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通達:じん肺法の施行について

 

じん肺法の施行について

昭和35年4月8日発基第47号

(都道府県労働基準局長あて労働事務次官通達)

 

「じん肺法」(昭和三五年法律第三〇号)は、昭和三五年三月三一日公布され、四月一日から施行された。これに伴い、「じん肺法施行規則」(昭和三五年労働省令第六号)が制定されて、同じく四月一日から施行され、また、「労働省組織令の一部を改正する政令」等の関係命令も近く制定、施行される予定である。

この度制定された「じん肺法」は、けい肺、石綿肺その他鉱物性粉じんを吸入することによつて生ずるじん肺全般を対象として、これらに関し、予防及び健康管理その他の措置を講ずることにより、粉じん作業に従事する労働者について適切な保護措置を講じようとするものである。

もとより、じん肺の予防及び健康管理に関しては、従来から労働基準法、鉱山保安法及び結核予防法並びにこれらに基づく命令において、それぞれの所管事項に関連して必要な規定が設けられているところであるが、本法は、じん肺の予防ないし治療の困難性、症状の重篤性等の特殊性にかんがみ、これら関係法令によつては保護の十全を期し難い部面について規定したものである。

このように、その制定の趣旨からみて、本法は、「けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法」(以下「旧法」という。)の一部を受け継いだものということができるが、同時に、その内容の拡充整備を図つたものであり職業病対策に一層の幅と深みとを加えた立法というべく、今後における労働基準行政の重要な一環を占めるべきものである。

かくして、本法の運用の成否は、労使その他関係者の等しく注目するところであるのみならず、今後の職業病対策、ひいては労働基準行政の将来にも多大の影響を及ぼすものであるから、以上の制定趣旨及び意義を十分に認識するとともに、特に下記事項に留意の上、法運用に万全を期せられたく、命によつて通達する。

なお、本法の施行に伴い、旧法及びこれに基づく命令は廃止されたので、申し添える。

 

1 法の普及と指導啓蒙について

本法の円滑な運用を期するため、法施行当初においては、法違反の摘発よりも関係労使に対して法の普及浸透を図るとともに、粉じん作業を有する事業場の把握に努められたいこと。この場合において、旧法の適用を受けていなかつた事業場で新たに本法の適用を受けることとなつたものについては、特に重点をおいて行なわれたいこと。

2 非粉じん作業の認定について

都道府県労働基準局長は、個々の事業場の作業について、これが粉じん作業でないかどうかの認定を行なうこととなつているが(施行規則別表第二第一一号)、この認定は、その効果が直接法の適用の有無につながり、関係労使の利害に影響するところ最も大であることにかんがみ、全国的に認定基準の統一を図る必要があるので、非粉じん作業の認定については、当分の間、すべて本省に照会した後行なうこととされたいこと。

3 じん肺の予防について

本法においては、じん肺の予防に関する労使双方の努力義務を規定している。これは、じん肺の特殊性にかんがみ、特に予防に重点がおかれるべきであるとの認識に基づき、労働基準法その他の関係法令で定める基準に止まることなく、必要なじん肺の予防のための措置を講ずるよう努めるべきことを定めたものであるから、この趣旨に則り、労働基準法等関係法令の適正な運用と相まつて、本法において創設された粉じん対策指導委員制度を活用し、各企業の実情に即した指導を行なわれたいこと。

4 健康管理の区分等の決定について

本法に規定する健康管理の区分等の決定は、事後における健康管理措置の基礎をなし、その決定如何は、直接関係労使の権利義務に対して影響を与えるものであるから、決定を行なうにあたつては、特に正確に期する必要がある。勿論、当該決定は、じん肺診査医の診断又は審査により行なわれるものであるが、旧法より本法への切替えに伴い、多少の混乱、誤解を生ずる懸念もあるので、そのような事態を招くことのないよう十分留意するとともに、疑義の存する場合は、速やかに本省へ照会されたいこと。

5 作業転換の勧告について

本法においては、じん肺にかかつた労働者の病勢の悪化を防止するため、転換手当の支払が全額使用者負担となつた点を除きほぼ旧法と同様の作業転換勧告制度を設けているが、作業の転換が現実に関係労使に対して及ぼす影響の重大性にかんがみ、勧告の実施にあたつては、適当な転換先職場の有無、賃金の変動等の事情を勘案の上、当該労働者の意見を十分に聴取する等特に慎重を期せられたいこと。