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通達:騒音障害防止のためのガイドラインの策定について

 

騒音障害防止のためのガイドラインの策定について

平成4年10月1日基発第546号

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)

<編注:本通達は令和5年4月20日基発0420第2号にて廃止されました。>

 

騒音障害の防止については、いまだ多くの騒音性難聴の発症を見ている状況にかんがみ、平成4年8月24日に労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成4年労働省令第24号)を公布し、騒音障害防止対策の充実を図ることとしたところである。

今般、これら労働安全衛生規則に基づく措置を含め事業者が自主的に講ずることが望ましい騒音障害防止対策を体系化し、別添のとおり「騒音障害防止のためのガイドライン」を策定した。

ついては、関係事業場に対し、本ガイドラインの周知、徹底を図り、騒音障害防止対策の一層の推進に遺憾なきを期されたい。

なお、関係事業者団体等に対しては、本職より別紙1から4のとおり要請を行ったので了知されたい。

おって、本通達をもって、昭和31年5月18日付け基発第308号「特殊健康診断指導指針について」のうち「4 強烈な騒音を発する場所における業務」に係る部分については、これを削除する。

 

騒音障害防止のためのガイドライン

1 目的

本ガイドラインは、労働安全衛生法令に基づく措置を含め騒音障害防止対策を講ずることにより、騒音作業に従事する労働者の騒音障害を防止することを目的とする。

2 騒音作業

本ガイドラインの対象とする騒音作業は、別表第1及び別表第2に掲げる作業場における業務をいう。

3 事業者の責務

別表第1及び別表第2に掲げる作業場を有する事業者(以下「事業者」という。)は、当該作業場について、本ガイドラインに基づき適切な措置を講ずることにより、騒音レベルの低減化等に努めるものとする。

4 計画の届出

事業者は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第88条の規定に基づく計画の届出を行う場合において、当該計画が別表第1又は別表第2に掲げる作業場に係るものであるときは、届出に騒音障害防止対策の概要を示す書面又は図面を添付すること。

5 作業環境管理及び作業管理

(1) 屋内作業場

イ 作業環境測定

(イ) 事業者は、別表第1に掲げる屋内作業場及び別表第2に掲げる作業場のうち屋内作業場について、次の測定を行うこと。

① 作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)第4条第1号及び第2号に定める方法による等価騒音レベルの測定(以下「A測定」という。)

② 音源に近接する場所において作業が行われる単位作業場にあっては、作業環境測定基準第4条第3号に定める方法による等価騒音レベルの測定(以下「B測定」という。)

(ロ) 測定は、6月以内ごとに1回、定期に行うこと。

ただし、施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合は、その都度、測定すること。

(ハ) 測定は、作業が定常的に行われている時間帯に、1測定点について10分間以上継続して行うこと。

ロ 作業環境測定結果の評価

事業者は、単位作業場所ごとに、次の表により、作業環境測定結果の評価を行うこと。

 

B測定

85dB(A)未満

85dB(A)以上

90dB(A)未満

90dB(A)以上

A測定平均値

85dB(A)未満

第Ⅰ管理区分

第Ⅱ管理区分

第Ⅲ管理区分

85dB(A)以上

90dB(A)未満

第Ⅱ管理区分

第Ⅱ管理区分

第Ⅲ管理区分

90dB(A)以上

第Ⅲ管理区分

第Ⅲ管理区分

第Ⅲ管理区分

備考

1 「A測定平均値」は、測定値を算術平均して求めること。

2 「A測定平均値」の算定には、80dB(A)未満の測定値は含めないこと。

3 A測定のみを実施した場合は、表中のB測定の欄は85dB(A)未満の欄を用いて評価を行うこと。

 

