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公示:化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示

 

化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示

制 定 平成27年9月18日危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号

改 正 令和5年4月27日危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第4号

 

 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第57条の3第3項の規定に基づき、化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針を次とおり公表する。

 なお、化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成18年3月30日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第2号)は、平成28年6月1日をもって廃止する。

1 名称 化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針

2 趣旨 本指針は、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係る労働安全衛生法第57条の3第1項及び第2項の規定に基づく措置の基本的な考え方及び実施事項について定めたものであり、その適切かつ有効な実施を図ることを目的とするものである。

3 適用日 平成28年6月1日

4 内容の閲覧 内容は、厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp)において閲覧に供する。

 また、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課及び都道府県労働局労働基準部健康主務課において閲覧に供する。

 

化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針

1 趣旨等

本指針は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第57条の3第3項の規定に基づき、事業者が、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものによる危険性又は有害性等の調査(以下「リスクアセスメント」という。)を実施し、その結果に基づいて労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置(以下「リスク低減措置」という。)が各事業場において適切かつ有効に実施されるよう、「化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針」(令和5年4月27日付け技術上の指針公示第24号)と相まって、リスクアセスメントからリスク低減措置の実施までの一連の措置の基本的な考え方及び具体的な手順の例を示すとともに、これらの措置の実施上の留意事項を定めたものである。

また、本指針は、「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(平成11年労働省告示第53号)に定める危険性又は有害性等の調査及び実施事項の特定の具体的実施事項としても位置付けられるものである。

2 適用

本指針は、リスクアセスメント対象物(リスクアセスメントをしなければならない労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)第18条各号に掲げる物及び法第57条の2第1項に規定する通知対象物をいう。以下同じ。)に係るリスクアセスメントについて適用し、労働者の就業に係る全てのものを対象とする。

3 実施内容

事業者は、法第57条の3第1項に基づくリスクアセスメントとして、(1)から(3)までに掲げる事項を、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第34条の2の8に基づき(5)に掲げる事項を実施しなければならない。また、法第57条の3第2項に基づき、、安衛則第577条の2に基づく措置その他の法令の規定による措置を講ずるほか(4)に掲げる事項を実施するよう努めなければならない。

(1) リスクアセスメント対象物による危険性又は有害性の特定

(2) (1)により特定されたリスクアセスメント対象物による危険性又は有害性並びに当該リスクアセスメント対象物を取り扱う作業方法、設備等により業務に従事する労働者に危険を及ぼし、又は当該労働者の健康障害を生ずるおそれの程度及び当該危険又は健康障害の程度(以下「リスク」という。)の見積り(安衛則第577条の2第2項の厚生労働大臣が定める濃度の基準(以下「濃度基準値」という。)が定められている物質については、屋内事業場における労働者のばく露の程度が濃度基準値を超えるおそれの把握を含む。)

(3) (2)の見積りに基づき、リスクアセスメント対象物への労働者のばく露の程度を最小限度とすること及び濃度基準値が定められている物質については屋内事業場における労働者のばく露の程度を濃度基準値以下とすることを含めたリスク低減措置の内容の検討

(4) (3)のリスク低減措置の実施

(5) リスクアセスメント結果等の記録及び保存並びに周知

4 実施体制等

(1) 事業者は、次に掲げる体制でリスクアセスメント及びリスク低減措置(以下「リスクアセスメント等」という。)を実施するものとする。

ア 総括安全衛生管理者が選任されている場合には、当該者にリスクアセスメント等の実施を統括管理させること。総括安全衛生管理者が選任されていない場合には、事業の実施を統括管理する者に統括管理させること。

イ 安全管理者又は衛生管理者が選任されている場合には、当該者にリスクアセスメント等の実施を管理させること。

ウ 化学物質管理者(安衛則第12条の5第1項に規定する化学物質管理者をいう。以下同じ。)を選任し、安全管理者又は衛生管理者が選任されている場合にはその管理の下、化学物質管理者にリスクアセスメント等に関する技術的事項を管理させること。

