img1 img1 img1

◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー  

通達:改正じん肺法の施行について

 

改正じん肺法の施行について

昭和53年4月28日基発第250号

(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

最終改正 平成23年3月31日基発0331第20号

 

労働安全衛生法及びじん肺法の一部を改正する法律(昭和五二年法律第七六号)のじん肺法関係の施行については、昭和五三年四月二八日付け労働省発基第四七号により労働事務次官から通達されたところであるが、その細部の取扱いについて下記のとおり定めたので、これが円滑な実施を図るよう配意されたい。

また、労働安全衛生法及びじん肺法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置及び関係政令の整備に関する政令(以上「政令」という。)は、昭和五三年三月一〇日政令第三三号として、じん肺法施行規則の一部を改正する省令は、五三年三月二八日労働省令第九号としてそれぞれ公布され、ともに昭和五三年三月三一日から施行されたが、左記の事項に留意して、その運用に遺憾のないようにされたい。

なお、改正前のじん肺法(以下「旧法」という。)に関する通達(粉じん作業に係るものを除く。)は、この通達に統合することとし、以下の通達は廃止する。

昭和三五年四月二五日付け基発第三三一号(記の第一の四及び五を除く。)、昭和三七年九月八日付け基発第九七八号、昭和三八年四月一三日付け基発第四二八号、昭和三九年一〇月一六日付け基発第一二〇二号、昭和四〇年六月二二日付け基発第七〇三号、昭和四二年五月四日付け労働衛生課長名内翰、昭和四三年六月一三日付け安発第九五号、昭和四三年九月二〇日付け基収第三八二七号、昭和四七年一月一七日付け基発第一八号(記の一に限る。)、昭和五一年二月二四日付け基発第二二三号及び昭和五一年九月二八日付け基発第六九一号

 

第一 法律関係

一 定義(第二条関係)

(一) 第一項第一号の「じん肺」とは、粉じんの吸入によつて肺に生じた線維増殖性変化を主体とし、これに気道の慢性炎症性変化、気腫性変化を伴つた疾病をいい、一般に不可逆性のものであること。

なお、じん肺有所見者にみられる肺気腫及び肺性心は、一般に、これらのじん肺病変が高度に進展した結果出現するものであること。

(二) 第一項第一号の「粉じん」とは、空気中に含まれる非生物体の固体粒子をいい、ヒユームも含まれるものであること。

(三) 第一項第二号の「合併症」とは、じん肺の病変を素地として、それに外因が加わること等により高頻度に発症する疾病等のじん肺と密接な関連をもつ疾病であり、増悪期に適切な治療を加えれば症状を改善し得るものであり、一般に可逆性のものであること。

二 じん肺健康診断(第三条関係)

(一) 今回の改正により、胸部に関する臨床検査及び肺機能検査を有機的に行うようにするとともに、新たに肺結核以外の合併症に関する検査を加えたものであること。

(二) じん肺健康診断は、次の図のような流れで実施されるものであること。

(三) じん肺健康診断の具体的実施手法及び判定については、別途発行される「じん肺診査ハンドブツク」に記載された内容を基本として行うこととするので、事業者及びじん肺健康診断を行う医療機関に対し、この旨を指導されたいこと。

(四) 第一項第一号の「直接撮影による胸部全域のエツクス線写真」とは、背腹位の胸部写真をいうものであつて、側位、斜位等の多方向撮影、断層撮影等によるものは含まれないものであること。

(五) 第二項の「じん肺の所見がないと診断された者以外の者」とは、じん肺の所見があり、又はじん肺にかかつている疑いがあると診断された者をいうこと。

(六) エツクス線写真に一側の肺野の三分の一を超える大きさの大陰影があると認められる者については、肺機能検査、結核精密検査及び肺結核以外の合併症に関する検査を除外することとしたこと。

旧法の一側の肺野の二分の一を三分の一に改めたのは、一側の肺野の三分の一を超える大陰影がある者は一般に肺機能等の障害が強いことが明らかにされており、かつ、ILOの分類でも大陰影の区分の基準に三分の一が採用されていることに基づいたものであり、これらの者はじん肺管理区分が管理四としてそれのみで療養を要することとなるからであること。

三 エツクス線写真の像及びじん肺管理区分(第四条関係)

(一) 改正後のじん肺法(以下「新法」という。)に基づくエツクス線写真像の区分の判定は、別途発行される「じん肺標準エツクス線フイルム」(昭和五三年)及び「じん肺標準エツクス線写真集」(平成二三年三月)を用いて行うこととするので、じん肺健康診断を行う医療機関に対し、この旨を指導されたいこと。

(二) 第一項の「粒状影」とは、肺に生じたじん肺による結節の影像をいい、多くの場合小円形に見えるもので、その直径が約一〇ミリメートルまでのものをいうこと。けい肺、その他多くのじん肺はこの粒状影を示すものであること。

(三) 第一項の「不整形陰影」とは、旧法で異常線状影といわれていたものを含めたものであり、主に線状、細網状、線維状、網目状、峰窩状、斑状の影をいうこと。不整形陰影は石綿肺に特徴的であるが、その他のじん肺の場合にも見られることがあること。

(四) 第一項の「粒状影又は不整形陰影が……あり」とは、粒状影のみがある場合、不整形陰影のみがある場合及び粒状影と不整形陰影の両方が同時にある場合をいうこと。

(五) 第一項の「大陰影」とは、じん肺による融合陰影や塊状陰影で、その長径が一〇ミリメートルを超える陰影をいうこと。

(六) 第二項の「じん肺管理区分」は、じん肺そのものについての管理区分を定めたものであり、旧法の「健康管理の区分」とは、その趣旨を異にするものであること。また、旧法の管理一には、無所見者のほかに軽度のじん肺にかかつているが他の所見等のない者(管理一の二)も含まれていたが、今回

図

の改正では、管理一は無所見者のみとし、有所見者は、管理二以上に位置づけることとしたこと。

(七) 第二項の「じん肺の所見がない」とは、エツクス線写真の像が第一型以上に該当しないものをいう。

(八) 第二項の「大陰影の大きさ」とは、一つの大陰影がある場合にはそのもの自体の面積をいい、二以上の大陰影がある場合にはそれらの面積の和をいうものであること。

また、管理四に該当する大陰影の大きさについて改めたのは、前記二の(六)に掲げた理由によるものであること。

四 予防(第五条関係)

