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労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づく東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針に関する公示

制定 平成23年10月11日東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針公示第5号

改正 平成27年8月31日健康の保持増進のための指針公示第6号

労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第70条の2第1項の規定に基づき、東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針を次のとおり公表する。

平成23年10月11日

厚生労働大臣

 

1 名称 東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針

2 趣旨 本指針は、労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づき、平成23年3月11日に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所における厚生労働大臣が指定する緊急作業(以下「指定緊急作業」という。)に従事し、又は従事した労働者を指定緊急作業又は放射線業務に従事させる事業者が講ずるよう努めるべき当該者の健康の保持増進のための措置の適切かつ有効な実施を図るために、制定するものである。

3 内容の閲覧 内容は、厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課及び都道府県労働局労働基準部健康主務課において閲覧に供する。

 

東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針

第1 趣旨

電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号。以下「電離則」という。)第59条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する緊急作業又は電離則第7条の2第3項に定める特例緊急作業(以下「指定緊急作業等」という。)に従事し、又は従事した労働者(以下「緊急作業従事者等」という。)のうち、指定緊急作業等の期間中に通常の放射線業務の被ばく限度(以下「通常被ばく限度」という。)を超える線量を被ばくした労働者については、がん等晩発性の健康障害の発生が懸念されるとともに、緊急作業従事者等が抱く健康上の不安を解消するため、緊急作業従事者等が離職した後を含め、それらに対する検査等、適切な長期的健康管理を実施する必要がある。

本指針は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第70条の2第1項に基づき、緊急作業従事者等を指定緊急作業等又は放射線業務(以下「緊急作業等」という。)に従事させる事業者が講ずるよう努めるべき労働者の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施されるよう、緊急作業従事者等の健康管理の実施方法の原則を定めるとともに、緊急作業従事者等が放射線業務から離れた後における適切な長期的健康管理、通常被ばく限度を超えた緊急作業従事者等に係る中長期的な線量管理等が実施されるために必要な措置を定めるほか、緊急作業従事者等の健康の保持増進に関する措置の適切かつ有効な実施を図るために国が行う必要な援助について定めるものとする。

 

第2 長期的健康管理のための取組

1 事業場内の体制の確立

緊急作業従事者等を緊急作業等に従事させた事業者(現に、当該者を緊急作業等以外の業務に従事させる中小企業者を除く。)は、緊急作業従事者等に対する長期的な健康管理を適切に実施するため、事業場の規模に応じ、衛生委員会、衛生管理者、産業医、保健師等による事業場内管理体制を確立し、一般健康診断(法第66条第1項の規定による健康診断をいう。)、電離放射線健康診断(電離則第56条の規定による健康診断をいう。)、緊急時電離放射線健康診断(電離則第56条の2の規定による健康診断をいう。)並びにストレスチェック及びその結果に基づく面接指導(法第66条の10第1項の規定による心理的な負担の程度を把握するための検査及び同条第3項の規定による面接指導をいう。)を適切に実施する。

2 がん検診等の実施

(1) 事業者は、緊急作業従事者等であって、指定緊急作業等に従事した間に受けた放射線の実効線量が1年につき50ミリシーベルトを超えた者については、おおむね1年ごとに1回、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡による白内障に関する眼の検査を実施する。この際、水晶体の写真を撮影しておくことが望ましい。ただし、当該労働者が受診を希望しない場合にはこの限りではない。

(2) 事業者は、緊急作業従事者等であって、指定緊急作業等に従事した間に受けた放射線の実効線量が100ミリシーベルトを超える者については、上記(1)の検査に加え、次表の左欄及び中欄に掲げる検査をそれぞれ次表の右欄に掲げる検査項目及び検査頻度により実施する。ただし、当該労働者が受診を希望しない場合にはこの限りではない。