エ 安全衛生委員会、安全委員会又は衛生委員会が設置されている場合には、これらの委員会においてリスクアセスメント等に関することを調査審議させること。また、リスクアセスメント等の対象業務に従事する労働者に化学物質の管理の実施状況を共有し、当該管理の実施状況について、これらの労働者の意見を聴取する機会を設け、リスクアセスメント等の実施を決定する段階において労働者を参画させること。

オ リスクアセスメント等の実施に当たっては、必要に応じ、事業場内の化学物質管理専門家や作業環境管理専門家のほか、リスクアセスメント対象物に係る危険性及び有害性や、機械設備、化学設備、生産技術等についての専門的知識を有する者を参画させること。

カ 上記のほか、より詳細なリスクアセスメント手法の導入又はリスク低減措置の実施に当たっての、技術的な助言を得るため、事業場内に化学物質管理専門家や作業環境管理専門家等がいない場合は、外部の専門家の活用を図ることが望ましいこと。

(2) 事業者は、(1)のリスクアセスメント等の実施を管理する者等(カの外部の専門家を除く。)に対し、化学物質管理者の管理のもとで、リスクアセスメント等を実施するために必要な教育を実施するものとする。

5 実施時期

(1) 事業者は、安衛則第34条の2の7第1項に基づき、次のアからウまでに掲げる時期にリスクアセスメントを行うものとする。

ア リスクアセスメント対象物を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき。

イ リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき。

ウ リスクアセスメント対象物による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき。具体的には、以下の(ア)、(イ)が含まれること。

(ア) 過去に提供された安全データシート(以下「SDS」という。)の危険性又は有害性に係る情報が変更され、その内容が事業者に提供された場合

(イ) 濃度基準値が新たに設定された場合又は当該値が変更された場合

(2) 事業者は、(1)のほか、次のアからウまでに掲げる場合にもリスクアセスメントを行うよう努めること。

ア リスクアセスメント対象物に係る労働災害が発生した場合であって、過去のリスクアセスメント等の内容に問題があることが確認された場合

イ 前回のリスクアセスメント等から一定の期間が経過し、リスクアセスメント対象物に係る機械設備等の経年による劣化、労働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積等があった場合

ウ 既に製造し、又は取り扱っていた物質がリスクアセスメント対象物として新たに追加された場合など、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務について過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合

(3) 事業者は、(1)のア又はイに掲げる作業を開始する前に、リスク低減措置を実施することが必要であることに留意するものとする。

(4) 事業者は、(1)のア又はイに係る設備改修等の計画を策定するときは、その計画策定段階においてもリスクアセスメント等を実施することが望ましいこと。

6 リスクアセスメント等の対象の選定

事業者は、次に定めるところにより、リスクアセスメント等の実施対象を選定するものとする。

(1) 事業場において製造又は取り扱う全てのリスクアセスメント対象物をリスクアセスメント等の対象とすること。

(2) リスクアセスメント等は、対象のリスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務ごとに行うこと。ただし、例えば、当該業務に複数の作業工程がある場合に、当該工程を1つの単位とする、当該業務のうち同一場所において行われる複数の作業を1つの単位とするなど、事業場の実情に応じ適切な単位で行うことも可能であること。

(3) 元方事業者にあっては、その労働者及び関係請負人の労働者が同一の場所で作業を行うこと(以下「混在作業」という。)によって生ずる労働災害を防止するため、当該混在作業についても、リスクアセスメント等の対象とすること。

7 情報の入手等

(1) 事業者は、リスクアセスメント等の実施に当たり、次に掲げる情報に関する資料等を入手するものとする。

入手に当たっては、リスクアセスメント等の対象には、定常的な作業のみならず、非定常作業も含まれることに留意すること。

また、混在作業等複数の事業者が同一の場所で作業を行う場合にあっては、当該複数の事業者が同一の場所で作業を行う状況に関する資料等も含めるものとすること。

ア リスクアセスメント等の対象となるリスクアセスメント対象物に係る危険性又は有害性に関する情報(SDS等)

イ リスクアセスメント等の対象となる作業を実施する状況に関する情報(作業標準、作業手順書等、機械設備等に関する情報を含む。)

