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通達:高気圧障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

 

高気圧障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

昭和52年4月25日基発第246号

(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

 

高気圧障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(昭和五二年労働省令第二号)は、昭和五二年三月一九日公布され、同年四月一日(一部の規定は同年七月一日、一〇月一日又は、昭和五三年一月一日)から施行された。

今回の改正は、潜函工事等における最近の労働災害発生状況にかんがみ、次の事項を要点として行われたものである。

① 高気圧業務に係る危険及び健康障害を防止するため、一部の規定を除き、規制の対象を、高圧室内業務にあっては大気圧を超える気圧下における作業に、潜水業務にあっては水面下における作業にまで拡大したこと。

② 空気圧縮機による空気圧縮過程から作業室等の排気管からの排気過程に至るまでの圧気工法全体をシステムとしては握し、これに係る設備及び作業方法について規制を整備することにより高圧室内作業者について、減圧症の防止に加えて危険及び一酸化炭素中毒その他の健康障害を防止することとしたこと。

これに伴い、従来労働安全衛生規則に規定されていた圧気工法による加圧下の作業場所における労働者の危険防止のための規定を、高気圧障害防止規則(以下「旧高圧則」という。)に移し、その題名を高気圧作業安全衛生規則と改めたこと。

ついては、今回の改正の趣旨を十分に理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、下記事項に留意して、その運用に遺憾のないようにされたい。

なお、旧高圧則に関する通達で、改正後の高気圧作業安全衛生規則における規定に相当するものについての事項は、当該規定に関して出されたものとして取り扱われたい。

 

Ⅰ 高気圧作業安全衛生規則関係

一 第六条関係

(一) 第一項は、作業室及び気閘室の換気を、常時適切に行うことができることとする趣旨である。

(二) 第一項の「専用の排気管」とは、送気管と独立した排気管を設けることを目的としたものであり、下図のような三方コックを用いた配管方法による兼用の排気管を禁止する趣旨であること。

図

二 第七条の二関係

(一) 本条は、過熱された空気が空気清浄装置に送られることを防止するため、次のことを知り得る手段として自動警報装置の設置を義務づけたものであること。

① 空気圧縮機の空気吐出口の位置における圧縮空気温度の異常

② 冷却装置の出口における圧縮空気温度の異常

(二) 「空気圧縮機から吐出される空気」とは、空気圧縮機により加圧され、送気管側へ吐出される空気をいうものであること。

(三) 「空気圧縮機に附属する冷却装置」とは、空気圧縮機の本体中に組み込まれた冷却装置(インタークーラー)ではなく、空気圧縮機から吐出された空気を更に冷却するために空気圧縮機とは別に設けられた冷却装置(アフタークーラー)をいうものであること。

(四) 「冷却装置を通過した空気」とは、アフタークーラーにより冷却されてから空気清浄装置へ送られるまでの空気をいうこと。

(五) 「空気の温度が異常に上昇した場合」とは、空気圧縮機及び冷却装置の設計空気温度又は、当該機器の平常使用時の空気温度を著しく上廻った場合をいうものであること。

(六) 「その他の関係者」とは、空気圧縮機の周辺で作業を行っている者、現場事務所内の者等異常を知ることにより速やかに適切な処置を講じ得る者を指定する趣旨であること。

(七) 「自動警報装置」とは、空気圧縮機から吐出された空気又は冷却装置を通過した空気の温度があらかじめ警報を発するようにセットされた温度を上廻ったときにブザー等により自動的に警報を発する装置をいうこと。

この装置の構成としては、一般的には温度の変化に対して感応する感応部分、感応した状況を機械的又は電気的に検出する検出部分、及び検出に基づき警報を発する警報部分から成っていること。

なお、感応部分の種類によっては、感応する温度の範囲が限られているものがあるから適正なものを使用するよう指導すること。

また、温度変化を随時は握することが望ましいので、温度計の取付けについて指導すること。

三 第七条の三関係

「気閘室の内部を観察することができる窓を設ける等」の等には、観察者が下図のように、近接することにより内部の状況を見ることができる設備や、テレビ装置を設けることが含まれること。

