康診断は、施行日以降に行われたものであること。

(6) その他、意見聴取に当たっては、第66条の3第2項の規定に基づき、健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関し、労働大臣が公表する指針(以下「指針」という。)を十分に考慮して行うべきこと。

5 健康診断実施後の措置(第66条の3関係)

事業者は、医師等からの意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の作業の内容、労働時間その他の事情を考慮して、必要な措置を講じるべきこと。

なお、この措置を講ずるに当たっては、指針を十分に考慮して行うべきこと。

6 一般健康診断の結果の通知(第66条の4関係)

(1) 通知は、総合判定結果だけではなく、各健康診断の項目ごとの結果も通知する必要があること。

(2) 通知の方法としては、健康診断を実施した医師、健康診断機関等から報告された個人用の結果報告書を各労働者に配付する方法、健康診断個人票のうち必要な部分の写しを各労働者に示す方法等があること。

(3) 通知の対象となる一般健康診断は、施行日以降に行われたものであること。

(4) 通知した旨の事実は、記録しておくことが望ましいこと。

7 保健指導等(第66条の5関係)

(1) 保健指導の方法としては、面談による個別指導、文書による指導等の方法があること。

(2) 保健指導の内容としては、日常生活面での指導、健康管理に関する情報の提供、再検査又は精密検査の受診の勧奨、医療機関で治療を受けることの勧奨等があること。

(3) 第1項の「特に健康の保持に努める必要があると認める労働者」には、健康診断の結果、異常な所見を有すると判定された労働者等であって、医師等が必要と認めるものであること。

(4) その他、保健指導に当たつては、指針を十分に考慮して行うべきこと。

Ⅱ 労働安全衛生法施行令関係

改正法の施行に伴い、第5条の規定について所要の整備を行うこととしたものである。

Ⅲ 労働安全衛生規則関係

第1 改正の要点

1 産業医が備えるべき要件を備えた者を規定するとともに、事業者は、産業医が労働安全衛生法(以下「法」という。)第13条第3項の規定による勧告等をしたことを理由として、産業医に対し、解任その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないこととしたこと。(第14条関係)

2 事業者が、産業医を選任すべき事業場以外の事業場について、労働者の健康管理等の一部を行わせる者として、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知議を有する医師以外の者を定めるとともに、事業者は、法第13条の2に規定する労働者の健康管理等を行わせるに当たっては、労働者の健康管理等を行う医師の選任、地域産業保健センター事業の利用等に努めるものとすることとしたこと。(第15条の2関係)

3 健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取の期限及び方法を定めたこと。(第51条の2関係)

4 健康診断の結果を通知しなければならない健康診断の範囲を定めるとともに、労働者に対し遅滞なく通知しなければならないとしたこと。(第51条の4関係)

5 健康診断個人票に、医師の意見の欄等を追加したこと。(様式第5号関係)

第2 細部事項

1 産業医及び産業歯科医の職務等(第14条関係)

(1) 第2項は、産業医として備えるべき要件を備えた者を規定したものであること。

なお、事業者が、その確認を行う方法としては、研修の修了を証明する書面、労働安全衛生コンサルタント試験(保健衛生)合格証又は大学の在職証明書(担当科目等を明示したもの)等の写しを提出させること等によって行うこととすること。

(2) 第2項第3号の「労働衛生に関する科目」とは、具体的には、労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則第12条第1項に規定する科目等をいうものであること。

2 産業医を選任すべき事業場以外の事業場の労働者の健康管理等(第15条の2関係)

(1) 第1項については、事業者は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるよう努めることが原則であるが、健康管理等の一部である保健指導に係る事項については、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健婦又は保健士を活用することも当該事業者の努力として評価できることから、事業者が労働者の偉康管理等を行うのに必要な知識を有する保健婦又は保健士に労働者の健康管理等の一部を行わせるよう努める場合も法第13条の2の努力義務を果たすものとするものである。この際、地域産業保健センター事業の名簿に記載されている労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健婦又は保健士を活用する趣旨であること。

