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高所作業車構造規格
制 定 平成二年九月二十六日労働省告示第七十号
最終改正 平成十五年十二月十九日厚生労働省告示第三百九十六号
労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第四十二条の規定に基づき、高所作業車構造規格を次のように定め、平成二年十月一日から適用する。
高所作業車構造規格
(強度等)
第一条 労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第十三条第三項第三十四号に掲げる高所作業車(以下「高所作業車」という。)の原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置及び作業装置は、次に定めるところに適合するものでなければならない。
一 使用の目的に適応した必要な強度を有するものであること。
二 著しい損傷、摩耗、変形又は腐食のないものであること。
(安定度)
第二条 作業床が接地面に対し垂直にのみ上昇し、又は下降する構造の高所作業車(以下「垂直昇降型の高所作業車」という。)は、次の状態において、五度まで傾けても転倒しない前後及び左右の安定度を有するものでなければならない。
一 高所作業車の安定に関し最も不利となる状態
二 積載荷重(労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第百九十四条の十六に規定する積載荷重をいう。以下同じ。)に相当する荷重をかけた状態
三 水平かつ堅固な面の上にある状態
四 アウトリガーを有する高所作業車にあっては、当該アウトリガーを使用した状態
2 前項の安定度は、計算によって算定しても差し支えない。
第三条 高所作業車(垂直昇降型の高所作業車を除く。)は、当該高所作業車の転倒支点における安定モーメントの値をその転倒支点における転倒モーメントの値で除して得た値が一・三以上である前後及び左右の安定度を有するものでなければならない。
2 前項に規定する安定度の計算は、当該高所作業車が前条第一項各号に掲げる状態にあるものとして行うものとする。
第四条 高所作業車は、次の状態において、水平かつ堅固な面の上で三十度まで傾けても転倒しない左右の安定度を有するものでなければならない。
一 無負荷状態(原動機及び燃料装置に燃料、冷却水等の全量を搭載し、及び当該高所作業車の目的とする用途に必要な設備、装置等を取り付けた状態をいう。以下同じ。)にあること。
二 垂直昇降型の高所作業車にあっては作業床を最低降下位置に置き、垂直昇降型の高所作業車以外の高所作業車にあってはブームを格納すること。
2 前項の安定度は、計算によって算定しても差し支えない。
(走行用制動装置等)
第五条 高所作業車(油圧又は空気圧を動力として用いる高所作業車で、油圧又は空気圧回路中に制動用のバルブ、レギュレータ等を備えているものを除く。第三項において同じ。)は、走行を制動し、及び停止の状態を保持するための制動装置を備えているものでなければならない。
2 前項の制動装置のうち走行を制動するための制動装置(レール上を走行する高所作業車のものを除く。)及び油圧又は空気圧を動力として用いる高所作業車で、油圧又は空気圧回路中に制動用のバルブ、レギュレータ等を備えているものの当該制動用のバルブ、レギュレータ等は、次の表の上欄に掲げる最高走行速度の高所作業車に応じ、それぞれ、同表の中欄に掲げる制動初速度において同表の下欄に掲げる停止距離以内で当該高所作業車を停止させることができる性能を有するものでなければならない。
最高走行速度(単位 キロメートル毎時) |
制動初速度(単位 キロメートル毎時) |
停止距離(単位 メートル) |
|
総重量が二〇トン未満の場合 |
総重量が二〇トン以上の場合 |
||
三五以上 |
三五 |
一四 |
二〇 |
二〇以上三五未満 |
二〇 |
五 |
八 |
二〇未満 |
その最高走行速度 |
五 |
八 |
備考 この表において、総重量とは、高所作業車の無負荷状態における重量と五十五キログラムに乗車定員を乗じて得た重量とを加えた重量をいう。 |
3 第一項の制動装置のうち停止の状態を保持するための制動装置(レール上を走行する高所作業車のものを除く。)は、無負荷状態の高所作業車を五分の一のこう配の床面で停止の状態に保持することができる性能を有するものでなければならない。ただし、登坂能力の値(無負荷状態の高所作業車に、五十五キログラムに乗車定員を乗じて得た重量に相当する重量の人又は荷を乗せた場合に、当該高所作業車が登坂することができるこう配の最大値をいう。)が五分の一に満たない高所作業車で、その登坂能力の値のこう配の床面で停止の状態に保持することができる性能を有するものについては、この限りでない。
(作業装置用制動装置)