ハ 管理区分ごとの対策

事業者は、作業環境測定結果の評価結果に基づき、管理区分ごとに、それぞれ次の措置を講ずること。

(イ) 第Ⅰ管理区分の場合

第Ⅰ管理区分に区分された場所については、当該場所における作業環境の継続的維持に努めること。

(ロ) 第Ⅱ管理区分の場合

① 第Ⅱ管理区分に区分された場所については、当該場所を標識によって明示する等の措置を講ずること。

② 施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第Ⅰ管理区分となるよう努めること。

③ 騒音作業に従事する労働者に対し、必要に応じ、防音保護具を使用させること。

(ハ) 第Ⅲ管理区分の場合

① 第Ⅲ管理区分に区分された場所については、当該場所を標識によって明示する等の措置を講ずること。

② 施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第Ⅰ管理区分又は第Ⅱ管理区分となるようにすること。

なお、作業環境を改善するための措置を講じたときは、その効果を確認するため、当該場所について作業環境測定を行い、その結果の評価を行うこと。

③ 騒音作業に従事する労働者に防音保護具を使用させるとともに、防音保護具の使用について、作業中の労働者の見やすい場所に掲示すること。

ニ 測定結果等の記録

事業者は、作業環境測定を実施し、測定結果の評価を行ったときは、その都度、次の事項を記録して、これを3年間保存すること。

① 測定日時

② 測定方法

③ 測定箇所

④ 測定条件

⑤ 測定結果

⑥ 評価日時

⑦ 評価箇所

⑧ 評価結果

⑨ 測定及び評価を実施した者の氏名

⑩ 測定及び評価の結果に基づいて改善措置を講じたときは、当該措置の概要

(2) 屋内作業場以外の作業場

イ 測定

(イ) 事業者は、別表第2に掲げる作業場のうち屋内作業場以外の作業場については、音源に近接する場所において作業が行われている時間のうち、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間に、当該作業が行われる位置において等価騒音レベルの測定を行うこと。

(ロ) 測定は、施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合に、その都度行うこと。

ロ 測定結果に基づく措置

事業者は、測定結果に基づき、次の措置を講ずること。

(イ) 85dB(A)以上90dB(A)未満の場合

騒音作業に従事する労働者に対し、必要に応じ、防音保護具を使用させること。

(ロ) 90dB(A)以上の場合

騒音作業に従事する労働者に防音保護具を使用させるとともに、防音保護具の使用について、作業中の労働者の見やすい場所に掲示すること。

6 健康管理

(1) 健康診断

イ 雇入時等健康診断

事業者は、騒音作業に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際又は当該業務への配置替えの際に、次の項目について、医師による健康診断を行うこと。

① 既往歴の調査

② 業務歴の調査

③ 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

④ オージオメータによる250,500,1,000,2,000,4,000,8,000ヘルツにおける聴力の検査

⑤ その他医師が必要と認める検査

ロ 定期健康診断

事業者は、騒音作業に常時従事する労働者に対し、6月以内ごとに1回、定期に、次の項目について、医師による健康診断を行うこと。

① 既往歴の調査

② 業務歴の調査

③ 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

④ オージオメータによる1,000ヘルツ及び4,000ヘルツにおける選別聴力検査

事業者は、上記の健康診断の結果、医師が必要と認める者については、次の項目について、医師による健康診断を行うこと。

① オージオメータによる250,500,1,000,2,000,4,000,8,000ヘルツにおける聴力の検査

② その他医師が必要と認める検査

(2) 健康診断結果に基づく事後措置

事業者は、健康診断の結果に応じて、次に掲げる措置を講ずること。

イ 前駆期の症状が認められる者及び軽度の聴力低下が認められる者に対しては、屋内作業場にあっては第Ⅱ管理区分に区分された場所、屋内作業場以外の作業場にあっては等価騒音レベルで85dB(A)以上90dB(A)未満の作業場においても防音保護具の使用を励行させるほか、必要な措置を講ずること。

ロ 中等度以上の聴力低下が認められ、聴力低下が進行するおそれがある者に対しては、防音保護具使用の励行のほか、騒音作業に従事する時間の短縮等必要な措置を講ずること。

(3) 健康診断結果の記録と報告

事業者は、雇入時等又は定期の健康診断を実施したときは、その結果を記録し、5年間保存すること。

また、定期健康診断については、実施後遅滞なく、その結果を所轄労働基準監督署長に報告すること。

7 労働衛生教育

事業者は、常時騒音作業に労働者を従事させようとするときは、当該労働者に対し、次の科目について労働衛生教育を行うこと。

① 騒音の人体に及ぼす影響

② 適正な作業環境の確保と維持管理

③ 防音保護具の使用の方法

④ 改善事例及び関係法令

 

