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ヒドロキシルアミン等の安全な取扱い等に関する技術上の指針
制定 平成13年12月3日技術上の指針公示第17号
労働安全衛生法第28条第1項の規定に基づく技術上の指針に関する公示
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第1項の規定に基づき、ヒドロキシルアミン等の安全な取扱い等に関する技術上の指針について次のとおり公表する。
平成13年12月3日
1 名称 ヒドロキシルアミン等の安全な取扱い等に関する技術上の指針
2 趣旨 この指針は、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成13年厚生労働省令第212号)の施行に伴い、事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るためのヒドロキシルアミン等の安全な取扱い等に関する技術上の指針を制定するものである。
3 内容の閲覧 内容は、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課及び都道府県労働局労働基準部安全衛生課又は安全課において閲覧に供する。
別添1
○ヒドロキシルアミン等の安全な取扱い等に関する技術上の指針
(平成13年12月3日 技術上の指針公示第17号)
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第1項の規定に基づき、ヒドロキシルアミン等の安全な取扱い等に関する技術上の指針について次のとおり公表する。
ヒドロキシルアミン等の安全な取扱い等に関する技術上の指針
1 総則
1-1 趣旨
この指針は、ヒドロキシルアミン及びその塩(以下「ヒドロキシルアミン等」という。)を製造し、又は取り扱う作業に関し、ヒドロキシルアミン等の爆発による労働者の危険を防止するため、その製造、取扱い等に関する留意事項及び危険性判別の方法について定めたものである。
1-2 一般的な留意事項
ヒドロキシルアミン等については、鉄、銅、ニッケル、クロム等の金属イオン(以下「鉄イオン等」という。)の触媒作用によって発熱分解する性質がある。
また、ヒドロキシルアミン等の発熱分解は、鉄イオン等の増加や加熱によって促進され、濃度等の使用条件により爆発する危険性がある。
そのため、事業者は、ヒドロキシルアミン等の製造又は取扱い作業においては、次の事項に留意する必要がある。
(1) みだりに鉄イオン等と混合し、又は接触させないこと。
(2) みだりに加熱しないこと。
(3) できるだけ低い濃度で取り扱うこと。
2 鉄イオン等との異常反応の防止
事業者は、ヒドロキシルアミン等が鉄イオン等の触媒作用により発熱分解が促進されて爆発することがないよう、ヒドロキシルアミン等の種類、濃度、取扱いの状態に応じて、次の2-1から2-3に掲げる措置のうち有効な措置を講ずること。
なお、必要に応じて、2-4及び2-5の措置を講ずること。
2-1 鉄イオン等の混入を防止する措置
2-1-1 容器、配管等からの鉄イオン等の溶出防止
(1) ヒドロキシルアミン等が接触する容器、配管、弁、かくはん機、ポンプ等については、使用条件に応じて、次のいずれかの措置を講ずること。
イ ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材料のものとすること。
ロ 内面をガラス、ゴム、フッ素樹脂等の材質のものを用いてライニング、又は コーティングを施すこと。
(2) (1)によることが困難なときは、材料にステンレス鋼を用い、酸化被膜による表面処理を施すこと、又は、鉄イオン等が溶出しにくい材料であることを確認したものを用いること。
この場合、鉄イオン等の濃度を定期的に測定することが可能なICP発光分光分析計(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析計)、原子吸光分析計等により、鉄イオン等の濃度を随時測定し、ヒドロキシルアミン等に混入する鉄イオン等の濃度を管理すること。
2-1-2 金属片等の混入防止
金属片、空気中に浮遊する金属粉がヒドロキシルアミン等の溶液に混入するおそれがある場合は、容器に覆いを設ける等の措置を講ずること。
2-2 鉄イオン等との反応を抑制する措置
2-2-1 反応抑制剤の添加
ヒドロキシルアミン等について、鉄イオン等と錯体を形成し、ヒドロキシルアミ ン等の分解を抑制する物質を添加すること。
なお、 硫酸ヒドロキシルアミン水溶液の場合は、少量の硫酸を添加することによ り、鉄イオン等に対する安定性を確保することができること。
2-3 ヒドロキシルアミン等の濃度を低減する措置
2-3-1 濃度の低減措置
ヒドロキシルアミン等の種類等に応じて、鉄イオン等との異常反応による爆発の おそれがない安全な濃度に低減すること。
2-3-2 濃度低減の目安
濃度低減の目安は、次のいずれかの濃度であること。
(1) 4-1に示す危険性の判別に関する試験方法において、「爆発等のおそれあり」と判別されない濃度
(2) 4-2に示すヒドロキシルアミン等の種類に応じた値を超えない濃度
2-4 温度上昇を防止するための措置