なお、保健婦又は保健士が、保健婦助産婦看護婦法に基づき、事業場において保健指導に従事することを妨げるものではないこと。

(2) 第2項は、事業者が法第13条第1項の事業場以外の事業場について、労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるに当たつては、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師を選任すること、地域産業保建センター事業を利用すること等があることから、これらの方法のうち適宜の方法により、事業者は、労働者の健康管理等を行うように努めるものとしたこと。

3 健康診断の結果についての医師等からの意見聴取(第51条の2関係)

(1) 医師等からの意見の聴取は、労働者の健康状況から緊急に法第66条の3第1項の措置を講ずべき必要がある場合には、できるだけ速やかに行われる必要があること。

(2) 意見聴取は、事業者が意見を述べる医師等に対し、健康診断の個人票の様式の「医師の意見欄」又は「歯科医師の意見欄」に当該意見を記載させ、これを確認することとすること。

4 健康診断の結果の通知(第51条の4関係)

「遅滞なく」とは、事業者が、健康診断を実施した医師、健康診断機関等から結果を受け取った後、速やかにという趣旨であること。

5 附則第2条関係

(1) 第2号は、産業医として職務を行うことに伴い、産業医学に関する一定の知識を得ていることから、産業医として労働者の健康管理等を行った経験年数が通算で3年以上である者について、法第13条第2項の労働省令で定める要件を備えた者とすることとしたこと。

なお、この場合であっても、産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって、労働大臣が定めるものを修了すること等第14条第2項に定める要件を備えるよう努める必要があること。

また、本号は、経過措置として施行日以前に従事していた業種での産業医としての活動を継続して認めるという趣旨であることから、施行日以降に施行日以前に経験を有したことのある事業場と労働衛生の態様が大きく異なる事業場の産業医となる場合は、特に第14条第2項に定める要件を備えるよう努める必要があること。

(2) 事業者が、第2号により産業医としての要件を備えた者であることを確認する方法としては、産業医として選任されていた事業場による証明書等による確認があること。

Ⅳ 有機溶剤中毒予防規則関係

第1 改正の要点

1 健康診断の結果についての医師からの意見の聴取の期限及び方法を定めたこと。(第30条の2関係)

2 健康診断の特例として所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合には、第29条第2項、第3項又は第5項の健康診断、健康診断個人票の作成、保存に加え、意見聴取についても行わないことができることとしたこと。(第31条関係)

3 有機溶剤等偉康診断個人票に医師の意見の欄等を追加したこと。(様式第3号関係)

第2 細部事項

1 健康診断結果についての医師からの意見聴取(第30条の2関係)

(1) 医師からの意見聴取は労働者の健康状況から緊急に法第66条の3第1項の措置を講ずべき必要がある場合には、できるだけ速やかに行われる必要があること。

(2) 意見聴取は、事業者が意見を述べる医師に対し、健康診断の個人票の様式の「医師の意見欄」に当該意見を記載させ、これを確認することとすること。

第3 鉛中毒予防規則関係

第1 改正の要点

1 健康診断の結果についての医師からの意見の聴取の期限及び方法を定めたこと。(第54条の2関係)

2 鉛健康診断個人票に医師の意見の欄等を追加したこと。(様式第2号関係)

第2 細部事項

1 健康診断結果についての医師からの意見聴取(第54条の2関係)

(1) 医師からの意見聴取は労働者の健康状況から緊急に法第66条の3第1項の措置を講ずべき必要がある場合には、できるだけ速やかに行われる必要があること。

(2) 意見聴取は、事業者が意見を述べる医師に対し、健康診断の個人票の様式の「医師の意見欄」に当該意見を記載させ、これを確認することとすること。

第4 四アルキル鉛中毒予防規則関係

第1 改正の要点

1 健康診断の結果についての医師からの意見の聴取の期限及び方法を定めたこと。(第23条の2関係)

2 四アルキル鉛健康診断個人票に医師の意見の欄等を追加したこと。(様式第2号関係)

第2 細部事項

1 健康診断結果についての医師からの意見聴取(第23条の2関係)