別添

(1) 鋲打ち機、はつり機、鋳物の型込機等圧縮空気により駆動される機械又は器具を取り扱う業務を行う屋内作業場

(2) ロール機、圧延機等による金属の圧延、伸線、ひずみ取り又は板曲げの業務(液体プレスによるひずみ取り及び板曲げ並びにダイスによる線引きの業務を除く。)を行う屋内作業場

(3) 動力により駆動されるハンマーを用いる金属の鍜造又は成型の業務を行う屋内作業場

(4) タンブラーによる金属製品の研磨又は砂落としの業務を行う屋内作業場

(5) 動力によりチェーン等を用いてドラムかんを洗浄する業務を行う屋内作業場

(6) ドラムバーカーにより、木材を削皮する業務を行う屋内作業場

(7) チッパーによりチップする業務を行う屋内作業場

(8) 多筒抄紙機により紙をすく業務を行う屋内作業場

 

(別表第2)

(1) インパクトレンチ、ナットランナー、電動ドライバー等を用い、ボルト、ナット等の締め付け、取り外しの業務を行う作業場

(2) ショットブラストにより金属の研磨の業務を行う作業場

(3) 携帯用研削盤、ベルトグラインダー、チッピングハンマー等を用いて金属の表面の研削又は研磨の業務を行う作業場

(4) 動力プレス(油圧プレス及びプレスブレーキを除く。)により、鋼板の曲げ、絞り、せん断等の業務を行う作業場

(5) シャーにより、鋼板を連続的に切断する業務を行う作業場

(6) 動力により鋼線を切断し、くぎ、ボルト等の連続的な製造の業務を行う作業場

(7) 金属を溶融し、鋳鉄製品、合金製品等の成型の業務を行う作業場

(8) 高圧酸素ガスにより、鋼材の溶断の業務を行う作業場

(9) 鋼材、金属製品等のロール搬送等の業務を行う作業場

(10) 乾燥したガラス原料を振動フィーダーで搬送する業務を行う作業場

(11) 鋼管をスキッド上で検査する業務を行う作業場

(12) 動力巻取機により、鋼板、線材を巻き取る業務を行う作業場

(13) ハンマーを用いて金属の打撃又は成型の業務を行う作業場

(14) 圧縮空気を用いて溶融金属を吹き付ける業務を行う作業場

(15) ガスバーナーにより金属表面のキズを取る業務を行う作業場

(16) 丸のこ盤を用いて金属を切断する業務を行う作業場

(17) 内燃機関の製造工場又は修理工場で、内燃機関の試運転の業務を行う作業場

(18) 動力により駆動する回転砥石を用いて、のこ歯を目立てする業務を行う作業場

(19) 衝撃式造形機を用いて砂型を造形する業務を行う作業場

(20) コンクリートパネル等を製造する工程において、テーブルバイブレータにより締め固めの業務を行う作業場

(21) 振動式型ばらし機を用いて砂型より鋳物を取り出す業務を行う作業場

(22) 動力によりガスケットをはく離する業務を行う作業場

(23) びん、ブリキかん等の製造、充てん、冷却、ラベル表示、洗浄等の業務を行う作業場

(24) 射出成型機を用いてプラスチックの押出し、切断の業務を行う作業場

(25) プラスチック原料等を動力により混合する業務を行う作業場

(26) みそ製造工程において動力機械により大豆の選別の業務を行う作業場

(27) ロール機を用いてゴムを練る業務を行う作業場

(28) ゴムホースを製造する工程において、ホース内の内紙を編上機により編み上げる業務を行う作業場

(29) 織機を用いてガラス繊維等原糸を織布する業務を行う作業場

(30) ダブルツインスター等高速回転の機械を用いて、ねん糸又は加工糸の製造の業務を行う作業場

(31) カップ成型機により、紙カップを成型する業務を行う作業場

(32) モノタイプ、キャスター等を用いて、活字の鋳造の業務を行う作業場

(33) コルゲータマシンによりダンボール製造の業務を行う作業場