(一) 本条のじん肺の予防に関する努力義務について、新たに粉じんの発散の防止に関することを加えるとともに、予防及び教育に関する規定を第一章の総則に移したこと。

(二) じん肺の予防に関しては、粉じん障害防止規則(仮称)を近く制定する予定であること。

五 教育(第六条関係)

(一) 本条は、じん肺の予防及び健康管理に十分な効果をあげるためには、常時、労働者に対し、それらに関して必要な知識を得させる必要があることから設けられているものであること。したがつて、事業者は、単に雇入れ時に限らず、労働者に必要な知識を付与するよう措置する義務を負うものであるが、「必要な教育」の内容、時期、回数等は、医学及び衛生工学の進歩、技術の変革、更には事業場の実情等に応じてそれぞれ異なるべきものであり、これを一律化することは必ずしも適当ではないので、この運用に当たつては、各事業場の実情に即して最も効果的な方法により行うよう指導されたいこと。

(二) 「常時粉じん作業に従事する」とは、労働者が業務の常態として粉じん作業に引き続いて従事することをいうが、必ずしも労働日の全部について粉じん作業に従事することを要件とするものではないこと。

六 就業時健康診断(第七条関係)

(一) 就業時健康診断の目的は、業務の常態として粉じん作業に引き続いて従事することとなつた労働者について、当該作業に新たに就こうとするときに、あらかじめ、じん肺のり患の有無及びその程度を確認し、それによつて当該労働者に対する適切な健康管理を行うことにあること。

(二) 就業時健康診断の実施を除外しうる労働者について、旧法では、じん肺のり患の有無及び肺結核のり患の有無が明らかな者に限り除外するため、就業前三カ月以内は労働安全衛生法等による健康診断を受けた場合には除外することとしていたが、今回の改正で肺結核はじん肺管理区分の決定の要素ではなくなつたため、このような要件は除くこととしたこと。

(三) 「新たに常時粉じん作業に従事する」とは、雇入れの際に限定されるものではなく、当該事業場における配置替えの場合も含むものであること。

(四) 「就業の際」とは、雇入れ又は配置替えの日の前後おおむね三カ月程度までの期間をいうものであること。

七 定期健康診断(第八条関係)

(一) 定期健康診断について旧法と異なるのは、次の点であること。

イ 常時粉じん作業に従事する労働者のうち、軽度のじん肺にかかつているが他の所見等のない者(旧法の管理一の二)に対する定期健康診断の実施は、従来三年以内ごとに一回であつたが、今回の改正によりこのような者は管理二又は管理三に位置づけられたことから、一年以内ごとに一回となつたこと。

ロ 粉じん作業から作業転換した者に対する定期健康診断の実施は、従来、都道府県労働基準局長の勧告を受けて作業転換した旧法の管理三の者に限られていたが、今回の改正により、勧告の有無にかかわらず、一般的に管理二の者は三年以内ごとに一回、管理三の者は一年以内ごとに一回となつたこと。

(二)

イ 第一項第三号及び第四号の「常時粉じん作業に従事させたことのある労働者」には、じん肺法施行前(労働基準法施行前も含む。)に常時粉じん作業に従事していた者が含まれるものであること。

ロ 第一項第三号及び第四号の「常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもの」には、常時粉じん作業に従事していた労働者で、その作業が作業環境、作業方法の改善等によつて粉じん作業に該当しなくなつた後もなお引き続きその作業に常時従事しているものも含まれるものであること。

(三) 第一項第三号及び第四号の「労働省令で定める労働者」は、当面定める予定がないこと。

八 定期外健康診断(第九条関係)

(一) 第一号は、じん肺の所見がない粉じん作業従事労働者の定期健康診断が三年以内ごとに一回であることに鑑み、労働安全衛生法に基づく健康診断でじん肺にかかつている疑いがあると診断されたとき等に速やかに定期外健康診断を行うこととし、じん肺の早期発見に資することとしたものであること。

なお、労働安全衛生法に基づく健康診断を行う場合において胸部エツクス線検査を間接撮影により行うときは、できる限りミラーカメラによつて行うよう、事業者及び医療機関に対し指導されたいこと。

(二) 第二号は、合併症により一年を超えて療養のため休業した労働者は、その間定期健康診断を受けておらず、また、合併症の療養過程においてじん肺そのものが進展しているおそれがあるので、その就業の際に定期外健康診断を行い、じん肺管理区分の見直しを行うこととしたものであること。

九 離職時健康診断(第九条の二関係)

(一) 本条は、一定の期間を超えてじん肺健康診断を受けていない労働者について、離職後の健康管理を適切に行うための指標を与えるため、新たに規定したものであること。

なお、離職時健康診断を労働者の請求にかからしめたのは、じん肺の経過は通常定期健康診断により的確には握しうるものであり、医学的には必ずしも離職時健康診断を必要とするものではなく、また、放射線に被ばくする機会を極力少なくする等の点を考慮したからであること。

(二) 離職時健康診断制度を新法第六条に規定する教育の内容とし、対象労働者への周知に努めるとともに、定年退職者等相当期間前に離職の時期が明らかである者については、離職時健康診断の受診の希望の有無をあらかじめ聴取する等の措置を講ずるよう、事業者に対し指導されたいこと。

また、離職時健康診断は、対象労働者に便宜を供与するため離職の前に実施することが望ましいので、この旨事業者に対し指導されたいこと。

(三) 第一項第三号の「常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもの」については、前記七の(二)と同様であること。

(四) 第一項第三号の「労働省令で定める労働者」は、当面定める予定がないこと。

一〇 労働安全衛生法の健康診断との関係(第一〇条関係)

(一) 「じん肺健康診断を行つた場合」とは、必ずしも新法第七条から第九条の二までの規定によるじん肺健康診断を行つた場合に限定されるものでなく、新法第一六条の規定による随時申請を行うためのじん肺健康診断その他事業者が任意にじん肺健康診断を行つた場合も含むものであること。

(二) 「その限度において」とは、例えば、エツクス線検査を行つた場合はエツクス線検査、胸部に関する臨床検査を行つた場合は胸部に関する臨床医学的検査、結核精密検査を行つた場合はかくたん検査を行わなくてもよいということ等のようにじん肺健康診断の検査に相当する検査を行わなくてもよいという趣旨であること。

一一 受診義務(第一一条関係)

(一) 「正当な理由がある場合」とは、疾病、忌引等社会通念上労働者に受診を強要することができない場合をいうものであること。

(二) ただし書の「労働省令で定める書面」は、当面定める予定がないこと。

一二 事業者によるエツクス線写真等の提出(第一二条関係)

