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識別剤分析検査における有機溶剤取扱い業務について
平成3年5月27日事務連絡
(都道府県労働基準局労働衛生主務課長あて労働省労働基準局安全衛生部化学物質調査課長通知)
標記について資源エネルギー庁石油部流通課長より別紙1の申し入れがあり、別紙2のとおり回答したので了知されたい。
なお、本件検査の業務は都道府県税務事務所の職員によって行われることとなっており、この場合、当該職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の職権は、地方公務員法第58条第4項に基づき、人事委員会又はその委任を受けた人事委員会の委員(人事委員会を置かない地方公共団体においては地方公共団体の長)が行うこととなるので念のため申し添える。
別紙1
○識別剤分析検査における有機溶剤取扱い業務について
平成3年5月22日事務連絡
(労働省労働基準局安全衛生部化学物質調査課長あて資源エネルギー庁石油部流通課長通知)
最近当課の所掌する石油製品の流通に関し、軽油に灯油等を違法に混入し脱税を図るケースが見られ、これが品質面や価格面に悪影響を与えるなど軽油の流通秩序を乱す一つの要因となっております。
このため当省では、軽油流通の適正化を図る観点から軽油への灯油等の混入の有無を簡便に判別し得る識別剤添加制度の導入を決め、本年3月、石油元売会社等に対して軽油周辺油種(灯油及びA重油)に識別剤を添加するよう指導したところです。識別剤添加実施後は、自治省及び各都道府県の税務担当課の協力を得て軽油への識別剤添加油の混入の有無等について検査することとしております。この場合の検査は、下記1に示す要領で行われることとなっておりますが、当該検査に係る有機溶剤中毒予防規則の適用について、下記2の事項につきいささか疑義がありますので、この点に関し貴省の見解をお示しいただくよう要請します。
記
1.検査の概要
検査の対象となる軽油に識別剤添加油が混入されているかどうかを紫外線照射により簡易に識別する簡易測定法と分光蛍光光度計を使用して識別剤添加油の混入率を算出する定量測定法とがあり、これらの検査に当たっては、有機溶剤中毒予防規則により規制されている有機溶剤を取り扱う次の行為を予定している。
(1) 分析に使用する1―ブタノールを含むアルコール液を調製する行為
(2) 採取した軽油に1―ブタノールを含むアルコール液を加えて分析を行う行為
(3) アセトンを用いて軽油等の採取等に用いたピペット等の器具を洗浄する行為
2.有機溶剤中毒予防規則の適用についての疑義
(1) 上記の検査は、有機溶剤中毒予防規則第1条第6号ルの「有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務」に該当するか否か。
(2) 有機溶剤中毒予防規則にいう消費量とは、試験検査において検査試薬として用いる有機溶剤の量及び取り扱い中に蒸発する有機溶剤の量の合計と考えるのが一般的であるが、本件の場合検査に試薬として用いられた有機溶剤は廃液として回収されるので、消費量は蒸発量と考えてよいか。
(3) 別紙に掲げるように、当省の行った実験結果によれば、識別剤分析検査で諸費する有機溶剤は極めて微量であることから、各都道府県の分析検査室の広さ、状態等に差があるものの、識別剤分析検査は有機溶剤予防中毒規則第2条及び第3条に該当すると考えてよいか。
なお、都道府県が当省の行った実験結果の数値を有機溶剤中毒予防規則第3条の適用除外の認定申請に当たってのデータとして使用することは可能か。
別紙
[有機溶剤蒸発量実験結果]
1.実験の前提
(1) 識別剤分析検査に使用する1―ブタノール及びアセトンの蒸発量は、安全側に考えて、空気の流れの多い所(ドラフトチャンバー内)の値をとった。実験は25℃の状態で行い、30℃及び40℃については、25℃の実験結果から推計した。
なお、空気の流れの少ない全体換気の部屋での実験も行ったが、蒸発量はドラフトチャンバー内に比べ約1/4の数値であった。
(2) 識別剤分析検査の頻度や有機溶剤の使用状況は各都道府県により異なっているため、安全側に考えて、厳しい場合を想定した。
(3) 有機溶剤の蒸発量は、操作時及び残液の蒸発量の合計とした。
2.実験結果
|
操作時蒸発量(g/h) |
残液蒸発量(g/h) |
操作時及び残液蒸発量(g/h) |
想定した作業量 |
|||||
25℃ |
30℃ |
40℃ |
25℃ |
30℃ |
40℃ |
||||
定性 |
アルコール液調製時 |
0.01 |
0.01 |
0.02 |
0.41 |