(34) 動力により、原紙、ダンボール紙等の連続的な折り曲げ又は切断の業務を行う作業場

(35) 高速輪転機により印刷の業務を行う作業場

(36) 高圧水により鋼管の検査の業務を行う作業場

(37) 高圧リムーバを用いてICパッケージのバリ取りの業務を行う作業場

(38) 圧縮空気を吹き付けることにより、物の選別、取出し、はく離、乾燥等の業務を行う作業場

(39) 乾燥設備を使用する業務を行う作業場

(40) 電気炉、ボイラー又はエアコンプレッサーの運転業務を行う作業場

(41) ディーゼルエンジンにより発電の業務を行う作業場

(42) 多数の機械を集中して使用することにより製造、加工又は搬送の業務を行う作業場

(43) 岩石又は鉱物を動力により破砕し、又は粉砕する業務を行う作業場

(44) 振動式スクリーンを用いて、土石をふるい分ける業務を行う作業場

(45) 裁断機により石材を裁断する業務を行う作業場

(46) 車両系建設機械を用いて掘削又は積込みの業務を行う坑内の作業場

(47) さく岩機、コーキングハンマ、スケーリングハンマ、コンクリートブレーカ等圧縮空気により駆動される手持動力工具を取り扱う業務を行う作業場

(48) コンクリートカッタを用いて道路舗装のアスファルト等を切断する業務を行う作業場

(49) チェーンソー又は刈払機を用いて立木の伐採、草木の刈払い等の業務を行う作業場

(50) 丸のこ盤、帯のこ盤等木材加工用機械を用いて木材を切断する業務を行う作業場

(51) 水圧バーカー又はヘッドバーカーにより、木材を削皮する業務を行う作業場

(52) 空港の駐機場所において、航空機への指示誘導、給油、荷物の積込み等の業務を行う作業場

 

騒音障害防止のためのガイドラインの解説

本解説は、「騒音障害防止のためのガイドライン」の趣旨、運用上の留意点、内容の説明を記したものである。

「1 目的」について

騒音性難聴は長期的には減少傾向にあるが、現在においても多くの発生をみており、看過できない状況にある。

また、近年、国際労働機関(ILO)、国際標準化機構(ISO)等の国際機関や欧米諸国において、新たに等価騒音レベルを用いた騒音ばく露の許容基準が提案されている。

こうした動向を踏まえ、従来からの騒音障害防止対策を見直し、今般、騒音レベルの測定、測定結果の評価に基づく騒音対策、健康管理、労働衛生教育からなる「騒音障害防止のためのガイドライン」を定めたものである。

「2 騒音作業」について

別表第1は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第588条及び第590条の規定に基づき、6月以内ごとに1回、定期に、等価騒音レベルを測定することが義務付けられている屋内作業場を掲げたものであり、別表第2は、各種の測定結果から等価騒音レベルで85dB(A)以上になる可能性が大きい作業場を掲げたものである。

なお、これらに掲げられていない作業場であっても、騒音レベルが高いと思われる場合には、本ガイドラインと同様な騒音障害防止対策を講ずることが望ましい。

「3 事業者の責務」について

本ガイドラインは、標準的かつ必要最小限と考えられる対策を体系的にとりまとめたものである。したがって、事業者は、これをもとに騒音作業の実態に応じた騒音発生源対策、伝ぱ経路対策等を講ずる必要がある。

また、本ガイドラインを適正に運用するためには、労働衛生管理体制の整備と各級管理者の活動が基本となるが、騒音作業に従事する労働者がその趣旨を理解し、対策の遵守、協力に努めることも極めて重要であることから、適切な労働衛生教育を実施することが不可欠である。さらに、機械設備等製造業者が、騒音発生源となる機械設備等について、設計、製造段階からの低騒音化対策に努めることが必要である。