(2) 事業者は、(1)のほか、次に掲げる情報に関する資料等を、必要に応じ入手するものとすること。

ア リスクアセスメント対象物に係る機械設備等のレイアウト等、作業の周辺の環境に関する情報

イ 作業環境測定結果等

ウ 災害事例、災害統計等

エ その他、リスクアセスメント等の実施に当たり参考となる資料等

(3) 事業者は、情報の入手に当たり、次に掲げる事項に留意するものとする。

ア 新たにリスクアセスメント対象物を外部から取得等しようとする場合には、当該リスクアセスメント対象物を譲渡し、又は提供する者から、当該リスクアセスメント対象物に係るSDSを確実に入手すること。

イ リスクアセスメント対象物に係る新たな機械設備等を外部から導入しようとする場合には、当該機械設備等の製造者に対し、当該設備等の設計・製造段階においてリスクアセスメントを実施することを求め、その結果を入手すること。

ウ リスクアセスメント対象物に係る機械設備等の使用又は改造等を行おうとする場合に、自らが当該機械設備等の管理権原を有しないときは、管理権原を有する者等が実施した当該機械設備等に対するリスクアセスメントの結果を入手すること。

(4) 元方事業者は、次に掲げる場合には、関係請負人におけるリスクアセスメントの円滑な実施に資するよう、自ら実施したリスクアセスメント等の結果を当該業務に係る関係請負人に提供すること。

ア 複数の事業者が同一の場所で作業する場合であって、混在作業におけるリスクアセスメント対象物による労働災害を防止するために元方事業者がリスクアセスメント等を実施したとき。

イ リスクアセスメント対象物にばく露するおそれがある場所等、リスクアセスメント対象物による危険性又は有害性がある場所において、複数の事業者が作業を行う場合であって、元方事業者が当該場所に関するリスクアセスメント等を実施したとき。

8 危険性又は有害性の特定

事業者は、リスクアセスメント対象物について、リスクアセスメント等の対象となる業務を洗い出した上で、原則としてアからウまでに即して危険性又は有害性を特定すること。また、必要に応じ、エに掲げるものについても特定することが望ましいこと。

ア 国際連合から勧告として公表された「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」(以下「GHS」という。)又は日本産業規格Z7252に基づき分類されたリスクアセスメント対象物の危険性又は有害性(SDSを入手した場合には、当該SDSに記載されているGHS分類結果)

イ リスクアセスメント対象物の管理濃度及び濃度基準値。これらの値が設定されていない場合であって、日本産業衛生学会の許容濃度又は米国産業衛生専門家会議(ACGIH)のTLVTWA等のリスクアセスメント対象物のばく露限界(以下「ばく露限界」という。)が設定されている場合にはその値(SDSを入手した場合には、当該SDSに記載されているばく露限界)

ウ 皮膚等障害化学物質等(安衛則第594条の2で定める皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがあることが明らかな化学物質又は化学物質を含有する製剤)への該当性

エ アからウまでによって特定される危険性又は有害性以外の、負傷又は疾病の原因となるおそれのある危険性又は有害性。この場合、過去にリスクアセスメント対象物による労働災害が発生した作業、リスクアセスメント対象物による危険又は健康障害のおそれがある事象が発生した作業等により事業者が把握している情報があるときには、当該情報に基づく危険性又は有害性が必ず含まれるよう留意すること。

9 リスクの見積り

(1) 事業者は、リスク低減措置の内容を検討するため、安衛則第34条の2の7第2項に基づき、次に掲げるいずれかの方法(危険性に係るものにあっては、ア又はウに掲げる方法に限る。)により、又はこれらの方法の併用によりリスクアセスメント対象物によるリスクを見積もるものとする。

ア リスクアセスメント対象物が当該業務に従事する労働者に危険を及ぼし、又はリスクアセスメント対象物により当該労働者の健康障害を生ずるおそれの程度(発生可能性)及び当該危険又は健康障害の程度(重篤度)を考慮する方法。具体的には、次に掲げる方法があること。

(ア) 発生可能性及び重篤度を相対的に尺度化し、それらを縦軸と横軸とし、あらかじめ発生可能性及び重篤度に応じてリスクが割り付けられた表を使用してリスクを見積もる方法