(1) 医師からの意見聴取は労働者の健康状況から緊急に法第66条の3第1項の措置を講ずべき必要がある場合には、できるだけ速やかに行われる必要があること。

(2) 意見聴取は、事業者が意見を述べる医師に対し、健康診断の個人票の様式の「医師の意見欄」に当該意見を記載させ、これを確認することとすること。

第5 特定化学物質等障害予防規則関係

第1 改正の要点

1 健康診断の結果についての医師からの意見の聴取の期限及び方法を定めたこと。(第40条の2関係)

2 特定化学物質等健康診断個人票に医師の意見の欄等を追加したこと。(様式第2号関係)

第2 細部事項

1 健康診断結果についての医師からの意見聴取(第40条の2関係)

(1) 医師からの意見聴取は労易者の健康状況から緊急に法第66条の3第1項の措置を講ずべき必要がある場合には、できるだけ速やかに行われる必要があること。

(2) 意見聴取は、事業者が意見を述べる医師に対し、健康診断の個人票の様式の「医師の意見欄」に当該意見を記載させ、これを確認することとすること。

第6 高気圧作業安全衛生規則関係

第1 改正の要点

1 健康診断の結果についての医師からの意見の聴取の期限及び方法を定めたこと。(第39条の2関係)

2 高気圧業務健康診断個人票に医師の意見の欄等を追加したこと。(様式第1号関係)

第2 細部事項

1 健康診断結果についての医師からの意見聴取(第39条の2関係)

(1) 医師からの意見聴取は労働者の健康状況から緊急に法第66条の3第1項の措置を講ずべき必要がある場合には、できるだけ速やかに行われる必要があること。

(2) 意見聴取は、事業者が意見を述べる医師に対し、健康診断の個人票の様式の「医師の意見欄」に当該意見を記載させ、これを確認することとすること。

第7 電離放射線障害防止規則関係

第1 改正の要点

1 健康診断の結果についての医師からの意見の聴取の期限及び方法を定めたこと。(第57条の2関係)

2 電離放射線健康診断個人票に医師の意見の欄等を追加したこと。(様式第1号関係)

第2 細部事項

1 健康診断結果についての医師からの意見聴敢(第57条の2関係)

(1) 医師からの意見聴取は労働者の健康状況から緊急に法第66条の3第1項の措置を講ずべき必要がある場合には、できるだけ速やかに行われる必要があること。

(2) 意見聴取は、事業者が意見を述べる医師に対し、健康診断の個人票の様式の「医師の意見欄」に当該意見を記載させ、これを確認することとすること。

第8 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「派遣法」という。)、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に竃する法律施行令及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則(以下「派遣則」という。)関係

1 健康診断の結果についての医師等からの意見聴取

派遣労働者に係る健康診断の結果についての医師等からの意見聴取については、派遣元事業者又は派遣先事業者がそれぞれ派遣法第45条の規定に基づき派遣労働者について行うものとされている健康診断(昭和61年基発第333号の記の5の1のハの(ハ)参照)の結果に基づいて行うものであること。(派遣法第45条第3項関係)

2 派遣先事業者等が意見聴取を行った場合の派遣元事業者への通知

派遣法第45条第10項の者は、派遣中の労働者に対し派遣法第45条第3項の規定により適用される労働安全衛生法第66条の2の規定により有害業務に係る特別の健康診断の結果に基づき医師又は歯科医師の意見を聴いたときは、遅滞なく、当該派遣中の労働者が受けた健康診断の種類に応じ、当該医師又は歯科医師の意見が記載された労働安全衛生規則様式第5号(一般健康診断個人票)等の書面の写しを作成し、派遣元事業者に送付することにより通知しなければならないこと。(派遣法第45条第14項、派遣則第40条第8項関係)

第9 その他

今回の労働安全衛生法の改正及びこれに伴う労働安全衛生規則等の改正は、労働者の健康確保対策の充実を図るために行われたものであるが、このほかにも高齢化に伴う労働者の健康確保対策の重要な課題として、歯周疾患の予防対策がある。歯周疾患の予防対策としては、事業場を通じて、労働者がこれに取り組むことが効果的であることから、適時、歯周疾患に関する健康診断の機会が事業場において提供されることが望ましい旨の啓発指導に努めること。