「5 作業環境管理及び作業管理」について

(1) 等価騒音レベル

等価騒音レベルについては、日本工業規格(JIS)のZ8731(1983)において「騒音レベルが時間とともに変化する場合、測定時間内でこれと等しい平均二乗音圧を与える連続定常音の騒音レベル。単位はデシベル、単位記号はdB(A)。」と定義されており、次の式で表される。

図


T:時刻t1に始まり時刻t2に終わる実測時間

PA(t):A特性音圧

PO:基準音圧(20μPa)

等価騒音レベルの物理的意味は、図1に示すように、時間とともに変動する騒音(LA(t))がある場合、そのレベルを、ある時間(T=t2-t1)の範囲内でこれと等しいエネルギーをもつ定常騒音の騒音レベルで表現するということである。等価騒音レベルは、変動騒音に対する人間の生理・心理的反応とよく対応することが多くの研究で明らかにされており、一般環境や作業環境における騒音の大きさを表す代表値として、近年、国際的に広く用いられるようになり、ILO、ISO等の許容基準にも取り入れられている。

図1等価騒音レベルの意味

図


(2) 作業環境測定

イ 等価騒音レベルの測定については、特に測定の実施者を定めていないが、測定結果が対策の基本になることから、適正な測定を行う必要がある。このため、測定は、作業環境測定士や衛生管理者など事業場における労働衛生管理の実務に直接携わる者に実施させるか、又は作業環境測定機関に委託して実施することが望ましい。

ロ 作業環境測定は、作業環境の評価が第Ⅰ管理区分となる場合であっても、作業環境の評価を継続的に行うため、6月以内ごとに1回、定期に行う必要がある。

ハ A測定は、単位作業場所の平均的な作業環境を調べるのが目的であるので、作業が定常的に行われている時間に行う必要がある。また、時間の経過に伴う作業環境の状態の変化も同時に調べるために、測定点ごとに測定時刻をずらして行うのが望ましい。

しかし、単位作業場によっては、平均的な作業環境状態からは予測しにくい大きい騒音にさらされる危険がある。B測定は、このような場合を想定し、音源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所にあっては、その作業が行われる時間のうち、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間に、当該作業が行われる位置における等価騒音レベルを測定するものである。

ニ 等価騒音レベルは、積分型騒音計を用いれば直接求めることができるが、普通騒音計を用いて,実測時間全体にわたって一定時間間隔Δtごとに騒音レベルを測定し、その結果から次式により求めることもできる。

図

LA1、LA2、LA3・・・LAn:騒音レベルの測定値

n:測定値の総数

(3) 管理区分ごとの対象

イ 「第Ⅱ管理区分又は第Ⅲ管理区分に区分された場所を標識によって明示する等」とは、屋内作業場について、第Ⅱ管理区分又は第Ⅲ管理区分に区分された場所とそれ以外の場所を、区画物に標識を付し、又は床上に白線、黄線等を引くことにより区画することをいうが、屋内作業場の入り口等に、騒音レベルの高い屋内作業場である旨を掲示すること等の措置を講ずることとして差し支えない。

また、第Ⅱ管理区分及び第Ⅲ管理区分に区分された場所が混在する場合には、これらの場所を区別することなく、ひとつの場所として明示しても差し支えない。

ロ 施設、設備、作業工程等における騒音発生源対策及び伝ぱ経路対策並びに騒音作業従事者に対する受音者対策の代表的な方法は表1のとおりである。

なお、これらの対策を講ずるに当たっては、改善事例を参考にするとともに、労働衛生コンサルタント等の専門家を活用することが望ましい。

ハ 作業環境を改善するための措置を講じたときは、その確認のため、作業環境の測定及び評価を行うことが重要であるが、測定及び評価は措置を講ずる前に行った方法と同じ方法で行う。

ニ 防音保護具の使用に当たっては、次の点に留意する必要がある。

a 防音保護具は、騒音発生源対策、伝ぱ経路対策等による騒音の低減化が十分に行うことができない場合に、二次的に使用するものであること。

b 防音保護具には耳栓と耳覆い(イヤーマフ)があり、耳栓は遮音性能により一種(低音から高音までを遮音するもの)と二種(主として高音を遮音するもので、会話域程度の低音を比較的通すもの)に区分されていること。