第六条 昇降装置、屈折装置、ブーム等を起伏させるための装置(以下「起伏装置」という。)及びブーム等を伸縮させるための装置(以下「伸縮装置」という。)は、これらの装置の作動を制動するための制動装置を備えているものでなければならない。ただし、油圧又は空気圧を動力として用いる高所作業車の昇降装置、屈折装置、起伏装置又は伸縮装置については、この限りでない。
2 前項の制動装置は、次に定めるところに適合するものでなければならない。
一 制動トルクの値(昇降装置、屈折装置、起伏装置又は伸縮装置に二以上の制動装置が備えられている場合には、それぞれの制動装置の制動トルクの値を合計した値)は、積載荷重に相当する荷重を作業床にかけた場合における当該高所作業車の昇降装置、屈折装置、起伏装置又は伸縮装置のトルクの値(当該トルクの値が二以上ある場合にあっては、それらの値のうち最大の値)の一・五倍以上であること。
二 人力による制動装置にあっては、次に定めるところによること。
イ 力量及びストロークの値は、次の表の上欄に掲げる操作の方法に応じ、それぞれ、同表の中欄及び下欄に掲げる値以下とすること。
操作の方式 |
力量(単位 ニュートン) |
ストローク(単位 センチメートル) |
足踏み式 |
三〇〇 |
三〇 |
手動式 |
二〇〇 |
六〇 |
ロ 歯止め装置又は止め金を備えているものであること。
三 人力による制動装置以外の制動装置にあっては、動力が遮断されたときに自動的に作動するものであること。
3 前項第一号の昇降装置、屈折装置、起伏装置又は伸縮装置のトルクの値の計算においては、昇降装置、屈折装置、起伏装置又は伸縮装置の抵抗はないものとする。ただし、当該昇降装置、屈折装置、起伏装置又は伸縮装置に七十五パーセント以下の効率を有するウォーム・ウォーム歯車機構が用いられる場合には、その機構の抵抗により生ずるトルクの値の二分の一の値のトルクに相当する抵抗があるものとすることができる。
(シーブの直径)
第七条 ワイヤロープにより作業床の昇降又はブームの起伏若しくは伸縮の作動をする装置のシーブのピッチ円の直径と当該シーブを通るワイヤロープの直径との比の値は、次の表の上欄に掲げるワイヤロープの構成による区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上でなければならない。
ワイヤロープの構成による区分 |
値 |
三十七本線六よりのワイヤロープ |
一六 |
フィラ形二十五本線六よりのワイヤロープ |
二〇 |
フィラ形二十九本線六よりのワイヤロープ |
一六 |
2 前項の表の上欄に掲げるワイヤロープ以外のワイヤロープを使用する場合における同項の比の値は、厚生労働省労働基準局長が定めるものとする。
(平衡装置)
第八条 高所作業車(垂直昇降型の高所作業車を除く。)は、作業床を平衡な状態に保持するための平衡装置を備えているものでなければならない。
(作業範囲を超えたときの自動停止装置等)
第九条 高所作業車(作業範囲(当該高所作業車の安定度等に応じて定められた、作業床を動かすことができる範囲をいう。以下同じ。)を超えて作業床が操作されるおそれのあるものに限る。)は、作業範囲を超えて作業床が操作されたときに、屈折装置、起伏装置、伸縮装置及びブーム等を旋回させるための装置(以下「屈折装置等」という。)の作動を自動的に停止させる装置又は警音を発する装置を備えているものでなければならない。
(過積載時の自動停止装置等)
第十一条 垂直昇降型の高所作業車は、積載荷重を超える荷重を作業床にかけたときに、昇降装置の作動を自動的に停止させる装置又は警音を発する装置を備えているものでなければならない。
(表示ランプ等)
第十二条 アウトリガーを有する高所作業車は、アウトリガーを使用していない状態を示すランプ等を備えているものでなければならない。ただし、アウトリガーを使用しないときに昇降装置又は屈折装置等が作動しない装置を備えている高所作業車については、この限りでない。
(非常停止装置等)
第十三条 高所作業車は、次に掲げる装置又は器具を備えているものでなければならない。
一 非常時に即時に走行装置(作業床において操作するものに限る。)及び昇降装置又は屈折装置等の作動を停止することができる装置
二 非常時に作業床上の労働者が地上に降りることができる装置又は器具
(操作装置等)
第十四条 高所作業車の走行装置(作業床において操作するものに限る。)及び昇降装置又は屈折装置等の操作装置は、接触等により当該走行装置等が不意に作動することを防止する構造のものでなければならない。
2 高所作業車は、前項の操作装置を作業床上に備えているものでなければならない。
3 高所作業車は、第一項の昇降装置又は屈折装置等の操作装置その他の作業床を安全に下降させることができる装置を車体上に備えているものでなければならない。
(走行装置等の操作部分)
第十五条 高所作業車の走行装置、制動装置及び作業装置の操作部分は、運転のために必要な視界が妨げられず、かつ、運転者が容易に操作できる位置に設けられているものでなければならない。
第十六条 高所作業車は、その走行装置、制動装置及び作業装置の操作部分について、運転者が見やすい箇所に、当該操作部分の機能、操作の方法等その操作に関し必要な事項が表示されているものでなければならない。ただし、運転者が誤って操作するおそれのない操作部分については、この限りでない。