四 第七条の四関係

(一) 本条は、潜函内等における火災等により危険が生じた場合に、高圧室内作業者の救出等を行うために必要な用具の備え付けを義務付けたものであること。

(二) 呼吸用保護具には、空気呼吸器、酸素呼吸器、一酸化炭素用防毒マスク等があること。

(三) 「その他の用具」には、安全帯、懐中電燈等があること。

五 第一〇条関係

本条改正の趣旨は、事業者に義務付けることで十分な項目は削除して高圧室内作業主任者の職務内容を整理するとともに、作業主任者の本来の職務である作業指揮並びに炭酸ガス及び有害ガスの濃度を測定するための測定器具の点検を加えたものであること。

六 第一一条関係

図

第二項表中の「送気設備」とは、空気圧縮機(空気吸入器、インタークーラー、電気設備その他附属するものを含む。)、冷却装置(アフタークーラー)、空気清浄装置、空気槽等を総称しているものであること。

七 第一六条関係

本条は、作業室における炭酸ガスの分圧を、従来の0.01kg/cm2以下から、0.005kg/cm2以下に規制を強化するとともに、従来無規制であった気閘室についても、作業室と同一の規制を行うこととしたものであること。

八 第二〇条の二関係

本条は、気閘室における減圧状況を自動的に記録する装置の設置を義務付けたものであること。

これは、適正でない減圧を繰り返して行うことに起因して、関節部の骨が変形する等の障害が発生するおそれがあるので、その記録に基づき、適正な減圧管理を行うことによりこれを未然に防ぐとともに、減圧症が発生した場合に、適切な治療を加えることができるようにするためであること。

なお、当該記録装置は、気閘室内部の減圧状況が記録できるものであれば、必ずしも気閘室内部に備える必要は無いこと。

九 第二一条関係

(一) 本条の改正の趣旨は、送気系統等に異常があった場合、高圧室内作業者の危険及び健康障害を防止するため直ちに必要な措置が講じられるよう高圧室内作業者と空気圧縮機の運転を行う者の中間に連絡員を配置することを事業者に義務づけたものであること。

(二) 第一項の「連絡員」は、ロックテンダーが配置されている場合には当該ロックテンダーが兼ねることで差し支えないものであること。

(三) 第二項の「通話装置」とは、電話、インターホン等会話により意思を伝達することができる装置をいい、電鈴等は含まれないこと。

一〇 第二二条関係

(一) 本条は、点検を行うべき設備として通話装置、空気圧縮機に附属する冷却装置、避難用具及び自動警報装置を新たに加えたものであり、第一項第一〇号に掲げる電路については、労働安全衛生規則第三二三条第二項からここに移したものであること。

(二) 点検は、次の事項について行うこと。

① 第一号関係

通話装置については、通話機能及び電線路の接続部の異常の有無

② 第四号関係

冷却水の通水系統における断水又は漏水の有無、冷却水循環用ポンプの作動の異常の有無及び冷却水の冷却用設備の機能の異常の有無

③ 第五号関係

イ 呼吸用保護具については、例えば、

(イ) 「空気呼吸器及び酸素呼吸器」については、面体の異常の有無、バルブ又はコックの洩れ又は損傷並びに警報器及び圧力計の異常の有無

(ロ) 「一酸化炭素用防毒マスク」については、面体、排気弁及び吸気弁並びに連結管の異常の有無並びに吸収かんの寿命

ロ 「繊維ロープ」については、異常の有無

④ 第六号関係

点検のために設定した温度に対して、感応する感応部分、検出部分及び警報部分の作動の異常の有無並びに装置全体としての機能の異常の有無

一一 第二二条の二関係

(一) 「送気設備を初めて使用するとき」とは、送気設備を設置し、これを使用して送気を開始するときをいうものであること。

また、既に設置されている送気設備を他の場所に改めて設置し、これを使用するときも該当するものであること。

(二) 「送気設備を分解して改造若しくは、修理を行ったとき」とは、送気設備としての機能に影響を与える部分を改造若しくは、修理した場合をいうものであること。

(三) 「当該送気設備の機能を点検し」とは、改造若しくは、修理を行った部分の点検のみでなく送気設備全体が機能し得るかどうかを点検することをいうこと。

一二 第二三条関係

(一) 第二項の「その他の事項について」とは、潜函工事又は潜鐘工事にあっては、シャフトの変形、接続部のボルト及びナットの緩み等を、圧気シールド工事にあっては、セグメントの変形、接続部の緩み等をいうものであること。

