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防じんマスクに係る労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び機械等検定規則の一部を改正する省令の施行並びに防じんマスクの規格の適用について
昭和63年4月1日基発第205号
(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)
労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(昭和六三年政令第五二号)は、昭和六三年三月二五日に公布され、また、機械等検定規則の一部を改正する省令(昭和六三年労働省令第五号)及び防じんマスクの規格(昭和六三年労働省告示第一九号。以下「新規格」という。)は、昭和六三年三月三〇日に公布され、それぞれ同年四月一日から施行又は適用されたところである。
ついては、左記に留意のうえ、その運用に遺憾のないようにされたい。
記
第一 改正の趣旨
従来、ろ過材を成形して面体とし、ろ過材と面体とが一体となつた排気弁を有しない防じんマスク(簡易防じんマスク)は、新規格の制定に伴い廃止された従来の防じんマスクの規格(昭和五八年労働省告示第八四号。以下「旧規格」という。)に適合した防じんマスク(以下「旧規格防じんマスク」という。)に比べ性能が劣り、また、ろ過材を交換できないため短時間の使用で性能が低下することから、臨時の粉じん作業にのみその使用を認めてきた。しかし、近年、簡易防じんマスクは、ろ過材の品質の改良、生産技術の進歩等によりその性能が向上し、旧規格防じんマスクとほぼ同等の性能を有するものとなつてきている。また、諸外国では簡易防じんマスクは旧規格防じんマスクと同等に取り扱われているところである。
さらに、昭和六〇年七月三〇日に政府・与党対外経済対策推進本部が決定した「市場アクセス改善のためのアクション・プログラムの骨格」において、防じんマスクの規格について諸外国の規格との整合化について検討することとされた。
今回の改正は、このような状況にかんがみ、簡易防じんマスクを旧規格防じんマスクと同様に有効な呼吸用保護具として認め、その使用範囲を拡大するための所要の規制を行うとともに、防じんマスクの規格について諸外国の規格との整合化を図つたものである。
第二 労働安全衛生法施行令の一部改正関係
簡易防じんマスクを譲渡等の制限の対象となる機械等及び型式検定の対象となる機械等に追加するため、排気弁を有しない防じんマスクをこれらの機械等に含めることとしたこと(第一三条及び第一四条の二関係)。
第三 機械等検定規則の一部改正関係
一 新規検定を受けようとする者が検定申請の際に提出すべき現品の数を改めるとともに、新たにろ過材の取替えができない防じんマスク(以下「使い捨て式防じんマスク」という。)についてその数を定めたこと(第六条、別表第一関係)。
なお、改正後の機械等検定規則では、旧規格防じんマスクをろ過材の取替えができる防じんマスク(以下「取替え式防じんマスク」という。)として規定し、防じんマスクを取替え式防じんマスクと使い捨て式防じんマスクの二つに区分したものであること。
二 型式検定を受けようとする者が有すべき検査設備について、取替え式防じんマスクについては新規格の制定に伴い視野試験設備を不要とするとともに、使い捨て式防じんマスクについては新たにその種類を定めたこと(第八条第一項、別表第二関係)。
また、これに伴い、型式検定を受けようとする者が他の者の有する検査設備を利用することができる場合の当該検査設備の種類を整備したこと(第八条第二項関係)。
三 型式検定合格標章をちよう付すべき箇所について、取替え式防じんマスクについては従来どおりろ過材及び面体ごととするが、使い捨て式防じんマスクについては面体ごととしたこと(第一四条関係)。
四 使い捨て式防じんマスクについては、型式検定合格標章と同一の型式で直接面体に明りような表示をすることにより当該合格標章のちよう付に代えることができることとし、また、「種類」は「捨」と表示することとしたこと(様式第一一号(三)(甲)関係)。
五 型式検定合格標章をちよう付すべき紙に印刷する場合にあつては、複数の当該合格標章を同一の紙に印刷することができることとしたこと(様式第一一号(三)(乙)関係)。
第四 防じんマスクの規格の適用関係
一 改正の要点