(イ) 発生可能性及び重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを加算又は乗算等してリスクを見積もる方法

(ウ) 発生可能性及び重篤度を段階的に分岐していくことによりリスクを見積もる方法

(エ) ILOの化学物質リスク簡易評価法(コントロール・バンディング)等を用いてリスクを見積もる方法

(オ) 化学プラント等の化学反応のプロセス等による災害のシナリオを仮定して、その事象の発生可能性と重篤度を考慮する方法

イ 当該業務に従事する労働者がリスクアセスメント対象物にさらされる程度(ばく露の程度)及びリスクアセスメント対象物の有害性の程度を考慮する方法。具体的には、次に掲げる方法があること。

(ア) 管理濃度が定められている物質については、作業環境測定により測定した当該物質の第一評価値を当該物質の管理濃度と比較する方法

(イ) 濃度基準値が設定されている物質については、個人ばく露測定により測定した当該物質の濃度を当該物質の濃度基準値と比較する方法

(ウ) 管理濃度又は濃度基準値が設定されていない物質については、対象の業務について作業環境測定等により測定した作業場所における当該物質の気中濃度等を当該物質のばく露限界と比較する方法

(エ) 数理モデルを用いて対象の業務に係る作業を行う労働者の周辺のリスクアセスメント対象物の気中濃度を推定し、当該物質の濃度基準値又はばく露限界と比較する方法

(オ) リスクアセスメント対象物への労働者のばく露の程度及び当該物質による有害性を相対的に尺度化し、それらを縦軸と横軸とし、あらかじめばく露の程度及び有害性の程度に応じてリスクが割り付けられた表を使用してリスクを見積もる方法

ウ ア又はイに掲げる方法に準ずる方法。具体的には、次に掲げる方法があること。

(ア) リスクアセスメント対象物に係る危険又は健康障害を防止するための具体的な措置が労働安全衛生法関係法令(主に健康障害の防止を目的とした有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)、鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号)、四アルキル鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第38号)及び特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)の規定並びに主に危険の防止を目的とした令別表第1に掲げる危険物に係る安衛則の規定)の各条項に規定されている場合に、当該規定を確認する方法。

(イ) リスクアセスメント対象物に係る危険を防止するための具体的な規定が労働安全衛生法関係法令に規定されていない場合において、当該物質のSDSに記載されている危険性の種類(例えば「爆発物」など)を確認し、当該危険性と同種の危険性を有し、かつ、具体的措置が規定されている物に係る当該規定を確認する方法

(ウ) 毎回異なる環境で作業を行う場合において、典型的な作業を洗い出し、あらかじめ当該作業において労働者がばく露される物質の濃度を測定し、その測定結果に基づくリスク低減措置を定めたマニュアル等を作成するとともに、当該マニュアル等に定められた措置が適切に実施されていることを確認する方法

(2) 事業者は、(1)のア又はイの方法により見積りを行うに際しては、用いるリスクの見積り方法に応じて、7で入手した情報等から次に掲げる事項等必要な情報を使用すること。

ア 当該リスクアセスメント対象物の性状

イ 当該リスクアセスメント対象物の製造量又は取扱量

ウ 当該リスクアセスメント対象物の製造又は取扱い(以下「製造等」という。)に係る作業の内容

エ 当該リスクアセスメント対象物の製造等に係る作業の条件及び関連設備の状況

オ 当該リスクアセスメント対象物の製造等に係る作業への人員配置の状況

カ 作業時間及び作業の頻度

キ 換気設備の設置状況

ク 有効な保護具の選択及び使用状況

ケ 当該リスクアセスメント対象物に係る既存の作業環境中の濃度若しくはばく露濃度の測定結果又は生物学的モニタリング結果

(3) 事業者は、(1)のアの方法によるリスクの見積りに当たり、次に掲げる事項等に留意するものとする。

ア 過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もること。

イ 負傷又は疾病の重篤度は、傷害や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましいことから、基本的に、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用すること。