耳栓と耳覆いのどちらを選ぶかは、作業の性質や騒音の特性で決まるが、非常に強烈な騒音に対しては耳栓と耳覆いとの併用が有効であること。

c 耳栓を使用する場合、人によって耳の穴の形や大きさが異なるので、その人に適したものを使用すること。

d 防音保護具は、装着の緩みや隙間があると充分な効果が得られないので、正しく使用すること。また、作業中、緩んだ場合には、その都度装着し直すこと。

e 騒音作業を有する作業場では、会話によるコミュニケーションが阻害される場合が多いが、防音保護具の使用はさらにこれを増大するので、適切な意思伝達手段を考える必要があること。また、非常の際の警報には音響ではなく、赤色回転灯などを用いて二次災害の防止に配置すること。

f 第Ⅱ管理区分に区分された場所において、前駆期の症状が認められる者及び軽度の聴力低下が認められる者が作業に従事する場合には、当該労働者に防音保護具を使用させること。

表1 代表的な騒音対策の方法

分類

方法

具体例

1 騒音発生源対策

発生源の低騒音化

低騒音型機械の採用

発生原因の除去

給油、不釣合調整、部品交換など

遮音

防音カバー、ラギング

消音

消音器、吸音ダクト

防振

防振ゴムの取り付け

制振

制振材の装着

運転方法の改善

自動化、配置の変更など

2 伝ぱ経路対策

距離減衰

配置の変更など

遮蔽効果

遮蔽物、防音塀

吸音

建屋内部の消音処理

指向性

音源の向きの変更

3 受音者対策

遮音

防音監視室

作業方法の改善

作業スケジュールの調整、遠隔操作など

耳の保護

耳栓、耳覆い

(4) 測定結果等の記録

イ 作業環境測定を行ったときは、測定結果、評価結果等を記録して、これを3年間保存する。

なお、第Ⅱ管理区分又は第Ⅲ管理区分された場所における測定結果、評価結果等の記録については、5年間保存することが望ましい。

ロ 「測定方法」とは、測定器の種類、形式等をいう。

ハ 「測定箇所」の記録は、測定を行った作業場の見取図に測定箇所を記入する。

ニ 「測定条件」とは、測定時の作業の内容、稼働していた機械、設備等の名称及びその位置、測定結果に最も影響を与える音源の名称及びその位置のほか、マイクロホンの設置高さ、窓などの開閉状態等をいう。

ホ 「測定結果」については、A測定の測定値、その算術平均値及びB測定の測定値を記録する。

ヘ 「評価結果」には、第Ⅰ管理区分から第Ⅲ管理区分までの該当する区分を記録する。

(5) 屋内作業場以外の作業場における測定および測定結果に基づく措置

イ 屋内作業場以外の作業場に係る測定については、騒音発生源が作業により移動する手持動力工具を取り扱う業務が多いことから、屋内作業場における作業環境測定基準に基づく測定を行う必要はなく、音源に近接する場所において作業を行う者の位置で測定を行えば足りるものである。

ロ 測定結果に基づく措置は、最少限のものとして防音保護具の使用及び防音保護具を使用しなければならない旨の掲示を示しているが、屋内作業場における措置と同様に、施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するために必要な措置を講じ、当該作業場の騒音レベルをできる限り低減する努力を行う必要がある。

ハ 測定結果が85dB(A)以上90dB(A)未満の場所において、前駆期の症状が認められる者及び軽度の聴力低下が認められる者が作業に従事する場合には、当該労働者に防音保護具を使用させること。

「6 健康管理」について

(1) 健康診断の目的

職場における健康診断の一般的な目的は、職場において健康を阻害する諸因子による健康影響の早期発見及び総合的な健康状況の把握のみならず、労働者が当該作業に就業して良いか(就業の可否)、あるいは作業に引続き従事して良いか(適正配置)を判断することにある。すなわち、労働者の健康状態を経時的変化を踏まえて総合的に把握したうえで、保健指導、作業管理あるいは作業環境管理にフィードバックすることにより、労働者が常に健康な状態で働けるようにすることである。