検査名 検査項目 検査頻度
胃がん検診 ア 胃エックス線透視検査又は胃内視鏡検査
イ ヘリコバクター・ピロリ抗体検査
ア:1年に1回
イ:各人につき1回(アの検査実施時に実施)
肺がん検診 ア 胸部エックス線検査
イ 喫煙者には、喀痰細胞診
ウ 上記アの検査の結果及び被ばく線量等から医師が必要と認めた場合には、胸部CT検査
ア:1年に1回
イ:1年に1回
ウ:喫煙者は1年に1回、非喫煙者は3年に1回程度
大腸がん検診 ア 便潜血検査
イ 上記アの検査の結果及び被ばく線量等から医師が必要と認めた場合には、大腸内視鏡
ア:1年に1回
イ:10年に1回程度
甲状腺の検査 ア 頚部超音波検査
イ 上記アの検査の結果及び被ばく線量等から医師が必要と認めた場合には、採血による甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離トリヨードサイロニン(freeT3)及び遊離サイロキシン(freeT4)の検査
ア:3年から5年に1回
その他の検査 ア 肝炎検査(HBs抗原、HCV抗体)
イ 腎機能検査(尿素窒素、クレアチニン、尿酸)、血清電解質検査(Na,K,Cl,Ca,P)
ア:各人につき1回(イの検査の実施時に実施)
イ:1年に1回

 

(3) 事業者は、(2)の表に掲げる検査を実施するに当たって、以下の事項に留意する。

ア 胃がん検診におけるヘリコバクター・ピロリ抗体検査の結果、陽性であった者に対しては、ヘリコバクター・ピロリ菌の除去等の適切な治療を勧奨する。

イ 肺がん検診における胸部CT検査は、当該検査による被ばく量を考慮し、低線量CT検診によることが推奨される。

ウ 甲状腺の検査における採血による甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離トリヨードサイロニン(freeT3)及び遊離サイロキシン(freeT4)の検査は、甲状腺機能低下症等の放射線による健康影響を調べる目的であるため、甲状腺等価線量が一定以上(おおむね5グレイ以上を目安とする。)の者に対して実施することが推奨される。

エ その他の検査における肝炎検査については、検査結果を踏まえ、適切な治療を勧奨する。

(4) 事業者は、一般健康診断等の健康診断において実施する採血による赤血球数及び血色素量の検査と併せて白血球数及び白血球百分率の検査を実施することが望ましい。

(5) 事業者は、上記(1)から(4)までの検査を実施するに当たって、あらかじめ、検査内容やその必要性等について、受診者に対して十分に説明する。

3 保健指導等

(1) 事業者は、緊急作業従事者等に対し、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成20年1月31日健康診断結果措置指針公示第7号)に基づき、医師又は保健師による保健指導を受けさせる際には、一般健康診断、電離放射線健康診断、緊急時電離放射線健康診断及び2で定めるがん検診等の結果を総合的に考慮した保健指導を実施する。

なお、放射線被ばくと喫煙には、相互作用が観察されるため、一定以上の被ばくをした者に禁煙指導を実施することは有効である。このため、事業者は、2(2)の対象者のうち喫煙者に対する保健指導において、禁煙指導を実施する。その際、希望する者には禁煙外来を紹介する。

(2) 事業者は、緊急作業従事者等に対し、通常の放射線業務とは異なる環境下で緊急性の高い作業に従事したことによる精神面への影響を踏まえ、当該者が希望する場合には、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日、健康保持増進のための指針公示第3号)に留意した上でメンタルヘルスケアを含めた健康相談を実施する。

(3) 事業者は、一般健康診断、電離放射線健康診断又は緊急時電離放射線健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)については、法第66条の4の規定に基づき、医師等の意見を聴き、その意見に基づいて就業上の措置を決定する。ただし、2で定めるがん検診等の結果は、原則として再検査又は精密検査、治療のための受診の勧奨を行うために活用されるものであり、安易に就業上の措置の決定には用いることがあってはならないことに留意する。

4 ストレスチェックの実施

(1) 事業者は、緊急性の高い作業に従事することによる精神面への影響を踏まえ、労働者数が50人未満の事業場であっても、可能な限り、全ての緊急作業従事者等に対して法第66条の10第1項に規定するストレスチェックを実施すること。