ウ リスクアセスメントの対象の業務に従事する労働者の疲労等の危険性又は有害性への付加的影響を考慮することが望ましいこと。

(4) 事業者は、一定の安全衛生対策が講じられた状態でリスクを見積もる場合には、用いるリスクの見積り方法における必要性に応じて、次に掲げる事項等を考慮すること。

ア 安全装置の設置、立入禁止措置、排気・換気装置の設置その他の労働災害防止のための機能又は方策(以下「安全衛生機能等」という。)の信頼性及び維持能力

イ 安全衛生機能等を無効化する又は無視する可能性

ウ 作業手順の逸脱、操作ミスその他の予見可能な意図的・非意図的な誤使用又は危険行動の可能性

エ 有害性が立証されていないが、一定の根拠がある場合における当該根拠に基づく有害性

10 リスク低減措置の検討及び実施

(1) 事業者は、法令に定められた措置がある場合にはそれを必ず実施するほか、法令に定められた措置がない場合には、次に掲げる優先順位でリスクアセスメント対象物に労働者がばく露する程度を最小限度とすることを含めたリスク低減措置の内容を検討するものとする。ただし、9(1)イの方法を用いたリスクの見積り結果として、労働者がばく露される程度が濃度基準値又はばく露限界を十分に下回ることが確認できる場合は、当該リスクは、許容範囲内であり、追加のリスク低減措置を検討する必要がないものとして差し支えないものであること。

ア 危険性又は有害性のより低い物質への代替、化学反応のプロセス等の運転条件の変更、取り扱うリスクアセスメント対象物の形状の変更等又はこれらの併用によるリスクの低減

イ リスクアセスメント対象物に係る機械設備等の防爆構造化、安全装置の二重化等の工学的対策又はリスクアセスメント対象物に係る機械設備等の密閉化、局所排気装置の設置等の衛生工学的対策

ウ 作業手順の改善、立入禁止等の管理的対策

エ リスクアセスメント対象物の有害性に応じた有効な保護具の選択及び使用

(2) (1)の検討に当たっては、より優先順位の高い措置を実施することにした場合であって、当該措置により十分にリスクが低減される場合には、当該措置よりも優先順位の低い措置の検討まで要するものではないこと。また、リスク低減に要する負担がリスク低減による労働災害防止効果と比較して大幅に大きく、両者に著しい不均衡が発生する場合であって、措置を講ずることを求めることが著しく合理性を欠くと考えられるときを除き、可能な限り高い優先順位のリスク低減措置を実施する必要があるものとする。

(3) 死亡、後遺障害又は重篤な疾病をもたらすおそれのあるリスクに対して、適切なリスク低減措置の実施に時間を要する場合は、暫定的な措置を直ちに講ずるほか、(1)において検討したリスク低減措置の内容を速やかに実施するよう努めるものとする。

(4) リスク低減措置を講じた場合には、当該措置を実施した後に見込まれるリスクを見積もることが望ましいこと。

11 リスクアセスメント結果等の労働者への周知等

(1) 事業者は、安衛則第34条の2の8に基づき次に掲げる事項をリスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知するものとする。

ア 対象のリスクアセスメント対象物の名称

イ 対象業務の内容

ウ リスクアセスメントの結果

(ア) 特定した危険性又は有害性

(イ) 見積もったリスク

エ 実施するリスク低減措置の内容

(2) (1)の周知は、安衛則第34条の2の8第2項に基づく方法によること。

(3) 法第59条第1項に基づく雇入れ時教育及び同条第2項に基づく作業変更時教育においては、安衛則第35条第1項第1号、第2号及び第5号に掲げる事項として、(1)に掲げる事項を含めること。

なお、5の(1)に掲げるリスクアセスメント等の実施時期のうちアからウまでについては、法第59条第2項の「作業内容を変更したとき」に該当するものであること。

(4) 事業者は(1)に掲げる事項について記録を作成し、次にリスクアセスメントを行うまでの期間(リスクアセスメントを行った日から起算して3年以内に当該リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行ったときは、3年間)保存しなければならないこと。

12 その他

リスクアセスメント対象物以外のものであって、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者に危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものについては、法第28条の2及び安衛則第577条の3に基づき、この指針に準じて取り組むよう努めること。