(運転に必要な視界等)
第十七条 高所作業車は、運転者が安全な運転を行うことができる視界を有するものでなければならない。
2 高所作業車の走行のための車体上の運転者席又は運転補助者席は、振動、衝撃、動揺等により運転者又は運転補助者が容易に転落しない構造のものでなければならない。
3 高所作業車の運転室の前面に使用するガラスは、安全ガラスでなければならない。
(昇降設備)
第十八条 車体上の運転者席の床面又は最低降下位置に置いたときの作業床の床面が高さ一・五メートルを超える位置にある高所作業車は、労働者が安全に昇降するための設備を備えているものでなければならない。ただし、労働者が安全に昇降できる構造となっているものについては、この限りでない。
(方向指示器)
第十九条 高所作業車は、方向指示器を左右に一個ずつ備えているものでなければならない。ただし、最高走行速度が十キロメートル毎時未満の高所作業車については、この限りでない。
(車体の前後方向の表示)
第二十一条 作業床において走行の操作をする構造の高所作業車(ブーム等が旋回しない構造のものを除く。)は、作業床上の運転者が見やすい車体上の箇所に、車体の前後方向を示す表示がなされているものでなければならない。
(安全弁等)
第二十二条 高所作業車の油圧装置は、油圧の過度の上昇を防止するための安全弁を備えているものでなければならない。
2 油圧を動力として用いる昇降装置、屈折装置、起伏装置、伸縮装置及び平衡装置は、当該油圧の異常低下による作業床の急激な降下等を防止するための逆止め弁を備えているものでなければならない。ただし、第六条第二項第一号及び第三号に適合する制動装置(人力による制動装置を除く。)を備えているものにあっては、この限りでない。
(作業床)
第二十三条 高所作業車の作業床は、次の各号に定めるところによるものでなければならない。
一 床板材は、エキスパンドメタル製のもの又はすき間がないもので、かつ、枠に確実に固定されていること。
二 周囲には、次のイからハまでに定めるところに適合する囲い又は手すりが設けられていること。
イ 丈夫な構造であること。
ロ 材料は、著しい損傷、腐食等がないものであること。
ハ 高さは、九十センチメートル以上であること。
三 手すりが設けられている場合にあっては、周囲の中さん及び床板からの高さが十センチメートル以上の囲いが取り付けられていること。
(ワイヤロープ)
第二十四条 作業床の昇降用ワイヤロープ、ブームの起伏用ワイヤロープ、ブームの伸縮用ワイヤロープ及び平衡装置用ワイヤロープは、次に定めるところによるものでなければならない。
一 安全率は、八以上であること。
二 次のイからニまでに該当すること。
イ 一よりの間において、素線(フィラ線を除く。以下この号において同じ。)の数の十パーセント以上の素線が切断していないこと。
ロ 直径の減少が、公称径の七パーセント以下であること。
ハ キンクしていないこと。
ニ 著しい形崩れ又は腐食がないこと。
2 前項第一号の安全率は、ワイヤロープの切断荷重の値を当該ワイヤロープにかかる荷重の最大の値で除して得た値とする。この場合において、ワイヤロープが通るシーブの抵抗はないものとして計算を行うものとする。
(チェーン)
第二十五条 ローラチェーン及びリーフチェーン(以下「チェーン」という。)は、次に定めるところによるものでなければならない。
一 安全率は、五以上であること。
二 次のイからハまでに該当すること。
イ 伸びが、ローラチェーンにあっては当該ローラチェーンが製造された時の長さの二パーセント以下であり、リーフチェーンにあっては当該リーフチェーンが製造された時の長さの三パーセント以下であること。
ロ リンクの断面の直径の減少が、当該チェーンが製造された時の当該リンクの断面の直径の十パーセント以下であること。
ハ き裂がないこと。
2 前項第一号の安全率は、チェーンの切断荷重の値を当該チェーンにかかる荷重の最大の値で除して得た値とする。
(表示)
第二十六条 高所作業車は、運転者の見やすい位置に次の事項が表示されているものでなければならない。ただし、垂直昇降型の高所作業車にあっては、第五号に掲げる事項が表示されていないものでも差し支えない。
一 製造者名
二 製造年月又は製造番号
三 積載荷重
四 作業床の高さ
五 作業範囲
(特殊な構造の高所作業車)
第二十七条 特殊な構造の高所作業車又はその部分で、厚生労働省労働基準局長が第一条から前条までの規定に適合するものと同等以上の性能又は効力があると認めたものについては、この告示の関係規定は、適用しない。
改正文(平成一一年九月三〇日労働省告示第一二二号 抄)
平成十一年十月一日から適用する。
附 則(平成一二年一二月二五日労働省告示第一二〇号 抄)
(適用期日)
第一 この告示は、内閣法の一部を改正する法律(平成十二年法律第八十八号)の施行の日(平成十三年一月六日)から適用する。
改正文(平成一五年一二月一九日厚生労働省告示第三九六号 抄)
平成十六年三月三十一日から適用する。