この意味において、騒音作業に係る健康診断の具体的目的は、以下の二つに大別できる。

a 騒音作業従事労働者の聴力の程度、変化、耳鳴り等の症状及び騒音ばく露状況を調べ、個人の健康管理を進める資料とすること。

b 集団としての騒音の影響を調べ、騒音管理を進める資料とすること。

(2) 健康管理の体系

健康管理の体系は、図2のとおりである。

(3) 健康診断の種類

イ 雇入時等健康診断

騒音作業に常時従事する労働者を新たに雇入れ、又は当該業務へ配置転換するとき(以下「雇入れ時等」という。)に実施する聴力検査の検査結果は、将来にわたる聴覚管理の基準として活用されることから極めて重要な意味を持つものである。

このため、雇入時等健康診断においては、定期健康診断の選別聴力検査に代えて、250ヘルツから8,000ヘルツまでの聴力の検査を行うこととしたものである。

したがって、雇入れ時等以前に、既に中耳炎後遺症、頭頸部外傷後遺症、メニエール病、耳器毒(耳に悪影響を及ぼす毒物)の使用、突発性難聴などで聴力が低下している者、あるいは過去に騒音作業に従事してすでに騒音性難聴を示している者、日常生活においてヘッドホン等による音楽鑑賞を行うことにより聴力障害の兆候を示す者について、各周波数ごとの正確な聴力を把握することが特に重要となる。

ロ 定期健康診断

騒音作業従事労働者の聴力の経時的変化を調べ、個人及び集団としての騒音の影響をいち早く知り、聴覚管理の基礎資料とするとともに、作業環境管理及び作業管理に反映させることが重要である。

定期健康診断は6月以内ごとに1回、定期に行うことが原則であるが、労働安全衛生規則第44条又は第45条の規定に基づく定期健康診断が6月以内に行われた場合(オージオメータを使用して、1,000ヘルツ及び4,000ヘルツにおける選別聴力検査が行われた場合に限る。)には、これを本ガイドラインに基づく定期健康診断(ただし、オージオメータによる1,000ヘルツ及び4,000ヘルツにおける選別聴力検査の項目に限る。)とみなして差し支えない。

また、第Ⅰ管理区分に区分された場所又は屋内作業場以外の作業場で測定結果が85dB(A)未満の場所における業務に従事する労働者については、本ガイドラインに基づく定期健康診断を省略しても差し支えない。

なお、オージオメータを使用して、1,000ヘルツ及び4,000ヘルツにおける選別聴力検査のみを行ったのでは、騒音性難聴のごく初期の段階では、所見なしと判定される可能性がある。したがって、2回の定期健康診断のうち1回は、1,000ヘルツ及び4,000ヘルツにおける閾値を検査することが望ましい。

ハ 離職時等健康診断

離職時又は騒音作業以外の作業への配置転換時(以下「離職時等」という。)の聴力の程度を把握するため、離職時等の前6月以内に定期健康診断を行っていない場合には、定期健康診断と同じ項目の検査を行うことが望ましい。

(4) 検査の方法

イ 既往症・業務歴の調査及び自他覚症状の有無の検査

聴力検査を実施する前に、あらかじめ騒音のばく露歴、特に現在の騒音

図2健康管理の体系

図


作業の内容、騒音レベル、作業時間について調査するとともに、耳栓、耳覆いなどの保護具の使用状況も把握しておく。さらに、現在の自覚症状として、耳鳴り、難聴の有無あるいは最近の疾患などについて問視診により把握する。