(二) 第二項の「特に指名した者」とは、有害ガス等の測定、労働者の救出等のために空気呼吸器等を着用する等により当該場所に立ち入る者として事業者が指名した者をいうものであること。

一三 第二五条の二関係

(一) 本条は、従前の労働安全衛生規則第三二三条及び第三二四条の規定に必要な整備を加え、ここに移したものであること。

(二) 本条は、加圧下における火気又はアークの使用を原則として禁止するものであるが、圧気シールド工法においては、支保工の補強等のため溶接、溶断等の作業を行う必要がある場合があるので、ゲージ圧力1kg/cm2未満の場合であって、作業の性質上やむを得ないときに限り、火気又はアークの使用を認めたものであること。火気又はアークを使用する場合においては、可燃物をかく離し、不燃性の衣服を着用し、消火器を設置する等労働者の火傷等による危険を防止するための必要な措置を講ずるよう指導すること。

(三) 第一項前段の趣旨は、圧力の高い空気中においては、空気中の酸素の分圧の増加により、可燃物の発火点が低下すること、燃焼速度が増大すること、燃焼火炎が長くなり、火炎が伝ぱんしやすくなること等についてあらかじめ労働者に周知を行うべきことを定めたものであること。

(四) 第一項の「火傷その他の危険」とは衣服等の可燃物が火気、火花等に接触して急激に燃焼することにより生ずる火傷の危険等をいうものであること。

(五) 第一項第二号の「周囲に火花又はアークを飛散しないもの」とは、金属箱開閉器その他開閉の際に火花又はアークを外部に飛散しないよう密閉した構造の開閉器をいい、開放型のナイフスイッチ、カバー付ナイフスイッチ及び開放型の接触器は含まれないものであること。

(六) 第一項第三号の「高温となって可燃物の点火源となるおそれのないもの」とは、温水又は、温風による暖房設備をいい、電熱その他直火を用いる暖房設備は含まれないものであること。

(七) 第二項の「その他の火気又はアークを使用する作業」とは、鋼材を加熱して加工する等のため、火気又はアークを使用する作業をいうものであること。

(八) 「作業の性質上やむを得ない場合」とは、セグメント等がその設置後において地山の荷重等により変形して労働災害の原因となるおそれがある場合に、その補強のため溶接作業を行う必要がある場合等を指すものであること。

一四 第二八条関係

従来、潜水作業者への送気量は、使用する潜水器の種類及び業務の程度に応じて規制されていたが、その後における調査研究の進展にかんがみ、専門家の意見をふまえて規制の合理化を図り、一律に毎分六〇リットル以上としたものであること。

一五 第三四条関係

点検は、次の事項について行うこと。

① 「流量計」については、本体の損傷の状況、目盛の汚染の状況、フィルターの目詰り

② 「ボンベ」については、本体及びバルブの損傷の有無

一六 第三七条関係

本条ただし書は、潜水業務において、電話等の通話装置を設けた場合には、潜水作業者が、連絡員から、潜水時間、潜水深度等について、常時連絡を受けることが可能であるため、信号索、水中時計及び水深計を携行させなくともよいこととした趣旨であること。

一七 第五三条関係

本条の改正の趣旨は、従来どおり女子に水深一〇m未満の場所における潜水業務に従事することを認めるため女子が免許を取得することができることとしたこと。

今回の改正によっても、女子については、女子年少者労働基準規則第九条及び昭和四二年九月八日付け安発第二三号通達により、従来どおり水深一〇m以上の場所における潜水業務は、禁止されることとなるので女子に対して免許証を交付する場合には、この点について十分指導を行うこと。

なお、この点については、婦人少年局(婦人労働課)と協議済みであること。

Ⅱ 労働安全衛生規則関係

一 第五三二条の二関係

「土砂に埋没すること等」とは、飼料、肥料、鉱さい等に埋没すること、機械設備等に巻き込まれること等を含むものであること。