2-1から2-3の措置を講じてもなお、鉄イオン等との反応による温度上昇のおそれがある場合には、容器及び配管の内部の温度を随時測定できる装置を設け、設定温度の上限を超えた場合には、冷却水による緊急希釈の措置を速やかに講ずる等の3-1及び3-2に準じた温度管理を行うこと。
2-5局所的な発熱による危険の防止
2-1から2-4の必要な措置に加えて、管路内に設けた循環ポンプの軸部の摩 擦等により発熱のおそれがある箇所には、温度センサーを設け、温度を常時監視し、 局所的な発熱による危険を防止するために3-1-2に準じた措置を講ずること。
3 加熱作業を行う場合の措置
事業者は、ヒドロキシルアミン等を加熱する作業を行う場合は、2-1,2-2, 2-3及び2-5のうちの必要な措置に加えて、次の措置を講ずること。
3-1 温度調整のための措置
3-1-1 温度調整装置
異常な温度上昇による爆発の危険を防止するため、ヒドロキシルアミン等の温度 調整をすることができる次のいずれかの措置を講ずること。
(1) ヒドロキシルアミン等の性状に応じた安全な温度に保つため、加熱設備に温 度自動調整装置を設けること。
(2) 熱電対式の温度計、棒状温度計等により内部の温度を随時測定できるように するとともに、加熱のための蒸気及び温水の送給量を手動調整するための バル ブ、コックを設けること等により、安全な温度に適切に調整できるようにする こと。
3-1-2 自動警報装置等
ヒドロキシルアミン等がその性状に応じた安全な温度を超えるおそれのあるとき は、前項の措置に加えて、次の措置を講ずること。
(1) 異常な温度上昇を早期に把握するために必要な自動警報装置を設けること。
(2) ヒドロキシルアミン等の原材料の送給をしゃ断し、若しくは製品等を放出する ための装置を設け、又は緊急冷却若しくは冷却水による緊急希釈ができる装置を 設けること。
3-1-3 局所的な加熱の防止
局所的な温度上昇が生じないようにするための措置を講ずること。
3-2 作業管理
3-2-1 作業標準の作成
(1) 次の事項について作業標準を定め、これにより作業を行わせること。
イ 加熱装置及びその附属設備の操作及びその手順
ロ 温度測定装置及び温度調整装置の監視及び温度の調整
ハ 異常時に作業者がとるべき応急の措置
(2) 作業標準の作成に当たっては、関係労働者、労働安全コンサルタント等の意見 を求めるよう努めること。
3-2-2 作業指揮者の選任
作業指揮者を選任し、その者に加熱に係る作業を指揮させるとともに、次の事項 を行わせること。
イ 加熱設備及びその附属設備について随時点検し、異常を認めたときは、直ち に必要な措置を講ずること。
ロ ヒドロキシルアミン等の温度を随時確認し、異常を認めたときは、直ちに必 要な措置を講ずること。
ハ イ及びロにより講じた措置について、記録をしておくこと。
4 爆発の危険性の判別方法
4-1 爆発の危険性の判別に関する試験方法
別紙の試験方法によること。
4-2 危険性判別の目安
上記の試験による判別をしない場合は、次の左欄のヒドロキシルアミン等の種類 に応じて、右欄の値を目安として、これを超える濃度を爆発の危険性があるものと すること。
ヒドロキシルアミン等の種類 | 濃度(単位 wt%) |
ヒドロキシルアミン水溶液 硫酸ヒドロヒシルアミン水溶液 塩酸ヒドロキシルアミン水溶液 |
15 20 35 |
別紙
爆発の危険性の判別に関する試験
(1) 試験の種類
熱分析試験及び圧力容器試験とする。
(2) 試験装置
熱分析試験装置(示差走査熱量測定装置又は示差熱分析装置による。)及び圧力容器試験装置とする。
(3) 試験方法
熱分析試験及び圧力容器試験の方法は、それぞれ次に定めるところによる。
イ 熱分析試験
(イ) 2,4-ジニトロトルエン及び過酸化ベンゾイルを標準物質とし、これらの発熱開始温度及び単位質量当たりの発熱量を測定する。
(ロ) 試験を行うヒドロキシルアミン等(以下「試験物品」物品という。)の発 熱開始温度及び単位質量当たりの発熱量を測定する。
(ハ) 試料量は、標準物質及び試験物品とも約2mgとし、加熱速度は毎分10℃とする。
(ニ) 試料容器は、破裂圧力が5MPa以上のステンレス鋼製密閉セルとする。
(ホ) 発熱開始温度から25℃を減じた値(以下「補正温度」という。)の常用対数を横軸とし、発熱量の常用対数を縦軸とする平面直交座標系において、標準物質の2,4-ジニトロトルエンの発熱量の値に0.7を乗じた値の常用対数及び標準物質の過酸化ベンゾイルの発熱量の値に0.8を乗じた値の常用対数をそれぞれの標準物質に係る補正温度の値の常用対数に対して表示し、それらの2点を直線で結ぶ。
ロ 圧力容器試験
(イ) 内容積200cm3の圧力容器において、破裂圧力0.6MPaの金属製の 破裂板及び孔径が1mmのオリフィス板を取り付け、当該圧力容器の中で試験 物品を加熱し、破裂板が破裂するか否かを観察する。
(ロ) 試料量は5gとし、加熱速度は毎分40℃とする。
(4) 危険性の判別
次のイ又はロに該当するものを「爆発等のおそれあり」とする。
イ 熱分析試験において、試験物品の補正温度及び発熱量を図にプロットしたとき、それが(3)のイの(ホ)により求めた直線上又は上方にあるもの。
ロ 孔径1mmのオリフィス板を取り付けた圧力容器試験において、10回の測定を行い、破裂板が5回以上破裂するもの。