「労働省令で定める書面」は、当面定める予定がないこと。

一三 じん肺管理区分の決定手続等(第一三条関係)

(一) 第二項の「地方じん肺診査医の診断又は審査により」とは、都道府県労働基準局長の決定が地方じん肺診査医の診断又は審査の結果に拘束され、それと異なる内容の決定を行うことはできない趣旨であること。

なお、「診断」とは、労働者について直接に臨床的診察を加えて判断する場合をいい、「審査」とは、専ら提出されたエツクス線写真、じん肺健康診断の結果を証明する書面等の資料によつて判断する場合をいうこと。

(二) 第三項の都道府県労働基準局長の検査命令の対象となる労働者について、旧法の「じん肺が相当に進行している疑いがある」という要件を除くとともに、検査命令のほかに、都道府県労働基準局長の指定する物件を提出すべきことを命ずることができることとしたこと。

したがつて、じん肺の読影に不適なエツクス線写真について再撮影を命ずる等適正なじん肺管理区分の決定のため、この制度を積極的に活用されたいこと。

(三) 第三項の「指定する物件」には、例えば、胸部臨床検査の際に用いた問診票、肺機能検査におけるフローボリユーム曲線の記録等じん肺健康診断の検査に係る物件、作業環境測定結果、前回のじん肺健康診断で撮影したエツクス線写真等が含まれるものであること。

(四) 第四項の「当該検査に係る物件」とは、例えば、胸部臨床検査の際に用いた問診票、肺機能検査におけるフローボリユーム曲線の記録、結核精密検査における塗沫標本、心電計による検査における心電図等が含まれるものであること。

(五) 以上(一)から(四)によるほか、じん肺管理区分の決定等に関する細目については、別紙「じん肺管理区分の決定等に関する事務取扱要領」によること。

一四 通知(第一四条)

(一) 第二項の事業者の通知義務は、都道府県労働基準局長からじん肺管理区分の決定の通知を受けたときに限られているが、じん肺健康診断の結果じん肺の所見がないと診断された労働者に対しても、じん肺管理区分が管理一である旨の通知をするよう、事業者に対し指導されたいこと。

(二) 第三項は、第二項の通知に係る書面を作成して三年間保存することを義務づけることによつて、当該通知が確実に行われるよう、新たに規定したものであること。

一五 随時申請(第一五条関係)

(一) 第一項の「常時粉じん作業に従事する労働者であつた者」については、前記七の(二)のイに掲げる者が含まれるものであること。

(二) 第二項の「労働省令で定める書面」は、当面定める予定がないこと。

一六 エツクス線写真等の提出命令(第一六条の二関係)

(一) 本条は、新法第一二条の規定による事業者のエツクス線写真等の提出がない場合でも、適正なじん肺管理区分を決定するため必要があると認めるときに都道府県労働基準局長がエツクス線写真等の提出を命じ、その命令によつて提出されたエツクス線写真等に基づいてじん肺管理区分を決定し得ることとした趣旨のものであること。

したがつて、従来新法第一二条の規定によりエツクス線写真等の提出が行われていた事業者から提出が合理的理由がなくとだえた場合、その事業場における粉じんの発散の程度、同一事業、同一規模の他の事業場との比較等からじん肺有所見者が適正なじん肺管理区分の決定を受けていないおそれがある場合等に提出命令がなされるべきものであること。

(二) 第一項の「労働省令で定める書面」は、当面定める予定がないこと。

一七 記録の作成及び保存等(第一七条関係)

(一) 第二項の保存期間について、旧法では五年間とされていたが、じん肺の病像の的確な判定及び健康管理対策の基礎資料として少なくとも前二回分のじん肺健康診断の記録及びじん肺健康診断に係るエツクス線写真を確保する必要があるため、じん肺の所見のない者の定期健康診断の間隔(三年以内ごとに一回)を考慮して七年間に改めたものであること。

一八 事業者の責務(第二〇条の二関係)

(一) 本条は、新法第二章第三節の「健康管理のための措置」の一般的通則として、じん肺健康診断の結果に基づく事業者の責務を定めたものであること。

(二) 「保健指導」とは、個々の労働者の健康状態に応じて事業場内及び事業場外における生活全般にわたる指導をいうものであり、健康増進、疾病予防、受診勧奨等が含まれるものであること。

一九 粉じんにさらされる程度を低減させるための措置(第二〇条の三関係)

(一) 本条は、じん肺管理区分が管理二又は管理三イである労働者について相対的に粉じんばく露の低減を図ろうとする趣旨のものであり、その実施に当たつては、一律的な基準によることなく、作業環境及び当該労働者の粉じんばく露量の的確な評価、当該労働者の粉じん作業に係る作業時間のは握等を十分行い、当該労働者の作業方法、賃金、健康状態、本人の意志等に十分留意して弾力的な取扱いがなされるべきであること。

(二) 有所見者が出たことを契機として、作業環境の改善措置がより強力に行われ、又は、このような改善措置を行うことが困難である場合等であつても、防じんマスクの着用の徹底が図られ、これらの結果当該粉じん作業場に働く全労働者の粉じん暴露量が効果的に低減されていると客観的に認められるような場合も、この規定の趣旨に該当するものであること。

(三) 「就業場所の変更」とは、粉じん濃度のより低い場所へ就業場所を変更することをいうこと。

二〇 作業の転換(第二一条関係)

本条は、じん肺管理区分が管理三である労働者の粉じん作業からの作業転換を推進するため、管理三イの者に係る勧奨、管理三ロの者に係る一般的作業転換の努力義務及び管理三ロの者に係る指示の三段階に分けて規定したものであること。

なお、作業転換が労働者に及ぼす影響の重大性に鑑み、その実施に当たつては、画一的にならぬよう、あくまで個々の労働者の具体的条件に即して当該労働者と十分話合いの上行うべきものであること。

また、作業転換に当たつて転換すべき作業を選択する際には、新法で「粉じん作業」として定められている以外の作業であつても粉じんの発散している作業、亜硫酸ガス等の呼吸器に対して障害を起こすことが知られている物質又は因子(がん原性物質又はがん原性工程を含む。)に暴露される作業、心・呼吸器の強度の負荷がかかる作業等を避けることが望ましいものであること。

二一 転換手当(第二二条関係)

(一) 本条の転換手当は、作業の転換を要する労働者が粉じん作業から転換することを促進するための措置であるとともに、他面永年親しんできた職場を離れることに伴う見舞い金としての意味合いを併せて持つものであること。