(2) 事業者は、ストレスチェックを行った場合は、当該ストレスチェックを行った医師等の実施者に、当該ストレスチェックの結果を一定規模の集団ごとに集計・分析させ、その結果を勘案し、必要に応じて、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減させるための適切な措置(以下「集団ごとの集計・分析」という。)を講じるよう努めること。

また、原子力事業者及び元請事業者は、関係請負人が集団ごとの集計・分析を行う場合には、必要に応じ、関係請負人の支援を行うことが望ましい。

5 個人情報の保護

事業者は、一般健康診断、電離放射線健康診断、緊急時電離放射線健康診断、保健指導等、ストレスチェックの結果等の取扱いについては、本指針に係る健康情報の保護を図るため、「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成16年厚生労働省告示第259号)及び「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成27年4月15日心理的な負担の程度を把握するための検査等指針公示第1号)に留意する。

 

第3 通常被ばく限度を超えた緊急作業従事者等に係る中長期的な線量管理

1 事故発生時を含む線量管理期間の次の線量管理期間以降の放射線管理

(1) 事業者は、原子力施設等における指定緊急作業等を伴う事故(以下単に「事故」という。)発生時を含む5年間ごとに区分された線量管理期間(以下単に「線量管理期間」という。)の次の線量管理期間以降の放射線管理については、通常被ばく限度である5年100ミリシーベルトを超えない範囲内で、残余の線量(生涯線量である1シーベルトから累積線量(緊急線量と通常線量を合算したものをいう。)を減じたものをいう。)を残余の就労期間(全就労期間の最終年齢68歳(18歳から50年間と仮定。)から現在の年齢を減じたもの)で除することによって得られる値を5倍することにより、当該残余の就労期間における線量管理期間の被ばく限度を緊急作業従事者等ごとに個別に設定する。(計算例は別紙参照。)

なお、線量管理期間ごとの被ばく限度は、5ミリシーベルト単位(端数切捨て)で設定する。

(2) 事業者は、(1)により計算された線量管理期間ごとの被ばく限度について、その後の被ばく線量をより詳細に反映するため、線量管理期間が終了するごと(5年間ごと)に、その時点における残余の線量及び残余の就労期間からそれ以降の線量管理期間ごとの被ばく限度を再計算する。

(3) 事業者は、線量管理期間ごとの累積線量が、(1)によって計算された線量管理期間ごとの被ばく限度を超えないように管理するとともに、各線量管理期間における1年当たりの被ばく限度である50ミリシーベルトを超えないように管理する。

(4) 事業者は、(1)及び(2)によって計算された線量管理期間ごとの被ばく限度を当該緊急作業従事者等に通知する。また、事業者は、当該緊急作業従事者等が放射線業務に従事する際に、その限度を超えないように管理するとともに、被ばく線量をできるだけ少なくするように努める。

2 事故発生時を含む線量管理期間内での通常被ばく適用作業での放射線管理

(1) 事業者は、事故発生時を含む線量管理期間内に緊急被ばく線量と通常被ばく線量を合算した線量が通常被ばく限度である5年100ミリシーベルトを超える緊急作業従事者等について、原子力施設の安全な運転等を担保するために必要不可欠な要員に限り、追加的に、年間5ミリシーベルトを超えない範囲で通常の放射線業務に従事させることができる。

この場合において、通常被ばく線量のみの累計が通常被ばく限度(1年50ミリシーベルトかつ5年100ミリシーベルト)を超えてはならない。

(2) 事業者は、(1)の放射線業務に従事する者に対して、あらかじめ、医師による診察を受けさせるとともに、法令に基づく線量管理及び健康管理を行う。

(3) 事業者は、(1)の放射線業務において受ける線量を事故発生時を含む線量管理期間の次の線量管理期間以降の被ばく限度の設定時の計算に算入するとともに、被ばく線量をできるだけ小さくするように努める。

 

第4 緊急作業従事者等の長期的健康管理のためのデータベースの整備等

1 データベースの整備等

(1) 緊急作業従事者等を緊急作業等に従事させる事業者(電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令(平成23年厚生労働省令第129号)の施行前に、緊急作業従事者等を指定緊急作業等に従事させた事業者を含む。)は、緊急作業従事者等が緊急作業等に従事している間は、電離則第59条の2及び第59条の3の規定に基づき、次に掲げる項目を国に報告しなければならない。