ロ 1,000ヘルツ及び4,000ヘルツにおける選別聴力検査

オージオメータによる選別聴力検査は、1,000ヘルツについては30dB、4,000ヘルツについては40dBの音圧の純音が聞こえるかどうかの検査を行う。

なお、検査は、検査音の聴取に影響を及ぼさない静かな場所で行う。

ハ 250、500、1,000、2,000、4,000、8,000ヘルツにおける聴力の検査

この検査は、オージオメータによる気導純音聴力レベル測定法による。

なお、250ヘルツにおける検査は省略しても差し支えない。

コンピュータ制御自動オージオメータを使用する場合は、そのプログラム及び操作は、手動による気導純音聴力レベル測定法による成績と同じ成績が得られるようにする。

(5) 聴力検査の担当者

イ 選別聴力検査については、医師のほか、医師の指示のもとに、本検査に習熟した保健婦、看護婦等が行うことが適当である。

ロ 250、500、1,000、2,000、4,000、8,000ヘルツにおける聴力の検査については、医師のほか、医師の指示のもとに、本検査に習熟した保健婦、看護婦等が行うこと。

(6) 健康診断結果の評価

イ 雇入時等健康診断結果の評価に当たっては、まず、雇入時等健康診断の結果に基づき、騒音作業従事労働者の気導純音聴力レベルを求め、就業時の聴力として以後の健康管理上の基準とする。

ロ 評価及び健康管理上の指導は、耳科的知識を有する産業医又は耳鼻咽喉科専門医が行う。評価を行うに当たっては、異常の有無を判断し、異常がある場合には、それが作業環境の騒音によるものか否か、障害がどの程度か、障害の進行が著明であるかどうか等を判断する。

ハ 選別聴力検査の結果、所見のあった者に対して、騒音作業終了後半日以上経過した後に、250、500、1,000、2,000、4,000、8,000ヘルツにおける気導純音聴力レベルの測定を行い、得られた結果を評価する。

また、本検査を行った場合には、会話音域の聴き取り能力の程度を把握するため、次式により3分法平均聴力レベルを求めて記載しておく。

3分法平均聴力レベル=(A+B+C)×1/3

A:500ヘルツの聴力レベル

B:1,000ヘルツの聴力レベル

C:2,000ヘルツの聴力レベル

(7) 健康診断結果に基づく事後措置

健康診断結果に基づく事後措置は、聴力検査の結果から表2に示す措置を講ずることを基本とするが、この際、耳科的既往歴、騒音業務歴、現在の騒音作業の内容、防音保護具の使用状況、自他覚症状などを参考にするとともに、さらに生理的加齢変化、すなわち老人性難聴の影響を考慮する必要がある。

表2 聴力レベルに基づく管理区分

聴力レベル

区分

措置

高音域

会話音域

30dB未満

30dB未満

健常者

一般的聴覚管理

30dB以上

50dB未満

要観察者

(前駆期の症状が認められる者)

第Ⅱ管理区分に区分された場所等においても防音保護具の使用の励行、その他必要な措置を講ずる。

50dB以上

30dB以上

40dB未満

要観察者

(軽度の聴力低下が認められる者)

40dB以上

要管理者

(中等度以上の聴力低下が認められる者)

防音保護の使用の励行、防音作業時間の短縮、配置転換、その他必要な措置を講ずる。

備考

1 高音域の聴力レベルは、4,000ヘルツについての聴力レベルによる。

2 会話音域の聴力レベルは、3分法平均聴力レベルによる。

 

(8) 健康診断結果の報告

健康診断の結果報告については、平成2年12月18日付け基発第748号「じん肺法施行規則等の一部を改正する省令の施行について」の別紙に示す「指導勧奨による特殊健康診断結果報告書」を用いて報告を行うこと。

「7 労働衛生教育」について

労働衛生教育の実施は、騒音についての最新の知識並びに教育技法についての知識及び経験を有する者を講師として、ガイドラインに示された科目ごとに、表3に掲げる範囲及び時間で実施する。

表3 騒音作業従事労働者労働衛生教育

科目

範囲

時間

1 騒音の人体に及ぼす影響

(1) 影響の種類

(2) 聴力障害

60分

2 適正な作業環境の確保と維持管理

(1) 騒音の測定と作業環境の評価

(2) 騒音発生源対策

(3) 騒音伝ぱ経路対策

50分

3 防音保護具の使用の方法

(1) 防音保護具の種類及び性能

(2) 防音保護具の使用方法及び管理

30分

4 改善事例及び関係法令

(1) 改善事例

(2) 騒音作業に係る労働衛生関係法令

40分

(計3時間)