(一) 旧規格にあつては、簡易防じんマスクその他吸気弁を有しない防じんマスクを防じんマスクの種類として認めていなかつたところであるが、新規格にあつては、これらを「使い捨て式防じんマスク」として認めることとしたこと(第一条関係)。
(二) 旧規格における材料等に係る試験のうち、耐熱試験、耐寒試験、耐薬品試験及び伸び率試験を廃止し、しめひもに係る引張試験及びしめひも取付部分に係る引張試験については、しめひもをしめひも取付部分に取り付けた状態で当該試験を行うこととしたこと。また、耐熱試験等を廃止したことに伴い、防じんマスクの各部に使用する材料について「き裂、変形その他の異常を生じないものであること。」としたこと(第二条第三号及び第三条関係)。
(三) 旧規格におけるノーズカップに関する規定を廃止するとともに、死積及び視野について数値による規定を廃止し、それぞれ、「著しく大きいものでないこと。」、「著しく妨げるものでないこと。」に改めたこと。また、使い捨て式防じんマスクの構造について新たに規定したこと(第四条関係)。
(四) 旧規格における性能に係る試験のうち、吸気抵抗上昇試験を廃止することとしたこと(第六条関係)。
(五) 使い捨て式防じんマスクにあつては、使用限度時間を表示しなければならないこととし、また、添付書の記載事項を追加することとしたこと(第七条関係)。
二 細部事項
(一) 第一条関係
第一項の表中の「しめひも」とは、形状及び材質にかかわらず、面体を装着するためのしめ具の総称であること。
(二) 第三条関係
イ 表中「しめひも取付部分及びしめひも」の項の「試験方法」の欄中「しめひも取付部分及びしめひもごとに……引張荷重をかけ」とは、各々のしめひも取付部分ごとにしめひもを取り付けた状態で各々引張荷重をかけることをいうものであること。
ロ 表中「隔離式防じんマスクの連結管取付部分及び連結管」の項の「試験方法」の欄中「連結管取付部分及び連結管に……引張荷重をかけ」とは、隔離式防じんマスクの面体、連結管及びろ過材ケースを連結した状態で引張荷重をかけることをいうものであること。
(三) 第四条関係
第七号の「使用限度時間」とは、第七条第一項第四号の「使用限度時間」をいうものであること。
(四) 第六条関係
イ 表中の「粉じん捕集効率試験」に係る粉じん捕集効率測定設備には、図一に示すようなものがあること。
図1 粉じん捕集効率測定設備の例
ロ 表中の「排気弁の動的漏れ率試験」に係る動的漏れ率測定設備には、図二に示すようなものがあること。
図2 排気弁の動的漏れ率測定設備の例
(五) 第七条関係
イ 第一項の「表示」の方法には、(1)刻印、(2)印刷又は(3)通常の取扱いで変色しないよう印刷した紙のはく離しないような方法によるちよう付等があること。
ロ 第一項第一号の「製造者名」は、製造者が誰であるかを明確に判断できるものであれば、略称であつても差し支えないこと。
ハ 第一項第二号の「製造年月」は、例えば八八、四又は昭六三、四のごとく西暦年の下二桁の数字又は元号年の数字を用いた略号であつても差し支えないこと。
ニ 第一項第四号の「使用限度時間」とは、使い捨て式防じんマスクの機能を損うことなく使用できる時間をいうものであること。
ホ 第二項第二号の「使用上の注意事項」には、当該防じんマスクの点検方法、装置及び着脱の方法、保管方法等があること。取替え式防じんマスクにあつては、消毒の方法、密着性試験の方法、ろ過材等の部品の交換方法等があること。
なお、印刷物には、粉じん捕集効率、吸気抵抗、排気抵抗、排気弁の動的漏れ率、重量等を併せて記載されていることが望ましいこと。
ヘ 第三項第二号の吸気抵抗上昇値の測定は、例えば防じんマスクに石英粉じんが一〇〇mg捕集される時点の予測カウント数を計算により求め、計器の値が当該予測カウント数に達した時点の吸気抵抗値を測定することにより行つて差し支えないこと。
この場合、石英粉じんを一〇〇mgたい積させるために要する予測カウント数(X)は次式により求めること。
ただし、K:粉じん計の質量濃度変換係数
(mg/m3/cpm)
E:防じんマスクの粉じん捕集効率
q:吸引流量(l/min)
L:たい積量(mg)
(例) L=100mg K=0.047mg/m3/cpm
E=0.95 q=40l/min
とすると
≒55991(カウント)
また q=30l/minでは
≒74655(カウント)
ト 第三項第三号の「唇の幅」及び「鼻根おとがい距離」は、それぞれ次の図に示すとおりであること。
(六) 附則関係
第三項の規定により、昭和六四年四月一日前に申請があつた防じんマスクの型式検定は、なお旧規格を基準として行われるものであること。