(二) 「常時粉じん作業に従事しなくなつたとき」とは、作業転換した場合のみでなく、離職した場合も含むものであるが、労働者の種々の離職要因のうち転換手当の性格からその趣旨に合わないことが客観的に明らかであるもの(例えば労働契約の期間満了による離職)については、事業者の転換手当の支払義務を免除することとしたものであること。

(三) 転換手当に係る平均賃金の算定に当たつては、当該労働者が常時粉じん作業に従事しなくなつた日をもつて、労働基準法第一二条の「算定すべき事由の発生した日」とすべきものであること。

(四) ただし書の「労働省令で別段の定め」は、当面定める予定がないこと。

二二 削除

二三 療養(第二三条関係)

(一) 本条は、じん肺管理区分が管理四と決定された者及び合併症にかかつていると認められる者は、一般的に療養を要する健康状態にあることを明らかにしたものであること。

(二) 「療養」とは、必ずしも休養を伴うものだけでなく、就業しながらの治療も含まれるものであり、これらの選択は医師の判断に基づいて行われるべきものであること。

二四 粉じん対策指導委員(第三三条関係)

粉じん対策指導委員は、じん肺の予防を図るためには、各事業場の個々のケースについて具体的、技術的、かつ、専門的指導を行う必要があるところから設けられているものであること。

二五 職業紹介及び職業訓練(第三四条関係)

本条は、職業安定法第三条の均等待遇の原則の例外を定めるものではないが、その原則の枠内において職業紹介及び職業訓練につき適切な措置を講ずべき政府の心構えを規定したものであるから、都道府県労働主管部と密接な連絡をとり、適職の紹介その他適切な措置を講ずるよう配慮されたいこと。

二六 じん肺診査医の権限(第四〇条関係)

本条に規定するじん肺診査医の立入検査等の権限は、専らじん肺の診断又は審査のために必要な限度において認められたものであるから、この権限の行使については、濫用にわたることのないよう慎重を期せられたいこと。

二七 その他

その他、今回の改正により、新たに法令の周知(第三五条の二)、じん肺健康診断に関する秘密の保持(第三五条の三)及び労働者の申告(第四三条の二)に関する規定を設けるとともに、罰金の額(第四五条)の引上げを行つたこと。

 

第二 政令関係

一 じん肺健康診断に関する経過措置(第一条関係)

(一) 本条により、旧法の規定により行われたじん肺健康診断は、新法の相当規定により行われたじん肺健康診断とみなされることとなるので、新法の施行の日(以下「施行日」という。)の直前に旧法の規定によるじん肺健康診断を行つた事業者又はこれを受けた労働者(労働者であつた者を含む。)は、あらためて新法の規定によるじん肺健康診断を行わなくても又はそれを受けなくても施行日以後、旧法の規定によるじん肺健康診断の結果によつて新法第一二条の規定によるエツクス線写真等の提出又は新法第一五条第一項若しくは第一六条第一項の規定による随時申請を行うことができるものであること。

(二) 旧法第一二条の規定により行われたエツクス線写真等の提出又は旧法第一五条第一項若しくは第一六条第一項の規定により行われた申請で施行日前に旧法の規定による健康管理の区分の決定がなかつたものについては、施行日以後すべて新法の規定に基づいてじん肺管理区分を決定すべきものであること。

(三) (一)又は(二)の場合に新法のじん肺管理区分を決定するに当たり、肺機能検査の方法等が改められたことから、特にじん肺による肺機能の障害の判定については、次のように取り扱われたいこと。

イ 旧法の方法によるじん肺健康診断の結果でおおむね判定しうるものについては、それによりじん肺管理区分を決定すること。

ロ 旧法の方法によるじん肺健康診断の結果のみでは、的確な判定ができないときは、新法第一三条第三項の規定に基づき所要の追加検査を命ずること。

(四) 施行日以後最初に行うべき新法第八条の定期健康診断は、旧法第八条の規定によりじん肺健康診断を行つた日から起算して新法第八条第一項各号に掲げる期間以内に行わなければならない(政令第三条の場合を除く。)ものであること。

二 じん肺管理区分に関する経過措置(第二条関係)

(一) 本条は、旧法の規定による健康管理の区分の決定について、新法の規定により新たにじん肺管理区分の決定を受けるまでの間の経過措置を定めたものであること。

(二) 本条により、旧法の健康管理の区分が管理四と決定された者は、新法のじん肺管理区分の決定が管理四とみなされることとなるが、旧法の管理四には肺結核にかかつている者も含まれていることから、これらの者が肺結核の治ゆにより療養を要しなくなつたと診断された場合には、旧法第九条第三号の規定の趣旨に沿つて適正なじん肺管理区分の決定を受け得るようにするため、その時点でじん肺健康診断を行い、かつ、新法第一五条第一項又は第一六条第一項の規定による申請を行うよう労働者若しくは労働者であつた者又は事業者に対し指導されたいこと。

三 定期健康診断に関する経過措置(第三条関係)

(一) 本条は、旧法の健康管理の区分が管理一の二の者については政令第二条の規定によりじん肺管理区分の決定が管理二とみなされることから、定期健康診断の間隔が従来の三年以内ごとに一回から一年以内ごとに一回に変更されるので、施行日以後最初に行うべき定期健康診断の時期を明確にしたものであること。

(二) 新法によつて新たに規定された粉じん作業から作業転換した労働者についての定期健康診断については、施行日から起算してじん肺管理区分が管理二の者については三年以内、管理三(旧法第八条第三号に該当する者を除く。)の者については一年以内に行えば足りるものであるが、新法によるじん肺に関する健康管理をより適正に行うため、早期に実施することが望ましいこと。

四 作業転換の勧告に関する経過措置(第四条関係)

本条により、旧法第二一条第一項の勧告を受けて新法の施行の際なお常時粉じん作業に従事している労働者については、引き続き事業者に作業転換の努力義務が生じ、かつ、当該労働者が常時粉じん作業に従事しなくなつたときは転換手当の支払い義務が生ずるものであること。

 

第三 施行規則関係

一 合併症(第一条関係)

(一) 本条の合併症とは、じん肺管理区分が管理二又は管理三と決定された者がり患したものをいうものであること。したがつて、じん肺管理区分の決定を受けていない者又はじん肺管理区分が管理一若しくは管理四である者が本条各号に掲げる疾病にかかつても、新法上「合併症」に該当しないものであること。