0.42 |
0.42 |
0.43 |
1回/日 |
S.Y.入りアルコール液調製時 |
0.01 |
0.02 |
0.04 |
0.11 |
0.12 |
0.13 |
0.14 |
1回/日 |
|
アルコール液調製時合計 |
0.02 |
0.03 |
0.06 |
0.52 |
0.54 |
0.55 |
0.57 |
|
|
サンプル調製時 |
0.00 |
0.00 |
0.00 |
0.32 |
0.32 |
0.32 |
0.32 |
10本/h |
|
定量 |
6倍量アルコール液調製時 |
0.09 |
0.13 |
0.27 |
1.87 |
1.96 |
2.00 |
2.14 |
1回/日 |
サンプル調製時 |
0.01 |
0.01 |
0.03 |
1.55 |
1.56 |
1.56 |
1.57 |
6本/h |
|
器具の洗浄時 |
0.35 |
0.44 |
0.65 |
2.72 |
3.07 |
3.16 |
3.37 |
20本/h |
(注)
(1) 1―ブタノールは、アルコール液調製及びサンプル調製時に、アセトンは、器具の洗浄時に使用する。
(2) 各県税事務所において、調製済アルコール液を購入すれば、アルコール液調製時の有機溶剤蒸気暴露はない。
(3) 各県税事務所において、定性分析に限定して実施し、なおかつ分注器を使用すれば、蒸気は操作時(屋内作業場又は車両内部で行った場合)のみに問題となる。
(参考)
|
備考 |
||
1回当たり使用量 |
1回当たり作業時間 |
||
定性 |
アルコール液調製時 |
80ml |
30秒 |
S.Y.入りアルコール液調製時 |
100ml |
90秒 |
|
サンプル調製時 |
3.5ml |
10秒 |
|
定量 |
6倍量アルコール液調製時 |
480ml |
60秒 |
サンプル調製時 |
35ml |
30秒 |
|
器具の洗浄時 |
― |
3分 |
30℃における操作時蒸発量の計算式
(1) 定性分析
① アルコール液調製時=0.0168×80×30/3600=0.011
② S.Y.入りアルコール液調製時=0.0077×100×90/3600=0.02
③ サンプル調製時=0.0077×3.5×10/3600=0.00
(2) 定量分析
① 6倍量アルコール液調製時=0.0168×480×60/3600=0.13
② サンプル調製時=0.0077×35×30/3600×6=0.01
(参考)識別剤分析検査の概要
(注)蒸発量は30℃における換算値を用いた。
〔Ⅰ〕 1―ブタノール
1.定性分析におけるアルコール液の調製
2.定性分析サンプル調製
3.定量分析6倍量アルコール液調製
4.定量分析サンプル調製
〔Ⅱ〕 アセトン
別紙2
○識別剤分析検査における有機溶剤取扱い業務について(回答)
平成3年5月27日事務連絡
(資源エネルギー庁石油部流通課長あて労働省労働基準局安全衛生部化学物質調査課長通知)
標記について下記のとおり回答いたします。
記
1.1―ブタノール及びアセトンは有機溶剤中毒予防規則(以下「有機則」という。)第1条に規定する第2種有機溶剤に該当し、当該有機溶剤を使用して行う識別剤分析検査の業務は、同条第6号ルの「有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務」に該当するので、当該検査は有機則の適用を受けるものであること。
2.ご照会の検査における消費する有機溶剤等の量とは、検査試薬等として用いる有機溶剤の量と当該作業中に作業環境中に発散する有機溶剤の量(検査試薬等として用いる有機溶剤の量を除く)との総計である。ただし、検査等に用いた有機溶剤が一旦気化することなく回収される場合は、その回収された量は除かれるものであること。
3.有機則第2条及び第3条に定める適用除外に該当するか否かは、有機溶剤の区分に応じて有機溶剤の消費量及び作業場の気積から個別的に判断されるものであること。
なお、有機則第2条又は第3条により適用の除外を受ける場合は局所排気装置等の設置は要しないが、本件の場合、検査の検体として労働安全衛生法令に規定する危険物である軽油を取扱うことから、作業場の構造により取扱う軽油等の蒸気が滞留する場合は、換気装置を設ける等蒸気が滞留しないよう爆発又は火災を防止するための適切な措置を講ずること。
また、有機溶剤は蒸気となって呼吸器から吸収されるのが一般的であるが、皮膚からも吸収されるので、有機溶剤の取扱いに当たっては、有機溶剤が皮膚に直接接触しないよう適切な措置を講ずること。
4.貴省が行った実験結果については有機則第3条に定める許容消費量を算定する際の基礎データとして差し支えないこと。