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労働安全衛生法及びじん肺法の一部を改正する法律の施行について(労働安全衛生法関係)
昭和53年2月10日発基第9号
(都道府県労働基準局長あて労働事務次官通達)
労働安定衛生法及びじん肺法の一部を改正する法律は、昭和五二年七月一日、法律第七六号として公布され、そのうち労働安全衛生法の改正規定は昭和五三年一月一日(第四五条第二項、第五七条の二から第五七条の四まで及び第九三条第三項に係る部分については、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において、それぞれ政令で定める日)から施行されることとなつた。
ついては、下記の事項について十分留意の上、その運用に万全を期されるよう、命により通達する。
なお、じん肺法の改正規定は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されることとなつており、その施行については、おつて通達する。
記
第一 労働安全衛生法の改正の経緯及び趣旨
労働安全衛生法の制定以来五年余が経過したが、その間の労働災害の発生状況をみると、全般的には毎年着実に減少の一途をたどつてはいるものの、今なお、相当数の労働災害の発生がみられている。
特に職業性疾病については、最近の新しい原材料の採用等により、職業がん等新しい型の疾病の発生がみられ、最近においては、六価クロム、塩化ビニル等の化学物質による重篤な職業性疾病が大きな社会問題となつたところである。こうした化学物質等による職業がん等の重篤な職業性疾病の防止対策が、安全衛生行政の重要な課題となつている。
このような情勢を踏まえ、労働省では、中央労働基準審議会の労働災害防止部会における職業性疾病対策を重点とした労働安全衛生法の改正についての報告書を受けて、同審議会に「労働安全衛生法の一部を改正する法律案要綱」を諮問し、その答申を受けて改正を行つたものである。
第二 労働安全衛生法の改正の内容
一 検定制度の整備(第四四条から第四四条の三まで関係)検定は、従来から危険又は有害な作業を必要とする等の機械等について行われていたが、その対象となる機械等の中には、溶接工作等の適否が当該機械等の安全性に重大な影響を及ぼすため、その工作等の適否を個々に調べなければならないものと、一定数量生産される機械等について、その型式ごとに現品とその製造、検査設備等を調べることにより、安全性が確認できるものとがある。
後者の機械等については、従来から型式による検定方法を採用していたが、最近これらの機械等が増えている現状にかんがみ、検定を個別検定と型式検定とに明確に区分して、その整備を図つたこと。
二 定期自主検査制度の充実(第四五条関係)
従来、定期自主検査については、一定の機械等について、その検査項目及び検査の頻度について規制を行つてきたが、特に中小企業においては定期自主検査を行う人材を得にくい等の事情もあり、必ずしも十分な自主検査が行われていない面があつた。
そこで、今回、自主検査の対象機械等について、自主検査のための指針を定める(第三項関係)ほか、特に検査が技術的に難しく、また一度事故が発生すると重篤な災害をもたらすおそれのある機械等については、一定の資格を有する労働者による検査を義務づけて、的確な検査を行わせるとともに、人材を得難い中小企業等の便に供するため、検査業者の制度を設けたこと(第二項関係)。
三 有害性の表示(第五七条関係)
近時、有害物を、容器又は包装を用いないで譲渡し、又は提供することが多く行われていることから、こうした場合にも有害物の譲渡又は提供を受ける相手方が、その名称、有害性等を知つて適切な措置を講じるようにするため、容器又は包装を用いないで有害物を譲渡し、又は提供する者に対し、その名称、有害性等を記載した文書を相手方に交付することを義務づけたこと。
四 化学物質の有害性の調査(第五七条の二から第五七条の四まで関係)
化学物質による労働省の健康障害の防止に万全を期するためには、それが職場に導入される前にその有害性を知り、その有害性に対応した措置を講ずることが必要である。そこで、今回の改正では、化学物質の有害性の調査を積極的に進めるため、次の制度を設けることとしたこと。
(一) 事業者は、新規の化学物質を製造し、又は輸入しようとする場合(一般消費者の用に供されるものとして輸入される場合その他一定の場合を除く。)、一定の有害性についての調査を行い、その結果を労働大臣に届け出なければならないこととし、労働大臣は、届出をした事業者に対し、労働者の健康障害を防止するために必要があると認めるときは、一定の措置を講ずべきことを勧告することができることとしたこと。
(二) 労働大臣は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある化学物質については、当該化学物質を製造し、輸入し、又は使用している等の事業者に対し特別の有害性の調査の実施及びその結果の報告を指示することができることとしたこと。
以上の制度により、新規の化学物質が職場に導入される前にその有害性がチエツクされ、事業者及び国がその有害性のデータをは握することによつて、当該化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じることができるようになると同時に、現に製造し、使用されている化学物質であつても、特に重篤な障害を生じさせるおそれのあるものの有害性について、詳細なデータを得ることによつて、同様に必要な対策を講じることができるようにしたこと。
五 健康管理のための措置(第七章関係)
作業環境測定の結果、有害物の濃度が高いような場合には、必要に応じて施設の設置、健康診断の実施等の措置を講ずべきこととするとともに、健康診断の結果、有所見者が多く見られるような場合には、その作業場における作業環境を見直し、必要に応じて作業環境測定の実施、施設の設置等労働者の健康障害を防止するための措置を講ずべきこととしたこと。
健康管理手帳については、対象となる業務によつては、離職の際には交付要件を満たさなかつた者が、離職の後に交付要件を満たすような場合があるので、こうした者の健康管理を十分に行うため、離職の後に交付要件を満たした者に対しても、交付することとしたこと。
六 免許試験(第七五条の二から第七五条の一二まで関係)
都道府県労働基準局長の行う免許試験を、全国で一を限り労働大臣が指定する指定試験機関に行わせることができることとしたこと。
七 疫学的調査等(第一〇八条の二関係)
疫学的調査等は、がん原性等の疑いがある化学物質等又は労働者の従事する作業と労働者の疾病との相関関係をは握するために行う調査である。
この調査は、従来は法的な根拠をもたず、事業者の自主的な協力に依存して実施してきたが、その重要性にかんがみ、特に規定を設け、国として調査を行う姿勢を明らかにしたものであること。
この調査の結果は、労働者の疾病の原因となることが明らかになつた化学物質等又は作業に関連する有害な要因を除去し、又は減少させる技術的な対策を講ずるための基礎資料となるとともに、適正かつ迅速な労災補償を行うための基礎資料としても利用されるものであること。
八 その他
(一) 統括安全衛生責任者の業務が適切に行われるようにするため、総括安全衛生管理者の場合と同様に、その業務執行について都道府県労働基準局長が勧告できることとしたこと。(第一五条関係)
(二) 労働衛生指導医の職務を適正に行わせるため、都道府県労働基準局長が必要と認めるときは、労働衛生指導医をして、事業場への立入り等を行わせることができるようにしたこと。(第九六条関係)
(三) 罰金額の引上げを行つたこと。(第一一六条から第一二一条まで関係)