(二) 第一号の「肺結核」とは、結核の病変のあるもののうち医学的に治療を要すると判断されるものをいい、肺結核の分類方法が異なるため旧法における肺結核の分類と必ずしも並行しないが、旧法でいう「病勢の進行のおそれがある不活動性の肺結核」(tb±)も不安定な病巣を有する場合には一般的にこれに含まれるものであること。

(三) 第三号の「続発性気管支炎」とは、一年のうち三カ月以上毎日のようにせきとたんがあり、かつ、たんの量が多く、たんが膿性であることをその判定の基準とするものであること。

(四) 本条に規定する「合併症」に該当するか否かの判定は、別途発行される「じん肺診査ハンドブツク」に記載された判定の基準により行うこと。

二 肺機能検査(第五条関係)

(一) 今回の改正により肺機能検査の方法が大幅に改められたことから、早急にこの実施体制を整備(検査機器の購入、講習の受講等)する必要があるので、じん肺健康診断を行う医療機関に対して十分な指導を行われたいこと。

なお、肺機能検査のための機器の購入については、労働安全衛生融資(健康診断機関等整備促進資金)の対象となるので、公益法人たる健康診断機関に対してはその活用方も併せて指導されたいこと。

また、当面、動脈血ガスを分析する検査については、健康診断機関等での実施体制が整備されていない場合は、実施体制の整つている地域の中核的な医療機関で行うよう指導されたいこと。

(二) エツクス線写真像にブラ(気腫性のう胞)が認められる者等自覚症状、他覚所見等からスパイロメトリー及びフローボリユーム曲線による検査の実施が困難と診断された者については、これらの検査を省略し、動脈血ガスを分析する検査を行つても差し支えないこと。

(三) 第一項第二号の「動脈血ガスを分析する検査」は、原則として、上腕動脈又は股動脈の動脈血を用いて酸素分圧及び炭酸ガス分圧を測定することとするが、耳朶血を用いて酸素分圧を測定する検査で著しい肺機能の障害がないことが明らかな場合は、上腕動脈又は股動脈の動脈血による検査を省略して差し支えないこと。

三 肺機能検査の免除(第八条関係)

合併症にかかつている者は、それにより療養の対象となるものであり、また、じん肺による肺機能障害を合併症によるものと区別して評価することが難しいため、肺機能検査を免除することとしたものであること。この場合においては、従前のじん肺の経過等を参考にしてエツクス線写真像の区分により慎重にじん肺管理区分の決定を行うこと。

四 就業時健康診断の免除(第九条関係)

(一) 就業時健康診断の免除に当たつてのじん肺管理区分の決定の確認は、じん肺管理区分等通知書(様式第五号)、じん肺管理区分決定通知書(様式第四号)等の書面により確実に行うこと。

(二) 第一号の「常時粉じん作業に従事すべき職業に従事したことがない労働者」は、一般にじん肺にり患していないことが明らかであることから就業時健康診断を免除することとしたが、このような者についても、就業時における身体の状態を確認し、以後の健康管理に資するため就業時健康診断を行うことは差し支えないこと。

五 じん肺健康診断の一部省略(第一〇条関係)

本条は、じん肺健康診断相互間又はじん肺健康診断と他の健康診断等との間の調整を図るため、じん肺健康診断を行う日前三カ月以内に当該じん肺健康診断の一部と同一の検査を事業者が行い、又は労働者が受けたときには、その検査に相当するじん肺健康診断の一部を省略することができることとしたものであること。

六 定期外健康診断の実施(第一一条関係)

本条は、合併症により就業しながら治療を受けているとき、又は療養のため休業をした後、就業しながら治療を続けているときは、新法第八条の定期健康診断を実施すべき対象とはなつているがじん肺法施行規則(以下「規則」という。)第八条の規定によりこれらの労働者に対しては肺機能検査が免除されていることから、その治療が終了したときに、定期外健康診断を行うべきこととしたものであること。

なお、療養のため休業をした後就業治療を続けている場合は、新法第九条第一項第二号の規定により休業を要しなくなつたときに定期外健康診断を行い、その後療養を要しなくなつたときに再び定期外健康診断を行うべきこととなるが、この間が三カ月以内であるときは、規則第一〇条の規定により、じん肺健康診断の一部を省略して行うことができるものであること。

七 事業者によるエツクス線写真等の提出手続(第一三条関係)

規則様式第三号の「じん肺健康診断の結果を証明する書面」は、過去のじん肺健康診断の結果も参考にし得るよう数回のじん肺健康診断の結果を記載できる用紙を用いることが望ましいこと。

八 都道府県労働基準局長等の命ずる検査の範囲(第一五条関係)

(一) 都道府県労働基準局長等が命ずることができる検査の範囲に、じん肺健康診断の検査のほかに、主に著しい肺機能障害の有無を判定するための検査を新たに加えたこと。

(二) 第二号の「肺気量測定検査」には、規則第五条第一項第一号に掲げるスパイロメトリーにより得られる肺気量のほかに、機能的残気量の測定等の検査があること。

(三) 第三号の「換気力学検査」には、呼吸抵抗測定、肺コンプライアンス測定等の検査があること。

(四) 第四号の「ガス交換機能検査」には、一酸化炭素拡散能力測定等の検査があること。

(五) これらの検査の方法及び判定については、別途発行される「じん肺診査ハンドブツク」に記載された内容を基本に行うよう指導されたいこと。

九 じん肺管理区分の決定の通知(第一六条関係)

都道府県労働基準局長からじん肺管理区分の決定通知を受けた事業者が労働者に対して行うべき通知は、一定の様式による書面で行わなければならないこととしたこと。

一〇 通知の対象となる労働者であつた者(第一八条関係)

本条の「労働者であつた者」には、離職の後の所在の知れない者は含まれないものであること。

一一 通知の事実を記載した書面の作成(第一九条関係)

(一) 本条の対象となるのは、在職労働者であり、離職者は含まれないこと。

(二) 本条の書面は、じん肺管理区分等通知書(様式第五号)の事業者用の控えに当該労働者の署名又は記名押印を受けたものとするよう指導されたいこと。

一二 随時申請の手続(第二〇条関係)

随時申請を行う場合の申請先について、事業場の所在地を管轄する都道府県労働基準局長を原則とするが、常時粉じん作業に従事する労働者であつた者(当該事業場で作業転換した労働者を除く。)については、その者の住所を管轄する都道府県労働基準局長としたこと。

一三 記録の作成及び保存等(第二二条関係)