ア 健康診断結果

① 電離則第57条の規定による電離放射線健康診断結果

② 電離則第57条の2の規定による緊急時電離放射線健康診断結果

③ 労働安全衛生規則第44条及び第45条の規定による一般健康診断結果

④ 法第66条第4項の規定による臨時健康診断結果

イ 「線量等管理実施状況報告書」(電離則様式第3号)に定める事項

① 氏名、住所、所属事業場名等

② 緊急作業に従事していた間の被ばく線量、指定緊急作業等に従事する以前及び指定緊急作業等に従事した後に従事していた放射線業務による被ばく線量等

(2) 事業者は、第2の2のがん検診等、上記(1)以外の検査を緊急作業従事者等に対して実施した場合、当該者の同意を得た上で、医師の診断・所見を含む検査結果を国に報告する。

(3) 緊急作業従事者等には、当該者に係る上記(1)及び(2)の項目等を記録し及び保存することができるよう国が設けたデータベースに登録された旨を証する書面(以下「登録証」という。)が送付されるものとする。緊急作業従事者等は、国が設置する緊急作業従事者等を支援するための窓口(以下「支援窓口」という。)に登録証を提示することにより、自らの被ばく線量、健康診断結果等の記録の写しの交付を受けることができる。

(4) 第2の2(1)及び(2)に該当する緊急作業従事者等(以下「特定緊急作業従事者等」という。)は、上記(1)及び(2)の主要な事項が記載された「特定緊急作業従事者等被ばく線量等記録手帳」(以下「手帳」という。)の交付を受けることができる。また、随時、支援窓口において、手帳の記載内容の追記を受けることができる。

2 緊急作業従事者等を新たに放射線業務に従事させる場合の措置

(1) 新たに労働者を放射線業務に就かせようとする事業者は、当該労働者に対する雇入れ時電離放射線健康診断における過去の被ばく歴の調査により、当該労働者が緊急作業従事者等に該当することを把握した場合は、電離則第59条の2の規定に基づき、第3の1に定める報告を国に対して行なわなければならないとともに、当該者の指定緊急作業等時の被ばく線量に応じ、第2に定める健康管理等を適切に実施する。

(2) 事業者は、特定緊急作業従事者等の健康管理を実施するに当たり、当該者の同意を得た上で、手帳に記載された過去の健康診断結果等を把握し、それを保健指導又は健康相談に活用する。

 

第5 緊急作業従事者等の健康の保持増進に関する措置の適切かつ有効な実施を図るために国が行う必要な援助等

1 がん検診等の受診勧奨

特定緊急作業従事者等のうち、緊急作業等に従事する者については、事業者を通じ、それ以外の者については、直接、おおむね1年ごとに1回、第2の2に定める被ばく線量に応じ、がん検診等の受診を勧奨する通知をするものとする。

2 国による保健指導等の実施

国は、支援窓口において、緊急作業従事者等に対する健康相談又は保健指導を行う。

3 特定緊急作業従事者等への援助等

ア 国は、特定緊急作業従事者等のうち、現に職業に就いていない者については、一般健康診断及び第2の2に掲げる各検査に相当する検査を受診する場合において、当該検査に要する費用の全部又は一部を援助する。

イ 国は、特定緊急作業従事者等のうち、現に、緊急作業等以外の業務に従事させる事業者(当該者を緊急作業等に従事させた中小企業者以外の事業者を除く。)に雇用される者については、第2の2に掲げる各検査に相当する検査を受診する場合において、当該検査に要する費用の全部又は一部を援助する。

ウ 国は、上記ア又はイの検査を実施する医療機関から、受診者の同意を得た上で、医師の診断・所見を含む検査結果の報告を得るものとする。

4 国は、1から3までに掲げるもののほか、特定緊急作業従事者等の健康の保持増進に関する措置の適切かつ有効な実施を図るために必要と認められる援助等を行うことができる。