(一) 第一項の「当該じん肺健康診断に関する記録」には、規則第一〇条の規定によりじん肺健康診断の一部を省略した場合におけるその省略したじん肺健康診断の一部に相当する検査の結果を証明する書面も含まれるものであること。

(二) 第二項の「当該じん肺健康診断に係るエツクス線写真」には、規則第一〇条の規定によりじん肺健康診断の一部を省略した場合におけるその省略したじん肺健康診断の一部に相当する検査に係るエツクス線写真も含まれるものであること。

(三) 第二項のただし書により、病院、診療所又は医師がエツクス線写真を保存している場合は事業者の保存義務は除外されることとなるが、病院、診療所又は医師がこれらのエツクス線写真を廃棄しようとする場合には、事業者は、これを譲り受け、じん肺健康診断の実施の日から七年に達するまでの間保存するよう指導されたいこと。

一四 転換手当の免除(第二九条関係)

(一) 第一号及び第二号は、当該事業場で粉じん作業に従事した期間がごく短期間であり、当該労働者のじん肺管理区分が管理三であることについては当該事業者の責任はないと考えられることから、転換手当の支払義務を除外したものであること。

(二) 第一号の「遅滞なく」とは、事業者が都道府県労働基準局長からじん肺管理区分の決定の通知を受けた日からおおむね一カ月程度の期間をいうこと。

(三) 第三号の「その事由がやんだ後に従前の作業に従事することが予定されている事由」には、景気変動による一時帰休、ストライキによる休業、労働組合専従のための休職等が含まれること。

なお、このような事由により休業した後、従前の作業に復帰することなく粉じん作業以外の作業に常時従事することとなつたとき、又は離職したときは、その時点で転換手当が支払われるべきものであること。

(四) 第四号の「天災地変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつたこと。」及び第五号の「労働者の責に帰すべき事由」の解釈は、労働基準法第二〇条第一項ただし書の解釈と同一であること。

(五) 第六号の「労働契約を自動的に終了させる事由」には、休職期間の満了等が含まれること。

一五 報告(第三七条関係)

事業者が毎年都道府県労働基準局長に報告すべき事項について、従来のじん肺健康診断の実施状況のほかに、じん肺管理区分別内訳等を含め、じん肺に関する健康管理の実施状況を報告することとしたこと。

なお、粉じん作業を行う事業に係る事業者で、当該年にじん肺健康診断を実施しなかつた事業者も、第一項の報告を行う必要があること。

 

第四 災害補償関係

一 業務上疾病の範囲

(一) 新法第四条第二項によるじん肺管理区分が管理四と決定された者に係るじん肺及び新法第二条第一項第二号のじん肺の合併症(以下「合併症」という。)は、労働基準法施行規則(昭和二二年厚生省令第二三号)別表第一の二第五号(昭和五三年四月一日前においては同規則第三五条第七号)に掲げる業務上の疾病として取り扱うこと。

(二) じん肺管理区分が管理四と決定された者及び合併症にかかつていると認められる者が、じん肺若しくは合併症に係る療養中にじん肺若しくは合併症が原因となつて合併症に該当する疾病を併発し、若しくは付加した場合又は当該合併症に該当する疾病が原因となつて死亡した場合には、前記(一)により取り扱うこととするが、じん肺又は合併症が原因となつて、合併症に該当しない他の疾病を併発した場合であつても当該疾病がじん肺又は合併症との相当因果関係が認められるものについては、従前の通り、業務上の疾病として取り扱うこと。

二 じん肺及び合併症の認定の手続き

(一) 新法第一二条若しくは第一六条の二に基づく提出又は新法第一五条第一項若しくは第一六条第一項に基づく申請の結果、じん肺管理区分が管理四と決定された者又はじん肺管理区分が管理二若しくは管理三と決定された者で合併症にかかつていると認められたものから労災保険給付の請求があつた場合は、じん肺管理区分決定通知書(様式第四号)又はその写し、粉じん職歴、管理区分、決定の根拠となつたじん肺、健康診断結果等を確認のうえ、その健康診断を行つた日(当該決定の根拠となつた資料がエツクス線写真であるときはその撮影の日、肺機能検査の結果であるときはその検査実施日若しくは両方で確認できるものについてはそのうちいずれか前の日又は結核精密検査若しくは肺結核以外の合併症に関する検査の結果であるときはその検査実施日)に発病したものとみなして所定の事務処理を行うこと。

(二) 既にじん肺管理区分が管理二又は管理三と決定された者から合併症に係る労災保険給付の請求があつた場合は当該じん肺管理区分の決定に係るじん肺管理区分決定通知書(様式第四号)又はその写し、粉じん職歴、その最終の管理区分決定の根拠となつたじん肺健康診断結果等を確認のうえ、合併症に係る審査を行い、合併症にかかつていると認められる場合は、当該合併症の症状確認(医師による診断確認)の日に発病したものとして所定の事務処理を行うこと。

(三) じん肺管理区分が管理四以外の者からじん肺に係る労災保険給付の請求があつた場合又はじん肺管理区分が管理一の者若しくはじん肺管理区分の決定を受けていない者から合併症に係る労災保険給付の請求があつた場合は、新法第一五条第一項によるじん肺管理区分決定の申請を行うべきことを指導し、当該申請によるじん肺管理区分の決定をまつて、前記(一)又は(二)による所定の事務処理を行うこと。なお、この場合において、当該労働者が死亡し、又は重篤な疾病にかかつている等随時申請を行うことが不可能又は著しく困難な事情があると認められるときは、収集可能な範囲でじん肺の進行程度の判断に必要な資料等の収集を図り、地方じん肺診査医の意見に基づき、じん肺管理区分に相当するじん肺の進行度の判断を行つて差し支えない。

三 経過措置

(一) 施行日前に旧法第一二条第一項の規定により行つた健康診断の結果を証明する書面等の提出及び旧法第一五条第一項又は第一六条第一項の規定により行つた申請であつて旧法第一三条第二項(旧法第一五条第三項及び第一六条第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による決定がなかつたものは、施行日以後新法によるじん肺管理区分が決定されることになるが、これによりじん肺管理区分が管理四と決定された者から労災保険給付の請求があつた場合は、当該じん肺管理区分決定の根拠となつたじん肺健康診断を行つた日(当該決定の根拠となつた資料がエツクス線写真であるときはその撮影の日、肺機能検査の結果であるときはその検査実施日若しくは両方で確認できるものについてはそのうちいずれか前の日又は結核精密検査若しくは肺結核以外の合併症に関する検査の結果であるときはその検査実施日)から施行日の前日までの間は、旧法による健康管理の区分が管理四であつた者とみなし、施行日以後は新法によるじん肺管理区分が管理四である者として、所定の事務処理を行うこと。

(二) 旧法第四条第二項の規定による健康管理の区分が管理一(じん肺にかかつていない者を除く。)、管理二又は管理三であつた者が施行日の前日までに活動性の肺結核にかかつた場合であつて旧法第一二条第二項、第一五条第一項若しくは第一六条第一項の規定による手続き又はこれらによる健康管理の区分の変更の決定がなかつた者から施行日前の期間に係る労災保険給付の請求があつた場合は、当該肺結核の診断があつた日から施行日の前日までの間は、前記(一)と同様に旧法による健康管理の区分が管理四であつた者とみなすこととし、施行日以後の期間に係るものは新法第二条第一項第二号の規定による合併症として取り扱うこと。

(三) 施行日前に旧法第一三条第二項の規定により行つた健康管理の区分の決定は、新法第一三条第二項の規定によるじん肺管理区分の決定とみなされるので、施行日の前日において旧法による健康管理の区分が管理四である者は、新法によるじん肺管理区分の管理四として、引き続き所定の労災保険給付を行うこと。

なお、活動性の肺結核があると認められたことにより、施行日の前日において旧法による健康管理の区分が管理四である者が、施行日以後医師により当該肺結核についての療養を要しなくなつたと診断され、かつ、肺結核以外の合併症がないと認められる場合は、労働者災害補償保険法の規定による療養補償給付及び休業補償給付の支給要件を満たされないこととなる。この場合、健康管理上の取扱いとしては、政令第二条の規定によつてみなされたじん肺管理区分の管理四の決定が当然には変更されないので、当該労働者若しくは労働者であつた者又は事業者に対して可能な限り新法第一五条第一項又は第一六条第一項の規定による申請を行うよう指導することが望ましい。なお、これに該当し、随時申請を行うために受けたじん肺健康診断は、治療のために必要な検査とみなして差し支えないこと。

 

(別添)

じん肺管理区分の決定等に関する事務取扱要領

一 受理

(一) じん肺管理区分決定のために提出されたエツクス線写真、じん肺健康診断結果証明書(規則様式第三号)等の資料を点検して次に掲げる措置を講じた上で受理すること。

イ 各検査項目が新法に定めるところにより実施されているかどうかを点検し、検査項目が不足しているときは直ちに追加検査を指示すること。

ロ 添付物件が満たされているかどうかを確認すること。

ハ 各資料に前記イ及びロ以外の記載もれ等があるときには訂正又は追加記入等をさせること。

二 特に、じん肺健康診断結果証明書の「じん肺の経過」及び「粉じん作業職歴」の欄が正確に記入されているかどうかを点検すること。

(二) 新法第一五条第一項に基づく申請については、じん肺管理区分決定申請書(規則様式第六号)中の事業者(常時粉じん作業に従事する労働者であつた者の場合は、粉じん作業に従事した最終事業場の事業者)の粉じん作業従事証明の有無を確認すること。当該証明がない場合は、次に掲げる措置を講ずること。

イ 申請を一応受理して差し支えないが、申請者に対し、事業者の証明がなければ新法に基づくじん肺管理区分の決定ができない旨教示し、事業者証明を得てくるよう求めること。

ロ 事業場の廃止、事業者の死亡、行方不明、その他やむを得ない理由により事業者の証明を得ることができない場合は、当時の上司又は同僚であつた者の証明等その者が常時粉じん作業に従事していた事実について客観的に確認しうる資料によつて事業者証明にかえて差し支えないこと。

ハ 申請者が、事業者証明を得ることができず、かつ、ロに記載した資料も得ることが困難であると認められる場合は、行政庁において当該申請者の粉じん作業従事の有無を調査し、これを確認の上、じん肺管理区の決定を行うこと。

この場合は、当該申請者の最終粉じん事業場が他の都道府県労働基準局の管内にある場合には、当該都道府県労働基準局長に粉じん作業従事の有無に関する調査を依頼すること。

ニ イからハに掲げる措置を講じても申請者が粉じん作業に従事したことを明らかにし得ない場合は、次の(三)に掲げる処理に準じた措置を行うこと。

(三) 労働者又は労働者であつた者以外の一人親方等から新法第一五条第一項の申請がなされた場合は、法の対象ではないので適法な申請としては受理できない旨説明すること。

なお、このような者についても事情により地方じん肺診査医の診査を行い、その結果を通知して差し支えないが、この場合じん肺管理区分決定通知書(規則様式第四号)ではなく、別途の用紙を用いて行うこと。

(四) 常時粉じん作業に従事する労働者であつた者(当該事業場で作業転換した者を除く。)の新法第一五条第一項による申請は、その者の住所を管轄する都道府県労働基準局長に対して行われるべきこととなつているので、誤つて他の都道府県労働基準局長へ申請がなされたときは、その者の住所を管轄する都道府県労働基準局長へ申請するよう指導すること。

(五) 新法第一二条、第一五条第一項、第一六条第一項及び第一六条の二第一項による提出又は申請が誤まつて労働基準監督署へなされたときは、都道府県労働基準局長へ提出し、又は申請するよう指導されたいこと。

(六) 前記により受理したときは、じん肺診査経過処理簿(別紙様式一)に所要事項を記入し、提出されたエツクス線写真その他の物件を整理しておくこと。

二 診査

(一) 地方じん肺診査医が二名以上いる都道府県労働基準局にあつては、複数の診査医による診査を行うことが望ましいこと。

(二) 診査に際しては、じん肺診査報告書(別紙様式二)により対象者ごとの診査結果を記録し、診査終了後地方じん肺診査医の署名又は記名押印を受けること。

(三) 提出された資料だけでは、じん肺管理区分の決定ができないため再・追加検査又は物件の提出を必要とする場合は、再・追加検査実施・物件提出命令書(別紙様式三)を関係者に交付すること。

なお、この場合、既に提出されている資料は保管しておくこととするが、督促にもかかわらず、前記命令書に示した提出期限の日から六カ月を経過しても指定した資料の提出がないときは、既提出資料を提出者に返還し、決定不能として取り扱つて差し支えないこと。

三 じん肺管理区分の決定

(一) じん肺管理区分は、粉じん作業従事労働者の健康管理を行うための基礎となるものであるから、一により受理したときはできる限り速やかに決定を行うこと。

(二) じん肺管理区分の決定に当たつて疑義がある場合の本省に対する照会は、別紙様式四により必要な関係資料を添付して行うこと。

(三) じん肺管理区分決定通知書を次により作成すること。

イ 様式中の該当する事項を○印で囲むこと。

ロ 診査の結果、合併症にかかつているとされた者については、合併症の欄にかかつている疾病名を記入し、かつ、療養の要否の欄の「要」を○印で囲むこと。

(四) じん肺健康管理台帳に所要事項を記入すること。なお、その様式については追つて指示するので、それまでの間は従前のものを使用すること。

(五) じん肺管理区分が管理四と決定された者については、そのじん肺健康診断結果証明書の写しを作成し、その写しの余白に左記事項を記入した上、都道府県労働基準局に保管しておくこと。

① 地方じん肺診査医の氏名

② エツクス線写真像の区分

③ じん肺管理区分決定通知年月日

④ 症状確認日

なお、症状確認日は、当該決定の根拠となつた資料が、エツクス線写真であるときはその撮影の日、肺機能検査の結果であるときはその検査実施日、両方で確認できるものについてはそのうちいずれか前の日を記入すること。

〔症状確認日とは、じん肺健康診断の結果提出された資料で確認し得る最初の日のことであり、必ずしも発症日とは同一のものではないこと。〕

(六) じん肺管理区分の決定は、労使の権利、義務等に与える影響が大きく、ともすれば労使間の紛争のもととなる場合もあるので、各地方じん肺診査医の診査結果について部外への直接の意見表明、資料発表等については、十分慎重を期すこと。

四 作業転換

じん肺管理区分が管理三である労働者の作業転換を推進するため、次の措置を講ずるものとすること。

ただし、零細企業の鋳物業、採石業等作業転換すべき非粉じん作業の職場が当該事業場にないことが明らかな場合であつて他に適当な転職先がないとき、又は当該労働者が高年齢、定年直前等作業転換の効果が期待できない場合については、これらの措置を行わないこと。

(一) 作業転換勧奨書の交付

現に常時粉じん作業に従事している労働者で、じん肺管理区分が管理三イと決定されたもののうち、じん肺による肺機能の障害があると認められる者(F(十)の者。以下同じ。)については、当該労働者を使用する事業者に対し、じん肺管理区分決定通知書の交付と併わせ、作業転換勧奨書(別紙様式五)を交付すること。

また、作業転換勧奨書の交付に基づき作業転換した場合に事業者が都道府県労働基準局長に提出すべき書面は、作業転換実施通知書(別紙様式六)によるよう指導すること。

(二) 作業転換促進書(乙)の交付

現に常時粉じん作業に従事している労働者でじん肺管理区分が管理三ロと決定されたもののうち、(三)の作業転換促進書(甲)の交付の対象とならない者については、当該労働者を使用する事業者に対し、じん肺管理区分決定通知書の交付と併わせ、作業転換促進書(乙)(別紙様式七(一))を交付すること。

また、作業転換促進書(乙)の交付に基づき作業転換した場合に事業者が都道府県労働基準局長に提出すべき書面は、作業転換実施通知書(別紙様式七(二))によるよう指導すること。

(三) 作業転換促進書(甲)の交付

現に常時粉じん作業に従事している労働者でじん肺管理区分が管理三ロと決定されたもののうち、左記の医学的要件に該当するものについて、地方じん肺診査医により早急に作業転換を行う必要があると判定されたものについて当該労働者を使用する事業者に対し、じん肺管理区分決定通知書の交付と併わせ、作業転換促進書(甲)(別紙様式八)を交付すること。

(作業転換促進書(甲)を交付すべき一般的医学要件)

イ エツクス線写真の像が第三型又は第四型(A)(大陰影の大きさが一センチメートルを超え、五センチメートルを超えないものをいう。)でじん肺による相当程度の肺機能の障害があると認められるもの

ロ エツクス線写真の像が第四型(B)(大陰影の大きさが五センチメートルを超え、一側の肺野の三分の一の大きさを超えないものをいう。)であると認められるもの

(四) 作業転換指示書の交付

(三)の作業転換促進書(甲)を交付した事業者から作業転換の実施について関係労使が合意に達した旨の連絡を受けたときは、当該事業者に対し、作業転換指示書(別紙様式九)を交付すること。

(五) 作業転換記録簿

前記作業転換の事務処理に関し、作業転換記録簿(別紙様式一〇)を作成し、保存しておくこと。

五 通知

(一) じん肺管理区分の決定を行つたときは、速やかに、提出又は申請を行つた提出者又は申請者にじん肺管理区分決定通知書を交付するとともに、提出されたエツクス線写真等の資料を返還すること。

(二) じん肺管理区分決定通知書の写しを所轄労働基準監督署長あて(新法第一五条第一項による申請で申請者の最終粉じん事業場が他の都道府県労働基準局の管内にある場合には、当該都道府県労働基準局長あて)送付すること。

(三) じん肺管理区分決定通知書には、所要事項以外のものを記入しないこと。なお、管理四と決定された者及び合併症にかかつていると認められた者については、(二)により所轄労働基準監督署長に送付する写しに、その症状確認日等を記入することとするが、当該提出者又は申請者あて送付する通知書には記入しないこと。

六 不服申立て

(一) じん肺管理区分の決定に対する不服申立ての審査請求における審査請求書の様式は、別紙様式一一によるよう指導すること。

(二) 審査請求は、審査庁(労働大臣)に対して直接に、又は処分庁(都道府県労働基準局長)を経由して行うこととされている(行政不服審査法第三条第二項及び第一七条第一項)ので、誤つて労働基準監督署長等に対し審査請求が行われた場合には、労働大臣に対して直接に、又は都道府県労働基準局長を経由して行うよう指導すること。

(三) 都道府県労働基準局長を経由して審査請求が行われた場合は、当該審査請求が適法になされているか否かを確認し、手続に欠けたものがあるときはこれを補正させた後、速やかに当該審査請求書の正本及び新法第一八条第二項の物件を本省へ送付すること。この場合、次に掲げる書面又は物件を添付すること。

イ 審査請求に係るじん肺管理区分決定通知書の写し

ロ その他参考になると思われる書面及び物件

 

様式1


様式2

(続き)


様式3


様式4


様式5


様式6


様式7(1)


様式7(2)


様式8(1)


様式8(2)


様式9(1)


様式9(2)


様式10


様式11